『ミステリーゾーン』完結
ミステリー・ゾーンDVDコレクション (54) 2015年 9/30 号 [雑誌]  ミステリー・ゾーンDVDコレクション(55) 2015年 10/14 号 [雑誌]ミステリー・ゾーンDVDコレクション(56) 2015年 10/28 号 [雑誌]
 DVDマガジンが刊行中の『ミステリーゾーン』(アシェット・コレクションズ・ジャパン)ですが、旧『ミステリーゾーン』は56巻で完結になりました。ただ、本来、全エピソードを収録するはずが、『ふくろうの河』『対決』という2つのエピソードが未収録となっています。
 後の巻にいずれ収録するとの情報もあるようですが、本当に収録されるかどうか、ちょっと微妙な感じですね。まあ欠番があるとはいえ、今まで何度も、日本版DVDシリーズが途絶してきているので、とりあえずは完結を喜びたいと思います。

 刊行スタート当初の収録エピソードは毎号面白かった覚えがあるのですが、中盤はあまり楽しめないエピソードも多かったというのが正直な感想です。とくに1時間もののエピソードは冗長なものが多い印象がありますね。
 ただ、後半の号のエピソードは非常に面白いものが多く、個人的には盛り返した感じがします。後半、印象に残ったエピソードについて、少し触れておきたいと思います。

『指輪の中の顔』
 スター女優バニーのもとに、故郷から届いた贈り物は指輪でした。その指輪を見つめると、彼女に帰ってきてほしいと話す姉の顔が映ったのです。ふるさとに帰ったバニーが、再び指輪を見ると、また別の男の顔が映り始めます…。
 予想のつく結末ながら、心に残る作品ですね。

『太陽が二つ輝く』
 沈まない太陽が二つある惑星で生きる人々。よりよい生活を求めて植民したものの、過酷な環境にあえいでいました。指導者のカリスマ性で生き延びてきた人々でしたが、数十年を経てやってきた地球からの救助船をめぐって、彼らの間で軋轢が起き始めます…。
 過酷な環境だからこそ団結していた人々が、散り散りになっていく過程をじっくりと描いた作品です。そしてそれを認められない指導者の悲しさが心に残ります。

『ある改造』
 その社会では、物心ついた人間は全て美しくなるための改造手術を受けていました。母親や友達に手術を勧められながらも、マリリンは手術をしたくないと突っぱねますが…。
 画一的な社会に溶け込めない女性を描く寓話です。洗脳の恐ろしさを描いた作品とも言えましょうか。

『帰ってきた宇宙船』
 宇宙の果ての探検のため、宇宙船で冷凍睡眠に入ったスタンフィールド中佐。出発直前に恋に落ちた女性と、数十年後に再会した中佐は…?
 時をへだてた恋の物語です。ハッピーエンドになるかと思いきや、皮肉な結末が待ち構えています。

『百万ドルの変身』
 粗暴で利己的そのものの男サルバドル・ロス。恋焦がれる女性に相手にされない彼は、ある日入院した先で、自分に性質を交換する能力があることを発見します。次々と金や教養を手に入れた彼に足りないものは「やさしさ」だけでした…。
 野望を実現するために、次々と欲しいものを手に入れた男が最後に手にしたものとは…? 非常に密度の濃いショート・ストーリー。

『連れて来たのはだれ?』
 酔いから覚めた若夫婦は、突然自分たちが、見知らぬ部屋の中で寝ていることに気がつきます。部屋を出た夫婦は、町の中に他の人間が全く見当たらないことに驚きます。やがて、町の中の木や車が張りぼてであることに気づきますが…。
 自分たちはいったいどこにいるのか? 結末までのサスペンスは比類がありません。

『狂った映像』
 運転手のジョーは、妻と、ことある毎に喧嘩を繰り返していました。修理屋の帰った後にテレビに映るようになったのは、なんと過去の自分と妻との喧嘩のシーンでした。やがて未来に起こるであろう映像までもが映し出されるようになりますが…。
 未来の映像を見た男が、自分の行動を振り返り後悔すると思いきや、とんでもなくブラックな結末になるという作品。現実とテレビ内の未来がだんだんと近づいてくるという構成が見事です。

『生きている仮面』
 富豪のフォスターのもとに集まった娘夫婦とその子供。死を間近にしたフォスターは、財産目当ての家族へのあてつけに、夜の12時まで、それぞれ醜い仮面をかぶれと命令しますが…。
 醜悪な人間性が見える形で現れる…。寓話としても優れた一篇。

『人形はささやく』
 売れない腹話術師ジョナサンは、日々の食事にも事欠くありさまでした。そんなある日、相棒の人形シーザーは、ジョナサンに向かって話をし始めます。人形の言うことを聞くようになったジョナサンは、やがて盗みにまで手を染めますが…。
 人形が悪への誘惑をささやくというサイコ・スリラー。張り詰めた空気の感じられるサスペンス作品です。

『夢の世界』
 殺人罪で死刑の判決を受けた男グラント。彼はこの世界は夢であり、自分の死刑執行もずっと繰り返されているというのです。自分が死ねば世界は消えると、周りの人間に話しますが、誰も話を信じようとしません…。
 男の話は妄想なのか? 結末には唖然とさせられる傑作エピソード。

『すべては彼の意のままに』
 劇作家ウェストの妻は、夫が浮気相手と過ごしているのを目撃し、家を出ていこうとします。しかし夫は、女性は自分が創造した人物に過ぎず、消し去るのも容易だと言うのです。信じない妻の前で、ウェストは女性を消してみせますが…。
 自らの存在さえ確かなものではない…。アイデンティティーの不確かさを描く作品です。

『沈黙の世界』
 おしゃべりで皆から疎まれる男テニソン。裕福な人間が集まるクラブで大佐は、テニソンが1年間全く話さなければ、大金を与えると彼に約束しますが…。
 人間性は実際の見た目とは、必ずしも一致しない点。 超自然的な要素の全くないエピソードですが、人間性について深い洞察を示した作品です。

『陳列された目』
 蝋人形博物館に勤めるマーティンは、担当である殺人鬼たちの蝋人形を愛していました。博物館が閉鎖されることを知ったマーティンは、自らの家の地下室を改造し、蝋人形たちを保管することにします。しかし、人形を保存するためには莫大な費用がかかります。やがて、妻との間に軋轢が持ち上がります…。
 蝋人形に執着する男のサイコ・スリラー。人形に起こった超自然現象は事実なのか、妄想なのか。シリーズ屈指の恐怖エピソード。

『敗北者』
 広告会社の重役を務めるガートは、日々上司や妻からストレスを受け続けていました。ある日列車の中で寝入った彼は、ウィロービーという不思議な町に到着します。しかし町に入ろうとしたところで目が覚めてしまいます。それからも、たびたび寝入るたびにウィロービーに到着しますが、町に入ることはできないのです…。
 現実から逃げ出した男の行く先は理想郷だったのか? 序盤からほぼ結末がわかっていながら、見るものの目を離しません。傑作です。

『人形の家で』
 内気な男チャーリーは、人付き合いが苦手で会社もクビになってしまいます。ある日訪れた博物館で、チャーリーはドールハウスの中の女性の人形に心を奪われます。ずっと見ているうちに、人形は生あるもののように動き始めのです…。
 社会に適応できない夢想家と人形の恋を描くファンタジーです。題材とは裏腹に、主人公の男の繊細さが実にリアルで痛々しいだけに、結末の素晴らしさが際立ちます。

『ある泉からの一杯』
 裕福な老人ハーモンは、派手好きで若さにあふれた妻の期待に応えられず、馬鹿にされつつも、妻にかしずくような生活をしていました。弟が若返りの薬を研究していることを知ったハーモンは、その薬を自分に投与してくれるように頼みますが…。
 若返った男の人生の皮肉とは? 若返った後の展開よりも、それ以前の夫婦の軋轢、初老の男の後悔などをじっくり描いた、味わいのある作品。

 さて、次号からはいよいよ『新トワイライトゾーン』が収録されます。個人的にはこちらの方のシリーズに思い入れがあるので、実に楽しみ。完結まで応援していきたいと思います。
 ただ、考えてみると「トワイライトゾーン」と冠されたシリーズを完全収録するという方針ならば、2002年版『トワイライトゾーン』『トワイライトゾーン 最終章』が入っていないのが気になります。『最終章』の方はビデオ時代に見ているのですが、2002年版の方は未見なので、見てみたいですね。

テーマ:海外ドラマ(欧米・イギリスetc) - ジャンル:テレビ・ラジオ

11月の気になる新刊と10月の新刊補遺
10月22日刊 ウィリアム・ホープ・ホジスン『異次元を覗く家』(アトリエサード 予価2376円)
11月4日刊 岸本佐知子編訳『居心地の悪い部屋』(河出文庫 予価799円)
11月9日刊 ジーン・ウルフ『ナイト Ⅰ・Ⅱ』(国書刊行会 予価各2592円)
11月10日刊 サマセット・モーム『片隅の人生』(ちくま文庫 予価1296円)
11月11日刊 オスカー・ワイルド『カンタヴィルの幽霊/スフィンクス』(光文社古典新訳文庫 予価1058円)
11月12日刊 フェルディナント・フォン・シーラッハ『カールの降誕祭』(東京創元社 予価1620円)
11月20日刊 『ハヤカワ文庫SF総解説2000』(早川書房 予価1620円)
11月26日刊 エドワード・ゴーリー『Edward Gorey's Gorgeous Little Box』(河出書房新社 予価4104円)
11月27日刊 ミハイル・エリザーロフ『図書館大戦争』(河出書房新社 予価2808円)
11月28日刊 ミロラド・パヴィチ『ハザール事典 夢の狩人たちの物語』(男性版・女性版)(創元ライブラリ 予価1620円)
11月28日刊 ゾラン・ジフコヴィッチ『12人の蒐集家/ティーショップ』(東京創元社 予価1728円)
11月28日刊 ミハイル・A・ブルガーコフ『犬の心臓・運命の卵』(新潮文庫 予価680円)


 好調の《ナイトランド叢書》の最新刊は、ホジスンの名作怪奇小説『異次元を覗く家』。ハヤカワ文庫の荒俣宏訳の復刊という形になるようです。入手難になって久しかったので、復刊とはいえ嬉しいですね。

 創元社のシーラッハは、今回は短篇集のようです。長編も面白いことは面白いのですが、いまいちピンと来ないのですよね。

 『ハヤカワ文庫SF総解説2000』は、『SFマガジン』誌で数回に渡って特集された、SF文庫解説の単行本化です。これは好企画ですね。

 エドワード・ゴーリー『Edward Gorey's Gorgeous Little Box』は、『うろんな客』 『不幸な子供』 『蒼い時』 『華々しき鼻血』 のミニチュア版を入れた限定版ボックス。収録タイトルは全て持っているのですが、ファンとしては欲しくなってしまいます。

 ミハイル・エリザーロフ『図書館大戦争』は、「ソ連崩壊後のロシアを舞台に、特別な力を秘めた7冊の奇書をめぐり、その本を収集する「図書館」同士の戦闘が始まる。神話と中世と現代を結ぶ、ロシア・ブッカー賞受賞の傑作。」とのこと。本好きの琴線をくすぐる内容ですね。

 ミロラド・パヴィチ『ハザール事典 夢の狩人たちの物語』は、事典形式で書かれた、不思議な味わいの小説。単行本の刊行時には、一部のみが異なる、男性版と女性版が同時出版されたことでも話題になりました。

 11月のイチオシはこれです。ゾラン・ジフコヴィッチ『12人の蒐集家/ティーショップ』。ジフコヴィッチは、旧ユーゴスラビア出身の作家。
 我が国では、3つの短篇を収録した『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』(黒田藩プレス)が邦訳されています。SF・ファンタジー・ミステリなど、いろいろな要素が感じられますが、一番近いのは、いわゆる「奇妙な味」でしょうか。
 中でも『ティーショップ』の吸引力がすさまじいです。鉄道を待っていた女性がふと立ち寄った喫茶店は、「物語のお茶」を出すお店でした。お茶を飲むと、客に物語を語ってくれるのです。続けてお茶を飲めば、別の人間が物語の続きを話し出す…という、なんとも魅力的な物語です(以前に書いた『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』の紹介記事はこちら)。
 その作風からボルヘスと比較する向きもあるようですね。他にも資質の似ている作家を挙げてみると、ディーノ・ブッツァーティ、エリック・マコーマックあたりが思い浮かんできます。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

モダンホラー作品再評価
 最近読んだ作品を並べてみると、期せずしてモダンホラー作品ばかりとなりました。あまり世評の高くなかったものが多いのですが、じっくり読んでみると、それぞれ、味がある作品です。そうしたマイナー作品を、積極的に評価してみたいと思います。



4150410518ステップフォードの妻たち (ハヤカワ文庫NV)
アイラ レヴィン Ira Levin
早川書房 2003-11

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アイラ・レヴィン『ステップフォードの妻たち』(平尾圭吾訳 ハヤカワ文庫NV)

 閑静な住宅街ステップフォードに超してきた主婦は、周りの女性がすべて家事にいそしみ、面白みのない女たちばかりなのを見て疑問を抱きます。やがて、自分と前後して越してきたばかりの女性たちが変貌していくのを見て、主婦は恐怖をいだき始めます…。
 レヴィンと言えば、恐怖小説の名作『ローズマリーの赤ちゃん』(ハヤカワ文庫NV)を思い出しますが、表面上の衣こそ違えど、この作品も『ローズマリーの赤ちゃん』の変奏曲といっていいかと思います。風刺的な要素が強い分、ホラーとしての衝撃度は薄れていますが、今でも楽しめる佳作かと思います。
 町全体が邪悪なものの影響下で変化を遂げてゆく…という、モダンホラーの一つの原型的な作品ですね。



4167661047嘲笑う闇夜 (文春文庫)
ビル プロンジーニ バリー・N. マルツバーグ Bill Pronzini
文藝春秋 2002-05

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ビル・プロンジーニ&バリー・N・マルツバーグ『嘲笑う闇夜』(内田昌之訳 文春文庫)

 ある地方都市で連続殺人が発生します。精神科医の見解によれば、犯人は殺人を犯しているときの記憶がなく、自分が殺人犯であるという意識さえない可能性が高いと言うのです。自分が犯人かもしれないと、街の人々は恐怖を覚え始めますが…。
 ミステリ要素の強いサイコ・ホラーです。主要な登場人物たちは、自分の精神のゆがみを自覚しています。また、自分の精神は正常だと感じている人物も、その主観描写を読むことで、読者には、その人物の心のゆがみが感じられるようになっているのです。
 結果として、すべての登場人物が怪しく見え、そしてそれがまた、ミスディレクションになっているという仕掛け。
 物語の要請上、複数の登場人物の視点がめまぐるしく変わるという構成を取ります。しかし、読みにくさはあまり感じず、テンポよく読むことができます。非常にウェルメイドな娯楽作品と言えますね。



4042775020覚醒するアダム (角川文庫)
デヴィッド アンブローズ David Ambrose
角川書店 1998-12

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デヴィッド・アンブローズ『覚醒するアダム』(務台夏子訳 角川文庫)

 「幽霊は人間によって作り出される」という持論を持つ心理学者サムは、関心を同じくする仲間とともに、架空の幽霊を作り出す実験を行います。実験に参加した記者のジョアンナは、「アダム」と名づけられた架空の存在が、異常なまでの存在感を持ち始めるのを目の当たりにします。やがて、参加者たちが一人また一人と死を遂げていきますが…。
 仮想世界テーマを得意とするアンブローズが、同テーマを超自然サイド寄りに描いたと思しき作品です。架空の存在が生命を持ち始める…という題材自体は目新しいものではありませんが、それを長編ホラーとしてまとめたのは力業といってもいいのではないでしょうか。作品後半、世界がゆらいでいくような、不思議な魅力があります。



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ティー・パーティ (ハヤカワ文庫NV―モダンホラー・セレクション)
チャールズ.L. グラント 竹生 淑子
早川書房 1987-08

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チャールズ・L・グラント『ティ-・パーティ』(竹生淑子訳 ハヤカワ文庫NV)

 17世紀、誰も住まない荒地にやってきた開拓者とその家族。開拓者は屋敷を作り上げ、その屋敷を「ウィンターレスト」と名づけます。しかし、その直後、一家は次々と命を失います。
 数百年後、誰も住むもののない「ウィンターレスト」は周囲の町の人々から畏怖の念を持って見られていました。ある日突然、この屋敷に買い手が現れると同時に、超自然的な現象が多発し始めます。やがて町の住民たちに「ウィンターレスト」からのティー・パーティの招待状が届けられますが…。
 「雰囲気派」の巨匠とされる、グラントのホラー長編です。我が国では非常に不評だったように思いますが、じっくり読んでみると、これはこれで捨てがたい味があります。
 主人公は、結婚生活で心に傷を追った男です。彼が、シングルマザーのキャリアウーマンと、小さな店を営むコケティッシュな女性との間で揺れる中で、町に頻発する怪奇現象が描かれます。
 確かに、後半ぎりぎりまでの日常描写が丹念かつ地味なので、前半で投げ出してしまいそうになる人もいるかと思いますが、ためにためた結末のクライマックスの効果はなかなかだと思います。



4488579019メイキング・ラブ (創元推理文庫)
メラニー テム ナンシー ホールダー Melanie Tem
東京創元社 1998-10

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メラニー・テム&ナンシー・ホールダー『メイキング・ラブ』(山田蘭訳 創元推理文庫)

 独善的な母親に育てられた、オールドミスの教師シャーロットは、理想の恋人を夢見ていました。ある日、奇人の弟カメロンが妙なことを言い始めます。自分は生命を何でも作り出せる、と。信じようとしないシャーロットでしたが、ある朝、美しい若い男が枕元に横たわっていたのに驚きを隠せません。その男ファネスは、彼女の恋人として振舞い、シャーロットはファネスに溺れていきます。理想の恋人と思えたファネスでしたが、やがてシャーロットの意思を無視し、勝手な行動を取り始めるのです…。
 弟カメロンの能力は、生命を作り出すことができるというもの。恋人とともにカメロンは「家族」を作ろうと、子供たちを大量に作り出していきます。しかし気に入らなかった子供は、簡単に消してしまうのです。
 ファネスを消されたくないシャーロットは、彼を守ろうとします。自分の自由にならなくなりつつあるファネスへの恐れと、恋人への愛に引き裂かれるシャーロットの心の揺れが読みどころです。
 やがてカメロンの作り出した子供たちの中に、非常に邪悪な存在が混ざりだします。彼らはとうとう殺人まで引き起こすのです。手に負えなくなった彼らをカメロンは一気に消し去ろうとしますが…。
 理想の恋人を作り出すという題材から、願望充足的なファンタジーを思い浮かべますが、これがなかなかどうして力作なのです。両親からの愛に恵まれなかった姉弟が、それぞれの愛を求めて試行錯誤を繰り返すという、非常に真摯なテーマを扱っています。シャーロットが自らの愛を自覚する結末のシーンには、ある種の感動を覚えるはず。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

星月夜の物語  まりの・るうにいのパステル宇宙
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 僕が「まりの・るうにい」という、不思議な名前の画家を知ったのは、前回の記事でも紹介した、ファンタジーの叢書《妖精文庫》のカバー・アートでした。パステルで描かれた、ファンタスティックで、やさしい雰囲気のカバー絵は、中身の物語を読みたい!と思わせる魅力を持っていました。それだけに、《妖精文庫》の第3期になり、カバー・アート担当の画家が変わってしまったのには、ちょっとがっかりしたものです。


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 次に「まりの・るうにい」に出会ったのは、稲垣足穂の本でした。足穂の『一千一秒物語』を絵にしたかのような、星や月をテーマにした作品は、まさに足穂の本にぴったりの装丁でした。《妖精文庫》のカバーと同じくファンタスティックな作風ですが、こちらの方はどこかとぼけたユーモアも感じさせるところが好ましいですね。
 稲垣足穂の著作の造本やブックデザインは、非常に洒落たものが多いのですが、「まりの・るうにい」が関わった足穂本はとりわけ魅力的に感じました。トランプをモチーフにした『多留保集』(潮出版社)であるとか、オブジェを散らしたようなデザインの『タルホ・クラシックス』(全3巻 読売新聞社)などは、今見ても魅力的なブックデザインです。
 独立した単行本のカバーとしては、荒俣宏編『魔法のお店』(奇想天外社)が、何といっても魅力的ですね。


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 この画家の画集が欲しいなあ、と思ったのですが、当時はインターネットもなく調べることもできません。やがて『月街星物園』(北宋社)という画文集が存在することを知り、探し始めたのですが、なかなか出会えません。新刊では既に絶版で、古書で探し出し手に入れるまでに何年もかかりました。
 この『月街星物園』、画集ではあるのですが、全ての作品がカラーページで載っているわけではなく、モノクロページが多いのですよね。
 もっと「まりの・るうにい」のカラー作品が見たいと思っていたら、古本屋で『パステル飾画―わたしのファンタジー画帖より』(美術出版社)を見つけました。こちらは、パステル画の入門書という体裁の本なので、厳密には画集とは言えないのですが、カラーページに作品が多く収録されており、画集としても楽しむことができます。技法書だけに、作品の創作過程なども載っており、そちらも興味深く読みました。

 昨年(2014年)の秋に「まりの・るうにい 「月街星物園」展」が東京の画廊で開催されたそうなのですが、知ったのが会期が終わった後で、残念ながら行くことができませんでした。
 記念として復刻版の『月街星物園』が刊行されたのですが、これが限定300部。もう入手は無理かとあきらめていましたが、念のため画廊のページで調べてみました。幸いにも、まだ在庫があり、喜んで注文したところ、著者サイン入りの画集が送られてきたのは、嬉しい驚きでした。
 復刻版の方はオールカラーで、オリジナルとは収録作品の異同もあります。ファンとしては両方所蔵しておきたいところですね。


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復刻版『月街星物園』は、まだ在庫があるようですので、入手希望の方は急いだ方がいいかと思います。
注文は以下のページで。
LIBRAIRIE6 / シス書店
http://librairie6.shop-pro.jp/?pid=85818288


プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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