FC2ブログ
血のグランド・ツアー  トム・ホランド〈ヴァンパイア奇譚〉
 トム・ホランドによる〈ヴァンパイア奇譚〉は、過去の時代の実在の人物を多数登場させ、史実を微妙にずらして描かれる歴史伝奇ホラー小説シリーズ。
 物語そのものの面白さもさることながら、登場人物たちが実際の歴史とどう関わってくるのか、といった部分も興味深いシリーズになっています。


真紅の呪縛―ヴァンパイア奇譚 (ハヤカワ文庫NV) (日本語) 文庫 – 1997/9/1


トム・ホランド『真紅の呪縛 ヴァンパイア奇譚』(松下祥子訳 ハヤカワ文庫NV)

 かって詩人バイロンの失われた回想録の写しを求めて行方不明になった母親。娘のレベッカ・カーヴィルはその回想録が、ルースヴェン卿の所有になる礼拝堂にあることを知り、そこを訪れます。そこで彼女が目にしたのは、若さと美しさを保ったままのバイロンその人でした。
 吸血鬼になり数百年を生き延びてきたというバイロンは、その人生を語り始めます。
親友のホブハウスと共にヨーロッパ大陸旅行に出たバイロンは、トルコ支配下のギリシャで奴隷の少女ヘイデと恋に落ちます。彼女はアルバニアの領主ヴァケル・パシャに囚われていました。
 ヘイデと駆け落ち同然で逃げ出したバイロンは、ヴァケル・パシャに捕まってしまいます。彼は千年以上を生きる強力な力を持つ吸血鬼だったのです。パシャによりバイロンは吸血鬼にされてしまいますが…。

 バイロンの回想録を求めていた女性が、吸血鬼となったバイロンその人に出会い、彼から直接その人生を聞かされるという物語です。主人公が実在の人物バイロンということで、史実を基にしながらも、ところどころでフィクションならではの肉付けをしている作品です。
 旅行中に吸血鬼にされてしまったバイロンが、その身につけた強大な力を使って、人々を魅了し支配していくという様が描かれていきます。直接人の血を吸う以外にも、その目の力で人間を支配したり、夢の中に入り込んで操る、ということまでも可能なのです。
 吸血鬼にされるまでのパートでは、ヴァケル・パシャが最大の敵なのですが、吸血鬼になってからはその強大な力もあって、人間はおろか他の吸血鬼も寄せ付ず、敵なしという感じになります。ですが、吸血鬼になった者の宿命的な秘密がやがて明らかになり、後半では、そのせいでバイロンは苦悩することにもなるのです。

 友人の詩人パーシー・シェリー、シェリーのパートナーであり『フランケンシュタイン』の作者メアリ・シェリー、バイロンの侍医であり、小説「吸血鬼」の作者としても知られるジョン・ポリドリといった、実在の人物も登場します。特にシェリーとポリドリに関しては、物語上重要な役割を果たすキャラクターとなっています。
 シェリーは、バイロンの精神的な友人であり、彼を吸血鬼にして仲間にしたいというバイロンの思惑などが描かれます。ポリドリに関しては、バイロンを崇拝しながらも愛憎半ばする特異なキャラとして描かれていますね。

 この作品で描かれる吸血鬼は「ヴァルドゥラカ」と呼ばれています。ゾンビのように自分の意思をろくに持たない吸血鬼から、バイロンやヴァケル・パシャのように強力な支配力を持つ吸血鬼まで、様々な吸血鬼が登場しています。
 基本的に吸血鬼は太陽の光が苦手なのですが、バイロンのように強い力を持つ者になると、問題なく昼でも行動できたりします。また血を飲まなくても数ヶ月生きられたり、再生能力があったりと、いろいろ独自の設定がなされています。

 吸血鬼となったバイロンという、貴族的なキャラクターを主人公にしているだけに、耽美的なお話になっていると想像する人もいるかと思います。実際そういう面もあるのですが、スプラッターシーンやグロテスクなシーンもあったりと、全体としてはかなり極彩色の物語となっています。
 ギリシャや東欧、後にはイタリア、イギリスなど、物語の舞台がヨーロッパの各地を移動していて、そういう意味での異国情緒が感じられるところも面白いですね。特に序盤、バイロンが吸血鬼になるまでが描かれる東欧を舞台にした部分では、エキゾチックな香りが強いです。
 バイロンの語りを聞くことになるヒロイン、レベッカは、最初と最後以外は、もっぱらバイロンの話に合いの手を挟むだけにとどまり、それほど活躍するシーンはないのですが、レベッカの行方不明の母親はどうなったのか? レベッカの祖先は誰なのか? といった謎もあり、そのあたりも面白いですね。
 伝奇ホラーとして非常に面白い作品になっています。



渇きの女王―ヴァンパイア奇譚 (ハヤカワ文庫NV) (日本語) 文庫 – 1997/11/1


トム・ホランド『渇きの女王 ヴァンパイア奇譚』(奥村章子訳 ハヤカワ文庫NV)。

 血液学を研究する医師エリオットは、吸血鬼伝説が囁かれるインド国境の土地カーリークシュートラで、英国軍人ムアフィールド率いる部隊と行動を共にすることになります。そこで恐るべき体験をしたエリオットは、命からがらイギリスに帰国することになります。ロンドンで診療所を開いたエリオットは、親友の一人アーサー・ルースヴェンが血を抜かれた状態で死んでいたことを知ります。またもう一人の友人ジョージ・モーバリーが失踪し、その夫人から彼の行方について調べてほしいと相談を持ちかけられます。
 友人たちが、共にインドに関わる仕事をしていたということから、インドにその原因があるのではないかとエリオットは推測します。調査をするうちに浮かび上がってきたのは、異国からやってきたという美貌のある女性の存在でした…。

 吸血鬼になったバイロンを主人公にした『真紅の呪縛』の続編ですが、19世紀、ヴィクトリア朝ロンドンを舞台にした、独立した吸血鬼作品になっています。
 前作同様、実在の有名人たちがたくさん登場するのが特徴です。ブラム・ストーカー、オスカー・ワイルド、前作からは引き続きバイロン、ポリドリなど。とくにブラム・ストーカーは、主人公エリオットの助手的な立場の人物として、メインで活躍するキャラクターとなっています。『ドラキュラ』と『シャーロック・ホームズ』のオマージュ的な
構成になっているのも面白いところです。主人公エリオットがホームズ、ブラム・ストーカーがワトソン的な役として割り当てられていますね。
 ホームズばりにエリオットが他人の身分を推測するシーンがあったり、実際にエリオットが『シャーロック・ホームズ』の小説を読むシーンなどもあります。
 また『ドラキュラ』に関しては、小説の形式が『ドラキュラ』風の書簡や手記で構成されているとことや、吸血鬼と戦うエリオットの物語自体が『ドラキュラ』の物語をなぞっていること、さらに言うなら登場人物の名前も『ドラキュラ』の登場人物をもじっているなど、かなり意識的にオマージュとして作られているようです。
 『ドラキュラ』『ホームズ』といった文学的パロディ要素が強い作品ではありながら、物語はオリジナルとして非常に面白いです。プロローグとして語られる、ロシア兵と現地の吸血鬼たちとの戦い、ロンドンでの吸血鬼たちとの戦いなど、前作よりアクション要素も強くなっています。

 主人公エリオットや助手となるブラム・ストーカーが、友人やその家族を襲う吸血鬼を倒そうといろいろ調査を進めますが、その黒幕には強大な存在がいることが明らかになっていきます。
 さらに前作から登場するバイロンの目的、そして彼を陥れようと画策するポリドリなど、敵方の陣営も一枚岩ではありません。敵だと思っていた人物がそうでなかったり、味方だと思っていた人物から裏切られたりと、その展開も波乱万丈。正義の側だと思っていた主人公エリオットの「堕落」も描かれるなど、単純な勧善懲悪には終わらない物語には魅力がありますね。
 主人公エリオットが血液を専門とする医師だけに、吸血鬼を科学的に探求するシーンもあります。そのあたり、伝奇的な物語のカラーと合わせても面白い趣向になっています。そして「医師」という主人公の職業が、結末での伏線にもなっているのも面白いところです。

 前作とはいちおう独立しているので、こちらの作品から読んでも楽しめる作品にはなっています。ただ前作を読んでいると、わりと序盤から登場するバイロンが、主人公の味方なのか敵なのか最後の方になるまでわからなかったり、暗躍するポリドリが何を企んでいるのかなど、続編ならではのサスペンスもありますね。
 前作も含め、実在の人物を利用したホラー小説で、ここまで面白く、完成度が高い作品はそうそうないのではないでしょうか。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

邪悪なる一族  ジャック・ウィリアムスン『エデンの黒い牙』

エデンの黒い牙 (創元推理文庫) (日本語) 文庫 – 2007/5/1


 ジャック・ウィリアムスンの長篇『エデンの黒い牙』(野村芳夫訳 創元推理文庫)は、古代から生き続ける邪悪な一族と人間との戦いに巻き込まれた青年を描く、伝奇ホラー作品です。

 ゴビ砂漠での調査から、弟子たちと共に帰国した人類学の権威モンドリック博士。博士が現地から持ち帰ったものは人類にとって重大な発見だと言われていました。
 かっての博士の弟子の一人であり、現在は新聞記者であるウィル・バービーは、博士の会見を取材するために空港を訪れますが、同じ場所に居合わせた、女性記者エープリル・ベルに魅了されてしまいます。なぜか子猫を連れてきていたエープリルに、バービーは、持ち合わせている情報をいろいろと話してしまいます。
 バービーは、モンドリック夫人ロウィーナに、エープリルを紹介しますが、なぜかロウィーナはエープリルに敵対的な態度を取ります。
 やがて現れたモンドリック博士はその場で緊急会見を行いますが、話の途中で倒れ、急死してしまいます。
 博士は猫アレルギーであったということが分かり、彼を殺したのは猫を持ち込んだエープリルではないかという疑惑が持ち上がりますが、バービーはそれを信じることができません。やがてエープリルは、自らの生い立ちと特殊な能力をバービーに明かすことになりますが…。

 かっての人類を脅かし、現在でもわずかながら存在しているという亜人類の一族。彼らと人類との抗争に巻き込まれた青年の冒険を描く伝奇ホラー作品です。
 モンドリック博士とその弟子たちは、現代でも暗躍しているという亜人類が人類に及ぼす危険を知り、彼らを撃退しようとしていました。
 しかしバービーが一目惚れしてしまったエープリルは、その亜人類の一人であり、博士だけでなく弟子たちも排除しようとしていたのです。しかもバービーも亜人類の血を強く引いていることから、エープリルによりバービーは操られてしまいます。
 彼女の魔力(?)によって、バービー自身が持つ亜人類の力を呼び覚まされ、その結果、彼は獣の姿に変身したうえで操られてしまうのです。しかし、バービー自身はその変身が夢であると思っており、なかなか真実に気付くことができません。
 自らが精神の病ではないかと考え、精神病院に駆け込んだりもすることにもなります。
 バービーは、かっての恩師の夫人、友人である弟子たちを守ろうと考え行動するのですが、エープリルに操られたバービーの行動が真逆の結果を生み、彼らの命を次々と危険にさらすことになってしまうのです。
 主人公バービーが亜人類の血を引きながら、人間の味方をすることになるのか、それともエープリルと共に人間を滅ぼす側に回るのか、というところが読みどころでしょうか。

 獣に変身できる血族が登場するなど、いわゆる<人狼>テーマの作品といえるのですが、この作品に登場するのは、<人狼>とはちょっと異なります。変身するのも狼に限られるわけではなく、他の獣の形に変身もできます。霊体化することも可能で、その場合、普通の人間にはその姿を見ることもできません。
 その活動に疑似科学的な設定がつけられているところもユニークで、例えば亜人類たちが相手を殺す場合、単純に肉体的に傷つけるだけというわけではなく、相手が死に陥るであろうタイミングに干渉することで、相手を結果的に殺してしまう、という独特の方法になっています。

 主人公バービーが「ヒロイン」エープリルにベタ惚れになってしまい、彼女にいいように操られてしまう結果、あまり主人公らしい積極的な行動というのは描かれません。もともと優柔不断ということもあり、エープリルのなすがまま、どんどんと深みにはまっていってしまうという流れは、どこか「巻き込まれ型サスペンス」の趣もありますね。

 <人狼>を描くのに、魔法や呪いなど、オカルト的な設定を使うのではなく、人類学や心理学、果ては量子力学的な発想まで、作品全体に科学的な衣をつけたのが特徴です。1948年の発表当時は、かなり斬新なスタイルだったのではないでしょうか。
 そのあたりの衝撃は今では薄れてしまっていますが、それを差し引いても十分に面白い作品です。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

優しい怪物  バリ・ウッド『エイミー』

エイミー (扶桑社ミステリー) (日本語) 文庫 – 1989/10/1


 バリ・ウッドの長篇『エイミー』(倉本護訳 扶桑社ミステリー)は、酒乱の父に母を殺された少女がショックから超能力を発現し、それが惨劇を呼んでしまうというサイコ・サスペンス・ホラー作品です。

 酒乱の父マイクルが家を出ていってしまい、母親のエヴィと共に困窮した暮らしをしていた八歳の少女エイミー。ある日酔って家に現れたマイクルは、エヴィに暴力を振るいとうとう妻を殺してしまいます。マイクルはそのまま立ち去り、とっさに母親によって物置に隠されていたエイミーは、そのまま放置され、死に近づいていました。
 一方、生まれつき超能力を持つがゆえに精神のバランスを崩し病院に入院していたマイクルの兄ジョナサンは、姪のエイミーが危機に陥っていることを感じ取り、警察に助けを求めるよう働きかけます。
 助けられたエイミーは、事件に関与したジョゼフ・レヴィン警部の家に引き取られることになります。家族から歓迎されるエイミーでしたが、唯一息子のパウリーのみは、エイミーを憎み、彼女を追い出そうと考えていました…。

 もともと超能力の素養を持っていた少女が、母親が殺される現場に居合わせたことからその能力を発現させる…というホラーサスペンス作品です。
 少女エイミーの能力は「精神支配」。相手の精神を思い通りに操るというもので、相手の意思を無視してコントロールすることができ、自殺させることすら可能なのです。
 エイミーは非常に優しい少女で、自分の能力を認識した後もそれを思い通りに使おうとしません。しかし引き取り先の息子パウリーは、彼女を憎み、家から追い出すために、さまざまな嫌がらせをし続けます。問題を起こせば家から追い出される可能性があり、そもそもパウリーに対しても、父親の愛情を求めるがゆえの裏返しの行動ではないかと、哀れみを覚えたりもするのです。しかしどんどんエスカレートするパウリーの行動に対して、エイミーがいつ暴発してしまうのか…という部分が読みどころでしょうか。

 エイミーの能力による死者が出ていることから、彼女の能力を危険視する伯父のジョナサン。精神病院を抜け出したジョナサンはたびたび彼女に働きかけますが、惨劇は近づいてきていました。また彼女にかかわることになった医者のモランやホールは、レヴィン家に居る限り、エイミーが何かを引き起こすと考え、レヴィンにエイミーを手放すように忠告しますが、レヴィンは受け入れません。
 そもそも、エイミーが引き取られたレヴィン家自体が危うさを抱えている家庭で、息子のパウリーが不良じみた仲間とつきあい、両親との齟齬を来たしています。
 エイミーを迎え入れることによって、パウリーもまた変わるのではないかと期待したレヴィンでしたが、それは逆効果となってしまうのです。レヴィン自体も頑固な性格で、その失敗をなかなか認めることができません。

 人を簡単に殺せる能力を持ちながらも、少女エイミーはその優しさのため、その能力を頻繁には使うことがありません。彼女に嫌がらせをし続けるパウリーの行為に対して、耐え忍び続けようとするエイミーは健気で、読者は彼女に感情移入してしまうのではないでしょうか。
 それだけに、クライマックスでエイミーが暴発してしまうシーンには衝撃があります。

 序盤から悲劇が決定付けられた作品ではあるのですが、この手の作品には珍しく「救い」があり、読後感は悪くありません。精神障害でまともに生活することもできなかった伯父のジョナサンが、姪のために駆け回り、一人の人間として立てるようになる、というジョナサンの成長小説的な側面も面白いところですね。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

同人誌『奇妙な味の物語ブックガイド』刊行のお知らせ
kimyonaazi_hyoushi.jpg kimyonaazinomonogatarihonbun-1.jpg kimyonaazinomonogatarihonbun-3.jpg kimyonaazinomonogatarihonbun-5.jpg
 新しく、同人誌を作成することにしました。タイトルは『奇妙な味の物語ブックガイド』。海外作家の<奇妙な味>の短篇集を100タイトルほど紹介したガイド本です。
 ロアルド・ダールやスタンリイ・エリンといった、一般に<奇妙な味>と認知されている作品だけでなく、ミステリ・SF・ホラー・文学など、いろいろなジャンルから<奇妙な味>的な要素を持つ作品集をセレクションして紹介しています。
 全てではないのですが、大部分のタイトルで個々の収録短篇を詳細に紹介しています(そのために、ページ数が大分増えてしまってはいるのですが)。

 ただ今、印刷会社にて印刷中です。
 11月22日(日)に開催予定の文学フリマ東京に、「サークル奇妙な世界」として、参加することになっています。予定としては、そちらで初売り、その後、通信販売をしたいと考えているのですが、早く印刷が上がった場合は、通販を先に開始するかもしれません。

 通信販売は、書肆盛林堂さんで扱っていただく予定です。販売開始の準備ができましたら、改めて告知したいと思います。


仕様は以下の通りです。

『奇妙な味の物語物語ブックガイド』
サイズ:A5
製本仕様:無線綴じ
本文ページ数:244ページ(表紙除く)
表紙印刷:CMYKフルカラー
本文印刷:モノクロ
表紙用紙:アートポスト200K
本文用紙:書籍72.5K(クリーム)


内容は以下の通り。

まえがき

デイヴィッド・アリグザンダー『絞首人の一ダース』
H・C・アルトマン『サセックスのフランケンシュタイン』
デイヴィッド・アンブローズ『幻のハリウッド』
D・イーグルマン『脳神経学者の語る40の死後のものがたり』
ケヴィン・ウィルソン『地球の中心までトンネルを掘る』
ヒュー・ウォルポール『銀の仮面』
ジョーン・エイケン『レンタルの白鳥』
マルセル・エーメ『マルタン君物語』
マルセル・エメ『マルセル・エメ傑作短編集』
マルセル・エーメ『エーメ ショートセレクション 壁抜け男』
スタンリイ・エリン『特別料理』
スタンリイ・エリン『九時から五時までの男』
スタンリイ・エリン『最後の一壜』
J・C・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』
J・C・オーツ『邪眼 うまくいかない愛をめぐる4つの中篇』
A・H・Z・カー『誰でもない男の裁判』
ヘンリー・カットナー『世界はぼくのもの』
A・ビオイ=カサーレス『パウリーナの思い出に』
マリー・ルイーゼ・カシュニッツ『六月半ばの真昼どき』
イタロ・カルヴィーノ『レ・コスミコミケ』
ポール・ギャリコ『銀色の白鳥たち』
ジョナサン・キャロル『パニックの手』
ジョナサン・キャロル『黒いカクテル』
リンダ・キルト『怖るべき天才児』
クルト・クーゼンベルク『壜の中の世界』
デイヴィス・グラッブ『月を盗んだ少年』
フリオ・コルタサル『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』
マヌエル・ゴンザレス『ミニチュアの妻』
サッパー『十二の奇妙な物語』
ミック・ジャクソン『10の奇妙な話』
ミック・ジャクソン『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』
サマンタ・シュウェブリン『口のなかの小鳥たち』
ジュール・シュペルヴィエル『海の上の少女』
シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』
シオドア・スタージョン『影よ、影よ、影の国』
マイケル・マーシャル・スミス『みんな行ってしまう』
スティーヴンソン『マーカイム・壜の小鬼 他五篇』
ロジャー・ゼラズニイ『伝道の書に捧げる薔薇』
ウィル・セルフ『元気なぼくらの元気なおもちゃ』
ロアルド・ダール『キス・キス〔新訳版〕』
ロアルド・ダール『あなたに似た人〔新訳版〕』
ロアルド・ダール『飛行士たちの話〔新訳版〕』
ロアルド・ダール『王女マメーリア』
ロアルド・ダール『ヘンリー・シュガーのわくわくする話』
ロード・ダンセイニ『二壜の調味料』
リン・ディン『血液と石鹸』
トニー・デュヴェール『小鳥の園芸師』
ウォルター・デ・ラ・メア『恋のお守り』
ロバート・トゥーイ『物しか書けなかった物書き』
アンリ・トロワイヤ『ふらんす怪談』
デーモン・ナイト『ディオ』
アントニー・バウチャー『タイムマシンの殺人』
ジェイムズ・パウエル『道化の町』
エドモンド・ハミルトン『フェッセンデンの宇宙』
エドモンド・ハミルトン『星々の轟き』
J・G・バラード『ウォー・フィーバー』
ウイリアム・ハリスン『ローラーボール』
J・L・ハーリヒィ『悲鳴でおわる物語』
トマス・ピアース『小型哺乳類館』
ジョー・ヒル『20世紀の幽霊たち』
クリストファー・ファウラー『白昼の闇』
ジャック・フィニイ『レベル3』
ジャック・フィニイ『ゲイルズバーグの春を愛す』
フィツジェラルド『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
ディーノ・ブッツァーティ『魔法にかかった男』
ディーノ・ブッツァーティ『現代の地獄への旅』
ディーノ・ブッツァーティ『怪物』
フレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい』
ロバート・ブロック編『フレドリック・ブラウン傑作集』
ロバート・ブロック『夜の恐怖』
レイ・ブラッドベリ『黒いカーニバル』
レイ・ブラッドベリ『10月はたそがれの国』
レイ・ブラッドベリ『刺青の男』
レオン・ブロワ『薄気味わるい話』
バリントン・J・ベイリー『ゴッド・ガン』
サーデグ・ヘダーヤト『生埋め』
グレゴリイ・ベンフォード『時空と大河のほとり』
リュドミラ・ペトルシェフスカヤ『私のいた場所』
ゼナ・ヘンダースン『ページをめくれば』
T・コラゲッサン・ボイル『ごちゃまぜ』
チャールズ・ボウモント『残酷な童話』
マッシモ・ボンテンペルリ『わが夢の女』
ジョージ・R・R・マーティン『洋梨形の男』
アンリ・ミショー『幻想旅行記』
ミュノーナ『スフィンクス・ステーキ』
フリッツ・ライバー『闇の世界』
リング・ラードナー『息がつまりそう』
トム・リーミイ『サンディエゴ・ライトフット・スー』
ジャック・リッチー『10ドルだって大金だ』
ジャック・リッチー『ダイアルAを回せ』
アーシュラ・K・ル・グィン『なつかしく謎めいて』
レオポルド・ルゴーネス『アラバスターの壺/女王の瞳』
プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』
J・ロバート・レノン『左手のための小作品集 100のエピソード』
ジャック・ロンドン『ジャック・ロンドン大予言』
柴田元幸編訳『むずかしい愛』
柴田元幸編訳『どこにもない国 現代アメリカ幻想小説集』
中村融編『街角の書店 18の奇妙な物語』
中村融編『夜の夢見の川 12の奇妙な物語』
井波律子編訳『中国奇想小説集 古今異界万華鏡』


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

11月の気になる新刊と10月の新刊補遺
発売中 山内淳監修『西洋文学にみる異類婚姻譚』(小鳥遊書房 2860円)
11月5日刊 エドワード・ゴーリー『金箔のコウモリ』(河出書房新社 予価1430円)
11月11日刊 アンドレス・バルバ『きらめく共和国』(宇野和美訳 東京創元社 予価1980円)
11月12日刊 東雅夫編『文豪怪奇コレクション 幻想と怪奇の夏目漱石』(双葉文庫 予価748円)
11月12日刊 ジョージ・マクドナルド作、モーリス・センダック絵『金の鍵』(脇明子訳 岩波書店 予価1650円)
11月12日刊 ジョージ・マクドナルド作、モーリス・センダック絵『かるいお姫さま』(脇明子訳 岩波書店 予価1650円)
11月13日刊 イアン・ワトスン『オルガスマシン』(大島豊訳 竹書房文庫 予価1320円)
11月13日刊 ジャンニ・ロダーリ『緑の髪のパオリーノ』(内田洋子訳 講談社文庫 予価880円)
11月16日刊 ドロシー・L・セイヤーズ『モンタギュー・エッグ氏の事件簿』(井伊順彦訳 論創社 予価3080円)
11月16日刊 生島治郎『頭の中の昏い唄』(日下三蔵編 竹書房文庫 予価1320円)
11月19日刊 サム・J・ミラー『黒魚都市』(中村融訳 新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 予価2200円)
11月19日刊 橋本輝幸編『2000年代海外SF傑作選』(ハヤカワ文庫SF 予価1100円)
11月20日発売 『幻想と怪奇4 吸血鬼の系譜 スラヴの不死者から夜の貴族へ』(新紀元社 予価2420円)
11月25日刊 『諸星大二郎 デビュー50周年記念 異界への扉』(河出書房新社 予価2970円)
11月30日刊 ロバート・バー『ヴァルモンの功績』(田中鼎訳 創元推理文庫 1100円)
11月30日刊 H・P・ラヴクラフト『狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選』(南條竹則訳 新潮文庫 予価825円)


 アンドレス・バルバ『きらめく共和国』は、スペイン作家の作品だそうですが、ちょっと気になる内容の物語です。「1994年、緑のジャングルと茶色い川をかかえる亜熱帯の町サンクリストバルに、理解不能な言葉を話す子どもたちがどこからともなく現れた。彼らは物乞いをしたり盗みを働いたりして大人たちを不安に陥れ、さらにスーパーを襲撃した。そして数ヶ月後、不可解な状況で32人の子どもたちが一斉に命を落とした。子どもたちはどこから来たのか。どうして死ぬことになったのか。社会福祉課の課長として衝撃的な出来事に関わった語り手が、22年後のいま、謎をひもといていく──。」

 ジャンニ・ロダーリ『緑の髪のパオリーノ』は、イタリアのファンタジー作家ロダーリの短篇集。これは楽しみです。

 生島治郎『頭の中の昏い唄』は、<異色短篇傑作シリーズ>の最新刊。生島治郎の異色短篇はすごく上手いのですよね。

 H・P・ラヴクラフト『狂気の山脈にて クトゥルー神話傑作選』は、南條竹則訳によるラヴクラフト傑作選第二弾。これからシリーズが続いていくのでしょうか。


ジャンニ・ロダーリ作品を読む
 イタリアの児童文学作家ジャンニ・ロダーリ(1920~1980)、彼の作品はどれもユーモアとファンタジーにあふれています。長篇でも短篇でも奇想天外なアイディアが取り扱われていますが、そのアイディアが趣向倒れに終わらず、物語と緊密に結びついているところが魅力ですね。
 いくつかロダーリ作品を紹介していきたいと思います。


usotukikokuno.jpg
ジャンニ・ロダーリ『うそつき国のジェルソミーノ』(安藤美紀夫訳 筑摩書房)

 生まれつき大きな声を持つ少年ジェルソミーノ。声を出すと、様々な物が壊れてしまうため、彼は黙って暮らすようになっていました。村での生活に嫌気がさしたジェルソミーノは旅に出ることにします。
 辿りついた国は、パンと文房具との名前が逆になっており、本物のお金は使えず、猫が犬の鳴き声を出すという、おかしな国でした。その<うそつき国>は、かって海賊だったジャコモーネが占領して以来、本当のことを言うことが禁止されており、うその形で物事を表現しなければいけないと言うのです。
 落書から生まれた三本足の猫ゾッピーノと友人になったジェルソミーノは、共に冒険を繰り広げることになりますが…。

 とんでもない破壊力の声を持つ少年が、辿りついた<うそつき国>で、人々を圧制から解放することになる、という物語です。最終的には主人公ジェルソミーノが事態を打開することにはなるのですが、常時ジェルソミーノが活躍するわけではなく、中盤ではむしろ他のキャラクターが活躍することになります。
 具体的には、ジェルソミーノのパートナー的な存在である三本足の猫ゾッピーノ、描いた絵が現実になるという絵描きバナニート、座るとどんどん年を取ってしまうという老人立ちんぼベンヴェヌートの三人が、主に活躍します。
 ゾッピーノは、国中に蔓延したうそを物ともせず真実を話し、バナニートはその能力で戦争の道具を要求されるもののそれを拒否することで、ベンヴェヌートは自身の命を削って人を助けることで、圧制と独裁者に対して抵抗を示します。
 なかでも印象に残るのがベンヴェヌート。生まれつき成長の速かった彼は、座っているとあっという間に年を取ってしまうことが分かります。それ以来、彼は椅子もベッドも使わずに立ったまま暮らしているというのです。しかし人助けのために座らざるを得ないとき、命が削られるのを知りながらもあえて座るという姿には、哀愁が感じられます。

 もと海賊の圧制者とその政府に立ち向かう人々という、ある種、政治的な物語ではありながら、ところどころに込められたユーモラスな要素が、お話を息苦しいものにはしていません。
 法令により、人間のみならず猫たちも犬の鳴き声を強要されたり、本当のことが書けないために新聞にはあべこべの形で記事を書かれているなど、抱腹絶倒のシーンも多数です。描いたものが本物になるという絵描きバナニートのエピソードも楽しいですね。もともと才能がありながら、描くものにやたらと余計なものを加えていたバナニートが、余計なものを消すようになった途端に能力が開花する、という展開も面白いです。
 ユーモラスかつ奇想天外な要素がてんこ盛りのファンタジー作品で、楽しく読める物語になっています。



パパの電話を待ちながら (講談社文庫) (日本語) 文庫 – 2014/2/14


ジャンニ・ロダーリ『パパの電話を待ちながら』(内田洋子訳 講談社文庫)

 イタリア中を旅するセールスマン、ビアンキさんが、毎日九時きっかりに電話で娘にお話を聞かせるという大枠で語られるショート・ショート集です。電話代が嵩むため、すぐに終わる短いお話ばかりになっているという、洒落た趣向です。五十六篇を収録しています。

 うっかりすぎて体の一部を落としてしまう坊やの物語「うっかり坊やの散歩」、子どもたちの破壊衝動を発散させるために大きな建物が建てられるという「壊さなければならない建物」、他人のくしゃみの数を数え続けるという「くしゃみを数えるおばさん」、その国ではとがったものが全くないという「とんがりのない国」、ストックホルムの所有権を買った床屋の主人の物語「ストックホルムの町を買う」、別世界に行ける回転木馬を描いた「チェゼナティコの回転木馬」、鼻が逃げ出してしまうという「逃げる鼻」、どこにもつながっていないとされる道の先に行った男の物語「どこにもつながってない道」、様々なものに変化する魔法のステッキをめぐる「夢見るステッキ」、触ったもの全てが金になってしまう王様の物語「ミダス王」、突然他人に姿が見えなくなった男の子を描く「透明人間トニーノ」、考えが全て見えてしまう透明な少年の物語「クリスタルのジャコモ」、コロッセオを盗み出そうと石片を地道に盗み続ける男を描いた「コロッセオを盗んだ男」、コンクリートに落ち込んで死んでしまった左官屋の魂が家の中で生き続けるという「ヴァルテッリーナの左官屋」などが面白いですね。

 基本的にはナンセンスでシュール、かつシンプルなお話が多いのですが、その中にも深いテーマが感じられる作品も混ざっています。
 例えば「壊さなければならない建物」。子どもたちがいろいろなものを壊してしまう町で、その被害額を計算した結果、その衝動を発散させるために、わざわざ壊すための建物を建てることになる…という物語です。
 また「コロッセオを盗んだ男」は、コロッセオを盗み出そうと考えた男が、少しづつコロッセオを構成する石を盗み始めるのですが、何年経ってもコロッセオの姿は変わらない…という物語です。
 どちらもナンセンスな発想ではありながら、どこか一片の人生の真実が感じられるという、味わい深い作品になっています。

 中でも、哀愁を感じさせる作品として挙げたいのが「ヴァルテッリーナの左官屋」です。
 建築中にコンクリートに落ちて死んでしまった左官屋の男。しかし男の魂はその中で生き続けます。やがて完成した家の中で、その家に立ち代り住むようになった家族たちをを見守る…という物語です。
 ウェットなお話ながら、無常感の感じられる寂しげな結末になっていたりと、短い中にも奥が深い作品になっています。

 収録作は、どれもユニークな発想とファンタジーに溢れており、なにより読んでいて楽しい好作品集です。



猫とともに去りぬ (光文社古典新訳文庫) (日本語) 文庫 – 2006/9/7


ジャンニ・ロダーリ『猫とともに去りぬ』(関口英子訳 光文社古典新訳文庫)

 ファンタジーとユーモアたっぷりの童話作品集です。
 家族に構ってもらえなくなった老人が猫になって暮らすようになるという「猫とともに去りぬ」、部下の車に嫉妬する社長とバイオリンの名手の会計係の物語「社長と会計係 あるいは 自動車とバイオリンと路面電車」、小柄ながらとてつもない力と速さを持つ郵便配達人を描く「チヴィタヴェッキアの郵便配達人」、ヴェネツィアの水没を見越して魚になって暮らす家族を描いた「ヴェネツィアを救え あるいは 魚になるのがいちばんだ」、バイクに恋してしまった青年の物語「恋するバイカー」、ピアノと共に旅をするカウボーイの話「ピアノ・ビルと消えたかかし」、魚が釣れるまじないを実現するために過去を改変しようとする男の物語「ガリバルディ橋の釣り人」、あらゆる入れ物が巨大化した世界を描く「箱入りの世界」、宇宙時代のシンデレラ物語「ヴィーナスグリーンの瞳のミス・スペースユニバース」、魔法のかかった不思議な人形の物語「お喋り人形」、ハトを利用した広告を考えた宣伝マンたちの奇妙な体験を描いた「ヴェネツィアの謎 あるいは ハトがオレンジジュースを嫌いなわけ」、植物をいためつけることで花や実を咲かせようとする社長と植物思いのやさしい庭師の物語「マンブレッティ社長ご自慢の庭」、生まれつき超人的な能力を持つ赤ん坊を描く「カルちゃん、カルロ、カルちゃん あるいは 赤ん坊の悪い癖を矯正するには……」、宇宙人によってピサの斜塔が奪われてしまうという「ピサの斜塔をめぐるおかしな出来事」、子供に贈り物を届ける魔女ベファーナたちの世界の物語「ベファーナ論」、自らが死ぬ運命を聞かされた王がその身代わりを探すという「三人の女神が紡ぐのは、誰の糸?」の16篇を収録しています。

 どれも奇想天外なアイディアの楽しい作品ぞろいですが、中でも飛びぬけて強烈なインパクトがあるのは「ガリバルディ橋の釣り人」「カルちゃん、カルロ、カルちゃん あるいは 赤ん坊の悪い癖を矯正するには……」でしょうか。

 「ガリバルディ橋の釣り人」は、こんな物語。
 釣りに訪れた中年男性アルベルトーネは、魚を釣り上げることがまったくできず、隣で頻繁に魚を釣り上げている男から、魚釣りのまじないを聞きます。まじないには特定の名前が必要であるということから、アルベルトーネはタイムマシンで過去を改変し、父親に自分の名前を変えさせてしまいます…。
 たかが魚釣りのために、人生をやり直したり、過去を取り返しのつかないまでに改変するという、とんでもない発想のお話です。そのスケールの大きさと主人公がやっていることとのギャップが笑える作品ですね。

 「カルちゃん、カルロ、カルちゃん あるいは 赤ん坊の悪い癖を矯正するには……」は、生まれつき超能力を持って生まれた赤ん坊を描く物語。
 生まれたばかりの赤ん坊カルロは、テレパシーで周囲の人間と意思を通じる能力を持っていました。
 近くにある本の内容ばかりか人間の頭の情報までをも吸収したカルロは、その能力ゆえ両親からも恐れられます。やがて周囲の人間たちはその知能を抑えるある方法を考え出しますが…。
 賢すぎる赤ん坊をめぐって展開されるドタバタ風味のファンタジーです。能力がありすぎることは周囲との軋轢を引き起こす…。それを自覚する主人公カルロの姿が描かれるラストは、どこか哀愁を帯びており、味わいのある作品になっています。



マルコとミルコの悪魔なんかこわくない! (くもんの海外児童文学) (日本語) 単行本 – 2006/6/1


ジャンニ・ロダーリ『マルコとミルコの悪魔なんかこわくない!』(関口英子訳 くもん出版)

 マルコとミルコはそっくりなふたごの兄弟。彼らの唯一の違いは、それぞれがいつも持っているカナヅチの色でした。マルコは持ち手が白のカナヅチ、ミルコは持ち手が黒のカナヅチを持っていました。二人は、それをブーメランのように巧みに扱うことができるのです。怖いものなしのふたごは、泥棒やお化けもやり込めてしまいます…。

 カナヅチを自在に操るふたごの兄弟が、様々な障害をものともせずに活躍するという、爽快な連作冒険物語です。
 兄弟はカナヅチを使って、泥棒、お化け、強盗、果ては悪魔にまで勝ってしまいます。二人が唯一怖がるのは、なぜか「赤ずきんちゃん」の物語というのもユーモラスですね。
 もともと連作として作られたわけではなくて、たびたび描かれていた同キャラクター作品を後年まとめた、という感じの作品のようです。

 本の体裁も面白くて、左右のページの上部にマルコとミルコ、そして白と黒のカナヅチの絵が描かれており、それがパラパラ漫画になっています。ページをめくっていくと、兄弟の手から離れたカナヅチが飛んでいって、さらにブーメランとなって戻ってくるというアニメーションが楽しめます。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

残酷な真実  星月渉『ヴンダーカンマー』

ヴンダーカンマー (日本語) 単行本 – 2020/7/16


 星月渉『ヴンダーカンマー』(竹書房)は、地方都市の高校で起きた女子生徒の殺人事件をめぐって、周囲の人々の残酷な真実が明かされてゆくという、ホラー作品です。

 地方都市にある、椿ヶ丘学園高校の旧校舎本館で、女子生徒が殺されるという事件が起きます。殺されたのは一年生の渋谷唯香。殺害現場に集まったのは、被害者と同じサークル<郷土資料研究会>の会員だった生徒4人と顧問の教師の合わせて5人でした。
 渋谷唯香の殺され方は、16年前に起こった自分の母親の殺され方に似ている。そう考えた北山耕平は、犯人と目された名家の御曹司、東陸一ではなく、外に真犯人がいるのではないかと指摘します。そしてその犯人は、自らの母親を殺した同一犯人なのではないかとも。
 ほとんど共通点のない生徒たちが、なぜ同じサークルに集まることになったのか? その共通点とは、唯香に勧誘されたことで、彼女が生前漏らしていた、自分だけのヴンダーカンマーを作りたい、ということと何か関係があるに違いない。やがて唯香をめぐって、周囲の人物たちの後ろ暗い秘密が明らかになっていきますが…。

 女子生徒の猟奇的な殺人事件、その謎をめぐって、関係者たち5人と殺された本人、合わせて6人の視点からそれぞれの物語が語られるという構成になっています。それぞれの人物は事件の全体像については知らず、その全体像は最終章で明かされることになります。
 関係者たちはそれぞれ家庭環境に問題を抱えているのですが、渋谷唯香と関わることにより、さらに破滅的な状況に追い込まれていってしまいます。彼らのほとんどが最終的には殺人にまで至ってしまい、それによってすら救われないという過酷なお話が展開されていきます。
 関係者たちのエピソードを読んでいくにつれ、最初は普通の女子生徒だと思っていた渋谷唯香の異常性が露になっていく…というのも読みどころですね。彼女の計画とは何だったのか?「ヴンダーカンマー」とは何なのか?が判明するラストには、さらに驚きが待っています。

 殺人だけでなく、登場人物たちのアンモラルな行動が次々と描かれるので、そうした面で耐性のない読者は読み進むのが大変になるかも…と思うぐらい、強烈なインパクトのある物語です。
 残酷な行為が様々に描かれる物語ではあるのですが、それぞれの登場人物たちには悲劇に至ってしまった要因となる「思い」があること、さらに異常者かと思われた渋谷唯香が、実は見方によっては「ヒロイン」でもあったと思わされる最終章など、一抹の哀愁も感じられるところも魅力ですね。


テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

異なる世界  ロバート・C・オブライエン『死の影の谷間』

死の影の谷間 (海外ミステリーBOX) (日本語) 単行本 – 2010/2/1


 ロバート・C・オブライエンの長篇『死の影の谷間』(越智道雄訳 評論社)は、放射能汚染により滅亡した世界で生き残った少女が、同じく生き残った男と出会うという物語です。

 核戦争により世界中に放射能が蔓延した世界。少女アンは、家にいた家族と共に生き残りますが、他の場所に出かけた家族は誰も帰ってこず、一人ぼっちになってしまいます。 家に残っていた家畜や店に残された食料などで何とか一人暮らしていたアンのもとに、ある日、防護服を着た男が現れます。
 警戒して様子を窺っていたところ、男は放射能で汚染された川で水浴びをして体調を崩してしまいます。
 ルーミスと名乗った男は放射能の研究をしており、そのための防護服を開発していました。量産化する前に戦争が起こってしまった結果、唯一の防護服をまとって、ここまで来たというのです。
 やがてルーミスは重態に陥りますが、アンの看護のおかげもあり回復します。しかし回復したルーミスは、アンに対して支配的な態度を取り始めます。危険を感じたアンは家を出て近くに隠れますが、ルーミスは段々と狂気じみた行動を取るようになっていきます…。

 ほぼ人類が絶滅してしまった世界でようやく出会った少女と男、しかしながら、男の行動によりその関係性が破綻してしまう…というサイコ・スリラー的な作品です。
 出会った当初は、その体調の悪さからアンに一方的に看護される立場だったルーミスが、回復するにつれその支配的な態度を露わにしていきます。意識が混濁していた状態でのルーミスの寝言から、おそらく同僚を殺しているであろうことが分かるのですが、その時点では、まだアンは彼との関係をあきらめていません。
 回復後に見せる冷たい態度や一方的な意見、ついには暴行に近い行為をするに及び、アンも彼のそばから逃げ出すことになります。虚栄心や利己心を見せるルーミスに対して、家を追い出されてなお、彼に食料を運ぶアンの優しさは対比的に描かれていますね。

 さらに、もともと農作業や家畜とともに暮らし、自然と共に生きる力を持ったアンに対し、科学者として学び、核戦争後も機械や文明の利器に頼ろうとするルーミス。自然と文明の対比、という視点もあるようです。
 アンとルーミス、二人が対立するシーン以外には、もっぱらアンが食料をいかに得るかというサバイバルシーンが描かれています。家畜を世話したり、野菜を育てたり、魚を捕ったりと、アンが駆使する様々なサバイバル部分は、それだけで興味深く読むことができます。

 滅亡後の世界で生き残った男女二人、というシチュエーションからも分かるように、聖書のアダムとイヴというイメージも強く作用している作品かと思います。実際、ルーミスに関しては、自分たちが新たな人類の両親になるべきだという意識を強く持っているようで、そのためにアンの意思を無視して、一方的に事を進めようとするシーンも描かれています。ただ思いやりを欠いたその態度は、アンに拒否されてしまうことになるのです。
 二人の関係が破綻に終わるであろうことは序盤から予感されてはいて、その意味で終始ネガティブな展開ではあるのですが、ラストでは主人公アンの新しい希望がほの見えることもあり、良い終わり方の物語ではありますね。

 作者のオブライエンは、この作品を完成させる前に亡くなっているそうで、最後の数章は夫人と娘の一人ジェインが書きつないで完成させたそうです。ですが、継ぎ目が分からない自然なつながり方になっています。


テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

最近読んだ絵本とマンガ

狂瀾怒濤: あるいは、ブラックドール騒動 (日本語) 単行本 – 2019/10/10


エドワード・ゴーリー『狂瀾怒濤 あるいは、ブラックドール騒動』(柴田元幸訳 河出書房新社)

 ゴーリーオリジナルの4人の奇妙な登場人物たちが、いろいろな物を使い互いを攻撃し合う絵柄が延々と描かれるという、ナンセンス味に満ちた絵本です。
 登場するのは、スクランプ、ナイーラー、フィグバッシュ、フーグリブーという4人のキャラクター。タイトルにもある「ブラックドール」が本編に全く登場しないのは人を食っていますね。この4人のキャラが毎回、キャラの組み合わせ・使用する道具・趣向を変えて攻撃し合う…という、何ともナンセンス味に満ちた作品です。しかも攻撃に使用するのはスポンジやピン、クッキーの抜き型やボタンフックなど、奇をてらったものばかり。なかでもヘチマを使って攻撃し合うシーンのシュールさは強烈ですね。
 シュールさといえば、絵柄の背景もそうです。背景自体のデザインは毎回変わるのですが、背景に共通して描かれるのは、なぜか巨大な人の指。登場人物たちがなぜ争っているのかもわかりません。そもそも登場人物たち自体に目鼻口といった顔がないため、表情も感情も読み取れないのです。
 面白いのは、この物語自体がゲームブックのような形式になっているところ。ページごとに二つの選択肢が示され、ページを移動するのですが、そこでもまた組み合わせが変わったキャラの攻撃シーンが描かれるだけというシュールさ。ここまでシュールに徹されると、逆に面白くなってくるというタイプの作品ですね。
 ちなみに登場人物たちの外観は皆、人間からはかけ離れているのですが、ナイーラーのみ、リボンやスカートを身につけているなど、女性的なデザインを与えられています。



Melange Funeste (英語) ハードカバー – 2016/1/15


エドワード・ゴーリー『Le Melange Funeste』

 リング製本の仕掛け絵本です。ページが上中下の三段に分かれており、それぞれに、頭・胴体・足が描かれています。好きなページをめくって組み合わせることによって、いろいろな登場人物(怪物?)を作ることができます。
 原題の『Le Melange Funeste』は、「忌まわしい混合体」みたいな感じでしょうか。描かれているのは「怪物」だけでなくて、パーツとしては普通の人間や動物のパーツも描かれているのですが、どれを組み合わせても「変な」キャラクターになってしまうという、ブラック・ユーモアにあふれた絵本です。
melange003.jpg melange002.jpg



The Helpless Doorknob: A Shuffled Story (英語) カード – 2015/4/30


エドワード・ゴーリー『The Helpless Doorknob A Shuffled Story』

 ゴーリーの未訳作品です。「どうしようもないドアノブ」とでもいった意味でしょうか。絵と文章の書かれた20枚のカードのセットで、シャッフルして並べかえることによって様々な物語を作れる、というものです。
 宣伝文句によると、2,432,902,069,736,640,000通りの読み方が可能とのこと。遊び心のあふれる本(グッズ?)ですね。
gorey the helpless01jpg gorey the helpless02jpg



エドワード・ゴーリーの世界 (日本語) 単行本 – 2020/4/25


濱中利信編『エドワード・ゴーリーの世界 新版』(河出書房新社)

 2002年に出たあと長らく絶版になっていた、ゴーリー作品のガイドブックの新版です。 日本有数のゴーリー・コレクターである濱中氏の編になるだけに、旧版の時点ですでに網羅度の高い本だったのですが、編者が2002年以降に入手されたというゴーリーオリジナル本だけでなく、ゴーリーが挿絵などを寄せた「セカンダリー・ブック」までを紹介した、まさに、ゴーリー・ガイドブックの決定版のような本になっています。
 初紹介から20年弱、ゴーリー作品も随分邦訳紹介されたように思っていましたが、このガイドブックを見ると、まだまだ未訳作品も沢山あるようです。ゴーリーファンは必携のガイド本ではないでしょうか。



誰でもない王女さま 大型本 – 2010/11/1


アンドリュー・ラング文、リチャード・ドイル絵『誰でもない王女さま』(レベル)

 リチャード・ドイルは、コナン・ドイルの伯父にあたる画家で、妖精画で人気のあった人です。リチャード・ドイルの描く妖精は実にチャーミング。
この本の来歴が面白いです。実は『誰でもない王女さま』には、ドイルの作品として有名な『妖精の国で』(ウイリアム・アリンガム詩 リチャード・ドイル絵 ちくま文庫)に使われているものと全く同一の絵が使われているのです。
 もともとリチャード・ドイルの妖精画が先に存在し、それにウイリアム・アリンガムが詩をつけた挿絵本が『妖精の国で』なのですが、絵を気に入ったアンドリュー・ラングが『妖精の国で』の絵を再構成し、それを再物語化してしまったのが『誰でもない王女さま』です。
 ラングの物語は、次のようなもの。王様の間違いにより、ドワーフに王女を与える約束をしてしまったことから、王女ニエンテは姿を消してしまいます。容姿の醜いコミカル王子は、王女を探す旅に出ますが…という話。
 物語に合わせて絵を再配置しているので、矛盾点が結構あったりします。ロングヘアーだった王女が次のシーンで突然ショートカットになっていたり、容姿の醜いはずのコミカル王子が突然美男子になったりします(こちらに関しては物語上、魔法で美男子に変身するという設定になっていますが)。
 『妖精の国で』についているアリンガムの詩は、とくに絵との結びつきが少ないものなので、物語としては『誰でもない王女さま』の方がずっと面白いです。そもそも、リチャード・ドイルはアリンガムの詩が気に入っていなかったようですし。
 文章の点を別としても『妖精の国で』は文庫版で絵が小さかったので、ドイルの絵を楽しむには『誰でもない王女さま』の方がいいかと思います。またこちらの本は装丁・造本がすごく綺麗なので、その点でもお薦めですね。



夜のあいだに (日本語) 大型本 – 2019/5/28


テリー・ファン&エリック・ファン『夜のあいだに』(原田勝訳 ゴブリン書房)

 ある日、グリムロック通りの樹木が刈り込まれ、フクロウのような造形になっているのが見つかります。夜毎に、様々な生きものの形に刈り込まれた樹木が見つかり、人々は喜びます。少年ウィリアムはある夜、見たことのない老人が歩いているのを見つけ、後をつけることになりますが…。

 繊細かつキュートな絵柄で綴られた、ファンタスティックな絵本作品です。超自然的な出来事が起こるわけではないのですが、物語の手触りは非常に幻想的。何より、生きものの形に刈り込まれた木々が本当に生きている生物のようで魅力的なのです。
 最初は、町や人々が抑えたカラーリングで描かれ、ほとんど単色に近いトーンなのですが、謎の庭師による木々が登場するたびに画面内のカラーが増えていき、最終的には画面全体が美しい色彩に包まれる…という演出もとても洒落ていますね。
 テリー・ファン&エリック・ファンはカナダの兄弟アーティスト。海外ではすでに作品がいくつか発表されているようですが、邦訳はこの本が初めてだと思います。



そらからきたこいし (日本語) - – 2018/9/11


しおたに まみこ『そらからきたこいし』(偕成社)

 少女ハナは、ある夜、庭先に光が落下してくるのを目撃します。翌朝、庭で見つけた変わった形の小石は、手のひらの上でほんの少し浮かんでいました。それからも「浮かぶ小石」を何回か見つけたハナは、それらの石がパズルのようにくっつくことに気付きますが…。

 不思議な小石をめぐるファンタスティックな物語です。作中に登場する「小石」のオブジェ感が素晴らしく、ある種の好みを持つ読者にとって、琴線に触れる作品ではないかなと思います。
 小石自体のオブジェ的な面白さに加え、石の正体をめぐる少女の探索行が楽しい作品です。絵は木炭と鉛筆が使用されているそうですが、詳細かつ緻密に描かれており非常に魅力的です。著者はこの作品がデビュー作だそうで、今後が楽しみですね。



やねうらべやのおばけ (日本語) ハードカバー – 2020/5/13


しおたにまみこ『やねうらべやのおばけ』(偕成社)

 やねうらべやに住み着いて楽しく暮らすおばけが、部屋に入ってくるようになった小さい女の子を怖がらせて、追い払おうとするものの…という絵本作品です。

 屋根裏部屋で一人遊びをするおばけが本当にユーモラスで可愛らしいです。消えたり、サイズを変えたりと、その姿も自由自在。怖がらせようとするものの、女の子はちっとも怖がってくれないのです。
 丁寧かつ微細に描かれた絵柄は、幻想的でありながら、非常に暖かみがありますね。
全体はほぼモノクロのトーンなのですが、主要な部分だけがうっすらとカラーで色づいているというカラーリングも素敵です。



フジモトマサルの仕事 (コロナ・ブックス) (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2020/4/27


『フジモトマサルの仕事』(平凡社コロナ・ブックス)

 2015年に早世した漫画家・イラストレーター、フジモトマサルの仕事をまとめたムックです。
 著書だけでなく、単発のイラストやカット、ノベルティ関係の絵も沢山掲載されているのが嬉しいところです。フジモトマサルのファンは必携じゃないでしょうか。



黒トカゲ (アクションコミックス) (日本語) コミック – 2019/11/12


森下裕美『黒トカゲ』(双葉社アクションコミックス)

 江戸川乱歩の『黒蜥蜴』を翻案したマンガ作品です。翻案とはいいつつも、キャラクターと設定を流用したギャグマンガで、内容は自由に改変されています。ただ、その自由闊達さが楽しい作品になっていますね。
 主人公の黒トカゲ(こっちが主人公です)が天衣無縫で、悪事の合間にいろいろ遊びにいくのが楽しいですね。ライバルの明智小五郎とも一見争いながらも、惹かれあう…というのは原作のエッセンスを汲み取った感じなのでしょうか。
 明智が黒トカゲの部下に化けて組織に侵入する…というも乱歩っぽい味わいですね(というか、もともと明智にそっくり…という設定ではあるのですが)。
 黒トカゲがアザラシのぬいぐるみをいつも持ち歩くのも、著者らしいお遊びです。
 巻末には読みきり短篇「お勢い登場」のマンガ化作品も載っています。こちらもギャグテイストの作品で楽しいです。



第七官界彷徨 (日本語) コミック – 2018/12/8


『第七官界彷徨』(のぞゑ のぶひさ画 尾崎翠原作 太田出版)

 尾崎翠の代表作「第七官界彷徨」をオールカラーで漫画化した作品です。原作のユーモアと不思議な味わいを見事に再現しています。美麗な絵柄で、一コマ一コマも美しい「絵」のようですね。
 尾崎翠の原作は次のようなお話。田舎から上京し、炊事係として兄の一助、二助、従兄の三五郎と共に暮らすことになった赤いちぢれ毛の娘、小野町子。「人間の第七官にひびくような詩」を書きたいと思っている町子が過ごす日常をユーモアを交えて語った不思議な作品です。
 原作は他のメディアに移すのが難そうな、微妙な味わいの作品なのですが、その味わいが見事に再現できているのではないかと思います。繊細な絵柄ですが、原作でも描かれる、ユーモラスな部分も上手く描かれています。蘚(こけ)を育てるため、こやしを煮続ける二助のエピソードは特に楽しいですね。
 主人公町子のほのかな恋愛模様、そして詩を愛する彼女の心境が夢幻的に描かれるシーンも魅力的です。
 原作を読んでから読んでも良し、この漫画化作品から読んでも良し…。上質なコミカライズ作品です。
dainanakannkaihoukou002.jpg dainanakannkaihoukou003.jpg



ヴィジョン 1 (MARVEL) (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2020/1/31


トム・キング、ガブリエル・ヘルナンデス・ウォルタ『ヴィジョン』(石川裕人、今井亮一訳 ヴィレッジブックス)

 悪のアンドロイド、ウルトロンの手によって生み出されながら、彼を裏切り正義のヒーローとなった人造人間(シンセゾイド)のヴィジョン。彼はワシントンD.C.への転任を機に、人間らしい生活をしようと決心し、妻ヴァージニア、娘ヴィヴ、息子ヴィンの三人の人造人間を家に迎え、日常生活を開始します。
 しかしある事件をきっかけに、ヴァージニアの様子がおかしくなり、やがてその影響はヴィジョン本人にも及んでくることになりますが…。

 ヒーローもののアメコミなのですが、「新感覚サイコロジカル・ファミリーホラー」という触れ込みに惹かれ読んでみました。
 人造人間ヴィジョンとその妻ヴァージニアが、「普通の家族」に執着するあまり、それが異様な行動となって、周りと齟齬をきたしていくというサイコ・ホラー作品です。ヒーローであるはずのヴィジョンが、家族を守るために、正義に反する行動まで取るようになる…という流れが異様な論理ではありながら、説得力豊かに描かれます。「家族」を守るため、殺人までが行われるというショッキングな物語になっています。
 後半では、ヴィジョン同様ウルトロンの手で作られた人造人間であり、彼の弟とされるヴィクターも登場し、より複雑な展開になっていきます。ヴィジョンは「家族」を守ることができるのか?
 <アベンジャーズ>に属する作品のため、シリーズに馴染んでいないとわかりにくい箇所もありますが、単体でも十分楽しめる作品になっています。異色のアメコミ・ホラーとしてお薦めの作品です。



ノアの末裔 (日本語) 単行本 – 1986/4/1


高山和雅『ノアの末裔』(青林堂)

 壮大なスケールのSFコミックです。2014年に出た、同著者の『天国の魚(パラダイス・フィッシュ)』(青林工藝社)が大変素晴らしかったので、過去作も読んでみたいと探していましたが、ようやく入手できました。
 一冊で第一部完ということで未完の作品なのですが、そのスケールの壮大さには非常にインパクトがあり、もし完成していたら、名作とされた作品ではないかと思います。
 錯綜した展開の物語で、要約がしにくいのですが、大きく三つの物語が併行して描かれています。一つ目は現代が舞台で、人類の大部分が突然目覚めなくなってしまい、睡眠状態に陥らなかった少数の人間がその謎を探ろうとする物語。
 二つ目は、遙か未来、人類が別の惑星に移住している時代、地球と<外惑星連合>との戦争が描かれます。そして三つ目は古代が舞台、子どもたちのみが超能力を発揮できる一族の王子ラーマが、空を飛ぶ石像に乗り込み「ランカ」と呼ばれる聖地を探し求める…という物語。
 メインとなっているのは、現代のパートでしょうか。眠りに陥らなかった少数の人間たちが集まろうとするものの、暴力的でサイコパス的な男が現れ、彼らの邪魔をしようとします。一方、眠っていた人間たちが徐々に目を覚ましますが、彼らの知性は失われていました…。
 三つの物語を貫く壮大な「意思」とは何なのか?「ノアの末裔」とは何なのか? 謎が謎を呼ぶ展開なのですが、惜しいことに中途で物語は終わってしまっています。様々な時空を挟んで展開するあたり、諸星大二郎の作品を思わせるような部分もあり、未完なのが惜しまれますね。



ダンピアのおいしい冒険(1) (日本語) コミック – 2020/8/7


トマトスープ『ダンピアのおいしい冒険1』(イーストプレス)
 17世紀に実在した探検家・博物学者ウィリアム・ダンピアの生涯を漫画化した作品です。ダンピアの航海が描かれるのですが、それに伴い、博物学的な視点で、訪れた場所の様々な動植物が描かれていきます。
描かれる動植物も、もっぱらそれが食べられるか…という視点から描かれているのが面白いところ。トドやサメなど、当時の人々にとっても食物だと思われていなかった生物を積極的に食べてみようという、主人公ダンピアの知的(?)好奇心が描かれ、サバイバルグルメ漫画といった趣です。
漫画自体も異色の冒険物として面白いのですが、漫画の間に挟まれた歴史コラムと併せて、当時の西洋史や文化的な知識も学べてしまうという優れもの。これはお薦めです。


テーマ:読書 - ジャンル:小説・文学

多重の世界  トーマス・M・ディッシュ『虚像のエコー』
kyozounoeko.jpg
 トーマス・M・ディッシュの長篇『虚像のエコー』(中桐雅夫訳 ハヤカワ文庫SF)は、近未来、アメリカとソ連の冷戦を背景に、物質転送機で複製されてしまった男のサバイバルを描くSF作品です。

 近未来、パノフスキー博士によって開発された物質転移機<鋼鉄の子宮>によって、、人間は一瞬のうちに広大な距離の移動が可能になります。軍事的な可能性を見て取ったアメリカ政府は博士を軟禁し、転移機を軍事的な目的にのみ利用していました。
 重要書類を託され、火星基地へと赴くことになったネイサン・ハンサード大尉は、黒人兵とともに転移機に入りますが、機械が上手く作動しない様子を見て不審の念を抱きます。その直後に壁を通り抜けて、ハンサードの反抗的な部下ワーソウが現れ、黒人兵を射殺していまいます。
 自らも殺されそうになったハンサードは、ワーソウを殺し、命からがら逃げ出しますが…。

 転移機によって複製されてしまった男が生き延びるために冒険を繰り広げる…という物語です。
 どうやら転移機に入った人間は移動される際に、複製体を残すらしいのです。しかも複製は物質的に世界に干渉することができず、現実世界の人間からも認識されることがありません。現実世界の食物や水にも触れることができず、転移機で複製された食物や水を取るしかないようなのです。
 しかもハンサードを襲った連中は、過去の転移で発生した複製たちらしく、どうやら「食物」として、新たに複製された人間たちを狙っていることが分かり、ハンサードは戦慄することになります。

 複製された人間たちは、現実世界の人々からは認識されず、ほとんど「幽霊」といった存在です。かといって生体的な構造は変わらないため、食物をとらなくてはならないし、物理的に傷つけられれば死んでしまいます。食物をめぐって殺し合いをしているらしい、この世界でどうやって生き残るのか?
 もともと決断力に富み、行動的な主人公だけに、積極的に探索を進める主人公ですが、その置かれた環境を考えると絶望的になってしまいます。やがて放浪していたハンサードは、思わぬ人物たちに出会い、彼らから助けを受けることになるのです。

 複製のハンサードのパートとは別に、火星に到着した本体のハンサードのパートでは、危機的状況に陥った米ソ戦が描かれ、核爆弾によって全滅戦争が起きる可能性が高まっていました。
 複製のハンサードにとっては、当座の生存が確保されたところで、いずれは世界全体が滅びてしまうのです。当座の個人的な生存危機と世界全体の危機、ふたつのスケールの違う危機が同時に解決される結末のアイディアにはちょっと驚かされる読者もいるのでは。

 後半では、複製の人間のアイデンティティーや、彼らに魂はあるのか? など、実存的な問題提起部分もあり、読み応えのある作品になっています。そちらの部分では、登場人物間の議論中で、影を失った男を描いたホフマンの某作品も言及されたりするのも面白いところですね。
 後半はちょっとトーンが異なってくるのではありますが、複製体となった主人公がサバイバルを繰り広げる前半はかなり怖く、ホラー度も強い作品になっています。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

とんでもない物語  ジャンニ・ロダーリ『兵士のハーモニカ ロダーリ童話集』

兵士のハーモニカ――ロダーリ童話集 (岩波少年文庫) (日本語) 単行本(ソフトカバー) – 2012/4/27


 ジャンニ・ロダーリ『兵士のハーモニカ ロダーリ童話集』(関口英子訳 岩波少年文庫)は、物語の楽しみに満ちた、モダンな童話作品集です。

 世の中に絶望し大きくならないと決めた女の子の物語「大きくならないテレジン」、やたらと重い小男とやたらと軽い大男の登場する「カルッソとオモッソ」、王様そっくりの男が王の像のふりをするという「王さまへのプレゼント」、森で迷った王子がきこりとなって皆のために働くという「きこり王子」、頭の悪さゆえに捕らえられた王子が同じく捕らえられた姫とともに魔法で脱出しようとする「頭の悪い王子」、生まれつき悲しみを知らない姫の物語「アレグラ姫」、詐欺師が魔法使いの人形を作り人々をだますという「魔法使いガル」、けちな王様が偽物の話す像を売りつけられる「おしゃべりな像」、ギターを上手く弾けない皇帝が怒って国民の音楽を禁止してしまうという「皇帝のギター」、その音色を聞くと皆が平和的になる魔法のハーモニカを手に入れた男の物語「兵士のハーモニカ」、貧しさのあまり親に捨てられてしまった子供たちを描く「ニーノとニーナ」、優しい家具職人が作った小さな動く家に大量の人間が助けを求めてくるという「〈みっつボタン〉の家」、触れたものすべてを黄金に変えるミダス王と彼をさらった盗賊たちの物語「ミダス王と盗賊フィロン」、かって鏡に映った歯医者の鏡像が鏡から飛び出してくるという「鏡からとびだした歯医者さん」、頭のよくない羊飼いが町の噴水の数を数える課題をいいつけられる「羊飼いと噴水」、王位についたライオンの戴冠式にトラブルが発生するという「レオ十世の戴冠式」、秘かに海へと移動する高層マンションを描いた「海へとこぎだした高層マンション」、生まれつき目の見えない王子が語り部の男の言葉によって周りの光景が見えるようになるという「目の見えない王子さま」の18篇を収録しています。

 「どこかで読んだような…」というおとぎばなしのフォーマットを用いながらも、その要素を入れ替えたり、反転させたり、付け加えたりと、アレンジをほどこすことで、まったく自由で新しい童話作品になっています。
 たとえば「ミダス王と盗賊フィロン」などはその典型で、よく知られた神話のエピソードがまた違った物語として生まれ変わっていますね。

 一番印象に残るのは、巻末の「目の見えない王子さま」。目の見えない赤ん坊のメドロ王子は、語り部のゼルビーノが物語の形で周囲の状況を語ることによって、周りの様子を「見る」ことができるようになります。成長した王子はゼルビーノを頼りにするようになりますが、やがてゼルビーノの語る悲しい事実を嫌い、自らで楽天的な「物語」を語り、「現実」を見ないようになっていきます…。
 「物語」で周囲を「見る」王子が、見たい現実しか見ないようになる…という寓意的な作品です。考えさせるところのあるテーマを扱っています。

 登場するアイテムが面白いのが「〈みっつボタン〉の家」。〈みっつボタン〉のあだ名のある家具職人が、仕事を探しに、自分だけが入れるぐらいの小さい家を作り、それに車輪をつけて出かけます。途中で出会う人々が助けを求めてくるままに、家に入れてあげますが、一人しか入らないはずの家には、どんどんと人が入っていきます…。
 「家」は「心」でできている、というテーマの作品です。なにやら魔法めいた家の存在が魅力ですね。

 ちなみに、本書は2012年刊行の新訳なのですが、1986年から1987年に、五分冊で刊行された『ロダーリのゆかいなお話』(安藤三紀夫訳 大日本図書)と同一の作品集だそうです。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

「脱出」する男  ジェイ・R・ボナンジンガ『シック』

シック (日本語) 単行本 – 1996/11/1


 ジェイ・R・ボナンジンガの長篇『シック』(山下義之訳 学習研究社)は、イメージ療法の手違いから、精神ばかりか肉体的にも殺人鬼の人格に変貌するようになってしまった女性の恐怖を描くホラー長篇小説です。

 ストリッパーの女性セーラの脳内で見つかった腫瘍の形に医者は驚きます。それはなんと四角い形をしていました。かってカウンセラーのヘンリーと共に行った心理療法で、苦しみを箱のイメージに閉じ込めた経験を思い出したセーラは、再度ヘンリーの元を訪れ、心理療法を再開します。
 その結果、腫瘍は消滅しますが、その直後からセーラは記憶を頻繁に失うようになり、彼女の周囲では猟奇的な殺人事件が多発するようになっていました。セーラの身体について友人の研究者とともに調査を始めたヘンリーは、セーらがイメージにより自らの体温を操れるようになっていることを知り驚きます。
 セーラの記憶喪失について、ヘンリーは彼女が二重人格障害に陥っているのではないかと考えますが、事実はそれ以上でした。人格ばかりか肉体までが変貌し、屈強な若い男に変身してしまうのです。<脱出芸人>と名乗る彼は、次々と殺人を繰り返します。
 一方、謎の連続殺人を追う、強硬なフランク・ムーン刑事は、セーラこそ犯人だと考え調査を進めていました…。

 腫瘍を治そうとイメージ療法を始めた女性が、殺人鬼の人格を作り出してしまい、それに乗っ取られてしまう…という物語です。この殺人鬼の人格が、精神的なものだけでなく肉体までをも乗っ取り、体自体も男のものに変貌してしまう、というのが特徴です。
 この殺人鬼の人格<脱出芸人>の造形もユニークです。脱出に命をかける芸術家肌の殺人鬼で、厳重な拘束服からも道具を使わずに脱出してしまうのです。怪力でもあり、素手で人間を絞め殺してしまいます。彼の正体が何なのか、目的が何なのかがなかなか分からないため、次に何をしでかすのか分からない怖さがありますね。

 セーラ自身もいつ変身してしまうのか分からず、戦々恐々としています。<脱出芸人>は彼女の関係者を優先的に殺しているらしく、相思相愛となったヘンリーにも危害が及ぶのではないかと考え、彼が側にいることに対して、愛情を持ちながらも心配の念が消えない、というところにもサスペンスがありますね。
 一方、セーラを追う刑事フランク・ムーンも独特の人物で、目的のためなら暴力や賄賂をものともしない強硬な人物として描かれています。
 逃げ出したセーラに対して、このムーン刑事と恋人のヘンリーがそれぞれ彼女の跡を追う、という展開も面白いです。

 作中、奇術の天才として知られるある男の伝記が挿入され、<脱出芸人>はもしかして有名な「あの男」なのではないかという疑いが発生するのも興味深いですね。
 さらに、主人公セーラがイメージ療法に使用するメインイメージが「オズの魔法使い」から来ているところも凝っています。
 ふとしたことから、イメージが頭の中に湧いてしまい、それがきっかけで<脱出芸人>に変貌してしまう…という設定も面白いところです。

 主人公と敵が肉体を共用しているため、どのようにして敵を撃退するのかが皆目つかめず、さらに殺人鬼の正体も目的も分からない、その間にも殺人が続いてしまう…という、終始サスペンスが途切れない展開で、非常に面白いホラー作品になっています。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

取り戻せる過去  ナンシー・エチメンディ『時間をまきもどせ!』

時間をまきもどせ! (日本語) 単行本 – 2008/10/1


 ナンシー・エチメンディの長篇『時間をまきもどせ!』(吉上恭太訳 徳間書店)は、謎の老人から時間を遡れる機械を手に入れた少年が、妹の死を回避するために何度も過去に戻るという、SFサスペンス作品です。

 少年ギブ・フィニーのその一日は最悪でした。友人の少女レイニーと実験をめぐって喧嘩したり、先生へのいたずらがばれてしまったりと、ろくなことがありません。そんな時、家の近くの森で出会った見知らぬ老人は、ギブに不思議な機械を渡します。
 <パワー・オブ・アン>と呼ばれるその機械は、過去に戻り、いろいろなことをやり直せるというのです。半信半疑のギブに対し、老人はそれを使う時が必ず来るといいますが、詳しい使い方を教える前に老人の姿は消えてしまいます。
 帰る途中に<パワー・オブ・アン>を落としてしまったギブでしたが、夜に友人のアッシュと一緒に移動遊園地に行く約束になっていたためにそのまま出かけることになります。両親が出かけるため、妹のロキシーも一緒に遊園地に連れていくことになります。
 遊園地で目を離したすきに、野良犬に追いかけて走り出したロキシーは、トラックにはねられ、昏睡状態になってしまいます。
 妹の事故を防ぐために、ギブはなくした<パワー・オブ・アン>を取戻し、過去に戻ろうと決意しますが…。

 タイムマシン(に類する機械)で、妹の事故を回避しようと試行錯誤する少年を描いた、SFサスペンス作品です。
 時間旅行者らしい老人から機械を譲り受ける主人公ギブですが、何かの制約からか老人は機械に関する説明ができないまま去ってしまいます。恐る恐る機械をいじりながら過去に戻るギブですが、過去の出来事をどこまで変えていいのか、また変えるべきなのかを思い悩むことになります。いくつかの失敗や災難を防いでも大勢は変わらない一方、何の気なしに変えた出来事が仇になり、再び事故が起こってしまうのです。
 妹を救いたいという強い気持ちを持ちながらも、さすがに子供である主人公だけにちょっとした気のゆるみや、友人たちに対する配慮などが原因で、のっぴきならない状態に追い込まれてしまうという展開には説得力がありますね。

 過去を変えたことによって、妹や友人たちが、それぞれの性格ゆえに行動を変えていくところなど、その描写は丁寧で、物語の伏線としても機能しています。
 主人公に機械を渡す謎の老人の正体や、機械を渡す理由などについては、最後まで完全には明かされないのですが、結末に至ってそのあたりに不穏な空気が漂い始めるのも、独特の味わいがあります。SF的な「タイムマシン」という題材を扱いながらも、読み味的にはホラーに近い読み心地の作品になっていることもあり、ブラム・ストーカー賞の児童文学部門受賞作というのも、なるほどという感じです。


テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』『奇妙な味の物語ブックガイド』「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を刊行しました。



最近の記事



最近のコメント



最近のトラックバック



月別アーカイブ



カテゴリー



メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:



ブログ内検索



RSSフィード



リンク

このブログをリンクに追加する