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超論理の世界  ジャン・レイ<名探偵ハリー・ディクソン>シリーズ
 ジャン・レイ(1887年~1964年)は、SFや幻想小説を中心に活躍した、ベルギーのエンターテインメント作家です。彼が執筆した年少読者向けの<名探偵ハリー・ディクソン>シリーズは大変な人気があったそうで、1980年代に日本でも全三巻(合計六話)の邦訳が出ています。
 アメリカ出身でイギリスで活動する探偵のハリー・ディクソンと助手のトム・ウイルズの活躍を描くシリーズなのですが、合理的に謎が解かれる本格ミステリではなく、超自然、オカルト、宇宙人、殺人兵器など、何でもありの楽しい冒険ファンタジーとなっています。
 「合理的」ではないものの、作品に登場するSF・幻想的な要素が最終的には上手くまとめられ、その「超論理的展開」には、ある種の説得力が感じられるのが魅力ですね。荒唐無稽ではありますが、読んでいて非常に楽しいシリーズです。
 主人公であるハリー・ディクソン、最終的には勝利を収めることにはなるのですが、扱う事件が、超自然現象や科学兵器など、人間の能力を超えたものが多いため、作品前半では犯人や怪人にしてやられてしまうことも多いです。目の前であっさり人を殺されてしまったり(全体に人死が多いですね)するのですが、逆に人間の手には負えないという意味で、事件の規模の壮大さが強調されるのにつながったりもします。
 助手のウイルズはかなり有能なキャラクターで、様々な場面で活躍します。行動的で変装もお手の物、探偵と別行動をして単独で動くこともありと、一見、ディクソンよりも活躍の度合いが強いエピソードもあったりしますね。
 この<ハリー・ディクソン>シリーズ、もともとドイツ語によるシリーズだそうで、その翻訳を任されたジャン・レイが、このぐらいなら自分でも書ける、ということでオリジナルな話を書き始め、それが人気を得たそうです。
 邦訳エピソード六話だけの印象ではありますが、資質が怪奇幻想的なものにある作家ゆえか、怪奇・オカルト的な題材を扱った作品の完成度が高くなっているように思います。


名探偵ハリー・ディクソン〈1〉怪盗クモ団 (岩波少年文庫) 単行本 – 1986/11/13


ジャン・レイ『怪盗クモ団 名探偵ハリー・ディクソン1』(榊原晃三訳 岩波少年文庫)

「怪盗クモ団」
 名探偵ハリー・ディクソンのもとに、精巧なクモの装身具が突然現れます。用心して見張っていても、いつの間にかそのクモは増えていました。事務所に現れた若い娘はマドモアゼル・キュブリエと名乗り、クモを置いたのは自分の仕業だといいます。彼女は犯罪組織<クモ団>の首領であり、自分たちの邪魔をするならディクソンを殺すと脅迫しますが…。
 可憐な少女に見えながら、その姿は神出鬼没。部下を使って金を奪い、人を殺す残酷極まりない女首領と名探偵ハリー・ディクソンとの戦いを描いた作品です。
 この女首領、組織の人間を多数使うばかりか、自らも積極的に動くため、ディクソンも事件を防ぎきれず、犠牲者も多数出てしまいます。戦いの中で、二人の間に仄かな恋情のようなものが生まれる…という展開も良いですね。
 この女首領、魅力的なキャラクターだけに、作者も惜しいと思ったのか、明確に決着が着かずに終わるところも面白いです。

「謎の緑色光線」
 ロンドン警視庁のグッドフィールド警視とその部下たちは、とある村での捜査を終えた後、車が故障し立ち往生してしまいます。近くに明かりが見え近づいていきますが、それはかって、火事で焼け落ちたジョージ・マーカム卿の古い館でした。直後に謎の緑色の光線に襲われた彼らは、自動車と運転手を黒焦げにされてしまいます。
 ハリー・ディクソンの元には、金をよこせという脅迫を受けた富豪たちが次々と相談に訪れます。フランスから派遣された刑事によれば、前代未聞の兵器を開発していた科学者アロトーが失踪し、脅迫の首謀者はその兵器を手に入れたのではないかというのです…。 人も建物もあっという間に破壊する謎の兵器「緑色光線」を手に入れた犯人と名探偵の戦いを描く作品です。「緑色光線」の他に「殺人ロボット」なども登場し、その破天荒さにはびっくりしてしまいます。
 SF的なテーマを扱っていますが、その科学的設定はかなり雑。また「意外な犯人」が登場はするものの、推理もへったくれもなく、成り行きと力業で事件を解決してしまいます。ところどころでアクション・見せ場も多い、大雑把ではありながら、楽しい一篇になっています。



地下の怪寺院―名探偵ハリー・ディクソン 2 (岩波少年文庫 (3122)) 単行本 – 1987/10/19


ジャン・レイ『地下の怪寺院 名探偵ハリー・ディクソン2』(榊原晃三訳 岩波少年文庫)

「七狂人の謎」
 アメリカ時代の幼馴染みであり、行き来の途絶えていた旧友レジナルド・マーロウから、ディクソンの元へ助けを求める手紙が届きます。辺鄙な場所ファイアストーン・ヒルにあるマーロウの館に辿り着いたディクソンが聞いたのは、奇妙な話でした。
 この地方の資産家たちが次々と発狂しているというのです。すでに六人がその状態になり、近くにある精神科医マーデン博士のサナトリュームに収容されているといいます。次に狙われるのは、同じく資産家である自分ではないかとマーロウは恐れていました…。
 病なのか人為的なものなのか、理由が分からないながらも、地元の名士が次々と精神的におかしくなってしまう事件にディクソンが遭遇します。一見超自然的な色合いが濃く、怪奇色の強い作品になっていますね。
 明らかに怪しい精神病院はともかく、意外な人物が意外な形で事件に関わっていたことが分かるラストには驚くのではないでしょうか。結末も相当にブラックです。

「地下の怪寺院」
 探偵ディクソンと助手のウイルズは、かって邪悪な行為を繰り返し滅亡することになったクリックルウェル一族の館のそばで、謎の飛行物体と同時に、見るも恐ろしい怪物を目撃します。
 記憶力に優れる新聞記者スカーレットの話から、かって月へのロケットを飛ばすことに失敗したことから<アップルツリー>という綽名の付けられたベネズエラの科学者ペレイロス博士が、飛行物体に関わっているのではないかという疑いが浮上します。
 捜査に協力していたスカーレットは死体となって発見されます。ウイルズの調査の結果判明したのは、部屋に会ったねばねばの粘液、そしてスカーレットは、恐怖のあまりに死んだ可能性が高いということでした…。
 科学者によるロケット実験、滅んだはずの邪悪な一族、暗躍するカルト教団、謎の地球外生命体、地下に建設された寺院など、様々な要素がてんこ盛りで、一見、大風呂敷を広げすぎにも見えるのですが、それらが最終的には上手くまとまってしまうという、破天荒かつ魅力的な物語です。
 メインとなるのは、宇宙へのロケット研究を続ける科学者ペレイロスをめぐる部分で、彼自身か、その黒幕らしき存在が大胆な計画を進めていることが判明します。後半に登場する地下寺院での展開は、本当に奇想天外で、驚きの連続です。
 序盤で言及される邪悪な一族の話が、単なる物語の装飾に過ぎないのだと思っていると、結末でそれが生きてくるという趣向にも驚かされますね。



悪魔のベッド―名探偵ハリー・ディクソン 3 (岩波少年文庫 (3123)) 単行本 – 1987/12/18


ジャン・レイ『悪魔のベッド 名探偵ハリー・ディクソン3』(榊原晃三訳 岩波少年文庫)

「悪魔のベッド」
 グランピアン山脈の北の斜面に現れたり消えたりする不思議な湖。百年近く前に、その湖に浮かぶ小島で暮らしていたグレストック一族の青年が残した手記が競売にかけられていることを知ったハリー・ディクソンは、その手記を入手します。
 本を手に入れようと、ディクソンと競り合う男がいましたが、どうやらその男サーバスは、湖があった場所に建つ館の管理人のようなのです。
 手記に書かれていたのは奇妙な事件でした。家族全員が島を離れた後、再度一人だけ戻ってきた青年ジョン・グレストックは、荒れ果てた家の一室だけが綺麗に保たれていることに気付きます。そこには豪華なベッドが用意され、何物かが寝起きしているようなのです。落下してきた天蓋によって圧死するのを免れたジョンは、突然現れた男たちから、家から出て行けと言われ困惑することになります。
 一方、現代では、地質学者のマールウッドがグランピアン山脈で死亡しているのが発見され、死体のそばの岩の側面には<グレストック>という文字が記されていました。グレストック一族の館が事件と何か関係があるのではないかと考えたディクソンと助手のウイルズは、手記にあった古い館を調査に向かいます…。
 誰も住まなくなったはずの館に現れた「悪魔のベッド」。誰が何のために用意し、誰がそれを使っているのか? 百年近く前の不思議な事件を発端に、現代でも摩訶不思議な事件が起こります。
 現代のパートでは、研究者であるという妖艶な美女ライナと、彼女に惚れ込んだ青年貴族エドワード・ヘイ卿が登場します。この二人のロマンスが展開するのかと思いきや、思いもかけない方向に物語がねじれていくのは、破天荒なこのシリーズならではですね。
 登場する怪奇現象や怪物などにもインパクトがありますが、それに対抗するハリー・ディクソンの行動も強烈です。敵を殲滅するための荒っぽい方法には「やりすぎ感」が感じられるほどです。

「銀仮面」
 科学者カルトロップ教授によって作られた飛行船E19号から乗客が落下し、飛行船自体も消えてしまうという事件が起きます。その謎を追って、ディクソンはある村を調査に訪れます。村の住人は皆独身者でしたが、それぞれが後ろ暗い過去のある連中ばかりのようなのです。やがて村の住人が次々と命を落とします。廃墟の地下に潜入したディクソンは、銀色の頭を持った謎のロボットに襲われますが…。
 飛行船の落下事故と消失、身分を隠した男ばかりが集まる村、連続殺人事件、謎のロボット…。シリーズの他作品同様、謎に満ちた要素が次々と放り込まれ、ワクワクさせるお話になっているのですが、この作品に関しては、正直なところ、事件同士の結びつきが弱く、ちょっと散漫な印象にはなってしまっていますね。
 ただ、事件全体を仕組んだ犯人の計画が判明する部分はよく出来ていると思います。かっての敵である犯罪者とディクソンが、一時的に手を組むことになる…という展開もなかなかです。


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7月の気になる新刊と6月の新刊補遺
6月27日刊 P・G・ウッドハウス『ボドキン家の強運』(森村たまき訳 国書刊行会 予価2420円)
6月27日刊 伊藤典夫編訳『海の鎖』(国書刊行会 予価2860円)
7月5日刊 江戸川乱歩『人間椅子 江戸川乱歩背徳幻想傑作集』(長山靖生編 小鳥遊書房 予価2860円)
7月5日刊 マシュー・シャープ『戦時の愛』(柴田元幸訳 スイッチパブリッシング 予価2750円)
7月7日発売 『別冊映画秘宝 恐怖!幽霊のいる映画』(双葉社 予価1980円)
7月8日刊 レジス・メサック『「探偵小説」 の考古学 セレンディップの三人の王子たちからシャーロック・ホームズまで』(石橋正孝監訳 国書刊行会 予価9680円)
7月8日刊 ラスティカ エディションズ編『神秘のユニコーン事典 幻獣の伝説と物語』(ダコスタ吉村花子訳 グラフィック社 予価1980円)
7月12日刊 エドワード・ケアリー『飢渇の人 エドワード・ケアリー短篇集』(古屋美登里訳 東京創元社 予価2310円)
7月12日刊 ゾラ・ニール・ハーストン『ヴードゥーの神々』(常田景子訳 ちくま学芸文庫 予価1650円)
7月12日刊 都筑道夫『哀愁新宿円舞曲 増補版』(日下三蔵編 ちくま文庫 予価1210円)
7月15日刊 都筑道夫『なめくじに聞いてみろ 新装版』(講談社文庫 予価1078円)
7月16日刊 東雅夫編『幻想童話名作選 文豪怪異小品集』(平凡社ライブラリー 予価1320円)
7月16日刊 セーアン・スヴァイストロプ『チェスナットマン』(高橋恭美子訳 ハーパーBOOKS 予価1210円)
7月16日刊 エイドリアン・チャイコフスキー『時の子供たち 上・下』(内田昌之訳 竹書房文庫 予価各880円)
7月19日刊 ジャン・レー/ジョン・フランダース『マルペルチュイ ジャン・レー/ジョン・フランダース怪奇幻想作品集』(岩本和子・井内千紗・白田由樹・原野葉子・松原冬二訳 国書刊行会 予価5060円)
7月19日刊 ジョージ・W・M・レノルズ『人狼ヴァグナー』(夏来健次訳 国書刊行会 予価5280円)
7月21日刊 ジェローム・K・ジェローム『骸骨 ジェローム・K・ジェローム幻想奇譚』(中野善夫 訳 国書刊行会 予価4180円)
7月21日刊 エリー・グリフィス『見知らぬ人』(上條ひろみ訳 創元推理文庫 予価1210円)
7月21日刊 J・J・アダムズ編『不死身の戦艦 銀河連邦SF傑作選』(佐田千織他訳 創元SF文庫 予価1496円)
7月22日刊 雨穴『変な家 完全版』(仮題)(飛鳥新社 予価1540円)
7月26日刊 アーシュラ・K・ル=グウィン『文体の舵をとれ ル=グウィンの小説教室』(大久保ゆう訳 フィルムアート社 予価2200円)
7月26日刊 高原英理『高原英理恐怖譚集成』(国書刊行会 予価3960円)
7月29日刊 ペーター・テリン『身内のよんどころない事情により』(長山さき訳 新潮社 予価2255円)


 7月刊行分、特に国書刊行会からのものがすごいことになっていますね。

 伊藤典夫編訳『海の鎖』は、〈未来の文学〉シリーズの最終巻。収録作は以下の通りです。
アラン・E・ナース「偽態」
レイモンド・F・ジョーンズ「神々の贈り物」
ブライアン・オールディス「リトルボーイ再び」
フィリップ・ホセ・ファーマー「キング・コング墜ちてのち」
M・ジョン・ハリスン「地を統べるもの」
ジョン・モレッシイ「最後のジェリー・フェイギン・ショウ」
フレデリック・ポール「フェルミと冬」
ガードナー・R・ドゾワ「海の鎖」

 マシュー・シャープ『戦時の愛』は、ウェブに発表されたごく短い形式の摩訶不思議な小説“超短篇”を集めた作品集だそう。

  『飢渇の人 エドワード・ケアリー短篇集』は、エドワード・ケアリーの日本オリジナル短篇集。これは楽しみです。

 エイドリアン・チャイコフスキー『時の子供たち』は、テラフォーミングの失敗で蜘蛛が進化した惑星を描いた蜘蛛SFだとのこと。これは面白そうですね。

 ジャン・レー/ジョン・フランダース『マルペルチュイ ジャン・レー/ジョン・フランダース怪奇幻想作品集』は、ベルギー最大の幻想作家ジャン・レーの作品集。傑作幻想小説『マルペルチュイ』に加え、本邦初紹介の短篇集『恐怖の輪』とJ・フランダース名義の幻想SF小説集『四次元』を収録とのこと。刊行元ページより内容を転載しておきます。

『マルペルチュイ 不思議な家の物語』 Malpertuis: Histoire d’une maison fantastique
大伯父カッサーヴの奇妙な遺言に従い、莫大な遺産の相続と引き換えに〈マルペルチュイ〉館に住まうこととなった一族の者たち。
幽囚のごとき彼らが享楽と色恋に耽る一方、屋敷の暗闇には奇怪な存在がひそかに蠢き、やがて、住人たちが消える不可解な事件が立て続けに起こる。
一族の若き青年ジャン=ジャックはこの呪われた館を探索し、襲い来る幾重もの怖ろしい出来事の果てに、カッサーヴの末裔たちが抱える驚くべき秘密と真実に辿り着く……
満を持して新訳となる、ジャン・レーの代表作にして、『ゴーメンガースト』『アルゴールの城』に比肩する現代ゴシック・ファンタジーの最高傑作。

『恐怖の輪 リュリュに語る怖いお話』 Les Cercles de l’epouvante
中世騎士の義手が引き起こす怪、ディー博士の魔術道具の呪い、怪鳥ヴュルクとの凄絶な戦い……
幾重もの恐怖の輪が環をなす、収録11篇中10篇が本邦初訳の、父が愛娘に語る枠物語的怪奇譚集。

『四次元 幻想物語集』 Vierde Dimensie: fantastiche verhalen
自動人形に宿った死刑囚の魂の怪、顕微鏡の中に現れた小さな老人の化物、奇妙な逃亡呪術を用いる殺人犯を追う刑事……
収録全16篇が本邦初紹介となる、ジョン・フランダース名義のオランダ語怪奇幻想・SF・ミステリ短篇集。

 ジョージ・W・M・レノルズ『人狼ヴァグナー』は、ゴシック的怪奇小説として日本では名のみ有名だった作品です。これは貴重な翻訳です。

 ジェローム・K・ジェローム『骸骨 ジェローム・K・ジェローム幻想奇譚』は、ユーモア小説『ボートの三人男』で知られるジェローム・K・ジェロームによる異色作品集。収録作は以下の通りです。
「食後の夜話」
「ダンスのお相手」
「骸骨」
「ディック・ダンカーマンの猫」
「蛇」
「ウィブリイの霊」
「新ユートピア」
「人生の教え」
「海の都」
「チャールズとミヴァンウェイの話」
「牧場小屋(セター)の女」
「人影(シルエット)」
「二本杉の館」
「四階に来た男」
「ニコラス・スナイダーズの魂、あるいはザンダムの守銭奴」
「奏でのフィドル」
「ブルターニュのマルヴィーナ」

 エリー・グリフィス『見知らぬ人』は、作中に怪奇短編を埋め込んだミステリ作品だとのことで、ちょっと気になりますね。

 高原英理『高原英理恐怖譚集成』は、ホラー短篇集『抒情的恐怖群』に「闇の司」「 水漬く屍、草生す屍」「かごめ魍魎」など5編を増補した恐怖小説集。


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迷える子どもたち  ショーニン・マグワイア 〈迷える青少年のためのホーム〉三部作
 ショーニン・マグワイアの〈迷える青少年のためのホーム〉三部作は、異世界から帰還した子どもたちのケアを行う学校を舞台にしたファンタジー作品です。
 異世界への移動が困難であり、帰還後も元いた異世界へ戻りたいと願う子どもたちを描いた異色の世界観が描かれています。


不思議の国の少女たち (創元推理文庫) 文庫 – 2018/10/31


ショーニン・マグワイア『不思議の国の少女たち』(原島文世訳 創元推理文庫)

 エリノア・ウェストが経営する学校〈迷える青少年のためのホーム〉は、現実とは異なる異世界に引き込まれ、そして帰ってきた子どもたちのケアをするための学校でした。子どもたちは自分たちが訪れた異世界を「故郷」とみなし、そこに帰りたがっている者が大部分でした。
 しかし、異世界への扉が開くのは大抵が一回切りであり、元の世界に戻れた例はほとんどないのです。高齢になった今も、自らの異世界との扉を失っていないエリノアは、親友のランディと共に、子どもたちが現実世界との折り合いをつけるためのケアを行っていました。
 新入生として入学した少女ナンシーは、かって「死者の殿堂」に行って帰ってきたという経験を持っていました。彼女もまたその世界に戻りたいという願いを持っていたのです。ルームメイトとなった少女スミは、「ナンセンス世界」の体験者であり、その天衣無縫さでナンシーを困惑させます。
 他の生徒たちもそれぞれ全く違った異世界の体験者であり、一つとして同じ世界はないのです。学校になかなか溶け込むことのできないナンシーでしたが…。

 かって異世界に行って戻ってきた子どもたち。彼らの心のケアを行う学校を舞台に、不思議な出来事が起こるというファンタジー作品です。
 子どもたちが訪れた異世界は一人として同じではなく、数知れない世界が存在していました。そのため子どもたちもその体験を共有することも難しくなっていました。
 自らも異世界体験者である校長エリノアは、異世界をその方向性に応じて分類していました。異世界だけに、そこでは現実の論理が通用はしないのですが、大まかに分けて「ナンセンス」と「ロジック」、「邪悪さ」と「高潔さ」のベクトルの異世界があるようなのです。
 「冥界」に近い世界にいたナンシーと同室になった少女スミがいた世界は「ナンセンス」の世界であり、その振る舞いや考え方も全く相いれないものでした。異世界からの帰還者たちは、それぞれの世界に影響され、独自の個性や思考様式を持つようになっていました。
 人によっては、特殊な能力さえ身につけている者さえいるのです。菓子の国に行っていた少女スミの他に、ヴァンパイアの世界にいたらしい少女ジル、ジルの双子の姉でマッドサイエンティストの弟子だったジャック、妖精界にいた少年ケイド、骸骨の世界に行っていた少年クリストファーらと友人になったナンシーでしたが、物語後半で発生する事件のために、周囲からその犯人として疑われることにもなってしまいます。

 異世界からの帰還後、いわば「不思議の国のアリス」が終わった時点から始まる物語で、舞台はあくまで現実世界だという、「異世界の登場しない異世界ファンタジー」とでもいうような、不思議な手触りの作品となっています。
 もともと生徒たち全員が異世界への渇望によって精神的にケアを必要としている上に、後半で起きる事件のために、学校自体の存続が脅かされてしまうなど、スケールの大きなサスペンス味もありますね。
 主人公ナンシーは現実に適応することができるのか? それとも異世界に帰還することができるのか? といったあたりも読みどころとなっています。

 異世界の設定もユニークで、どうやら現実世界と並行して様々な異世界が存在しているらしいのです。大抵は一回きりしか行くことができないものの、エリノアのように何度も行き来することができる人間もいます。
 直接、異世界そのものは登場しないのですが、登場人物たちの口からそれぞれの世界の特徴が語られ、それが間接的であるがゆえに、逆に想像力をそそられます。
 少年少女の精神的な苦悩が描かれるのですが、それ以外に犯罪・猟奇的な事件も描かれ、全体にダークな手触りのファンタジー作品です。作中で起きる事件の「犯人」の動機も、このファンタジー世界ならではの説得力のあるもので、ミステリ作品として読んでも魅力的な作品となっています。



トランクの中に行った双子 (創元推理文庫) 文庫 – 2018/12/12


ショーニン・マグワイア『トランクの中に行った双子』(原島文世訳 創元推理文庫)

 弁護士のチェスターとその妻セリーナの間に生まれた双子の姉妹ジャクリーン(ジャック)とジリアン(ジル)。ジャクリーンは母親が期待していた可愛らしい少女に、ジリアンは父親が期待していた男の子まさりの活発な少女に育てられます。しかし当人たちは押しつけられた役割にうんざりしていました。
 ある日、祖母のルイーズが使っていた空き部屋でトランクを見つけた二人は、その中に下へ降りる階段が続いているのを見て驚きますが、衝動的にその下に降りていってしまいます。辿り着いたのは、巨大な赤い月に照らされた荒野でした。
 その世界は様々な恐ろしい怪物の支配する世界であり、荒野を支配しているのはヴァンパイアである「ご主人さま」でした。異世界からやってきた子供を求めていた「ご主人さま」に惹かれたジルは、彼の元に留まることになります。
 一方、「ご主人さま」と対立するマッドサイエンティストのブリーク博士の弟子となったジャックは、彼のもとで様々な技術を学ぶことになりますが…。

 『不思議の国の少女たち』の前日譚で、怪物の支配する異世界に迷い込んだ双子の少女を描くダーク・ファンタジー作品です。前作に登場した双子の少女ジャックとジルが異世界に行った際の物語となっています。
 二人が辿り着いた世界は、怪物と暴力が支配する「邪悪」な世界なのですが、現実世界では無理解な親によって居心地の悪い思いをしていた二人にとっては、本当の自分が解き放てる「自由な」世界であり、そこの暮らしに溶け込むことになります。
 厳しいながらも愛情を持ってくれるブリーク博士の弟子となったジャックに対し、「ご主人さま」の元に留まったジルは「ご主人さま」の権威を背景に力を振るいますが、孤独感と姉に対する愛憎半ばする思いを持つようになります。二人の立場の違いは、やがて悲劇をもたらすことにもなるのです。

 ヴァンパイアや怪物が支配し、死や暴力に満ちた異世界が舞台となっており、その世界観も魅力的なのですが、それ以上に印象に残るのは、双子の姉妹の愛憎半ばする感情とそのぶつかり合いです。現実世界では、親によって型にはめられた二人が互いに憎み合うものの、異世界に来ることによって一時的に二人の愛情が蘇ります。しかしヴァンパイアとマッドサイエンティスト、それぞれの保護者となった者の影響により、二人の関係は再度歪んでしまうのです。
 前作でもメインで活躍していたジャックはともかく、あまり目立たなかったジルの心理や行動が描かれていて、前作での彼女の行動に説得力を与えています。異世界に来てようやく愛情を得ることのできたジャックに比べ、ジルは現実でも異世界でも愛を得ることができないのです。
 とことんまで傷つけられながらも、妹を見捨てることのできないジャックの決断が描かれる結末には感動がありますね。
 前作で双子の通ってきた過去の経緯が語られているだけに、結末は分かった状態で読むことになるのですが、それでもその情念の熱さで読まされてしまいます。

 ヴァンパイアや怪物が存在する世界であり、死んだ者も再生できる技術があったりと、興味深い世界観なのですが、それらについて詳細はあまり語られず、あくまで異世界に迷い込んだ双子の運命と感情の相克がメインに描かれていきます。徹底してダークで残酷さに満ちた物語なのですが、そこにはある種の美しさがあります。
 お話は独立しているので、この巻だけ読んでも楽しめます。一巻で二巻のお話の流れが語られていることもあり、驚きを味わいたければ、二巻から先に読むというのもありでしょうか。



砂糖の空から落ちてきた少女 (創元推理文庫) 文庫 – 2019/3/11


ショーニン・マグワイア『砂糖の空から落ちてきた少女』(原島文世訳 創元推理文庫)

 異世界から帰還し心に傷を負った子どもたちのケアを行う「エリノア・ウェストの迷える青少年のための学校」。海溝国から帰還した少女コーラは、新入生として学校に入り、同じような境遇で、沈んだ世界ベレーリカに行ったナディアと友人になります。
 ある日二人の前で、空から突然落ちてきたのは、おかしなドレスを着た風変わりな少女でした。彼女はかってこの学校に在籍し、ある事件から死んでしまった少女スミの娘リニと名乗ります。
 スミの生命を取り戻さなければ、未来の娘であるリニも消滅してしまうという話を聞いたコーラとナディアは、スミの友人だったケイドとクリストファーを加え、リニと共に別世界へ向かうことになりますが…。

 シリーズ二巻の『トランクの中に行った双子』が前日譚だったので、本作が第一巻『不思議の国の少女たち』の直接の続編となります。『不思議の国の少女たち』で起きた事件により死んでしまった少女スミ、その未来の娘リニが現れ、スミの生命を取り戻すため、友人たちと共に異世界へ向かうことになる、という正統派のファンタジー作品となっています。
 前二巻同様、現実世界に違和感を感じたり、差別を受けたりと、「ここではない世界」を求める少年少女たちの逡巡が描かれており、その点ではテーマを同じくしています。
 前二巻では、異世界への移動が非常に困難なものとされていました。自分たちが滞在していた異世界に帰りたいと考える子どもたちの運命は絶望的なものになっており、暗鬱なトーンが支配していたのです。
 対して本巻では、異世界を移動できるリニの能力によって、以前よりも異世界間の移動が容易になっています。完全に自由に移動できるわけではなく、行ける世界も限定されてはいるのですが、主人公たちは希望が持てるようになったこともあり、全体に登場人物たちも前向き、ポジティブに活動する作品となっています。

 登場人物たちがメインで冒険する異世界は、スミが行っていた菓子の国で、そこはナンセンスの支配する世界。理屈やロジックが通じない突拍子もない世界なのです。それぞれが過去の異世界体験で手に入れた能力を利用して困難を切り抜けたりするなど、冒険小説としての楽しみもありますね。

 このシリーズ、もともとの設定からして、風変わりな少年少女が多く登場するのですが、本作で中心に描かれる少女コーラは、癖のない良心的なキャラクターとして描かれています。太っちょで現実世界ではばかにされながらも、運動能力が高く泳ぎが得意、水に対する適性を持つキャラクターです。このコーラと、テンションの高いリニのキャラもあって、物語自体が明るいトーンとなっていますね。
 異世界の創造主の存在や住人についてなど、異世界に関するルールや特徴が少しながら明らかになったりするのも興味深いです。また、意外なキャラクターが再登場するのも楽しいところ。

 この三巻、全体に面白いお話ではあるのですが、「アンチ・ファンタジー」として独特の構成を持った第一作、ダークな世界観の第二作と比べると、ちょっとまっとうすぎるファンタジーに落ち着いてしまった感がなきにしもあらずです。ただ、菓子の国のナンセンスでスラップスティックな冒険行、特にスミを生き返らせるための過程は破天荒で、独特の味わいがありますね。


 このシリーズ、三部作として一応完結しているのですが、解説によると、本国では反響を受けて、すでにいくつか続編が書かれているそうです。続刊の邦訳も期待したいところですね。


テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

日本のホラー作品を読む

ほねがらみ 単行本 – 2021/4/14


芦花公園『ほねがらみ』(幻冬舎)
 大学病院に勤める男性医師の「私」は、怪談の収集を趣味としていました。さらにネットだけではなく、病院のスタッフや患者からも怖い話を集めるようになっていたのです。メールでの体験談、症例研究、記者から送られてきた資料などを調べているうちに、「私」は、ばらばらだった怪異現象につながりがあるのではないかと考え始めます。様々な記録に現れてくる、呪われた村、手足のもがれた体、邪悪な蛇…、その中心に出てくるのは「橘家」と呼ばれるある家系でした…。

 怪談収集を趣味とする医者の周囲で怪異が起こり始める…というホラー作品です。民俗学的な呪いや怪異を扱ったホラー作品なのですが、それらが様々な媒体でバラバラに現れてくる、というのが特徴です。ネット怪談や都市伝説風の創作に近いものから、直接的な怪異の体験談など、そのレベルは様々なのですが、それらを語り手の「私」が読んでいるうちに、記録に共通する現象が見えてくる…という作りになっています。そして内容を知るごとに「私」自身の周囲にも怪異現象が発生し始めるのです。
 様々な層の様々な語り手が語る話が集まっているだけに、何が真実(物語内で)なのか分からなくなってくるという、メタフィクショナルな趣向が使われています。最初の章「読 木村沙織」にしてから、怖い話を漫画化している語り手の元に、知り合いから何通かに分けて複数の話が送られてくるという話で、エピソード中に、さらにエピソードが再分割されるという複雑な構成になっています。このあたり、「はじめに」でも言及される、三津田信三作品の影響もありそうですね。
 主題となる怪異部分の解釈も面白いです。日本独自の民族的な呪いに海外のオカルト的な影響があったのでは…というユニークな解釈がされています。その形式も相まって、読者それぞれが物語の内容を再構成していくような面白さがありますね。
 もちろん純粋に怖がらせる部分でも、結構「怖い」作品です。



異端の祝祭 (角川ホラー文庫) 文庫 – 2021/5/21


芦花公園『異端の祝祭』(角川ホラー文庫)
 容姿が優れず内気なことから、人生が失敗続きだと考えていた島本笑美は、大手の食品会社「モリヤ食品」の面接を受けてその会社に就職することになります。ヤンと名乗る、不思議な魅力を持った青年社長に直接仕事を支持された笑美は、その作業の異様さに違和感を抱きますが、ヤンの言葉にはなぜか抗えないのを感じていました。
 一方、笑美の様子を心配した兄の陽太は、心霊案件を専門とする佐々木事務所に調査を依頼することになります。事務所の所長である佐々木るみと、その助手青山幸喜は、調査の過程で事件の異様さを知ることになります…。

 生まれつき死者の姿が見える女性が、異様な会社に入社したことから、霊的な事件に巻き込まれるというホラー作品です。
 引っ込み思案の女性がカルトのような企業に就職し、洗脳のような状態になってしまいます。心霊的なものが絡んでいると考えた兄がその筋の事務所に依頼し、その真相を探っていくという、<ゴースト・ハンター>風味のホラー作品です。
 探偵役の佐々木るみと青山幸喜が事件を追っていくことになるのですが、その捜査過程は独特です。霊的・宗教的な事件だとして、相手がどんな術を使い、どんな宗教的背景が分からなければ対抗できないとして、具体的な情報を集めようとするのです。特定の信仰がらみだとして捜査を進めるものの、それが上手くいかず、事態は暗礁に乗り上げてしまいます。
 佐々木るみのキャラクターも独特です。30代、中性的で、男女どちらか一見分からない、という風貌。礼儀正しく、慈善家のような一面を持ちながら、その内面は計り知れない…という、ちょっと不穏なキャラクターとして描かれています。
 一方、助手の青山は善人そのもののような人間で、純粋にるみを信用する「善」を体現したかのようなキャラとなっています。青山が持つ宗教的な背景がヒントとなって事態が打開される、という後半の展開も面白いですね。
 問題となる霊的現象も、異様かつ不条理でインパクトがあります。優し気な青年社長ヤンが要求する、異様な作業の意味は何なのか? 彼が持つ不思議な力とは何なのか? 加えてヒロイン笑美が生まれつき持つ霊能力はどうつながってくるのか? というあたりも興味深いですね。
民俗学的な題材が使われていますが、他にもカルト集団による集団の狂気、霊能力者の能力ゆえの孤独感と絶望感、探偵の秘められた過去など、いろいろなモチーフが混ぜ合わされており、読み応えのあるホラー作品となっています。
 登場する「霊」の描写もかなりグロテスクで怖いです。しかも後半に登場する怪異・超常現象は、それらの「霊」現象さえ大したことではないと思わせるようなインパクトがありますね。



地棲魚 単行本(ソフトカバー) – 2019/12/18


 嶺里俊介『地棲魚』(光文社)
 事故死した両親の葬儀のため実家に戻っていた片桐真治は、母の遺品の中から、母の弟、赤石信彦からの葉書を見つけます。かって一度だけ会ったことのある叔父は、母と奇妙な会話をしていたのを片桐は覚えていました。
 そこで聞いた話の中で、赤石家には一世代に一人か二人、特殊な能力を持つ人間が生まれるということ、その能力者は『矢の者』と呼ばれ、『的』を追い詰める任務がある、ということを聞いていました。実家との関係を嫌った母によって、赤石家とは断絶していましたが、青年期から片桐には不思議な能力が発現していました。
 叔父の住所が分かったことから、彼と話をしてみたいと片桐は叔父が住むという南房総の山奥を訪れようと考えます。片桐の家に夫婦で泊まっていた親友の貫井は、その場所を見て、かって起こった凄惨な誘拐事件のことを思い出します。それは、巨大企業グループの当主の息子が誘拐され殺害された事件でした。
 やがて山奥を訪れた片桐は、再会した叔父、赤石が異様な雰囲気をまとっているのを見て驚きます。何かを警戒しているらしい赤石は、一族のことや能力のことについてもまともに教えてくれません。
 それから片桐の周りで、いくつもの事故や殺人など、不可解な事件が起こり始めますが…。

 一族に伝わる不思議な能力を持つ男が、同じ一族の叔父に再会したことから、危険な災難に巻き込まれ命を狙われるようになるという伝奇ホラー作品です。
 一族との関わりを嫌った母親によって育てられた主人公片桐は、自らの能力やその由来について詳細を知らされておらず、それを知るため叔父のもとを訪れますが、まともな情報がもらえないところか、身の回りで彼の命を狙うかのような災難に巻き込まれます。これは一族の敵である『的』の仕業なのか? 叔父の赤石は何を知っているのか?
 現実に起きた殺人事件の謎を追っていくうちに、片桐の一族とその能力、『的』の秘密も明らかになっていきます。
 『的』の人間離れした能力が強烈です。殺人術に通暁するばかりか、人間離れした力と正確さを持っています。その強さは、相手が複数で正面から立ち向かっても皆殺しにされてしまうほどのもの。主人公が殺されないのもたまたま運が良いだけで、一方的に友人や知り合いを殺されてしまいます。
 能力者でありながらその使い方もよく分かっていない主人公は、敵からの攻撃をどう逃れるのか、どうやって敵を倒すのか、といったところは非常にスリリングですね。加えて、『矢の者』や『的』に関わる伝奇的な事実も徐々に明らかになり、その部分もホラーとして面白く読めます。特に、『的』がその力を使って、異形のものたちを作り出すという部分は、グロテスクながら、ホラーファンを魅了する魅力がありますね。



おどろしの森 (角川ホラー文庫) 文庫 – 2020/10/23


滝川さり『おどろしの森』(角川ホラー文庫)
 尼子拓真は、憧れだった新築の一軒家を購入します。しかし住み始めた直後から、お香のような甘い匂いや女の笑い声を感じ取るようになります。妻の茉祐や高校生の娘の祐希は何も感じないらしいのですが、幼い息子の勇真のみが、拓真同様、奇怪な現象を感じ取っていました。
 やがて、はっきりとした女の霊らしき存在までもが現れます。上司に連れられて訪れたガールズバーで、霊能力があるという若い店員ミヤと中年女性の鳳と顔見知りとなった拓真は、鳳に相談して家を見てもらいます。しかし家からは何も感じ取れないというのです…。

 新築の家に越した直後から、怪奇現象に襲われる男とその家族を描いたホラー作品です。家族のうちでも怪異が見えるのは父親の拓真と息子の勇真のみ。なぜか妻と娘には見えないのです。霊能力者に見てもらっても何も見えません。いったい何の怪異なのか?それに取り憑かれる条件が存在するのか? というところで、謎が深まっていきます。
 霊能力者であるミヤと、同じく能力者であるその恋人波瀬アキラが登場し、拓真の家の呪いに向き合うことになります。調査を進める間にも事態は悪化し、関係者の命さえもが危うい状況になってしまうのです。
 怪異現象に襲われ続ける拓真のパートのほか、派手好きな友人とのつきあいからパパ活にまで踏み込んでしまう娘の祐希のパート、幼い頃に怪異に襲われ呪われてしまったというミヤのパートとが併行して描かれていきます。
 成長して以後その仲がこじれていた娘の祐希と父親の拓真との親子愛、呪いの存在によって閉じこもっていたミヤと恋人の波瀬との関係など、怪異現象以外の部分でも読ませる作品になっています。
 怪異自体の描かれ方もユニークで、取り憑かれる条件や感染の条件、そして怪異現象が見える条件など、呪いの様々な特性が段々と判明していく過程は、なかなかにスリリングです。
 現象自体は派手なのですが、ちまちまと襲ってきていた前半に比べ、後半では俄然、物理的にも強力な力で襲ってくる怪異のインパクトは強烈です。空間さえもねじ曲げてくる怪物にどうやって勝つことができるのか? アクションホラーとしても秀逸な作品になっていますね。



Another 2001 単行本 – 2020/9/30


綾辻行人『Another 2001』(角川書店)
 数十年前のある生徒の死をきっかけに、そのクラスの生徒および関係者に死者が大量に発生するという〈災厄〉に取りつかれてしまった夜見山北中学の三年三組。〈災厄〉は数年に一度訪れ、それが始まってしまった場合は、死の連鎖を防ぐ方法はないと言われていました。
 ことに大きな被害を出した1998年の〈災厄〉から3年後の2001年。3年前の夏に見崎鳴と知り合った比良塚想は、父方の親類の赤沢家に引き取られて夜見山市に引っ越し、夜見山北中学三年三組の一員となっていました。
 〈災厄〉を防ぐために、三年三組の生徒と教師たちは、学期が始まる前から対策を講じようと考えます。最も効果があるとされていた対策に加えて、今年はさらに追加の対策をしようというのです。
 最初は対策が上手くいったかに見えますが、ある出来事をきっかけに、またしてもクラスは〈災厄〉に見舞われることになります…。

 理不尽な死の〈災厄〉に襲われる中学生とその関係者たちを描いたホラー長篇『Another』の続編です。前作から3年後、再び〈災厄〉に襲われたクラスの生徒たちを描いています。主人公はシリーズ外伝的な作品『AnotherエピソードS』に登場した少年比良塚想、『Another』のヒロインだった見崎鳴も高校生となって登場し、ところどころで想の相談役として活躍します。『Another』の主人公だった榊原恒一は海外にいるという設定で、電話のみですが、重要な場面で示唆を与えてくれる存在として登場しています。
 前作では〈災厄〉の謎や法則などが主人公に明かされていなかったため、手探りでそれらを探っていく展開だったのですが、今作では、主だったルールを主人公含めクラスの面々は承知していて、さらにそれの対策もしています。例年にない追加の対策も加え、安全にやり過ごせると思った矢先に〈災厄〉が発生してしまいます。
 追加で行った対策がまずかったのか、通常の対策が徹底されていなかったのか、それともランダムな現象なのか、相手がほとんど「自然現象」に近い存在のため、対応策が合っているのかどうかも分からないところに恐怖感がありますね。
 さらに〈災厄〉のある特性により、関係者たちに記憶の改竄が起こり、それが改竄されていることすら気づけない…という恐ろしい現象も同時に起こるのです。
 前作で、〈災厄〉を止める方法が見つかり、実際にその方法で〈災厄〉を止められるのですが、今作では、関係者にもその記憶が薄れてしまっており、それを実行することができないのです。
 しかも、ようやく再発見した方法で、〈災厄〉を止めることに成功するものの、今までになかった現象が発生してしまう、というあたり、手が込んでいますね。
 主人公想が引き受けるある役目が『AnotherエピソードS』での体験と通じるものがあったり、前作のヒロイン見崎鳴の家族に関する秘密が、今作での肝になっていたりと、シリーズを通しての伏線的な仕掛けも非常によく出来ていますね。前作で明かされた〈災厄〉の謎を前提にしたうえで、さらに新たな謎と展開を登場させており、続編として面白い作品になっているように思います。
 直接の続編なので、さすがに前作を読まずに読むのは難しいですが、作中で前作のあらすじや設定が言及されるので、前作を読んだけれども内容をはっきり覚えていない…という人にも読みやすくなっているかと思います。



わたしのお人形 怪奇短篇集 (集英社オレンジ文庫) 文庫 – 2020/7/17


瀬川貴次『わたしのお人形 怪奇短篇集』(集英社オレンジ文庫)
 瀬川ことび名義のホラー作品でも知られる作家の怪奇短篇集です。怖いホラーから楽しいファンタジーまで、バラエティに富んだ作品集になっています。

 海で父が奇怪な魚を釣り上げたことから少女が不思議な体験をするという幻想譚「海の香り」、家出した少年がふと出会った青年三人組と団地に肝試しに行くことになる「廃団地探検隊」、父親に虐待されていた少年が奇妙な生き物を見つけ育て始めるという「小さな生き物」、自分が夢に出てくるのを止めさせようとストーキングを続ける女の恐怖を描く「心配しないで」、引っ越し先の家に残されていた日本人形にまつわる怪奇現象を描いた「わたしのお人形」とその続編「わたしのお人形 その後」、悪魔に支配されたアメリカの町で、ひとり愛する男を探し続ける女性を描いた本格ホラー「インフェルノ」を収録しています。
 抒情的な幻想作品から、コミカルなファンタジー、本格的なホラーまでタッチが様々で、楽しめる作品集になっていますね。表題作にもなっている「わたしのお人形」が、本格的な怪異譚風に始まるものの、ユーモラスなファンタジーになってしまうのにびっくりします。

 ホラーとして一番魅力的なのは「心配しないで」
 女子大生の絵里は、地味な同級生佐伯直子から突然、夢に出てくるのをやめてほしい、と言われます。否定するものの、彼女は信じてくれません。ある日教室で眠り込んでしまった直子の頭のそばに、白い蝶がまとわりつくのを絵里は目撃しますが…
 相手が夢の中に現れ続けるという「妄想」を抱いた同級生から追い回される主人公の恐怖を描いています。それが「妄想」かと思わせて実は…という展開になっています。生霊が出現して物理的に害をなすなど、恐怖度の高い作品になっています。

 あと印象に残るのは「廃団地探検隊」でしょうか。
 成績のことで叱られた小学五年生の「ぼく」は家出をするつもりで夜に外に出ます。三人の青年を乗せた軽自動車に行き会った「ぼく」は、彼らに誘われて、廃団地に肝試しにいくことになりますが、団地で怪奇現象に遭遇した四人はあわてて逃げ出します。
一年後も同じメンバーで廃団地の探検をすることを約束した別れた「ぼく」でしたが、翌朝、母から驚くべき事実を知ります。数年前に大学生三人が乗った軽自動車が川に落ち全員が命を落としたというのです。彼らは幽霊だったのか…?
 家出した少年が気のいい青年たちと出会い肝試しをする、という展開もいいのですが、彼ら自体が霊である存在が示唆された後の展開もすごく良いのです。生者と死者の断絶、そして時の流れ、それでも変わらない友情が描かれる結末には、寂寥感と共に抒情性も感じられます。

 巻末の「インフェルノ」は、官能的な要素も濃いアダルトなホラーとなっています。悪魔を使役するらしき翳のある男に魅了されたヒロインが、彼が悪の側であるのを知りながら男を求め町を彷徨う…という作品です。伝奇ホラーとして面白い作品になっています。



祭火小夜の再会 (角川ホラー文庫) 文庫 – 2020/7/16


秋竹サラダ『祭火小夜の再会』(角川ホラー文庫)
 中学三年の浦沢圭香は、融通が効かないぐらい真面目な優等生でした。植物園で人を魅了するという奇怪な植物に遭遇した圭香は、そこで馴染みのなかった同級生、祭火小夜と出会い、親交を深めることになります。以来、小夜と共に様々な怪異に遭遇することになる圭香でしたが、小夜が怪異に詳しい理由、そして彼女が進んで怪異に近づいていこうとする理由について疑問を抱くようになります…。

 怪異に詳しい少女、祭火小夜の中学生時代を描いた、『祭火小夜の後悔』の続編、というか過去編といった趣の連作です。最初に高校生になった小夜と圭香の再会を描くエピソードが置かれ、続いて、二人に関わる過去のエピソードが語られていきます。
 前作に比べ、登場する怪異も小粒な印象があり、その意味で派手さには欠けるのですが、中では、願いの代わりに生け贄を要求する奇怪な男が登場するエピソード「身代わり」は、恐怖度が高くて面白いですね。
 最終エピソード「レプリカ」では、人間の分身的存在「ウツロミ」の存在が描かれ、その現象は、小夜と圭香の友情にも影響を及ぼすことにもなります。
 最初のエピソード「証」で、友人と再会したはずの圭香が、小夜のそれに比べて淡泊であり、読んでいてかすかな疑問を抱くのですが、その理由が最終エピソードを読むことによって判明します。タイトルの「再会」の意味が分かるクライマックスには味わいがありますね。
 全体を通して圭香の視点で物語が進むので、祭火小夜のキャラクターが薄めになっている感(これは前作でもそうでしたが)はありますね。前作ではその分登場する怪異現象にインパクトがあり魅力を放っていたのですが、本作ではそれほどの印象深い怪異は登場しないので、その意味でもちょっと薄味ではあります。ただ、少女二人の友情を描いた部分は悪くありません。作品全体の「仕掛け」も含めて、異色の青春小説としても読める作品かと思います。


テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

理不尽な地獄  斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』

楽園とは探偵の不在なり 単行本 – 2020/8/20


 斜線堂有紀の長篇『楽園とは探偵の不在なり』(早川書房)は、二人以上を殺すと「天使」によって「地獄」に落とされてしまう世界を舞台に、孤島で起こった連続殺人に巻き込まれた探偵を描く、特殊設定ミステリ作品です。

 ある時を境に世界中に突然出現し始めた「天使」。異形の彼らは、人間を二人以上殺した時に、その加害者を「地獄」に引きずり込んでしまうという習性を持っていました。「地獄」堕ちを恐れて殺人事件が減る一方、道連れを伴うテロのような事件も多発するようになっていました。
 探偵業を営む青岸焦(あおぎしこがれ)は、大富豪である常木王凱(つねきおうがい)から、「天国が存在するか知りたくないか」と誘われて、「天使」が集まるという孤島、常世島(とこよじま)を訪れることになります。
 やがてこの世界では起こりえないはずの連続殺人が発生し、青岸は事件に巻き込まれることになりますが…。

 二人以上を殺すと、「天使」によって「地獄」に堕とされてしまうという、特殊な世界観のもとで展開されるミステリ作品です。この「二人以上」というルール、「天使」にはかなり杓子定規に解釈されているようで、殺人の意図がなくてもたまたま死につながってしまったとか、自分の行為が原因で間接的に事故死につながってしまう場合などでも、カウントされてしまうのです。
 地獄堕ちを恐れて殺人行為が減る一方、開き直った犯罪者により多数の人間を巻き込んで死ぬテロ行為のようなものも発生するようになっています。
 孤島で連続殺人が発生しますが、二人以上が殺せないはずの世界でどうやって犯人は犯行を繰り返しているのか? 犯人は複数なのか? そもそも動機は何なのか? という謎を、探偵である青岸が捜査していくことになります。

 この探偵青岸も「天使」関連の事件で、過去に仲間を亡くしているという過去を持っています。殺人捜査の進展と共に、青岸の過去に関する情報も少しづつ明かされていく、という構成になっています。

 登場する「天使」の設定もユニークです。人間の容姿とはほど遠い異形の存在で、醜い怪物のようなものとして描かれています。人間を地獄に引き込む異能を持つ一方で、まともな知能があるとも思えず、容易く捕獲して殺すことさえ可能なのです。
 ただ殺したところで、際限なく出現するので、殺す意味もほとんどありません。やがて、彼らを捕らえて食べてしまおうという、悪趣味な人々まで現れる始末。
 個人の意思はなく、ほとんど機械仕掛けに近い、害獣のような存在として描かれているのが特徴になっています。

 「天使」のルールの裏をかき殺人を繰り返す犯人、その理不尽なルールに違和感を抱きながらも、捜査を続ける探偵の姿が描かれていきます。主人公の探偵青岸も過去に「天使」に関わる事件によって、仲間を失ったことが示され、その理不尽さと悔恨に苦しんでいるという、翳のあるキャラクターです。また犯人が犯行を起こさざるを得なかった理由にも、やはり「天使」が絡んでいます。

 「世界の理不尽さ」というと、比喩的なものと捉えられがちですが、本書では文字通りの「理不尽さ」が展開されています。探偵と犯人、両者がどうその「理不尽さ」と向き合うことになるのか? というテーマも見え隠れしますね。特殊設定と謎解き部分が有機的に結びついていて、非常に完成度の高い作品です。
 本格的な謎解きミステリではありますが、ホラー・幻想小説として読んでも魅力的な作品になっているように思います。


テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

食えない世界  ジョー・ウォルトン『アゴールニンズ』

アゴールニンズ 単行本 – 2005/6/9


 ジョー・ウォルトンの長篇『アゴールニンズ』(和爾桃子訳 早川書房)は、ドラゴンが暮らす社会を舞台に、ある家のきょうだいたちの恋愛や結婚模様を描いた、擬似ヴィクトリア朝小説風のファンタジー作品です。

 一代で成り上がった、ボン・アゴールニン啖爵(だんしゃく)が亡くなり、その遺体は息子や娘たちの間で分けられることになります。まだ地位の安定しない次男エイヴァン、次女セレンドラ、三女ヘイナーに、優先的に遺体を分けてほしいとボンは遺言しますが、長女ベレンドの夫デヴラク士爵は、義父の遺言を無視し、自分ばかりが分け前を取ってしまいます。都市計画局に務める独立心の強いエイヴァンは、デヴラクに激怒し、彼を訴えることにします。
 父の死後、牧師である長男ペンとその妻フェリンのもとに身を寄せることになったセレンドラは、フェリンの養い親であるベナンディ珀爵夫人の息子シャーと互いに惹かれることになりますが、セレンドラを身分違いだとする珀爵夫人夫人の反対もあり、その結婚話はなかなか進みません。
 一方デヴラクとベレンドの家に世話になることになったヘイナーは、結婚相手の候補ロンデバーを憎からず思うものの、資産の問題から結婚に踏み切ることができません。義兄のデヴラクに悪感情を持ちながらも、持参金の問題から彼の言いなりになっていました…。

 貴族や上流階級の恋愛や結婚、遺産相続などをテーマにしたヴィクトリア朝小説風の作品なのですが、それがドラゴンの社会において展開されるという、異色のファンタジー小説です。
 女性の地位が制限されていたり、階級によって格差があるなど、その内実は露骨にヴィクトリア朝風なのですが、そこにドラゴンならではの肉体的特性や慣習が混是こまれています。
 この社会のドラゴンは、高い知能を持ち、社会生活を営んでいます。階級や資産も強い影響力を持つものの、社会的な地位に直結するのは、肉体的な大きさと強さなのです。体が大きいドラゴンは圧倒的に優位であり、小さいドラゴンは食べられてしまっても文句が言えないという、まさに弱肉強食のような世界。
 体の大きさは、同じドラゴンを食べることによってのみ大きくすることができるため、父母が亡くなった場合、その遺体を食べるのは家族の権利なのです。本来、父ボンの遺体を優先的にもらえるはずのアゴールニン家の子どもたちを差し置いて、娘婿であるデヴラクが遺体を独り占めしてしまったため、きょうだいたちとの確執を起こしてしまうことになります。

 「遺産訴訟」の他にメインとなるのは、アゴールニン家の子どもたちの恋愛・結婚模様です。次女セレンドラとシャー、三女ヘイナーとロンデバー、次男エイヴァンとセベス、それぞれの恋のかけひきが描かれていきます。
 中心となるのはセレンドラとシャーの恋愛で、世間知らずながら強い意思を持つセレンドラに惹かれたシャーと、シャーに好意を持ちながらもある事情から結婚に踏み切れないセレンドラの恋が描かれます。更にシャーの母親ベナンディ珀爵夫人が、家柄にこだわる旧弊な人物で、二人の結婚に反対であるという事情も相まってなかなか事態は進展しません。
 男性ドラゴンがいささか影が薄いのに対して、女性ドラゴンのキャラクターは皆立っていますね。地位ではなく相手の本質を見るセレンドラ、差別を撤廃しようする自由主義的な気質のヘイナー、過酷な過去を持ちながらも強く生きるセベス、夫を立てる一方でしたたかさを持つフェリンなど。
 特に、打たれ弱いセレンドラの強い味方となる兄嫁フェリンは良いキャラクターです。

 ドラゴンという強いイメージを持つキャラクターを用いながらも、激しい戦いなどが描かれるわけではなく、実際に展開されるのは恋愛・結婚・遺産相続など、ドメスティックな話題ばかりという、そのギャップが非常に面白い作品になっています。
 その一方、「共食い」がおかしなこととはされていなかったり、登場人物がいきなり食べられてしまったりするあたり、ブラックなユーモアも漂っていますね。

 あまり語られないのですが、作中世界において、ドラゴンとは別に「人間」が存在すること、過去にドラゴンと人間が争った歴史があったことなども仄めかされています。他にもドラゴン社会ならではの暦や階級名、社会的な慣習など独自の世界観が設定されており、その細部も味わい深いものになっています。
 ドラゴンの貴族の階級が、甲爵、蛟爵、珀爵、士爵、啖爵などといった、独特の言い回しになっているのも面白いです。本のカバーに、登場人物たちの紹介表が載っていますが、ここが「登場竜物」になっているのも楽しいですね。

 後に文庫版として『ドラゴンがいっぱい! アゴールニン家の遺産相続奮闘記』と改題された本も出ていますが、単行本版に比べると、文庫版の表紙はちょっと微妙ですね…。


テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

殺さなかった人たち  井上悠宇『誰も死なないミステリーを君に』『誰も死なないミステリーを君に2』
 井上悠宇の長篇ミステリ二作『誰も死なないミステリーを君に』『誰も死なないミステリーを君に2』は、寿命以外の「死」を他人の顔に見ることができる少女とパートナーの少年が、死相の見えた人間を救うべく、殺人を防ごうとする物語です。


誰も死なないミステリーを君に (ハヤカワ文庫JA) 新書 – 2018/2/24


『誰も死なないミステリーを君に』(ハヤカワ文庫JA)

 遠見志緒には特殊な能力がありました。近い未来に死を迎える人間を見分けることができたのです。死が近づいた人間の顔には、黒い「死線」が見えるといいます。「死」を避けることはできないと考えていた志緒は、その能力を使えば人を助けることができると話す青年佐藤と出会い、考えを変えることになります。
 佐藤の出身校でもある秀桜高校文芸部の卒業生四人に「死線」を見た志緒は、無人島に四人を閉じ込め、彼らの「死線」を消そうと考えます。彼らの死の可能性につながるのは、かって高校で墜死を遂げたある生徒の存在でした…。

 他人の「死」を予知することのできる少女志緒が、パートナーである佐藤と共に人の死を防ごうとする、という物語です。メインとなる事件の前に、主人公二人の紹介編といった短いエピソードが挟まれ、彼らの能力や活動が描かれます。
 志緒の能力は相手の顔に死を示す「死線」を見て取ることができる、というもの。その線の度合いによって時間的な余裕も測ることもできます。ただ能力はそこまでであって、他に超自然的な能力があるわけではありません。人の死を防ぐためには、個々の人間の事情や背景を探り出し、事件を解決しなくてはならないのです。その意味で発端こそ超能力が使われるものの、その後の展開はオーソドックスなミステリのそれになっています。
面白いのは、彼らの事件の解決法です。殺人にせよ、自殺にせよ、死につながる何かを変えたり消したりすれば、その時点で「死線」が消えるのです。
 そのため、主人公二人は駆けずり回って事件を解決しながらも、場合によっては、客観的には何も起こっていないように見える、という趣向はユニークですね。
 メインとなる事件は、高校の文芸部員四人に「死線」を見つけた志緒が、彼らの死を防ぐために、無人島に四人を閉じ込める…という話です。死の直接的な原因が分からないため、彼らを監視するのと同時に、四人を直接的に殺そうと考える犯人がいた場合、その人間から隔離するという目的もあります。
 そもそも、彼らを殺そうとする「犯人」がいない可能性すらあるのです。そんな五里霧中の状況の中、「死線」を消すために主人公二人が取るべき行動とは?
 人死を扱うミステリでありながら、主人公たちの目的は「死線」の見える全ての人間の命を救うこと。それは「犯人」さえも含んでいるのです。結果として「死線」を消すため、関係者の心理や真意を探っていくことになり、そこに心理的なサスペンスが生まれていきます。
 プライドや自己保身など、人間の醜い面が現れながらも、絶対的な「悪」が登場しないのも特徴でしょうか。それは「犯人」でさえ例外ではありません。
 少々のほろ苦さはありながらも、主人公たちの「善意」の行動と、それによって結果的に事態は良い方向に向かうことになる、という後味の良い作品となっています。



誰も死なないミステリーを君に 2 (ハヤカワ文庫JA) 新書 – 2019/8/20


『誰も死なないミステリーを君に2』(ハヤカワ文庫JA)

 他人の顔に人が死ぬ予兆である「死線」を見る能力を持つ遠見志緒は、幼馴染みである獅加観(しかがみ)飛鳥にそれが現れたことに気付きます。飛鳥の義理の父親、獅加観義龍が危篤であり、多額の遺産を相続する見込みがあることを知った志緒は、遺産相続に絡んで飛鳥の死がもたらされるのではないかと考え、彼女の命を救うために、佐藤と共に飛鳥の実家を訪れることになります。
 相続についての説明の席に現れたのは、父親の獅加観義龍が正妻以外に生ませた飛鳥の異母兄弟たちでした。本来なら当主となるはずの長男綜馬は十三年前に失踪して行方不明になっていたのです。兄弟たちは皆変わった人物ばかりでした。不可解な言動を繰り返す芸術家狩野和鷹、私立探偵をしているという軽薄な斯波司狼、常時狐の面をかぶり続ける医者の宇賀神良比狐。
 さらに飛鳥には、子どものころに神隠しにあい、その際に自分を逃がしてくれた姉が行方不明になってしまったという体験がありました。最後に見た情景のなかで、姉は体を刺されていたようだったのです。姉が殺されたと考えている飛鳥は、兄弟たちの中に犯人がいると考えていました…。

 『誰も死なないミステリーを君に』の続篇です。旧家の莫大な遺産をめぐる相続人たちの争いに、過去の「神隠し」事件を絡ませた、情念のドロドロした本格ミステリ作品です。道具立てからして横溝正史風のお話だなと思って読んでいると、作中で『悪魔が来りて笛を吹く』のパロディー的な趣向があったりと、かなり意識的に横溝正史のオマージュ作品として書かれているようです。
 獅加観家の正当な相続人である長男綜馬が失踪しているため、兄弟間でその相続について揉めることになり、それが原因で飛鳥が殺されることになるのではないかと、佐藤と志緒は考えることになるのですが、どうもそれだけではないようで、小細工をした結果、殺される可能性のある「死線」が他の複数の人物にも表れてきてしまうのです。
 主人公たちが推理を披露したり、他の人物の言動を誘導したりするたびに、「死線」が出たり消えたりすることになります。
 ですが、彼らの目的は誰一人死人を出さないというものなので、全ての「死線」を消すための方法について頭を絞ることになります。遺産相続だけでなく、過去の神隠し事件もこれには関連しているようで、それらを含めて事件を解決するには、飛鳥の失踪した姉がどうなったのかについて真相を明かさなければならないようなのです。
 探偵役の佐藤は、目的(誰も死なせない)達成のためには、必ずしも真実は必要ではないと考えており、そのために人々を納得させる答えを出す(出させる)のですが、それをきっかけに、別の人物に新たな殺意を発生させてしまう、という展開も非常に面白いですね。
 猟奇的、かつサイコパス的な犯罪が描かれる作品でありながら、このシリーズのコンセプトである「誰も死なせない」という「善意」と「優しさ」が徹底されており、完全なハッピーエンドではないものの、後味のよい結末を迎えるのも好感触です。
 ちなみにこのシリーズ、主人公の「佐藤」と「志緒」で「サトシオ」シリーズなのですね…。


テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

非凡な人生  エリック・マコーマック『雲』

雲 (海外文学セレクション) 単行本 – 2019/12/20


 エリック・マコーマックの長篇『雲』(柴田元幸訳 東京創元社)は、19世紀スコットランドで記された奇怪な雲についての古書と、その本によって過去に向き合うことになった男の人生を語った幻想的な作品です。

 鉱業関係の会合に出るため、カナダからメキシコのラベルダに来ていたハリー・スティーンは、現地の古本屋で『黒曜石雲』というタイトルの古書を見つけます。本には、突如現れた黒い雲によって奇怪な事件がいくつも引き起こされた、という事実が記されていました。
 表紙にある「ダンケアン」という文字に惹かれてその本を購入したハリーでしたが、彼は若い頃にその町に短期間滞在したことがありました。そこで彼は失恋をし、それが原因で世界中を旅をすることになったのです。
 19世紀スコットランドの牧師マクベーンが著したらしい『黒曜石雲』について、ハリーは、グラスゴーのスコットランド文化センターに問合せをすることにします。本に興味を抱いた学芸員スーリスの調査により、古書の来歴が少しづつ判明していきますが、同時にハリーは、子ども時代からの過去を回想していくことになります…。

 メキシコの古書店で見つけた19世紀スコットランドの古書『黒曜石雲』。その本には突然現れた雲に関わる奇怪な事実が記されていました。ハリーはその本について学芸員に問合せを行います。それ以降は、本の内容に関わる事実が追求されていくのかと思いきや、そうはならないのが面白いところ。
 物語の区切りで、たびたび古書についての調査内容が挟まれることにはなるのですが、作品の大部分は、古書をきっかけとして、ハリーが過去の人生を回想していく、という流れになっています。

 大筋だけを見ると、ハリーの人生は波乱に富んではいるものの、至極まともな物語です。両親を失い、失恋をして、そのショックから世界中を放浪することになります。しかし、ハリーが様々な場所で出会った人々から聞くエピソードが、それぞれ非常に風変わりで面白い話ばかりなのです。
 常識では考えられない、グロテスクで破天荒な話の数々。序盤で言及される『黒曜石雲』に記された話も相当不思議なのですが、それに劣らぬファンタスティックな物語が語られていき、ハリーの冒険行と共に、読者の興味を惹かずにはおきません。

 数えきれないほどの風変わりなエピソードの中でも、特に印象に残るのは、後半で登場する、「透明」になれる力を持つ女性グリフィンに関わるエピソードでしょうか。もともと他人からその注意をそらすことで存在を隠してしまうという特殊な能力を持つ女性が、さらに研究機関による脳手術によって良心を取り払われ、非常に危険な人物になってしまったというのです。彼女と出会って以来、ハリーの強迫観念の一つにもなってしまうという意味で、重要なエピソードでもありますね。
 また、頭を狂わせた芸術家と学者ばかりを収容したイールドン・ハウスのエピソードも興味深いです。そこの最も印象的な収容者として紹介される元言語学教授アーティモアは、言語の研究のため、幼い子どもを言語なしで育てようとしたというのです。

 端々で言及されるエピソードも風変わりですが、ハリーの人生に関わってくる人物たちも、一見正常なものの、どこか奇矯な要素を持っている人物が多いです。彼らに比べれば、主人公ハリーは相当に常識的な人物ですね。
 ハリーは、恋に対してロマンティックな思いを抱いており、人々の不幸な人生にも心を痛めるなど、理想主義的な人物として描かれています。破れた恋は、その後もずっと尾を引いており、その後の人間関係にも影響を与えることになります。『黒曜石雲』をきっかけとして、故国に舞い戻ったハリーは、自らの人生に決着をつけることにもなるのです。
 本筋には直接関係しない、装飾となるエピソードはともかく、主人公ハリーの人生の変転を描く部分は、常識的な展開がされており、クライマックスにおいても、ごく普通の「家族小説」の趣が強いです。ただ、結末に現れる奇怪な展開はかなり不穏で、マコーマック作品、やはり一筋縄ではいかないな、という感を強くします。
 ひとりの男の様々な経験や成長、そしてその人生を描いた「教養小説」的な感触を受ける作品なのですが、その語りの中で、自然と湧き出てきてしまうグロテスクな挿話やエピソードは、マコーマックならではの味わいなのでしょう。
 わりと厚い本ではあるのですが、非常に読みやすく、マコーマック入門書としても良い作品なのではないかと思います。


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蔵書引越顛末記
 2021年5月の連休明けに引越しをしました。その際、蔵書の移動に関して苦労したので、同じような環境の人にも参考になるかと思い、記録に残しておくことにしました。蔵書と本の整理に関する部分に絞って書いていきたいと思います。以下、時系列に沿って記していきます。


●引越し決定(2020年春頃)
 個人的な事情から、2021年春頃に引越しせざるを得なくなることが決定しました。移転場所は同じ区内で、距離的にはそれほど離れていません。転居先では部屋数が減るので、蔵書を多少減らす必要が出てきました。この時点で、手放す本を選定し始めました。
 蔵書数は数えたことがないので正確な数は分からないのですが、二千冊ぐらいは減らさないときついのではないかと考えます。


●処分本の選定(一回目)(2020年4月~2020年7月)
 処分する本を選定しました。まず選んだのは雑誌類、コミックの一部。あと実用書(新書類含む)、科学系ノンフィクションも発行が古いものは読み返さないものが多いので、処分対象に。あとダブり本も。


●古書店の出張買取(一回目)(2020年7月)
 処分本が千冊近くになったので、古書店に依頼して出張買取に来てもらいます。処分本の内容に関しては、著者名、書名、出版社名、発行年数、版数のほか、明記すべき情報(状態が悪いもの、サイン本、箱・帯の有無など)を記したリストを予め送り、大体の見積を出してもらっていました。
 以下の画像は、僕が作った買取依頼用のリストの一部です。
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※古書買取について
 処分する冊数が100冊ぐらいから出張買取してもらえるお店が多いようです。その際、処分したい本のジャンルが固まっているなら、ネットで近隣の専門書店を探して、そちらに連絡するのが良いかと思います。
 ジャンルが雑多でバラバラであれば、一般の町の古書店の方がいいこともあります(専門書店だと、ジャンルがあまり違うと引き受けてくれなくなることがあります)。
 どちらにしても、メール等でリストを送って(全部入力が難しいときは、大体のジャンルや冊数などを書いておくのもいいかと思います)、予め引き受けてくれるかどうかを確認しておく方が無難です。
 処分本の内容が雑誌・実用書・コミック・ベストセラー書に限られるなら、ブックオフなどの新古書店でも大丈夫でしょう。


●処分本の選定(二回目)(2020年8月~2021年3月)
 本を少し減らしたものの、見た感じほとんど変わらず。もう少し減らさないということで、再度処分本を選定します。
 蔵書のメインは文芸・エンターテインメント作品なので、なるべくこちらは減らさずにいきたいなと思っていましたが、ある程度は減らさないとならないようです。読んだけれどあまり面白くなかったもの、作家名でまとめ買いしたもののもう読みそうにないもの、などを中心に選定です。


●古書店の出張買取(二回目)(2021年4月上旬)
 再度、古書店に依頼して出張買取に来てもらいます。二回目もだいたい処分冊数は千冊前後。合わせて二千冊程度減らしたことになります。
 基本、引越し寸前だと他の用事もあるでしょうし、処分本を選ぶのも落ち着いて出来ないので、引越しの予定が分かっているのなら、半年前か一年前ぐらいから徐々に本の選定を始めるのが良いかと思います。僕の場合、毎週末に少しづつ本を選定し、そのたびにそれらの本の情報をリストに入力していました。


●引越し業者の依頼(2021年4月上旬)
 引越し業者を何社か見比べて依頼。最低一カ月ぐらい前から依頼した方が良いようです。急な場合は割高になることが多いです。
 実際に部屋に来て見積をとってもらったのですが、やはり本の数が問題のようで、かなり割高な値段を言われてしまいました。交渉の結果、少し値段を引いてもらいましたが、それでも結構な値段に。
 最近はネットで見積ができることが多いようですが、荷物や家具の数によって値段はかなり変わるので、引越しの見積は実際に見てもらってからの方が良いです(家具や荷物が手で数えられるほど少ない場合は別ですが)。あと、手配してもらう段ボールの数の見積に関しても、現地を見ると、正確なところを出してもらいやすいです。
 見積額が高かったのは家具類が多いのもあるかと思います。本棚だけでも、大型のものが5つ、中型が2つ、カラーボックスが15個ぐらいあったので。
 最終的に、引越し日は連休明けの5月6日になりました。


●荷造り用段ボールが到着(2021年4月20日ごろ)
 引越し業者から、荷造り用ダンボールが到着。大きいものと小さいもの(といってもそれなりに大きいです)二種の段ボールが送られてきました。重い荷物は小さい段ボールに入れてくださいとの指示が書いてありましたが、確かに大きい方に本を詰め込んだら重くて持てなそうです。
 部屋が狭いので、この時点で梱包を始めてしまうと、箱の置き場がなくなってしまいます。もう少し待ってから始めることにします。


●梱包開始(2021年4月29日~5月5日)
 有給を使って連休にしてあったので、引越しまで約一週間あります。これを利用して荷物を梱包します。週間天気予報を見ると、引越し当日は雨の可能性が強くなっています。梱包の際に雨対策も必要なようです。また、緩衝材も欲しいところです。
 雨対策用に大型のビニール袋(ゴミ袋で大丈夫です。)、緩衝材用にロール状のプチプチを購入しました。ちなみにビニール袋は200枚セット、プチプチは20mロールを4つ購入し、使い切りました。
 実際にやった具体的な梱包は次の通りです。

1.段ボールを組み立てます。底部分に十字の形にガムテープ(紙ではなく布製の上部なテープ)を貼り補強します。

2.プチプチを段ボールの底に敷きます。その際ピッタリサイズではなく、ちょっと大きめに切り、上下左右に少しはみ出すぐらいにします。

3.底に曳いたプチプチの上にビニール袋を置き、その中に本を入れていきます。使う袋の大きさにもよりますが、段ボールの高さギリギリまで本を入れるとすると、袋が一つでは足りないことが多いので、段ボール一つにつき、ビニール袋は二つ使った方が良いかと思います。
 段ボールのふたが閉まるちょうどギリギリまで本を詰めていきます。この際、段ボール内の本の山が複数になると思いますが、最終的にその高さが大体同じになるように調整します。これは、段ボールが積まれたときにその重さの負荷を分散させるためです。
 本を詰めたら、各ビニール袋の上をテープで止めます。雨が入り込まないよう、袋の先を折り込んでから止めます。

4.本と段ボールの間に緩衝材を詰めていきます。引越し業者から緩衝材として発泡スチロールの薄い布などをもらえる場合もありますが、できればプチプチを入れた方が安全です。新聞紙を丸めて使うのも良いかと思います(本をビニールに入れていないときは、新聞紙のインクが本に写ってしまう恐れもあるので注意しましょう)。

5.段ボールのふたを閉めて、上からガムテープで十字に固定します。

6.本の入れ方に関してですが、新居で綺麗に整えることを考えて、同じ作者やシリーズをまとめて入れようとかは考えない方が良いです。蔵書が少ない場合は良いですが、そういったことを考えて詰めていると梱包が終わらなくなる可能性が高いです。
 また段ボールに入れる際には、段ボール内で本があまり動かないようサイズ優先で重ねていくので、その際にシリーズや作者はバラバラになってしまいます。
 あと、本を重ねていくときは基本、同じサイズ・判型のものを重ねていく方が良いかと思います。文庫本と単行本を交互に重ねるなどすると、本が傷む恐れがあります。

7.場所に余裕があれば、本を入れた段ボールを重ねずに置いておきたいところですが、そうそう余裕はないと思うので、重ねざるを得ないかとは思います。その際も二段か三段に抑えられればそうしましょう。

 三~四日で何とかなると思っていたのですが、結局、最後の日の夜ぐらいまでかかってしまいました。蔵書数が数千冊になる人は、早めに梱包を始めることをお薦めします。もしくは引越し業者の方で梱包してくれるサービスもあるようなので、それを利用するのも手かもしれません(ただ、そちらのサービスの場合、そこまで綺麗に梱包してはくれないようですが…)。


●段ボールを追加購入
 詰めているうちに、引越し業者にもらった段ボールだけだと足りなそうなのが分かってきました。念のため通販時に取ってあったネット書店の小さな段ボールに入れていきますが、こちらは小さいサイズなので、すぐにいっぱいになってしまいます。
 近所のホームセンターで段ボールを追加で20個ぐらい追加で購入しました。


●本棚について
 本を梱包した後、空になった本棚に関してですが、棚が可変になっているものに関しては、外して下に積んで置いた方が安全です。棚を止めてある「ダボ」(留め具)に関しては、外して保管しておいた方が良いでしょう。
 我が家の本棚は、地震対策として、転倒防止のチェーンが止めてあったので、そちらも外しました。
 なお、業者さんに聞いたところ、ガラスの入っている棚に関しては、ガラス部分が外れるのであれば、なるべく外しておいてほしい、とのことでした。


●引越し当日(2021年5月6日)
 朝から雨模様でしたが、引越し業者が来るのが午後からで、それまでに晴れたのは幸いでした。
 本が大量にあったことを確認していたせいか、大型トラックが二台、作業員も6人ほど来てくれたので、割合スムーズに進みました。先に段ボールを運び出し、最後に大型家具を運び出しました。


●新居に移動
 先に新居で待っていたところ、荷物が到着です。タンスや本棚など、大型家具を先に運び込みます。本棚は予め考えていた位置に配置、その際に転倒防止用のゴムを下に敷きました。壁に沿って本棚・カラーボックス類を置いた後、段ボールに詰められた本を部屋の中心に積んでいきます。以下の写真は新居に本入り段ボールが積まれた直後の光景。
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●棚に本を収納
 段ボールが部屋を占拠しているので、どかさないと寝ることもできません。とりあえず、片っ端からランダムに棚に本を入れていきます。引越し初日に関しては、布団を敷ける程度だけの箱を処理しました。


●棚に本を収納(続き)
 本棚に本を詰めていきます。前後二列に本を入れるのはもちろん、隙間には横にして入れるなどなるべく数を稼ぎますが、どうやら全部は入りません(元々入ってはいなかったので…)。以下の写真は詰め込んだ直後の本棚です。
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●プラスチックの収納ボックスを追加
 ホームセンターで、本を入れるためのプラスチックの収納ボックスをいくつか買ってきます。もともといくつか使っていましたが、更に追加しました。それでもまだかなり入っていない本がありますね。


●本棚を追加
 通販で、本棚を一つ注文しました。スペース的に余裕がないので、省スペースで、更に回転して前後の本が見れるという回転式本棚を購入しました。数日で到着したので、組み立ててみると良い感じです。
 この棚に本をフルに収納して、ようやく本が棚かケースに収納されきった感じです。引越し当日からここまで、大体二週間ぐらいかかった勘定でしょうか。
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 引越し業者の現地見積で段ボールを手配してもらったのですが、予想以上に箱が必要になってしまいました。本用に段ボールを手配してもらう際には、かなり多めに頼んだ方がいいかと思います(頼めるのであれば)。
 今回、約二千冊ほど本を処分し、その後、手作業で段ボール詰めをした体感で言うと、現在の蔵書数はおそらく八千から九千冊ぐらいでした(結局正確な数は数えられていません)。
 住居間の移動はやってもらえたとはいえ、梱包した段ボールの移動などで筋肉痛や腰の痛みがひどくなってしまい、一週間ぐらいはそれが取れませんでした。
 引越しを終えた感想としては、もうしばらく引越しはしたくない、の一言に尽きます。正直、数千冊レベルの蔵書数の人が引越しをするのは、かなりきついのではないかと思います。
 本好きの方や蔵書数の多い人が引越しをする際のお役に立つかと思い、記事をまとめてみましたが、書いていて、当時(まだ間もないですが)の苦労が思い出されて、疲れてきてしまいました…。


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解けない人生  米澤穂信『追想五断章』

追想五断章 (集英社文庫) 文庫 – 2012/4/20


 米澤穂信の長篇『追想五断章』(集英社文庫)は、女性から、亡き父が残した五篇のリドル・ストーリー探索を依頼された青年を描く物語です。

 経済的な事情から大学を休学せざるを得なくなった青年、菅生芳光は、伯父である広一郎の古書店に居候兼アルバイトとして暮らしていました。店に現れた若い女性、北里可南子は、ある依頼を持ちかけます。亡くなった彼女の父親北里参吾が、叶黒白というペンネームで生前書いていたという五つの小説を探して欲しいというのです。
 その小説は結末のないリドル・ストーリーとして書かれたはずだといいます。可南子の手元には、それら五つの小説の結末だけを記した紙片が残されているというのです。
 高額の報酬を提示された芳光は、大学へ復学する足しになるかもしれないと、伯父に内緒で依頼を引き受けます。同じ店でアルバイトをする女子学生の久瀬笙子にも、報酬を渡すという条件で手伝ってもらうことになります。
 しかし、小説家ではない参吾が小説を発表したのは、同人誌の可能性が高く、捜索は難しいものとなっていました。調べていく過程で、芳光は、過去に可南子の父親が「アントワープの銃声」と呼ばれる、ある事件をめぐってスキャンダルに巻き込まれていたことを知ります…。

 父親が残した五篇のリドル・ストーリーを探す娘と、その探索を手伝うことになった青年を描く作品です。娘の手元にそれぞれのリドル・ストーリーの結末を記した紙片が残されており、それを手がかりに小説を探すという、面白い趣向になっています。
 探索を進めるうちに、可南子の父親参吾が、犯罪めいたある事件をめぐって糾弾されていたことが分かり、小説はその事件に対して彼の心情を綴ったものなのではないかという疑いが発生してくるのです。
 発見したリドル・ストーリーがそれぞれ、事件に対する一つの答えになっており、さらにそれらが揃ったときにまた違う意味を持ってくる、という技巧的な手法が使われています。
 参吾の人生が少しづつ解き明かされていくのと同時に、主人公の青年芳光の人生を描く青春小説にもなっているところが上手いですね。スキャンダルはあったものの、劇的な人生を送ったらしい参吾の人生、そうしたものとは無縁どころか、経済的にも困窮している自らや家族の境遇を省みて、鬱屈した思いを抱く芳光。しかし探索の過程を経て、ある種割り切った思いに至る、という、ほろ苦い青春小説にもなっています。
 ちなみに、作中で問題となる「アントワープの銃声」は1980年代にマスコミを騒がせた「ロス疑惑」がモデルとなっているようです。作中に登場する、リドル・ストーリーの中身も紹介しておきましょう。

「奇跡の娘」
 ルーマニアのブラショフという街で、眠ったままの娘を「奇跡の娘」として喧伝する母親がいました。しかし案内人は、娘は本当は目覚めているのではないかと疑っていました。その晩、娘の家は炎に包まれます。娘が本当は目覚めているならば、家から逃げ出してくるはずだというのですが…。

「転生の地」
 インドのジャーンスィーという街で、殺人の罪で裁かれている男がいました。その地方では、転生が信じられており、死体を傷つけたものは本人のみならず家族までが道連れに処刑されるというのです。彼が被害者の心臓を突いて殺したのか、それとも憎悪のあまり死んだ後の体を傷つけたのか?

「小碑伝来」
 中国の南宋の時代、勇猛で知られた将軍は、反乱軍の前になすすべもなく敗れます。捕らえられた将軍は、自ら首を刎ねるか、妻が捕らえられている家に火を放つか、二つに一つの選択を迫られます…。

「暗い隧道」
 ボリビアの街ポトシ。元スパイと目されている男が、金を持ってきてほしいと妻子に連絡します。通ってくるようにと言った隧道は、かって革命軍が爆弾を仕掛けた危険な場所だと言われていました。男は過去の立場から隧道に仕掛けがあったことを知り得る立場にありました。
 問題がないことを知っていてその隧道を通らせたのか、それとも妻子を殺す気だったのか…?

「雪の花」
 スウェーデンのとある街。放蕩に明け暮れる資産家の夫と、それを批難しようとしない貞淑な妻。男の誕生日に、妻は美しい雪の花を得ようと、氷河の亀裂に落ちて命を落とすことになります。妻は一体何を考えていたのか…?

 どの話も、登場人物について詳しい性格描写がなされないため、結末の選択肢に関してどちらもあり得るように書かれています。その意味で<リドル・ストーリー>として上手い作品ですね。最後の話「雪の花」に関しては、作中でも特殊な扱いとなっており、これだけは他の話とは違った雰囲気のお話になっています。
 小説に隠された謎解きはなされるものの、最終的に当事者たちが何を考えて、どうしたのか? という部分は結局謎に包まれています。そうした意味で、この作品自体が<リドル・ストーリー>的な結末を迎えている感もありますね。

 さらに言うと、主人公の芳光を始め、可南子、笙子、芳光の母親や伯父など、登場する人物たちがこの後どうなるのか、といったところも曖昧なまま終わってしまうのも著者の意図的なところなのでしょう。文芸的なミステリ作品として、秀作と言って良い作品です。

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奇想世界  榊林銘『あと十五秒で死ぬ』

あと十五秒で死ぬ (ミステリ・フロンティア) 単行本 – 2021/1/28


 榊林銘『あと十五秒で死ぬ』(ミステリ・フロンティア)は、奇想天外な特殊設定ミステリを四作収録した短篇集です。

「十五秒」
 薬剤師の「私」が気が付くと、目の前に銃弾が浮いていました。見ると、自分の胸に穴が開いており血しぶきが飛んでいたのです。しかし周りの時間が自分を含め停止しているようで動くことができません。そこに現れたのは、人間サイズの巨大な猫でした。死神のようなものだと名乗る猫によれば「私」は銃弾で貫かれ死ぬ直前であるというのです。「私」には犯人と動機に心当たりがありました。絶命までに十五秒が残っていると聞いた「私」は、犯人を確認するため猫に頼み、その時間の間だけ時間を何度も止められる能力を与えられることになりますが…。
 死ぬ直前の女性薬剤師の「私」が、死神に与えられた十五秒を使って、犯人を確認しダイイングメッセージを残そうとする作品です。犯人には心当たりがあり、実際にその人物であることがすぐに確認できるので、実際の「私」の行動は、犯人に見つからないようにメッセージを残すことがメインとなります。
 犯人に見つかったらメッセージが消されてしまうので、いかに上手く犯人の目をくらますか、という工夫がされていくのが面白いですね。
 時間停止によって考える時間が与えられるとはいえ、実際の体は出血により死ぬ寸前、まともに体を動かせばその影響で短い寿命がさらに縮んでしまいます。
 生涯に残された十五秒で何ができるのか? というあたり、何ともスリリングでトリッキーな展開が描かれます。主人公が薬剤師ならではの策を練るところも面白いですね。

「このあと衝撃の結末が」
 『クイズ時空探偵』という、クイズ付きのタイムトラベルドラマを見ながら寝てしまっていた中学生の「俺」は、ドラマのヒロインが結末で死んでしまうのを見て驚きます。ドラマを最初から見ていたという姉は、ちゃんと伏線はあったといいます。
姉の口車に乗せられ、「俺」は、ドラマをダイジェストで最初から見返すことになりますが…。
 ミステリドラマの真相を推理する…というお話なのですが、そのドラマがタイムトラベルを扱った作品であること、クイズ付きであること、視聴者参加型番組であることなど、複雑な要素が加えられて、トリッキーな作品になっています。
作中話であるドラマのストーリー自体はわりとオーソドックスなお話なのですが、それをめぐる推理部分はとても魅力的。脚本家による「あなたも過去を変えられる」というドラマのコンセプトが示されるのですが、これが文字通りのトリックとしてドラマに埋め込まれる趣向はすごいですね。

「不眠症」
 体の弱い母親と二人で暮らす娘の茉莉は、時折見る妙な夢に悩まされていました。その夢では母親の運転する車の助手席に座った自分が、母親から話しかけられ、その直後に意識が飛んでしまうのです。しかも母親の言葉は夢を見るたびに変わっていくようなのですが…。
 その内容がいつも異なる、夢の中での母親の言葉は何を意味しているのか? を探ってゆく夢テーマ作品です。
 現実での親子二人きりの生活に幸福感を覚えていた茉莉は、夢の意味するものについて悩みます。夢の中での茉莉と母親との関係は、現実での関係とはどこか違っているようなのです。
 ミステリ味もありますが、これはどちらかと言うと幻想小説でしょうか。切なさも感じられる秀作です。

「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」
 日本海の北に浮かぶ赤兎島の住民には特殊な体質がありました。首が取れやすいのです。力を強くかけると首が取れてしまうのですが、十五秒以内に体につなげれば死なないのです。その事実は島外の住民には秘密にされていました。
 祭りの夜、林道を歩いていた高校生の克人は、何者かに突然襲われ、離れた場所に首を飛ばされてしまいます。死を覚悟した瞬間、たまたま来合わせた友人の姫路公は自らの首を外し、克人の首をすげ変えます。十五秒以内に首を付け替えることを繰り返し、助けを呼びに行こうと二人は考えます。
 一方、神社で発見された克人の体は灯油をかけられ燃やされていました…。
首を外すことのできる特殊な体質の島人の間での殺人事件(体だけですが)が起こるという、ユニークな設定のミステリ作品です。主人公の体を燃やし、殺そうとした犯人は誰なのか? というのがメインの謎なのですが、それ以前に、主人公たちの陥った環境が強烈で印象に残る作品です。
 他人の体であったとしても、ほぼ同い年で同じ性別であれば首をつけることができるのです。そのため主人公の克人は、友人と首を十五秒以内に付け替え続けるという、とんでもない設定です。のちには別の友人が現れ三人内で交代で作業をすることになるのですが、そのままでは、いずれ死を迎える可能性が高いのです。その間に謎を解くことができるのか? という、タイムリミット・サスペンスにもなっています。
 十五秒以上首を外しておければ人を殺せる一方、首を外したからといって即死を意味するわけではない、という性質を上手く利用したお話になっており、その奇想天外な発想には驚かされます。また、クライマックスでの解決方法の力業には唖然としてしまいます。 特殊な世界観とその謎解きが無理なく結びついていて、まさに「異形のミステリ」といえる作品です。

 「十五秒」にも感心したのですが、一番インパクトが強いのは、やはり「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」でしょうか。いわゆる「バカミス」の領域に入る作品だと思いますが、そのブラック・ユーモアと、意外に本格的な推理も含めて楽しい作品でした。

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閉ざされた町  ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『七人の魔法使い』

七人の魔法使い 単行本 – 2003/12/17


 ダイアナ・ウィン・ジョーンズの長篇『七人の魔法使い』(野口絵美訳 徳間書店)は、町を支配する七人の魔法使いの争いに巻き込まれた少年とその家族を描く、ファンタジー作品です。

 少年ハワードとその妹「スサマジー」ことアンシアの父親クェンティン・サイクスは小説家でした。ある日彼らの家に突然現れた大男「ゴロツキ」は、アーチャーという人物の使いで、サイクスが定期的に書いている二千語の原稿を取り立てに来たといいます。
 アーチャーはこの町を支配する七人の魔法使いの一人であるといいますが、サイクスの原稿のせいで彼を含む七人の魔法使いは皆、町から一歩も出られなくなっているというのです。やがてアーチャー以外の魔法使いたちも、ハワードたち家族の前に姿を現すことになりますが…。

 町を支配する七人の魔法使いの争いに巻き込まれた少年とその家族を描く、スラップスティックなファンタジー作品です。主人公ハワードの作家の父親の原稿には何らかの魔力があるらしく、その力によって魔法使いたちは町に閉じ込められているらしいのです。
アーチャーを始めとする魔法使いたちは町から出るために、ハワードたちの前に次々と姿を現すことになります。
 この魔法使いたちが、揃いも揃って変人で強烈なキャラクターとして描かれています。面白いのは、魔法使いたちには、町に関してそれぞれ管轄する部署があるというところ。法と秩序、音楽、犯罪、はたまた水道・ガス・電気などのインフラも、それぞれ分けられて担当しています。魔法使いたちが主人公たちを圧迫する手段も、魔法そのものによるというよりは、どちらかというとそうした「行政」を使ってくる、という面白い趣向です。電気を止められたり、税金を請求されたりと、いちいち手段が現実的で姑息なところに笑ってしまいます。
 次に現れる魔法使いがどんな人物で、どんな能力を持っているのか、というところにワクワク感がありますね。男なのか女なのか、どこにいるのか、何をしてくるのか? 彼らに会っているうちに、魔法使いたちを閉じ込めている本当の原因は、彼らのうちの一人にあることが分かってきます。すべてを仕組んだのは誰なのか? というのが分かる結末にはSF味も濃厚で驚かされます。

 頑固ながら落ち着いた気質の父親、芸術的センスに優れた音楽家の母親、激情的な妹スサマジーなど、主人公ハワードの家族たちのキャラクターも魅力的に描かれます。とくに後半、スサマジーとの兄妹関係に関しては、魔法使いたち同士の関係とも比較してクローズアップされることになり、作品のメインテーマとも関係してくることになります。

 町を仕切る魔法使いたちが、何やら行政を行う役所みたいに描かれていて、それもあって、彼らの「魔法」と世界観が上手く溶け込んでいます。果ては物語の舞台が「過去」や「未来」にまで広がるなど、そのスケールは壮大です。読み終えて、その壮大さ・複雑さにため息をついてしまうほどです。
 全体に陽気なトーンで描かれていますが、兄弟愛や家族愛など、真摯なテーマも盛り込まれている意欲的なファンタジーです。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド 増補版』『奇妙な味の物語ブックガイド』『海外怪奇幻想小説ブックガイド1・2』『謎の物語ブックガイド』『海外ファンタジー小説ブックガイド1・2』を刊行。「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」も作成しました。



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