怪奇幻想読書倶楽部 第8回読書会 開催しました
 8月27日の日曜日、JR巣鴨駅前のカフェにて「怪奇幻想読書倶楽部 第8回読書会」を開催しました。出席者は、主催者を含め10名でした。
 テーマは、第1部「世界の終わりの物語」、第2部「リチャード・マシスンの世界」です。参加してくださった方には、お礼を申し上げたいと思います。

 それでは、当日の会の詳細について、ご報告したいと思います。

 今回も、参加者全員のプロフィールをまとめた紹介チラシを作りました。チラシをPDFにしたものを、メールにて事前に配信しています。

 第1部のテーマは「世界の終わりの物語」。何らかの要因により、文明が崩壊したり、人類が絶滅の危機に追いやられる様を描いた作品、いわゆる「破滅もの」について話していこうという企画です。
 当初は、1950~60年代に書かれた破滅ものジャンル作品をメインに話したいなと思っていたのですが、それらの本がほとんど絶版なので、結局、ウィンダムやオールディス、バラードなどの有名作品に話題がしぼられていった感じでしょうか。
 あと、第2部テーマのマシスンの『アイ・アム・レジェンド』も同テーマの作品なので、第1部でも話題に上がりました。
 小説作品だけでなく、テーマに関連するノンフィクションを少し紹介できたのも、良かったかなと思います。

 第2部のテーマは「リチャード・マシスン」の世界。小説・映像の分野で活躍したアメリカの作家、リチャード・マシスンの作品を見ていこうという試みです。
 もともとマシスンの作品を読み込んでいた人のほか、今回初めて読んだ人もおり、いろいろな意見が出て盛り上がりました。
 ちょっと古びているという意見もあれば、古びている中にも普遍的なテーマが感じられるという意見もありました。エンターテインメントながら、もともと作品にテーマ性が強い作家なので、『激突』『縮みゆく男』『種子まく男』『運命のボタン』など、個々の作品についてもいろいろ話せたのではないかなと思います。

 また、参加者のshigeyukiさんには、『ウィアード・テイルズ』や、ホジスンの『ナイトランド』の短縮版『X氏の夢』、シルヴィア・タウンゼント・ウォーナーの『猫のゆりかご』の原書などを持ってきていただきました。普段あまり見ることのできない希書を見ることができ、眼福を得ることができました。お礼を申しあげておきたいと思います。

 それでは、以下主だったトピックを順不同で並べていきます。


●第1部
・リチャード・マシスン『終わりの日』について。太陽の影響により人類が死滅することがわかった世界で、自暴自棄になっていた若者たちを描く短篇。結末は感動的。

・ジョン・クリストファー作品について。災害後の世界がかなりシビアに描かれる。ハッピーエンドにならないところがイギリス的というべきか。『草の死』『大破壊』など。

・J・T・マッキントッシュ『300:1』について。地球が住めなくなるため、他惑星に移住を計画するも宇宙船に乗り込めるのは全人類の300人に1人、という話。地球を脱出するまでの混乱を描く部分がリアルでインパクト大。

・スティーヴン・キングの破滅もの作品について。『霧』『セル』など。『霧』はラストで少し希望が見えるなど、完全な絶望に陥らせないところが前向き。

・ジョン・ウィンダム『トリフィド時代』について。天体の影響により盲目になった人類を、放たれた吸血植物が襲うという話。同著者の『さなぎ』や『海竜めざめる』もそうだが、ウィンダム作品では、人類が危機に立たされていても、当事者意識が薄く「観察者」的な立場を取る主人公が多い。

・「心地よい破滅もの」について。オールディスが提唱した概念。破滅的な状況に追い込まれても、事態を傍観していたり、無人の町で好き勝手な行動をしたりするような作品を言う。具体的にはウィンダム作品などを想定しているらしい。

・ブライアン・W・オールディス『地球の長い午後』について。巨大植物が繁茂し、文明が失われた地球を舞台にした作品。似たようなテーマだが、トマス・M・ディッシュ『人類皆殺し』の方は、殺人植物に襲われてどんどんと人間が死んでいくという、救いのない話。

・トマス・M・ディッシュ『降りる』について。永遠にエスカレーターを降り続ける男を描いた寓意的短篇。

・J・G・バラード『結晶世界』について。単なる破滅ものというより、滅びの美を描いたデカダンな作品だと思う。

・J・G・バラード『狂風世界』について。狂風で全てが吹き飛ばされてしまう世界を描いた作品。後半に、大富豪が風に対抗する巨大建造物を作るが、結局吹き飛ばされてしまうという展開がある。

・J・G・バラード『燃える世界』について。雨が降らなくなり、水がなくなっていく世界が舞台。結末で事態が改善する。

・J・G・バラード『沈んだ世界』について。海面が上昇し、都市が水に沈んだ世界が舞台。主人公たちは生活が成り立たなくなっても、なぜか特定の場所にとどまる。後半はなんだかスピリチュアルな話に。

・ブライアン・エヴンソン作品について。短篇でも、世界の破滅感が色濃く感じられる

・つくみず『少女終末旅行』について。終末を迎えた世界を少女たちがめぐっていくという、ロードムービー風コミック。世界そのものへの興味はあまり感じられないところが特色。

・日本の破滅ものは「心地よい破滅もの」タイプが主流ではないか?

・デュ・モーリア『鳥』について。突然鳥が人間を襲い始めるという話。理由も何も説明されないところが不気味。

・シャーリイ・ジャクスン『日時計』について。世界が終末を迎えるという予言を聞いた家族が繰り広げる模様を描いた作品。実際に終末が訪れたかどうかもわからないという、象徴的な「終わりの物語」。

・W・H・ホジスン『ナイトランド』について。遠未来に、異次元からの怪物が徐々に侵入しつつある世界で、細々と生き延びる人類を描いた作品。終末的な世界観が素晴らしい。

・H・G・ウェルズ『タイムマシン』について。後半、主人公は、遠い未来の地球の黄昏に出会う箇所がある。

・コーマック・マッカーシーについて。『ザ・ロード』『チャイルド・オブ・ゴッド』など。

・マーガレット・アトウッド『オリクスとクレイク』について。

・キングの『ザ・スタンド』より、その影響を受けているマキャモン『スワン・ソング』の方が面白い? 『スワン・ソング』はかなり好き嫌いの分かれる作品だと思う。マキャモンなら、短篇の方が面白い。『ブルー・ワールド』、『ベスト・フレンズ』など。

・グレッグ・ベア『ブラッド・ミュージック』について。進化した細胞によって、人類が変貌してしまう世界を描いた作品。最終的には物理的な世界まで崩壊してしまうのがすごい。

・ハーラン・エリスンは、アイディアの権利についてうるさい。映像作品については言いがかりに近いものもあると思う。

・エドガー・バングボーン『デイヴィー』について。

・しりあがり寿『方舟』について。洪水になった世界で人類の滅亡を描く作品。方舟が企業の宣伝として作られるなど、最後まで人間が自分たちの滅亡を信じられないというスタンスが面白い。

・厳密には破滅ものではないが、現代SFでは、人間が精神エネルギー体になってしまったり、仮想世界の住人になってしまったりする作品がある。

・飛浩隆作品について。寡作だが、どれも質の高い作品が揃っている。『グラン・ヴァカンス』は、仮想世界を扱っている作品だが、独自の世界観が魅力。作者の言葉の使い方は独特で、特に造語力が素晴らしいと思う。

・破滅ものフィクション(特に映画)では、インフラについて描かれることが少ない。電力はどうなっているのかとか、人がいなくなった原発はどうなっているのかとか。ドイツのゾンビ映画『END』では、ゾンビと同時に、原発の被害の影響が描かれていて面白かった。

・映画版『アイ・アム・レジェンド』では、主人公が住んでいる家に実験室やシェルターなど、すごい設備が整っているが、そのあたり説得力が足りない気がする。

・トーマス・トウェイツ『ゼロからトースターを作ってみた結果』について。精製されたパーツもなく、原材料からトースターを作れるのか? という試みを記録したノンフィクション作品。結果的に品物は作れたものの、まともなものにはならなかった。

・現代社会では、どんなに知識があっても、個人ではまともな製品を作ることは難しい。

・ルイス・ダートネル『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』について。文明が壊滅状態になった後、再起動をするために必要な知識を記したマニュアルを作るにはどうしたらいいか? というテーマのノンフィクション。文明が滅ぶパターンを「マッドマックス型」と「アイ・アム・レジェンド型」に分類しているのが面白い。

・ジェローム・ビクスビイ『きょうも上天気』について。超能力を持った少年を描いたホラー短篇。『ミステリーゾーン』劇場版『トワイライトゾーン』と映像化されているが、最初の『ミステリーゾーン』版の方が想像力を刺激する作りで面白かった。

・ナイジェル・ニール『エンバンブエの計算』の紹介。アフリカの呪術師が時間の停止を予言するが…という話。事態が、老婦人たちの読書会の席上で伝聞的に語られるという技巧的な作品。よく読まないと、結末がわかりにくい。


●第2部
・『激突』について。ふとしたきっかけからトラックに追いかけられ殺されそうになる男の話。追ってくる車の運転手について全くわからないのが不気味。意外と短い中篇なのに、映画化作品はサスペンスが途切れないのがすごい。

・マシスンは、デュ・モーリア原作のヒッチコック映画『鳥』の脚本家候補だったが、あまり鳥を見せない方がいい、と言ったらしい。

・『縮みゆく男』について。放射能の影響で体が少しづつ縮んでゆく男の話。主人公の男や人間としての尊厳が失われていく過程がつらい。後半、極小になってからのサバイバル描写は素晴らしい。

・映画版『縮みゆく人間』について。1950年代の映画なので、特撮は今見ると弱いが、物語自体には今でも魅力がある。小説に比べ、小さくなってからのサバイバル描写の方に比重がある。また小説では時系列がカットバックになっていたが、映画では時系列順に語られている。棚の上に乗っている食料を手に入れるための主人公の行動が、工夫に満ちていて面白かった。

・『縮みゆく人間』の続編映画の構想では、主人公の妻も縮んでゆくという話だったらしい。

・マシスン作品の主人公は、意外と嫌な性格の人物が多い。『縮みゆく男』でも、妻はよくできた人だが、夫(主人公)はかなり身勝手に感じる。

・『アイ・アム・レジェンド』(『地球最後の男』)について。ウィルスによる吸血鬼化で世界が滅ぶという物語。後半のひねりが秀逸。作者はドラキュラ映画から、この作品を発想したらしい。後のロメロのゾンビ映画に影響を与えたということでも里程標的な作品といえる。

・藤子・F・不二雄『流血鬼』について。マシスン『地球最後の男』のオマージュ短篇漫画。結末を真逆にしてハッピーエンドにしているところが秀逸。作品に登場するウイルスの名前が「マチスンウイルス」になっているところに、原作者への敬意がうかがえる。

・マシスンは時代的にSF作品を多く書いたように思われているが、本質はホラー的な資質を持つ作家だと思う。少数だが、怪奇小説誌『ウィアード・テイルズ』にも作品を寄せていた。

・『地獄の家』について。モダンホラーの傑作。屋敷を訪れた人間に対する攻撃力がものすごい。取り憑いていた霊がやたらと人間的なのがまたモダン。

・スティーヴン・キングには、マシスンの影響を感じる作品がいくつかある。『ミルクマン』『人間圧搾機』『痩せゆく男』『ニードフル・シングス』など。

・『愛人関係』について。トラウマがあり虚言癖のある女性をめぐるサスペンス。愛する女が、本当は殺人犯か疑いながら振り回される男が主人公。今読んでも、非常に面白い作品。

・『深夜の逃亡者』について。人妻に粘着するストーカーを描いた作品。犯人が恨んでいる元友人夫婦を監禁するのだが、この夫婦の妻の方が浮気性の悪女で、やたらと存在感がある。後半では、ストーカーの話よりも、悪女夫妻が中心のような展開に。

・『ある日どこかで』について。ロマンティックなタイムトラベルロマンス。ジャック・フィニィへのオマージュ? 過去へ行く手段が、その時代に行ったと思い込むという、フィニィ式タイムトラベルになっているのが特徴。タイムトラベルをしたという主人公の語りが手記になっていて、真実性がぼかされているのがマシスンらしい。
映画版の方がロマンス度が高い。

・『奇跡の輝き』について。自殺して地獄に行ってしまった妻を救おうとする男の話。スピリチュアル色が濃いファンタジー。死後の世界は全てが心の持ちよう、という設定が興味深い。この作品でも全体が手記になっている。

・『闇の王国』について。マシスン晩年のダーク・ファンタジー。戦友の故郷を訪れた男が、魔女や妖精たちと出会い恋仲になるという作品。妖精やその王国の描かれ方が妙にステレオタイプに描かれているが、そのあたり作者の意図的なものだとすると、相当に技巧的な作品。

・『アースバウンド 地縛霊』について。夫婦の仲を修復するために別荘を訪れた男が魅力的な女性の霊に取り憑かれるという物語。表面上はエロティックな要素が濃いが、本質は、霊を含めた登場人物のそれぞれのどろどろとした情念を描く作品だと思う。

・『奇術師の密室』について。マシスン後期のサスペンス。復讐のために大がかりな奇術を行う奇術師の話。どんでん返しの連発がものすごい。読後の印象はサスペンスというよりホラー。

・ソノラマ文庫から出た短篇集『モンスター誕生』は、表題作のネタバレになってしまっているのではないか?

・マシスンはアイデンティティーの恐怖についてテーマにすることが多い。具体的には「私だけが知っている」パターンと「私だけが知らない」パターンがあるように思う。
前者は『陰謀者の群れ』『蒸発』、後者は『機械仕掛けの神』『次元断層』など。

・『種子まく男』について。周りの人間に悪意をばらまいていく男の物語。憎悪や恨みではなく、冷静に淡々と仕事をこなしていく感じが実にいやらしい作品。『ヒー・イズ・レジェンド』でのトリビュート短篇では、種子まく男のライバル的存在が登場するが、ちょっと興醒め。

・『人生モンタージュ』について。人生が映画のようにダイジェストになってしまった男の物語。映像分野でも活躍したマシスンらしい作品。

・『二万フィートの悪夢』について。飛行機を襲う怪物にひとりだけ気付いた男を描いた作品。『ミステリーゾーン』及び映画版『トワイライトゾーン』にて映画化されている。『ミステリーゾーン』版の怪物の造形はユーモラスだった。

・『不吉な結婚式』について。迷信にこだわる男の皮肉な結末を描いた作品。ブラック・ユーモアが強烈。

・『死の部屋のなかで』について。出先のレストランで消えてしまった夫を捜す妻の物語。出だしの興味は強烈だが、現実的なオチがついてしまっているのが残念。ウールリッチのサスペンス作品にも似たようなテーマがあったり、有名な都市伝説にも同じテーマのものがある。

・『心の山脈』について。マシスンのクトゥルー風作品。淡々としているところが面白い。

・『リアル・スティール』について。原作は落ちぶれた男の哀愁ただよう話だが、映画化作品は題材だけ借りて、全く違う話になっていた。

・『狙われた獲物』について。ヴードゥ人形に襲われる女性の話。『激突』と同じくシンプルなテーマでありながら、サスペンスは強烈。

・『一杯の水』について。渇きを覚えた男を描いた作品。こんなテーマでサスペンスが発生するのはすごい。

・『天衣無縫』について。ある日フランス語を始め、様々な知識が頭からあふれてくるようになった男が主人公。オチが思いもかけないもので感心した。ドラマでの映像化作品もあり。

・『蒸発』について。主人公の周りの存在が次々と「蒸発」していくという物語。マシスンらしさが非常によく出た秀作。

・『長距離電話』について。古典的な風格のある怪談作品。この時代の作品を読むと。交換手が登場するのが味わいがある。

・『不法侵入』について。夫の出張中に妊娠した妻の物語。浮気を否定する妻が妊娠したのはなぜなのか? という作品。映像化の際には『衝撃の懐妊・私は宇宙人の子を宿した』という強烈なタイトルに。

・『激突』の巻末に書かれた小鷹信光の解説は素晴らしい。1970年代に書かれているが、今でも十分に通用するマシスン論になっている。

・小鷹信光の仕事について。必ず一次資料に当たっていたというその仕事ぶりには頭が下がる。

・『運命のボタン』について。ボタンを押すと、見知らぬ者が死に、その代わりに大金が手に入る。あなたは押しますか? という話。ボタンを押すところまではともかく、最後のオチが非常にマシスンらしい。映画化作品は、原作とは似ても似つかぬ作品になっていてびっくりした。意外にジェイコブズ『猿の手』に似ている?


●二次会
・出版点数は年々減っている。海外翻訳ものはさらに少なく、文庫が出ても絶版になるまでのサイクルが異常に早まっている。

・シャーリイ・ジャクスンについて。一番傑作だと思う作品は? 『丘の屋敷』『ずっとお城で暮らしてる』『くじ』『日時計』など。

・ディーノ・ブッツァーティについて。短篇はエンタメ度高し。長篇『タタール人の砂漠』は難しい。

・アドルフォ・ビオイ=カサレスについて。『モレルの発明』『メモリアス』など。

・イタロ・カルヴィーノについて。作品によってジャンルが全然違う。《我らが祖先》三部作はどれも面白い。

・ステファン・グラビンスキについて。怪奇小説ながら、どこか暖かみがあるところが魅力。

・ケン・リュウ作品は面白い。

・ラヴクラフトの訳文について。創元版全集の訳文は意味がとりにくい箇所が多い。

・世界幻想文学大系の造本について。装丁・造本は素晴らしい。ただ、本文に柱を入れたことによって、文字が小さくなったりするなど、可読性は悪い面がある。

・怪奇幻想小説の叢書について。《魔法の本棚》《アーカムハウス叢書》《ドラキュラ叢書》など。

・ブラム・ストーカーについて。ドラキュラ一作の人? 他の作品は微妙な出来。

・レオ・ペルッツ作品について。面白い作品が多いと思うが、人によって全然合わない人もいる。

・少年漫画におけるバッシングについて。

・楳図かずおと伊藤潤二について。

・エドワード・ゴーリーについて。

・J・G・バラードとデカダンスについて。デカダンは、普通自分だけの小世界を作るものだが、バラードにおいては、それが陽光のもとに出たような開かれたものになっているのが異色。

・フランスの幻想小説について。入門書になったのは? 澁澤龍彦編の『怪奇小説傑作集4』であるという人が多いと思う。

・アルフォンス・アレについて。

・カルロス・フエンテス作品について。『アウラ』や『チャック・モール』は面白い。『遠い家族』は難解だった。

・フリオ・コルタサルについて。短篇は面白いが、けっこう読みにくい。『石蹴り遊び』は難解。

・ガルシア=マルケス作品について。幻想的な要素の入った作品が多い。『百年の孤独』は傑作。『エレンディラ』など。

・レ・ファニュ『ドラゴン・ヴォランの部屋』について。怪奇小説というよりはゴシック。ムード醸成が素晴らしい。

・ルイージ・ピランデルロについて。メタな趣向の作品がある。

・フリードリヒ・デュレンマットについて。作風はカフカ的?

・ホフマンについて。『砂男』『悪魔の霊薬』は傑作。創土社版全集の訳文は読みにくい。

・ドイツの幻想小説について。エーヴェルス、マイリンクなど。

・ベルギーの幻想小説について。ジャン・レイ、トーマス・オーウェン、ロニー兄など。
・アレクサンドル・グリーンについて。

・アンソロジーの好き嫌いについて。アンソロジーに収録された短篇一つで、作家性を判断するのは難しい。

・ロード・ダンセイニについて。ファンタジーのイメージが強いが、ミステリ、SF、ユーモアなど多彩なジャンルの作品を書いている。巨匠といっていい作家だと思う。

・エドガー・アラン・ポオについて。アメリカの小説の原型を作ったといっていい作家。ミステリだけでなく、SFや怪奇小説など、多様な作品がある。

・吸血鬼を扱った作品について。『ドラキュラ』『カーミラ』など。

・ディケンズ『信号手』について。古典的怪談の名作。ディケンズの短篇にはホラー要素のある作品がいくつかある。

・怪奇小説の洋書の古書価について。ラヴクラフト、ホジスン作品はかなり高い。ブラックウッドは意外と安い。

・ゴースト・ハンターものについて。ジョン・サイレンス、カーナッキ、ジュール・ド・グランダンなど。

・ジャック・ロンドン作品について。ボクシングもの、多人種もの、冒険者、怪奇もの、SFなど、作品の幅は非常に広い。『ジャック・ロンドン大予言』に収められた作品は、社会主義的な色彩が濃いが面白い。

・レイ・ブラッドベリ作品について。やはり初期の作品に傑作が集中している。『火星年代記』『黒いカーニバル』『10月はたそがれの国』『刺青の男』『よろこびの機械』など。『キリマンジャロ・マシーン』あたりからは、質が落ちてきている気がする。ブラッドベリは、若い頃に読んだかどうかでも、多少評価は変わってくると思う。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

9月の気になる新刊と8月の新刊補遺
8月26日刊 本の雑誌編集部編『別冊本の雑誌 古典名作本の雑誌』(本の雑誌社 予価1728円)
8月28日発売 『ナイトランド・クォータリーvol.10 逢魔が刻の狩人』(アトリエサード 予価1836円)
8月29日刊 ポール・ウィリアムズ『フィリップ・K・ディックの世界』(河出書房新社 予価3024円)
9月4日刊 『月岡芳年 月百姿』(青幻舎 予価2484円)
9月6日刊 小酒井不木『疑問の黒枠』(河出文庫 予価864円)
9月6日刊 鼓直編『ラテンアメリカ怪談集 新装版』(河出文庫 予価842円)
9月6日刊 スティーヴン・キング『死の舞踏』(ちくま文庫 予価1620円)
9月8日刊 C・S・ルイス『ナルニア国物語5 ドーン・トレッダー号の航海』(光文社古典新訳文庫)
9月11日刊 レイ・ヴクサヴィッチ『月の部屋で会いましょう』(創元SF文庫 予価1188円)
9月12日刊 日下実男『絵ときSF もしもの世界 復刻版』(復刊ドットコム 予価3996円
9月20日刊 アメリア・グレイ『AM/PM』(河出書房新社 予価1728円)
9月21日刊 フィリップ・K・ディック『去年を待ちながら 新訳版』(ハヤカワ文庫SF 予価1123円)
9月21日刊 G・K・チェスタトン『ブラウン神父の醜聞 新版』(創元推理文庫 予価799円)
9月23日刊 木犀あこ『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』(角川ホラー文庫 予価562円)
9月23日刊 名梁和泉『二階の王』(角川ホラー文庫 予価821円)
9月25日刊 『ミステリマガジン11月号 幻想と怪奇 ノベル×コミック×ムービー』(早川書房 1296円)
9月29日刊 柳下毅一郎監修『J・G・バラード短編全集4』(東京創元社 予価3888円)

9月下旬発売 創元推理文庫・SF文庫 復刊フェア
ウィリアム・アイリッシュ『黒いカーテン』
F・W・クロフツ『チョールフォント荘の恐怖』
エリザベス・フェラーズ『猿来たりなば』
マーガレット・ミラー『殺す風』
ルース・レンデル『死が二人を別つまで』
中野善夫・吉村満美子編訳『怪奇礼讃』
平井呈一『真夜中の檻』
ロバート・A・ハインライン『宇宙の呼び声』
エドガー・R・バローズ『時間に忘れられた国』
ジェイムズ・P・ホーガン『仮想空間計画』


 『ナイトランド・クォータリー』最新号は、ゴースト・ハンターものの特集。翻訳は、グリン・オーウェン・バーラス、カイトリン・R・キアナン、アラン・バクスター、H・S・ホワイトヘッド、キム・ニューマン、シーベリー・クインらの作品を収録とのこと。

 鼓直編『ラテンアメリカ怪談集 新装版』は、1990年代初めに出ていた河出文庫の怪談集シリーズ、ラテンアメリカ編の新装版。「怪談」というよりは、奇想にあふれた異色短篇集といった趣のアンソロジーで、何より「お話」が面白いのが魅力です。
 収録作品を挙げておきます。

レオポルド・ルゴネス『火の雨』
オラシオ・キローガ『彼方で』
ホルヘ・ルイス・ボルヘス『円環の廃墟』
M・A・アストゥリアス『リダ・サルの鏡』
シルビナ・オカンポ『ポルフィリア・ベルナルの日記』
マヌエル・ムヒカ=ライネス『吸血鬼』
エンリケ・アンデルソン=インベル『魔法の書』
ホセ・レサマ=リマ『断頭遊戯』
フリオ・コルタサル『奪われた屋敷』
オクタビオ・パス『波と暮らして』
アドルフォ・ビオイ=カサレス『大空の陰謀』
アウグスト・モンテローソ『ミスター・テイラー』
エクトル・アドルフォ・ムレーナ『騎兵大佐』
カルロス・フェンテス『トラクトカツィネ』
フリオ・ラモン・リベイロ『ジャカランダ』

 この怪談集シリーズ、他にいろいろな国のものがあり、どれも特色のあるアンソロジーでした。このシリーズについては、昔書いた簡単な紹介を載せておきます。

「怪談集」とはいうけれど…  -河出文庫『怪談集』シリーズ-

 スティーヴン・キング『死の舞踏』は、キングが影響を受けたホラー作品について語った大部の評論書。小説作品だけでなく、ラジオドラマやテレビ、映画などへの言及が非常に多いのが特徴ですね。
 何度か復刊されていますが、今回は「2010年版へのまえがき」が新たに付くとのことです。

 木犀あこ『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』は、第24回日本ホラー小説大賞・優秀賞受賞作品。「新人ホラー作家の熊野惣介は、毒舌担当編集者・善知鳥と小説のネタ探しのため心霊スポットを巡るなかで、奇妙な音を出す霊と遭遇し――。霊の見える作家と見えない編集者が「究極のホラー小説」を目指す!」という話だそうで、気になる作品です。

 名梁和泉『二階の王』は、引きこもりをめぐる家庭内の不和が世界の危機につながっていくという、何とも奇妙なテーマの作品で、なかなか面白い作品でした。2015年度刊行作品の文庫化ですが、オススメしておきます。

 今年も、創元推理文庫・SF文庫の復刊フェアの季節になりました。お勧めは、中野善夫・吉村満美子編訳『怪奇礼讃』と平井呈一『真夜中の檻』でしょうか。
 『怪奇礼讃』は、クラシカルなゴースト・ストーリーのアンソロジー。この本でしか読めない作品が多数収録されています。
 『真夜中の檻』は、怪奇小説の名訳者、平井呈一の創作とエッセイを集めた本です。『怪奇小説傑作集』の愛読者だった人なら、必読でしょう。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

忌まわしき祭礼  トマス・トライオン『悪魔の収穫祭』
悪魔の収穫祭〈上〉 (角川文庫)悪魔の収穫祭〈下〉 (角川文庫)
 広告会社の重役ネッドは仕事に疲れ、たまたま見つけた田舎の村コーンウォール・クームに、妻と娘とともに移住することになります。牧歌的と見えた村の生活ですが、やがてそこに住む人々は因習に囚われており、文明の利器に対しても否定的だということがわかってきます。
 村には、村人たちの主な生業である、とうもろこしに関する収穫祭があり、その祭りでは「とうもろこし王」と「とうもろこし姫」が決められます。「とうもろこし王」に選ばれれば、いろいろな恩恵を受けられるというのです。しかし前回の「とうもろこし王」は事故で死んでおり、その婚約者も自殺しているといいます。不審に思ったネッドは、情報を得ようと、村人たちから話を聞こうとしますが、なぜか人々ははっきりとした話をしてくれません…。

 トマス・トライオン『悪魔の収穫祭』(広瀬順弘訳 角川ホラー文庫)は、閉鎖的な村を舞台にじわじわと恐怖を盛り上げてゆく、モダンホラー作品です。
 作品の前半は、主人公ネッドたちが暮らす村の生活と人々との交流が描かれます。劇的な事件は起こらないものの、村全体が非常に保守的で閉鎖的だということが詳細に描写されていくのです。医者や警察といった公権力はまともに働いておらず、人々は昔から変わらない農業に従事しています。農業にトラクターを導入することさえ反対するという保守的な村人たち。
 医者のいないこの村では、ウィドー・フォーチュンと呼ばれる年配の女性が、医療や祭事をとりしきっています。ウィドー・フォーチュンが、喘息で死にかけた主人公の娘の命を助けたことから、妻と娘は村に溶け込んでいきます。
 隣人の女性との浮気めいた話をきっかけに、夫婦の信頼感も崩れていくなか、ネッドは村やその祭事に不信感を持ち、過去の事件の聞き込みを始めます。前回の「とうもろこし王」はどのように死んだのか? 「とうもろこし姫」はなぜ自殺に追い込まれたのか?
 やがて村に伝わる祭事のいまわしい秘密が明らかになっていくのです。

 1973年の作品なのですが、正直、村の秘密や祭事の真相は、現代の読者からすると、それほど強烈なものではありません。ただ、表面上、木訥で親切に見えた村人たちの本心がわかる後半の不気味さは比類がありません。村人たちの間の反目や対立などが、実際は目に見えていた通りではなく、まるで違っていたことがわかるのです。
 序盤から散りばめられた細かな伏線が、結末に至って結びつくという、練られた構成であり、完成度の非常に高い恐怖小説です。

 ちなみに、作者のトマス・トライオン(1926-1991)は元俳優で、何冊かの著作を残しました。邦訳されている中でホラーに属する作品は、この『悪魔の収穫祭』の他にもう一冊『悪を呼ぶ少年』(深町眞理子訳 角川文庫)があります。こちらもかなりの傑作です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

怪奇幻想読書倶楽部 第8回読書会 参加者募集です
 2017年8月27日(日曜日)に「怪奇幻想読書倶楽部 第8回読書会」を開催いたします。若干名の参加メンバーを募集しますので、参加したい方がおられたら、連絡をいただきたいと思います。
 連絡いただきましたら、改めて詳細をメールにてお送りいたします。

お問い合わせは、下記アドレスまでお願いいたします。
kimyonasekai@amail.plala.or.jp


開催日:2017年8月27日(日曜日)
開 始:午後13:30
終 了:午後17:30
場 所:JR巣鴨駅周辺のカフェ
参加費:1500円(予定)
テーマ
第1部:世界の終わりの物語
第2部:リチャード・マシスンの世界

※「怪奇幻想読書倶楽部」は、怪奇小説、幻想文学およびファンタスティックな作品(主に翻訳もの)についてのフリートークの読書会です。
※個人の発表やプレゼンなどはありません。話したい人が話してもらい、聴きたいだけの人は聴いているだけでも構いません。
※基本的には、オフ会のような雰囲気の会ですので、人見知りの方でも、安心して参加できると思います。

第1部のテーマは「世界の終わりの物語」。様々な要因により破滅を迎えた世界についての物語を集めてみたいと思います。
 例えば、寿命を迎えた地球を描くH・G・ウェルズ『タイムマシン』やW・H・ホジスン『ナイトランド』、人類がほぼ吸血鬼になってしまった世界を描くリチャード・マシスン『アイ・アム・レジェンド』、人間が結晶化してゆく世界を描いたJ・G・バラード『結晶世界』、植物に襲われる世界を描いたジョン・ウィンダム『トリフィド時代』、山椒魚によって人類が滅亡するカレル・チャペック『山椒魚戦争』など。
 滅んだ世界、あるいは滅びつつある世界で人間はどう考え、どう生きるのか? 終わりを迎えた世界についての物語の魅力とは何なのかを考えてみたいと思います。

 第2部は「リチャード・マシスンの世界」。アメリカの作家リチャード・マシスン(1926-2013)の作品群を見ていきたいと思います。
 ジョージ・A・ロメロのゾンビ映画の原型となった『アイ・アム・レジェンド』、幽霊屋敷ものの新機軸『地獄の家』、ノスタルジック・ファンタジーの名作『ある日どこかで』、縮み続ける男を描いたSF作品『縮みゆく人間』など、エンターテインメントの歴史に名を残す名作長編のほか、『13のショック』『激突』『不思議の森のアリス』『運命のボタン』などの短篇集には、ホラー・SFの名短篇が多く収められています。
 また、オムニバス・ドラマシリーズ《トワイライトゾーン》で脚本を手がけたほか、映画の脚本、自作の映画化など、映像分野でも多くの仕事を残しています。
 小説・映像の分野で大きな軌跡を残したマシスンの作品について、話し合いたいと思います。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

ラヴクラフト『文学と超自然的恐怖』邦訳リスト
4480430113幻想文学入門―世界幻想文学大全 (ちくま文庫)
東 雅夫
筑摩書房 2012-11-01

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 H・P・ラヴクラフトについての読書会用に作成した資料なのですが、せっかく作ったので公開したいと思います。
 H・P・ラヴクラフト『文学と超自然的恐怖』は、ラヴクラフトが実際に読んだ怪奇幻想小説を紹介してゆくという、ブックガイド的なエッセイです。その中から、邦訳があるもののみをリストアップして、邦訳文献を併記しました。

※テキストは、植松靖夫訳(東雅夫編『世界幻想文学大全 幻想文学入門』ちくま文庫収録)を使用しました。
※邦訳があるもののみのリストです。
※書名は、『文学と超自然的恐怖』の表記ではなく、邦訳されているタイトルを使用しています。


ダニエル・デフォー(1660-1731)
『ミセス・ヴィールの幽霊』(平井呈一訳 平井呈一編『恐怖の愉しみ』創元推理文庫収録)

ホーレス・ウォルポール(1717-1797)
『オトラント城奇譚』(平井呈一訳 荒俣宏/ 紀田順一郎編『怪奇幻想の文学3 戦慄の創造』新人物往来社収録)

クレアラ・リーヴ(1729-1807)
『イギリスの老男爵』(井出弘之訳 国書刊行会)

ヨーハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(1749-1832)
『コリントの許婚』(竹山道雄訳 須永朝彦編『書物の王国12 吸血鬼』国書刊行会収録)

ウイリアム・ゴドウィン(1756-1836)
『ケイレブ・ウイリアムズ』(岡照雄訳 白水U ブックス)

ウイリアム・ベックフォード(1760-1844)
『ヴァテック』(私市保彦訳 国書刊行会)

アン・ラドクリフ(1764-1823)
『イタリアの惨劇』(野畑多恵子訳 国書刊行会)

サー・ウォルター・スコット(1771-1832)
『老吟遊詩人ウィリーの物語』(鈴木英夫訳 小池滋/ 富山太佳夫編『悪魔の骰子』国書刊行会収録)

チャールズ・ブロックデン・ブラウン(1771-1810)
『ウィーランド』(志村正雄訳 国書刊行会)
『エドガー・ハントリー』(八木敏雄訳 国書刊行会)

マシュー・グレゴリー・ルイス(1775-1818)
『マンク』(井上一夫訳 国書刊行会)
『古城の亡霊』(上坪正徳訳『ゴシック演劇集』国書刊行会収録)

ジェーン・オースティン(1775-1817)
『ノーサンガー・アビー』(中野康司訳 ちくま文庫)

フリードリヒ・ド・ラ・モット・フーケ(1777-1843)
『水の精(ウンディーネ)』(識名章喜訳 光文社古典新訳文庫)

チャールズ・ロバート・マチューリン(1782-1824)
『放浪者メルモス』(富山太佳夫訳 国書刊行会)

フレデリック・マリヤット(1792-1848)
『人狼』(宇野利泰訳『怪奇小説傑作集2』創元推理文庫収録)

オノレ・ド・バルザック(1799-1850)
『神と和解したメルモス』(私市保彦/ 加藤尚宏編『バルザック幻想・怪奇小説選集3 呪われた子・他』水声社収録)
『あら皮 欲望の哲学』(小倉孝誠訳 藤原書店)
『セラフィタ』(沢崎浩平訳 国書刊行会)
『ルイ・ランベール』(私市保彦訳『神秘の書』水声社収録)

ワシントン・アーヴィング(1783-1859)
『ドイツ人学生の冒険』(志村正雄訳 志村正雄編『米国ゴシック作品集』国書刊行会収録)

メアリ・シェリー(1797-1851)
『フランケンシュタイン』(森下弓子訳 創元推理文庫)

ヴィルヘルム・マインホルト(1797-1851)
『琥珀の魔女』(前川道介/ 本岡五男訳 創土社)

ヴィクトル・ユゴー(1802-1885)
『氷島奇談』(島田尚一訳『世界の文学7』中央公論社収録)

エドワード・ブルワー=リットン(1803-1873)
『幽霊屋敷』(平井呈一訳 平井呈一編『怪奇小説傑作集1』創元推理文庫収録)
『不思議な物語』(中西敏一訳 国書刊行会)
『ザノーニ』(富山太佳夫/ 村田靖子訳 国書刊行会)

プロスペル・メリメ(1803-1870)
『イールのヴィーナス』(杉捷夫訳 東雅夫『世界幻想文学大全 怪奇小説精華』ちくま文庫収録)

エドガー・アラン・ポオ(1809-1849)
『壜のなかの手記』(阿部知二訳『ポオ小説全集1』創元推理文庫収録)
『ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』(大西尹明訳『ポオ小説全集2』創元推理文庫収録)
『メッツェンガーシュタイン』(小泉一郎訳『ポオ小説全集1』創元推理文庫収録)
『群衆の人』(中野好夫訳『ポオ小説全集2』創元推理文庫収録)
『赤死病の仮面』(松村達雄訳『ポオ小説全集3』創元推理文庫収録)
『沈黙』(永川玲二訳『ポオ小説全集2』創元推理文庫収録)
『影』(河野一郎訳『ポオ小説全集1』創元推理文庫収録)
『リジイア』(阿部知二訳『ポオ小説全集1』創元推理文庫収録)
『アッシャー家の崩壊』(河野一郎訳『ポオ小説全集1』創元推理文庫収録)

ナサニエル・ホーソーン(1804-1864)
『大理石の牧神』(島田太郎/ 三宅卓雄/ 池田孝一訳 国書刊行会)
『牧師の黒のベール ある寓話』(坂下昇訳『ホーソーン短篇小説集』岩波文庫収録)
『野望に燃える客人』(国重純二『ナサニエル・ホーソーン短編全集1』南雲堂収録)
『七破風の屋敷』(大橋健三郎訳『世界文学大系81』筑摩書房収録)

トマス・プレスケット・プレスト(1810-1879)
『恐怖の来訪者』(『吸血鬼ヴァーニー』の抜粋)(武富義夫訳 矢野浩三郎編『怪奇と幻想1 吸血鬼と魔女』角川文庫収録)

テオフィル・ゴーチェ(1811-1872)
『化身』(小柳保義訳 店村新次/ 小柳保義編『ゴーチエ幻想作品集』創土社収録)
『ミイラの足』(小柳保義訳『変化 フランス幻想小説』現代教養文庫収録)
『死女の恋』(青柳瑞穂訳 澁澤龍彦編『怪奇小説傑作集4』創元推理文庫収録)
『クレオパトラの一夜』(小柳保義訳『魔眼 フランス幻想小説』現代教養文庫収録)

チャールズ・ディケンズ(1812-1870)
『信号手』(橋本福夫訳『怪奇小説傑作集3』創元推理文庫収録)

エミリー・ブロンテ(1818-1848)
『嵐が丘』(小野寺健訳 光文社古典新訳文庫)

ギュスターヴ・フローベール(1821-1880)
『聖アントワヌの誘惑』(渡辺一夫訳 岩波文庫)

ジョージ・マクドナルド(1824-1905)
『リリス』(荒俣宏訳 ちくま文庫)

エルクマン=シャトリアン(エミール・エルクマン(1822-1899)/ アレクサンドル・シャトリアン(1826-1890))
『見えない眼』(平井呈一訳 平井呈一編『恐怖の愉しみ』創元推理文庫収録)
『梟の耳』(小林晋訳『エルクマン- シャトリアン怪奇幻想短編集』ROM 叢書収録)

フィッツ=ジェイムズ・オブライエン(1828-1862)
『あれは何だったか?』(橋本福夫訳 平井呈一編『怪奇小説傑作集3』創元推理文庫収録)
『ダイヤモンドのレンズ』(南條竹則訳『不思議屋/ ダイヤモンドのレンズ』光文社古典新訳文庫収録)

ヴィリエ・ド・リラダン(1838-1889)
『希望』(釜山健訳『最後の宴の客』国書刊行会収録)

アンブローズ・ビアス(1842-1913?)
『ハルピン・フレーザーの死』(飯島淳秀訳 荒俣宏編『アメリカ怪談集』河出文庫収録)
『怪物』(大西尹明訳 平井呈一編『怪奇小説傑作集3』創元推理文庫収録)
『環境が肝心』(大津栄一郎訳『ビアス短篇集』岩波文庫収録)
『右足の中指』(飯島淳秀訳『完訳・ビアス怪異譚』創土社収録)
『幽霊屋敷』(飯島淳秀訳『完訳・ビアス怪異譚』創土社収録)

ヘンリー・ジェイムズ(1843-1916)
『ねじの回転』(蕗沢忠枝訳 新潮文庫)

ロバート・ルイス・スティーヴンスン(1850-1894)
『ジキル博士とハイド氏』(夏来健次訳 創元推理文庫)
『死骸盗人』(河田智雄訳『スティーヴンソン怪奇短篇集』福武文庫収録)
『マーカイム』(高松雄一/ 高松禎子訳『マーカイム/ 壜の小鬼 他五篇』岩波文庫収録)

ブラム・ストーカー(1847-1912)
『吸血鬼ドラキュラ』(平井呈一訳 創元推理文庫)
『七つ星の宝石』(森沢くみ子訳 アトリエサード)

ギイ・ド・モーパッサン(1850-1893)
『オルラ』(榊原晃三訳『モーパッサン怪奇傑作集』福武文庫収録)
『だれが知ろう?』(榊原晃三訳『モーパッサン怪奇傑作集』福武文庫収録)
『恐怖』(榊原晃三訳『モーパッサン怪奇傑作集』福武文庫収録)
『水の上』(榊原晃三訳『モーパッサン怪奇傑作集』福武文庫収録)
『幽霊』(榊原晃三訳『モーパッサン怪奇傑作集』福武文庫収録)
『狼』(青柳瑞穂訳『モーパッサン短編集3』新潮文庫収録)

ラフカディオ・ハーン(1850-1904)
『怪談』(平井呈一訳 岩波文庫)

メアリ・E・ウイルキンズ=フリーマン(1852-1930)
『壁にうつる影』(梅田正彦編訳『ざくろの実』鳥影社収録)

オスカー・ワイルド(1854-1900)
『ドリアン・グレイの肖像』(仁木めぐみ 光文社古典新訳文庫)

フランシス・マリオン・クロフォード(1854-1909)
『上段寝台』(乾信一郎訳 ロアルド・ダール編『ロアルド・ダールの幽霊物語』ハヤカワ・ミステリ文庫収録)
『死骨の咲顔』(平井呈一訳 荒俣宏/ 紀田順一郎編『怪奇幻想の文学4 恐怖の探究』新人物往来社収録)

H・R・ハガード(1856-1925)
『洞窟の女王』(大久保康雄訳 創元推理文庫)

アーサー・コナン・ドイル(1859-1930)
『北極星号の船長』(北原尚彦/ 西崎憲訳『北極星号の船長』創元推理文庫収録)
『競売ナンバー二四九』(北原尚彦/ 西崎憲訳『クルンバーの謎』創元推理文庫収録)

シャーロット・パーキンズ・ギルマン(1860-1935)
『黄色い壁紙』(西崎憲訳 倉阪鬼一郎/ 南條竹則/ 西崎憲編『淑やかな悪夢』創元推理文庫収録)

クレメンス・ハウスマン(1861-1955)
『人狼』(野村芳夫訳 荒俣宏編『怪奇文学大山脈 西洋近代名作選1 19 世紀再興篇』東京創元社収録)

M・R・ジェイムズ(1862-1936)
『好古家の怪談集』(紀田順一郎訳『M・R・ジェイムズ怪談全集1』創元推理文庫収録)
 『マグナス伯爵』(紀田順一郎訳『M・R・ジェイムズ怪談全集1』創元推理文庫収録)
 『笛吹かば現われん』(紀田順一郎訳『M・R・ジェイムズ怪談全集1』創元推理文庫収録)
 『トマス僧院長の宝』(紀田順一郎訳『M・R・ジェイムズ怪談全集1』創元推理文庫収録)
『続・好古家の怪談集』(紀田順一郎訳『M・R・ジェイムズ怪談全集1』創元推理文庫収録)
 『バーチェスター聖堂の大助祭席』(紀田順一郎訳『M・R・ジェイムズ怪談全集1』創元推理文庫収録)
『痩せこけた幽霊』(紀田順一郎訳『M・R・ジェイムズ怪談全集2』創元推理文庫収録)
 『寺院史夜話』(紀田順一郎訳『M・R・ジェイムズ怪談全集2』創元推理文庫収録)
『猟奇への戒め』(紀田順一郎訳『M・R・ジェイムズ怪談全集2』創元推理文庫収録)
『五つの壷』(紀田順一郎訳『五つの壷』ハヤカワ文庫FT 収録)

ラルフ・アダムス・クラム(1863-1942)
『死の谷』(関桂子訳『ミステリマガジン1984 年8 月号』早川書房収録)

アーサー・マッケン(1863-1947)
『夢の丘』(平井呈一訳 創元推理文庫)
『パンの大神』(平井呈一訳 平井呈一編『怪奇小説傑作集1』創元推理文庫収録)
『白魔』(南條竹則訳『白魔』光文社古典新訳文庫収録)
『怪奇クラブ』(平井呈一訳 創元推理文庫)
 『黒い石印』(平井呈一訳『怪奇クラブ』創元推理文庫収録)
 『白い粉薬のはなし』(平井呈一訳『怪奇クラブ』創元推理文庫収録)
 『大いなる来復』(平井呈一訳『怪奇クラブ』創元推理文庫収録)
『輝く金字塔』(南條竹則『輝く金字塔』国書刊行会収録)
『赤い手』(平井呈一訳『三人の詐欺師 アーサー・マッケン作品集成2』沖積舎収録)
『恐怖』(平井呈一訳『恐怖 アーサー・マッケン作品集成3』沖積舎収録)
『弓兵・戦争伝説』(平井呈一訳『恐怖 アーサー・マッケン作品集成3』沖積舎収録)

ウイリアム・ウイマーク・ジェイコブズ(1863-1943)
『猿の手』(平井呈一訳 平井呈一編『怪奇小説傑作集1』創元推理文庫収録)

R・W・チェンバース(1865-1933)
『黄衣の王』(大瀧啓裕訳 創元推理文庫)

ラドヤード・キプリング(1865-1936)
『イムレイの帰還』(橋本福夫訳 平井呈一編『怪奇小説傑作集3』創元推理文庫収録)
『獣の印』(橋本槇矩訳 東雅夫編『世界幻想文学大全 怪奇小説精華』ちくま文庫収録)
『幻の人力車』(岡本綺堂訳『世界怪談名作集』河出文庫収録)

エドワード・ルーカス・ホワイト(1866-1934)
『こびとの呪い』(中村能三訳 平井呈一編『怪奇小説傑作集2』創元推理文庫収録)
『セイレーンの歌』(森美樹和訳 荒俣宏/ 紀田順一郎編『怪奇幻想の文学5 怪物の時代』新人物往来社収録)
『鼻面』(西崎憲訳 荒俣宏編『怪奇文学大山脈 西洋近代名作選2 20 世紀革新篇』東京創元社収録)

M・P・シール(1865-1947)
『ゼリューシャ』(南條竹則『怪談の悦び』創元推理文庫収録)
『音のする家』(阿部主計訳 荒俣宏/ 紀田順一郎編『怪奇幻想の文学4 恐怖の探究』新人物往来社収録)

リチャード・マーシュ(1867-1915)
『黄金虫』( 榊優子 創元推理文庫)

E・F・ベンスン(1867-1940)
『遠くへ行き過ぎた男』(中野善夫訳『塔の中の部屋』アトリエサード収録)
『歩く疫病』(西崎憲訳 森英俊/ 野村宏平編『乱歩の選んだベスト・ホラー』ちくま文庫収録)
『恐怖の山』(鈴木克昌訳 東雅夫編『書物の王国18 妖怪』国書刊行会収録)
『顔』(八十島薫訳『ベンスン怪奇小説集』国書刊行会収録)

グスタフ・マイリンク(1868-1932)
『ゴーレム』(今村孝訳 白水U ブックス)

アルジャーノン・ブラックウッド(1869-1951)
『柳』(宇野利泰訳 早川書房編集部編『幻想と怪奇1』ハヤカワ・ミステリ収録)
『ウェンディゴ』(夏来健次訳『ウェンディゴ』アトリエサード)
『幻の下宿人』(樋口志津子訳『死を告げる白馬 』ソノラマ文庫海外シリーズ収録)
『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』(植松靖夫訳 創元推理文庫)
 『霊魂の侵略者』(植松靖夫訳『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』創元推理文庫収録)
 『古えの妖術』(植松靖夫訳『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』創元推理文庫収録)
 『炎魔』(植松靖夫訳『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』創元推理文庫収録)
 『秘密の崇拝』(植松靖夫訳『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』創元推理文庫収録)
 『犬のキャンプ』(植松靖夫訳『心霊博士ジョン・サイレンスの事件簿』創元推理文庫収録)
『ジンボー』(北村太郎訳 月刊ペン社)
『ケンタウルス』(八十島薫訳 月刊ペン社)

アーヴィン・S・コッブ(1876-1944)
『魚頭 フィッシュヘッド』(曽田和子訳『別冊幻想文学 クトゥルー倶楽部』幻想文学会出版局収録)

H・H・エーヴェルス(1871-1943)
『アルラウネ』(麻井倫具/ 平田達治訳 国書刊行会)
『魔法使いの弟子』( 佐藤恵三訳 創土社)
『蜘蛛』(植田敏郎訳『怪奇小説傑作集5』創元推理文庫収録)

ウォルター・デ・ラ・メア(1873-1956)
『死者の誘(いざな)い』(田中西二郎訳 創元推理文庫)
『シートンのおばさん』(大西尹明訳 平井呈一編『怪奇小説傑作集3』創元推理文庫収録)
『樹』(脇明子訳 由良君美編『イギリス幻想小説傑作集』白水U ブックス収録)
『深淵より』(柿崎亮訳『デ・ラ・メア幻想短篇集』国書刊行会収録)
『世捨て人』(長井裕美子訳 シンシア・アスキス編『恐怖の分身』朝日ソノラマ文庫海外シリーズ収録)
『ケンプ氏』(柿崎亮訳『デ・ラ・メア幻想短篇集』国書刊行会収録)
『オール・ハロウズ大聖堂』(橋本槙矩訳『恋のお守り』ちくま文庫収録)

ウィリアム・ホープ・ホジスン(1877-1918)
『〈グレン・キャリグ号〉のボート』(野村芳夫訳 アトリエサード)
『異次元を覗く家』(荒俣宏訳 アトリエサード)
『幽霊海賊』(夏来健次訳 アトリエサード)
『ナイトランド』(荒俣宏訳 原書房)
『幽霊狩人カーナッキの事件簿』(夏来健次訳 創元推理文庫)

ロード・ダンセイニ(1878-1957)
『驚異の書』(中野善夫ほか訳『世界の涯(はて)の物語』河出文庫収録)
『夢見る人の物語』(中野善夫ほか訳『夢見る人の物語』河出文庫収録)
『山の神々』(松村みね子訳『ダンセイニ戯曲集』沖積舎収録)
『旅宿の一夜』(松村みね子訳『ダンセイニ戯曲集』沖積舎収録)
『神々の笑い』(松村みね子訳『ダンセイニ戯曲集』沖積舎収録)
『女王の敵』(松村みね子訳『ダンセイニ戯曲集』沖積舎収録)

E・M・フォースター(1879-1970)
『天国行きの乗合馬車』(小池滋訳『E・M・フォースター著作集5 短篇集1 天国行きの乗合馬車』みすず書房収録)

ヒュー・ウォルポール(1884-1941)
『ラント夫人』(平井呈一訳『恐怖の愉しみ』創元推理文庫収録)

H・R・ウェイクフィールド(1888-1964)
『赤い館』(鈴木克昌訳『ゴースト・ハント』創元推理文庫収録)
『ケルン』(鈴木克昌訳『ゴースト・ハント』創元推理文庫収録)
『彼の者現れて後去るべし』(鈴木克昌訳『ゴースト・ハント』創元推理文庫収録)
『彼の者、詩人なれば…』(鈴木克昌訳『ゴースト・ハント』創元推理文庫収録)
『目隠し遊び』(南條竹則訳『ゴースト・ハント』創元推理文庫収録)
『見上げてごらん』(鈴木克昌訳『ゴースト・ハント』創元推理文庫収録)
『ダンカスターの十七番ホール』(南條竹則訳 南條竹則編『怪談の悦び』創元推理文庫収録)

クラーク・アシュトン・スミス(1893-1961)
『大麻吸飲者』(蜂谷昭雄訳『魔術師の帝国』創土社収録)

L・P・ハートリー(1895-1972)
『豪州からの客』(小山太一訳 エドワード・ゴーリー編『憑かれた鏡』河出書房新社収録)


 18世紀のゴシック小説から、ラヴクラフトの同時代の作品まで、挙げられている作品はかなりの数に上ります。英米の作品だけでなく、バルザック、メリメ、リラダン、モーパッサンなどのフランス作家、マインホルト、エーヴェルス、マイリンクなどのドイツ作家にも目を通しているあたり、本当に読書家だったことがわかりますね。
 挙げられた作品数が多い作家ほど、ラヴクラフトの評価が高かったとするなら、とくに評価の高い作家は、エドガー・アラン・ポオ、ギイ・ド・モーパッサン、M・R・ジェイムズ、アルジャーノン・ブラックウッド、アーサー・マッケン、ロード・ダンセイニ、H・R・ウェイクフィールド、ウィリアム・ホープ・ホジスンあたりになるでしょうか。
 ちょっと意外だったのは、ウォルター・デ・ラ・メアの評価が高いこと。雰囲気小説の達人ともいうべきデ・ラ・メアと、ラヴクラフト自身の作風とはかなり異なりますが、それもまた興味深いところですね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

異世界のオムニバス  ラジオ・サイレンス他監督『サウスバウンド』
B06XZQHMJ2サウスバウンド [DVD]
キングレコード 2017-07-05

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 『サウスバウンド』(2015年 アメリカ)は、砂漠に面した街道を舞台に、それぞれゆるくつながった5つのエピソードを描く、オムニバス・ホラー映画です。それぞれのエピソードは、突然始まり突然終わる…といった感じの不条理感が溢れており、独特の味わいがあります。

ラジオ・サイレンス監督『The Way Out』
 街道を走る車の中の二人の男は血まみれでした。車の後ろからは、謎の怪物が空に浮かんだまま、追いかけてきます。
 立ち寄ったドライブインを出て、再び街道を走っていると、再び同じドライブインの前に来てしまいます。何度行っても同じ場所に戻ってしまうのです。その間にも怪物が近づいてきますが…。

ロクサーヌ・ベンジャミン監督『Siren』
 ガールズバンドを組んでいる3人の若い女性は、乗っている車が街道でパンクしてしまいます。通りかかった夫婦の家に一泊することになった3人でしたが、セイディ以外の2人は、食事に出された異様な肉を食べ、気分を悪くしてしまいます。2人は謎の薬を飲まされた直後、セイディを置いて姿を消してしまいます…。

デビッド・ブルックナー監督『The Accident』
 よそ見運転をしていたルーカスは、道に飛び出してきた女性を轢いてしまいます。救急車を呼ぶものの、場所がわからず呼ぶことができません。救命士から自ら病院へ患者を運ぶように言われたルーカスは、車で病院を探すことになります。
 やがて見つけた病院でしたが、なぜか誰も人がおらず、治療をすることができません。電話の主は、指示をするから、ルーカス自身に治療をして欲しいと話しますが…。

パトリック・ホーバス監督『Jailbreak』
 バーに銃を構えて入ってきた男は、自分は強盗ではない、妹を捜しているだけだと話します。突如、客の一人の手がかぎ爪に変化し、男の背中を襲います。銃で客の手を吹き飛ばした男は、妹を知っているという店主に案内をさせることになりますが…。

ラジオ・サイレンス監督『The Way In』
 夫、妻、娘の家族は、別荘で一家団欒をしていました。ドアを叩く音がしたかと思うと、仮面をかぶった3人の男が押し入ってき、夫妻は拘束されてしまいます。目的は何だと叫ぶ夫ですが、やがて理由に思い至り謝罪を始めます。娘だけは助けてくれと言う夫でしたが…。

 それぞれのエピソードは、ゆるくつながっています。例えば1話の登場人物が入ったモーテルの別の部屋に泊まっていたのが、2話目の主人公たちだったり、という感じです。
 内容はバラエティに富んでいて、1話は謎の怪物、2話はカルト教団、3話は不条理スリラー、4話は怪物の町、5話は集団殺人鬼がテーマとなっています。
 1話に登場する怪物の造形がなかなかユニークで、インパクトがあります。宙を飛ぶ骸骨といった感じの造形なのですが、他のエピソードにもちょこっとずつ顔を出します。5話目で再び怪物の由来にスポットが当たるという構成も見事です。
 5話全てがつながっているといっても、演出上ゆるやかにつながっているというだけです。直接、話がつながっているのは1話と5話だけで、他のエピソードは直接的な世界観はつながっていないようですね。

 一番面白かったのは3話目の『The Accident』。よそ見運転で人を轢いてしまった男が、自分で治療をする羽目になるという不条理スリラーです。
 事故を起こした現場の周りに何もなかったり、たどり着いた病院が無人だったりと、その時点で不条理感が満載なのですが、病院についてからの展開がさらに不条理で強烈です。
 電話でつながった救命士と医者(らしき人物)の指示の通りに、患者の治療を進めることになるのですが、指示通りにするたびに、患者の容態が悪化していくというブラック・ユーモアあふれる作品です。

 他のエピソードにも共通するのですが、起こっている現象や事件に対して説明があまり加えられないのが特徴です。例えば、4話目の怪物のいる世界は何なのか? とか、5話目の夫が過去に犯した罪は何なのか? など、わからないままのことが多く、それがまた不条理感を高めています。
 ただそれゆえに、明快な起承転結を求めるタイプの人には、もやもやした感じを与えがちな作品ではありますね。
 全体の整合性とかバランスなどを考えると「傑作」とは言いにくいのですが、妙な魅力がある作品です。曖昧な点が多いせいもあり、物語の「深読み」が可能であり、その意味で作品世界に広がりがあります。鑑賞した後、誰かと話し合いたくなるような面白さがありますね。

テーマ:ホラー映画 - ジャンル:映画

ラヴクラフトの暗黒宇宙
ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1)) ラヴクラフト全集 (2) (創元推理文庫 (523‐2)) ラヴクラフト全集 (3) (創元推理文庫 (523‐3)) ラヴクラフト全集 (4) (創元推理文庫 (523‐4)) ラヴクラフト全集〈5〉 (創元推理文庫) ラヴクラフト全集〈6〉 (創元推理文庫) ラヴクラフト全集7 (創元推理文庫)
 H・P・ラヴクラフト(1890-1937)は、アメリカの怪奇小説家。彼の作品に現れる独自の世界観は「コズミック・ホラー」や「クトゥルー(Cthulhu)神話」と呼ばれ、後世に多大な影響を与えました。
 「コズミック・ホラー」とは、人類の誕生する遙か古代に地球を支配していた「旧支配者」と呼ばれる種族が、現代に蘇るというモチーフで書かれた作品群です。

 ラヴクラフトは、主に《ウィアード・テイルズ》を初めとするパルプマガジンに作品を発表しますが、生前は不遇であり、広く名前を知られるまでには至りませんでした。
 創作だけでなく、他の作家との文通や文章添削などを行い、後進の作家からは広く慕われていました。生前から、同人仲間同士で、ラヴクラフトの世界観を流用した作品を書くという試みが行われており、これが後に「クトゥルー神話」が広まる一因ともなります。
 40代の若さで亡くなった後、ラヴクラフトに心酔していたオーガスト・ダーレスとドナルド・ワンドレイは、ラヴクラフトの作品を出版するために、アーカム・ハウスという出版社を設立します。
 ダーレスはラヴクラフトの作品集を出版するほか、自らも我流の「クトゥルー神話」作品を書くなど、ラヴクラフト作品の普及に努めました。ラヴクラフト自身は、自分の作品に登場する世界観やキャラクターを整理体系づけることはしておらず、それを整理し、体系づけたのはダーレスとされています。その意味で「クトゥルー神話」は、ダーレスが作ったという意見もあります。

 非常にオリジナリティのある世界観を作ったラヴクラフトですが、ラヴクラフト自身、先行する作家たちをよく読み、そしてその影響を受けています。彼がどんな作家を読んでいたのかは、例えば『文学と超自然的恐怖』(植松靖夫訳 東雅夫編『世界幻想文学大全 幻想文学入門』ちくま文庫収録)というエッセイを読むとわかります。
 多くの作家が挙げられていますが、ラヴクラフト作品を読むと、ロード・ダンセイニ、アーサー・マッケン、アルジャーノン・ブラックウッド、M・R・ジェイムズ、ウィリアム・ホープ・ホジスン、エドガー・アラン・ポーなどの影響が感じられますね。
 特にダンセイニの影響は強く、『白い帆船』『ウルタールの猫』『サルナスの滅亡』など、直接的な影響が見られる《ダンセイニ風掌編》と呼ばれる一連の作品があります。『サルナスの滅亡』などは、非常によく出来ていて、ダンセイニの作品と言われても通るのではないでしょうか。
 また、「旧支配者」の独特のネーミングにも、ダンセイニの影響が感じられますね。

 ラヴクラフト作品によく登場するアイテムとして「魔導書」があります。その代表例が「ネクロノミコン」なのですが、これも先例があり、それがロバート・W・チェンバース『黄衣の王』に登場する同名の本です。
 『彼方より』『魔女の家の夢』『エーリッヒ・ツァンの音楽』など、この世とは異なる次元から怪物や怪異が出現する話などは、ホジスン作品の影響でしょうか。

 ラヴクラフト作品では、早い時期から「旧支配者」が登場しますが、後期になるまでその描かれ方は、人間とは隔絶したものとして描かれています。その点、伝統的な怪奇小説に登場する「幽霊」や「悪魔」に近い感覚なのでしょうか。なかでも、「魔王」のような存在である「アザトース」や「ヨグ=ソトース」は、次元を異にした存在のように描かれ、不気味さは比類がありません。
 後期作品になると「旧支配者」に関して、裏付けというかその由来が描写されることが多くなってきます。人類と隔絶しているのは確かなのですが、宇宙からやってきた生命体として、物質的な性質が強調されるようになります。
 後期の作品『狂気の山脈にて』は、その意味で重要な作品です。南極探検に訪れた探検隊が、発掘作業の途中「旧支配者」らしき生物と、彼らが住んでいた都市を発見するという物語です。
 作品中で、壁画から「旧支配者」の民族の盛衰が判明するのですが、そこでは、彼らが宇宙から飛来した地球外生物であることが明かされます。怪奇小説の枠内ではあるのですが、よりSF的な要素が強くなっています。
 これも後期の作品、『時間からの影』は、古代の生物に精神的に寄生している知性体が、時空を超えて現代の人間に精神を送り込み、中身を入れ替えてしまうという作品です。こちらはもうSFに分類してもいいような作品ですね。
 『狂気の山脈にて』『時間からの影』を読む限り、ラヴクラフトがもっと長生きしていたら、よりSF寄りの作品を書いていただろうことは確かだと思います。

 とくに「クトゥルー神話」には属さないものの、伝統的な怪奇小説として面白い作品もいくつかあって、狂気に囚われた男との出会いを描く『家のなかの絵』、常に冷房のある部屋に閉じこもる男を描いた『冷気』、ある家に住む人間が次々と死んでいくという『忌み嫌われる家』、飛来した隕石の影響で肉体的にも精神的にもおかしくなってしまう農夫一家を描く『宇宙からの色』などは、怪奇小説単体として面白いものです。

 後期作品では、SF的な要素が強くなっていると書きましたが、実際にそれらの作品を読んでみると、やはり怪奇小説以外の何者でもありません。というのも、ラヴクラフトが作中で「旧支配者」の由来を説明しても、それは彼らを理解しようとか、研究して対策を取ろうとか考えているわけではないからです。あくまで人間と隔絶した恐怖の対象ということは変わらず、人間はそれに対して無力なのです。
 ラヴクラフトは、突き詰めると一つのテーマだけで書いている作家です。それは「未知のものへの恐怖」。どの作品にも、そのテーマが伏流していて、それがあるがゆえに、時には筆が不器用にすべったとしても、怪奇小説としての魅力が感じられるのではないでしょうか。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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