幽霊屋敷の新機軸   三津田信三『どこの家にも怖いものはいる』

4120046370どこの家にも怖いものはいる
三津田 信三
中央公論新社 2014-08-08

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 三津田信三のホラー作品の怖さには定評があります。「幽霊」「お化け」、言い方は何でもいいのですが、そうした得体の知れない存在が、登場人物たちに迫ってくるときの切迫感が半端ではないのです。その怖さは、精神的なものというよりは、むしろ物理的なものに近い感触です。
 新作『どこの家にも怖いものはいる』(中央公論社)も、そんな「怖さ」を味わえる作品です。
 初期の作品でもそうでしたが、この作品でも主人公は、作家である三津田信三自身です。彼がふと知り合った編集者の三間坂から、怪奇現象を記述した日記と手記を渡されたことから、物語は動き始めます。
 ひとつは現代の新築の家から子どもが消えてしまった事件、もう一つは少年が奇怪な女に追いかけられ、謎の屋敷に迷い込む事件。時と場所も異なっているらしい二つの事件でしたが、それぞれの現象にどこか共通点があることを感じ取った三津田と三間坂は、事件について調べ始めます。やがて第三、第四の事件について記された資料が見つかりますが…。
 幽霊屋敷テーマについて書かれた作品なのですが、それが一つではなく、五つも出てくるという、ホラーファンにとってはたまらない趣向です。それぞれの事件は一見全く関連のない、独自の怪奇現象に見えるのですが、それらに共通点を感じ取った主人公たちが、事件の背景を調査・推理していくという形式になっています。
 5つの事件は、それぞれを短篇小説として読んでも十分に面白いのですが、それが最後にひとつの事件に収斂されていくのには驚かされます。
 この著者の描く怪奇現象の描写はほんとうに怖いのですが、本作でもそれは十分に発揮されています。霊的な場所に入り込んでしまった登場人物が、得体の知れない存在に追いかけられる。単純に言ってしまえばそれだけなのですが、それがわかっていても怖いのだから、その筆力はただ事ではありません。
 ホラー・怪奇小説ファンにとっては、ひじょうに満足できる作品といえるのですが、唯一難点を挙げるとすると、最終的に理に落ちてしまうところでしょうか。5つの事件のうち、4つ目までは、ほんとうに怖くて面白いのですが、それらの事件の元凶として語られる5つ目の事件が描写されることによって、因果性が見えてしまうのです。
 怪異は不条理なほうが怖いのです。「~のせいだった」といった、理由が説明されてしまうと、やはり怖さが半減してしまいます。
 ただ、事件の共通点を推理していったり、怪奇現象について論理的に考えていくという、ミステリ的な興味はそれはそれで楽しく読めるのも事実です。その意味ではミステリファンにも楽しめる作品でしょう。
 総体的にはホラーとミステリのハイブリッド作品といえるのですが、かなりホラー寄りに書かれた作品でしょうか。ホラーファン、とくに幽霊屋敷ものが好きな方にはオススメしたい作品です。

テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

物語の物語  ヴォイチェフ・イエジー・ハス監督『サラゴサの写本』

B00GI4DHX4サラゴサの写本 [DVD]
紀伊國屋書店 2014-01-25

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B000J83KXC世界幻想文学大系〈第19巻〉サラゴサ手稿 (1980年)
荒俣 宏 紀田 順一郎 J.ポトツキ
国書刊行会 1980-09

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 ポーランドの大貴族ヤン・ポトツキが残した小説『サラゴサ手稿』(工藤幸雄訳 国書刊行会)は、幻想文学の古典といわれています。
 不思議な事件、官能的な美女、夢とも現実ともつかぬ体験。短い挿話が連なる連作になっていますが、ポーランドの千夜一夜物語の異名もむべなるかなと思わせる名作です。

 その『サラゴサ手稿』の映画化作品があると、以前から聞いていましたが、長年観ることはできませんでした。今年ようやくDVDが発売され、観賞を終えましたので、感想など書いてみたいと思います。
 監督は、ヴォイチェフ・イエジー・ハス。タイトルは『サラゴサの写本』(1965年 ポーランド)です。

 ナポレオン時代のスペインのサラゴサを舞台に、あるフランス軍将校が、ふと入り込んだ宿屋で大きな写本を見つけます。直後に現れたスペイン人将校は、その書物を翻訳して聞かせ始めます。
 その物語は、貴族の息子アルフォンスが出会う不思議な出来事を語るものでした。山を越えようとしていたアルフォンスは、さびれた宿屋で一夜を明かそうとします。宿屋の地下には、大きな広間が広がっており、イスラム教徒の美しい姉妹がいました。アルフォンスの遠縁と名乗る彼女らは、彼との婚姻を望みますが、その条件は、アルフォンスが改宗することでした。
 ふと目が覚めたアルフォンスがいた場所は、山賊が処刑されたばかりの絞首台だったのです…。

 姉妹に出会ったり、異端審問所に捕らえられたりと、事件が起こるたびに、アルフォンスは絞首台のそばで目を覚まします。今までの事件は夢だったのか、美しい姉妹は魔性のものなのか。すべてが夢なのか現実なのかはっきりしないという、じつに魅力的な物語です。
 同じ場所で目を覚ますシーンが繰り返されることによって、いつからか妙なユーモアさえたたえてくるところが素晴らしいですね。
 導入部に写本が現れることから、物語が枠物語であることが示されているのですが、序盤では、妖しい出来事は起こるものの、枠物語そのものを意識させるようなシーンはありません。
 中盤になり、カバリストと出会ったアルフォンスは彼の城に滞在することになります。そこで出会うジプシーの首領アバドロが語り出すところからが圧巻です。
 物語全体が将校が読んでいる写本なので、その中の主人公アルフォンスの物語中で語り出すアバドロの話が、すでに二重構造になっているわけです。しかも、そのアバドロの話の中の登場人物が話を語り出し、さらにその中で別の登場人物が話を語り出し…と、3重、4重の語りになってくるのです!
 これはすごいです。正直、アバドロが語り出すあたりからの話は、艶笑譚や悪漢物語などの、超自然的な要素の薄い話ばかりで、前半の摩訶不思議な雰囲気とはトーンが異なっているのですが、それを補ってあまりあるほどの構成の面白さ。
 主人公の父親や母親のエピソードなども挟まれ、それが後半に向けての伏線にもなっているところなど、じつに見事です。
 話がどんどんと入れ子になっていくので、これ、ちゃんと終わるんだろうか? と思いながら観ていると、やがてそれぞれの物語の決着が付いていきます。枠の外側から、だんだんと物語が閉じていく後半はあっけにとられてしまうでしょう。
 上映時間が183分とかなりの大長編なのですが、飽きずに観ることができます。摩訶不思議な幻想物語といい、入れ子状のメタフィクショナルな構成といい、まさにワンアンドオンリーといっていい映画です。

 原作の国書刊行会版『サラゴサ手稿』の翻訳は、14日目までのものになります。全部で66日分の分量があるらしいので、約4分の1になりますね。読んだのが随分前なので、はっきり覚えていないのですが、映画版の後半に出てきたアバドロの語る部分は読んだ覚えがないような気がします。
 DVDには、映画を詳細に解説したブックレットがついているのですが、これを読んでみると、確かにアバドロの部分は翻訳書には載っていないとのこと。ますます完訳版が読んでみたくなりました。
 ちなみにブックレットは、映画の中の登場人物の語りの階層までも詳細に記述しているという、すぐれものです。映画を鑑賞した後に読むと、さらに理解が深まるでしょう。

 それにしても『サラゴサ手稿』完訳版はどうなっているのでしょうか。
 国書刊行会版『サラゴサ手稿』が出たのが1980年。『東欧怪談集』(沼野充義編 河出文庫)に『サラゴサ手稿』の未訳のエピソードが紹介され、その解説で完訳版が近いうちに刊行されると書かれていたのが1995年。
 そして数年前に東京創元社から、完訳版の刊行のニュースがありましたが、その後はなしのつぶて。もう何十年も待っているので、今更すぐとは言いませんが、ちゃんと出版してほしいものです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

最近読んだ本

フレクサ
 フリードリヒ・フレクサ『伯林白昼夢』(垂野創一郎訳 ビブリオテカ・プヒプヒ)
 小酒井不木が、江戸川乱歩の『白昼夢』を読んで、似た印象を受けたと発言している長編の原型となった短篇小説。
 ベルリンを舞台に、人間と見紛う精巧なマネキンをめぐって繰り広げられる、熱に浮かされたような幻想小説です。確かに乱歩の『白昼夢』に似たイメージの作品ですね。個人的には、オスカル・パニッツァ『人間工場』(種村季弘訳 種村季弘編『ドイツ幻想小説傑作集』白水Uブックス所収)を思い出しました。



ペルッツ
 レオ・ペルッツ『アンチクリストの誕生』(垂野創一郎訳 ビブリオテカ・プヒプヒ)
 18世紀パレルモが舞台です。生まれたばかりの赤ん坊がアンチクリストだという夢を信じ込んだ男は、赤ん坊を殺そうとします。自らの手では無理だと悟った男は、知り合いの窃盗団に殺害を依頼します。それを知った母親は殺害を防ごうとします。互いに後ろ暗い過去をもちながらも愛し合っていた夫婦の愛憎の行方は…?
 舞台は18世紀になっているものの、本質は「ドメスティック・サスペンス」でしょうか。まるでシャーロット・アームストロングの作品でも読んでいるかのようです。舞台となった土地や時代の描写も生き生きとしており、ペルッツの達者な筆が味わえる中篇小説。


 『伯林白昼夢』『アンチクリストの誕生』を含む≪ビブリオテカ・プヒプヒ≫シリーズは、古書肆マルドロールさんで購入できます。



4488014534月の部屋で会いましょう (創元海外SF叢書)
レイ・ヴクサヴィッチ 岸本 佐知子
東京創元社 2014-07-14

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  レイ・ヴクサヴィッチ『月の部屋で会いましょう』(岸本佐知子、市田泉訳 東京創元社)
 奇想に富んだ短篇を集めた作品集です。明確な起承転結がある作品は少なく、SFやファンタジー的な要素を使った純文学的スケッチ、といった感じの作風ですね。
 一番のベストは、やはり『僕らが天王星に着くころ』。ある日皮膚が宇宙服になってしまう奇病にかかった女性とその恋人をめぐる異色のラブストーリーです。
 ナノテクノロジーで生まれた極小の人類に乗っ取られた女性科学者を描く『母さんの小さな友だち』、紙袋で地球の壊滅をやり過ごそうとする『彗星なし(ノー・コメット)』、寝ている間に録音したテープに入っていた男女の声の謎を探るホラー的作品『ささやき』などが面白いです。



4309206565はい、チーズ
カート ヴォネガット 大森 望
河出書房新社 2014-07-25

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 カート・ヴォネガット『はい、チーズ』(大森望訳 河出書房新社)
 ヴォネガットの未発表短篇を集めた作品集です。本人がボツにした作品らしいので、落穂拾い的な作品集なのかなと思いきや、これがかなりの力作揃いです。SF・ファンタジー的な作品は少ないのですが、どの作品も起承転結がはっきりしていて、短篇のお手本のような作品ばかり。
 人の悪意を吹き込む発明品をめぐる『耳の中の親友』、進化した蟻をめぐる風刺SF『化石の蟻』、風変わりな殺人手段を扱ったクライム・ストーリー『はい、チーズ』などが面白いですね。
 なかでは、『エド・ルービーの会員制クラブ』が、長めの作品なのですが、少し毛色の変わった作品です。町を牛耳る悪党に殺人の罪を着せられた男が、逃走し、捕らえられた妻を救おうとする物語です。ほぼ純粋なサスペンスというかスリラーなのですが、これが息つく暇もなく読ませます。この手のジャンル小説を書かせてもこれだけ読ませる作品を書けるとは、ヴォネガットの筆力に驚かされますね。



4041026008きんきら屋敷の花嫁 (角川ホラー文庫)
添田 小萩
KADOKAWA 2014-04-25

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 添田小萩『きんきら屋敷の花嫁』 (角川ホラー文庫)
 身寄りのない普通の女性、知花は、資産家の飯森一家に見初められ結婚することになります。彼女が連れてこられたのは、山の中にある大きな屋敷。そして屋敷の中には、何の用途で使うのかわからない離れ家がありました。
 一族だけで経営している会社、親戚以外には出入りさせない屋敷、そして謎の離れ家。家の数々のしきたりを受け入れていく知花でしたが、一族には、まだ重大な秘密がありました…。
 「和製ゴシックロマン」との言葉に惹かれ読んでみました。ゴシックロマンとは少々ニュアンスが異なるものの、これはなかなか面白いです。
 身寄りのない乙女、二枚目の夫、意地悪な義妹、旧家のしきたり、一族の過去など、面白くなりそうな要素はてんこ盛りなのですが、主人公があまり行動的な性格でないのもあって、物語はあまり大きく動きません。主人公が事態を動かすというよりは、大きな出来事に流されるままなのです。運命譚といった感じでしょうか。
 けれど、作中で起こる出来事がかなり異様なのと、語り手が妙に客観的なのも相まって、「説話」でも読んでいるような不思議な読後感があります。選評で東雅夫が、ドイツ・ロマン派の名前を出していますが、確かにそれもうなずけるような作品ですね。



4103360313忘却のレーテ
法条 遥
新潮社 2014-07-22

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 法条遥『忘却のレーテ』(新潮社)
 あらゆる記憶を完全に忘却させる作用を持った薬「レーテ」。父親の横領した金の減額と引き換えに治験に参加した笹木唯は、薬の効果に驚きます。毎日、目が覚めるたびに、それまでの記憶が全くないのです。完全に閉鎖された環境のなか、犯人が誰ともわからぬ殺人が起きますが…。
 クローズド・サークルものに記憶の要素をからめたサスペンス作品です。登場人物たちの記憶は毎回なくなりますが、読者には違和感が積もっていくところが読みどころ。
 なかなか面白いテーマなのですが、天才科学者のキャラクターがかなりステレオタイプなのと、主人公含め感情移入できるような登場人物がいないので、合わない人は合わないかもしれません。



4861102847乱歩彷徨―なぜ読み継がれるのか
紀田 順一郎
春風社 2011-11-11

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 紀田順一郎『乱歩彷徨 なぜ読み継がれるのか』(春風社)
 紀田順一郎による江戸川乱歩論です。実作において自らの理想が高すぎたために、生涯、自作の評価に苦しんだ乱歩。それゆえに、戦後においてはほとんど実作の筆をとらずに、評論活動や啓蒙活動を行うことになりました。それらの実作以外の活動も含めて、乱歩の全体像を描き出そうという試みです。
 リアルタイムで生前の乱歩の作品に接していた著者が、世間から乱歩やその作品がどうとらえられていたのかなど、同時代人ならではの視点が新鮮です。
 また、怪奇小説に造詣が深い著者だけに、乱歩の怪奇幻想作品にもしっかりとした評価を与えています。怪奇小説の巨匠M・R・ジェイムズの技法を持ち出して比較するあたり、怪奇幻想文学ファンはにやりとしてしまいますね。



4309274900かわいい闇
マリー ポムピュイ ファビアン ヴェルマン ケラスコエット Marie Pommepuy
河出書房新社 2014-06-23

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 マリー・ポムピュイ、ファビアン・ヴェルマン『かわいい闇』(原正人訳 河出書房新社)
 フランスのコミックであるバンド・デシネ作品。少女の死体から生まれた妖精(?)たちの生きるための行動を追っていくという物語です。
 タッチはひじょうに可愛らしいのですが、物語はショッキングです。妖精たちの行動は残酷そのもので、良心などは感じられないのです。唯一、皆のために働いていた主人公が、仲間の裏切りにあったときにとった行動とは…?
 妖精たちのとる行動は自然界の弱肉強食に近いもの。その意味で寓話といっていいのでしょうが、それらの残酷な行為が、人の姿をしたキャラクターで描かれると、これほど衝撃的だとは。日本のコミックでは見たことのない斬新な作品です。大傑作。



4063770206田中雄一作品集 まちあわせ (KCデラックス アフタヌーン)
田中 雄一
講談社 2014-06-23

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 田中雄一『田中雄一作品集 まちあわせ』(講談社KCデラックス アフタヌーン)
 SF的作品を集めたコミック短篇集です。人類より強力な生物が闊歩する世界で、必死に生きる人間を描くというのが、共通のテーマとして描かれています。
 突然変異で生まれた巨大な虫に人類が脅かされる『害虫駆除局』、人類と平行して進化し、人類以上の強靭な肉体と頭脳を持つ種との争いを描く『プリマーテス』、異形の生物から生まれた女性と青年との異色のラブストーリー『まちあわせ』、怪獣が闊歩する未来世界を舞台にした『箱庭の巨獣』を収めています。
  どの短篇でも、人類は「弱い」存在として描かれているのが特徴です。その描き方はひじょうにハードで徹底しています。外敵にとって人類は「虫けら」程度の存在でしかないのです。ここまで徹底的に人類を弱者として描いた作品も珍しいんじゃないでしょうか。
 とくにインパクトがあったのは『害虫駆除局』。虫好きで害虫駆除局に入った青年が、虫に襲われ、認識を改めていく過程が説得力豊かに描かれます。結末のえげつなさにはショックを受けてしまうでしょう。
 個人的には、ブライアン・オールディスの『地球の長い午後』や、トマス・M.ディッシュ『人類皆殺し』あたりに通じるものを感じました。絵柄に癖があるので、肌合いが合わない人もいるでしょうが、これは近年の収穫だと思いますので、ぜひ一読を。

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ホラーの黎明  『アメリカンホラーフィルム ベスト・コレクション』

B00JRGY2MAアメリカンホラーフィルム ベスト・コレクション DVD-BOX Vol.1
ブロードウェイ 2014-07-02

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 先日発売されたDVD-BOX『アメリカンホラーフィルム ベスト・コレクション』は、1930年代~1940年代のアメリカ製のホラー映画を8作集めたコレクションです。
 映像技術の進歩を考えると、この年代の作品をまともに観賞できるものかどうか、心配しながら観たのですが、杞憂でした。
 年代が年代だけに、映像技術はもちろん拙いのですが、その分、物語を進める推進力は強く、今観ても面白く鑑賞できるものが多く含まれています。
 以下、紹介していきましょう。



B00M11NQDYアメリカンホラーフイルム 呪いの家 [DVD]
ビデオメーカー 2014-10-03

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 ルイス・アレン監督『呪いの家』(1944)
 イギリスの田舎を訪れた兄妹ロデリックとパメラは、ふと見つけた屋敷に夢中になり、衝動的に購入してしまいます。屋敷の破格の安値に疑問を抱く兄妹でしたが、持ち主のビーチ中佐は、理由を語ろうとしません。
 中佐の孫娘ステラは、亡き母の思い出がある屋敷を訪れているうちに、ロデリックと恋仲になります。しかし屋敷には怪現象が続いていました。これはステラの母親の幽霊なのだろうか?兄妹は、屋敷の秘密を探り始めますが…。
 ひじょうにオーソドックスな幽霊屋敷映画なのですが、これはなかなか見ごたえがあります。怪奇現象もさることながら、ステラの母親の死因や父親の過去、ステラの精神的な危うさなど、人間心理的な部分も面白いのです。結末もひねっており、サスペンス映画としてみても上質な一品。



B00M11O6BAアメリカンホラーフイルム 悪魔の人形 [DVD]
ビデオメーカー 2014-10-03

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 トッド・ブラウニング監督『悪魔の人形』(1936)
 脱獄囚マルセルは、生物を縮小する実験を行っていた科学者でした。ともに脱獄したラヴォンは、衰弱のため死亡したマルセルに代わり、自分を無実に陥れた人間に復讐するために、その成果を利用しようと考えます。老婆に化けたラヴォンは、マルセルの妻マリータとともに復讐の機会を狙いますが…。
 生物を小さくするというSF的なテーマを扱った作品です。特撮も当時の技術を考えると、よくできているように思います。大時代なストーリーはともかく、ラヴォン演じるライオネル・バリモアの老婆の演技がすごいですね。



B00M11O2OQアメリカンホラーフイルム 歩く死骸 [DVD]
ビデオメーカー 2014-10-03

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 マイケル・カーティス監督『歩く死骸』(1936)
 無実の罪を着せられたエルマンは、死刑を宣告されます。目撃者の証言で彼の無実が証明されますが、死刑は執行された後でした。科学者の実験により、エルマンは息を吹き返しますが、よみがえったエルマンは、生前とは別の人間のようになっていました…。
 タイトルはゾンビ映画のようですが、正確には蘇生した人間です。甦ったエルマンには超自然的な能力が備わっており、それを利用して、無実の罪を着せた連中に復讐を遂げていくのですが、エルマンを演じるボリス・カーロフの演技がひじょうに不気味で効果をあげています。
 テンポがやたらとスピーディなのもあって、娯楽作品としては一級の作品だと思います。



B00M11O1A6アメリカンホラーフイルム 狂恋:魔人ゴーゴル博士 [DVD]
ビデオメーカー 2014-10-03

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 カール・フロイント監督『狂恋:魔人ゴーゴル博士』(1935)
 事故で両手を切断することになったピアニストのために、死刑囚の手を移植する医者の話です。移植されたピアニストは、事実を何も知らされないのですが、ピアノが弾けなくなり、手が勝手にナイフをつかみたがることに不安を抱き始めます…。
 ピアニストの妻の女優に、医者が横恋慕しているという設定になっており、死刑囚の手を移植されたピアニストよりも、かなわぬ恋に苦しむ医者の方にスポットライトが当たっています。『狂恋』のタイトルもそこから来ているのでしょう。
 ゴーゴル博士を演じるのは、名優ピーター・ローレ。すばらしい演技力で、物語をひっぱっていきます。序盤から結末まで、無駄がなく引き締まった脚本で、完成度のひじょうに高い作品です。



B00M11O69Cアメリカンホラーフイルム 五本指の野獣 [DVD]
ビデオメーカー 2014-10-03

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 ロバート・フローリー監督『五本指の野獣』(1946)
 W・F・ハーヴィーの名作怪奇小説『五本指の怪物』『消えた心臓 世界恐怖小説全集4』東京創元社所収)を原作にしたホラー映画です。
 資産家で、かっては名ピアニストだった初老の男イングラムは、イタリアのある村に隠棲していました。車椅子生活をし、片手が麻痺したイングラムがつきあっているのは、看護婦のジュリー、秘書のヒラリー、作曲家のコンラッドだけでした。
 イングラムはジュリーを愛し始めますが、当のジュリーはコンラッドと一緒に村を離れようとしていました。ヒラリーからその事実を聞いたコンラッドは動揺し、階段から落下し命を落とします。
 遺言書にはジュリーに全ての遺産を譲るとの意思があり、遺産相続の当てが外れた義弟と甥は弁護士を抱きこみ、遺言書を無効にしようと画策します。その矢先、弁護士が首を絞められて殺されます。その時、イングラムしか弾けないタッチでピアノが鳴り響きます。まさかイングラムが生きている? 死体を確認しに訪れた人々は、イングラムの死体から片手がなくなっているのに気づきます…。
 老人の手が、死後も人々を襲うというホラー作品です。怪奇現象が起きる前段階で、主だった登場人物たちの葛藤が描かれるのですが、この部分がひじょうに上手い。怪奇現象が起きる原因や経緯に必然性が感じられるようになっているので、結末にも納得がいくようになっています。



B00M11NWCEアメリカンホラーフイルム 古城の扉 [DVD]
ビデオメーカー 2014-10-03

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 ロイ・ウイリアム・ニール監督『古城の扉』(1935)
 とあるヨーロッパの国が舞台。この国には双子が生まれると、弟が兄を「黒の間」で殺すという、言い伝えがありました。双子が生まれたことに驚いた当主は「黒の間」を封印します。
 数十年後、当主になった兄グレゴールは、傍若無人な振る舞いで領民から嫌われていました。グレゴールは放浪の旅に出ていた弟アントンを呼び戻しますが、その思惑は…。
 双子が主人公といえば、入れ替わりが起こるんじゃ…と思ったら、案の定です。入れ替わりが起こるのは観ている人には明かされるので、弟に化けた兄の化けの皮がいつはがれるのか…というサスペンスで物語は進みます。
 グレゴールの悪人ぶりが徹底していて、じつに生彩があるのですが、物語自体が勧善懲悪的なつくりになっていて、そのあたりが物足りませんね。



B00M11NQESアメリカンホラーフイルム 大鴉 [DVD]
ビデオメーカー 2014-10-03

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 ルイ・フリードランダー監督『大鴉』(1935)
 ヴォリン博士は、エドガー・アラン・ポーを崇拝する、天才的な外科医でした。ヴォリンは、患者であるジーンの美しさに惹かれ、ジーンの父親にジーンをよこすようにと告げます。しかし既に婚約者のいるジーン自身も父親もヴォリンを拒絶します。
 ある日、屋敷に忍び込んだ殺人犯ベイトマンは、ヴォリンに整形手術を行うように脅迫します。彼をだまし、醜い顔にしたヴォリンは、ベイトマンを利用して、ジーンたちに復讐を決意しますが…。
 ポーの原作『大鴉』にインスピレーションを受けて、ポー的な要素を使って脚色した作品です。拷問好きと称するヴォリン博士は、壁が迫ってくる部屋や、振り子の刃など、いろいろな仕掛けを屋敷に施しているのですが、このあたりのギミックが今見ると、ちゃちに感じられてしまうところがつらいですね。



B00M11O408アメリカンホラーフイルム 悪魔の命令 [DVD]
ビデオメーカー 2014-10-03

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 エドワード・ドミトリク監督『悪魔の命令』(1941)
 ブレア博士は、人間の脳波を外部から読み取るという実験を行っていました。ある日最愛の妻を事故で亡くした博士は、霊媒師ウォルターズ夫人と組み、死んだ妻と再び会話しようと考えます。しかし、死者との交信を行うには、人間のエネルギーが必要なのです。田舎に隠棲した彼は、邪悪な実験を開始しますが…。
 もともとは善人ながら、妻への執着で人が変わったようになってしまうブレア博士の人物像もさることながら、詐欺をはたらきながらも悪ぶれない悪女ウォルターズ夫人のキャラクターが強烈です。はっきりと幽霊を出さずに、死者の世界があるかないかも明確にしない演出は、今観てもなかなかのものだと思います。


 10月に分売でも発売されるそうなので、気になったタイトルがあったら観賞をオススメしておきます。

テーマ:ホラー映画 - ジャンル:映画

8月の気になる新刊と7月の新刊補遺
7月30日刊 ジュール・ヴェルヌ『緑の光線』(文遊社 予価2916円)
8月2日刊 ダンセイニ卿『賢女の呪い』(盛林堂ミステリアス文庫 1500円)
8月21日刊 ヘレン・マクロイ『逃げる幻』(創元推理文庫 予価994円)
8月22日刊 太陽の地図帖編集部編『諸星大二郎『暗黒神話』を旅する』(平凡社 予価1296円)
8月24日刊 B・J・ホラーズ『モンスターズ 現代アメリカ傑作短編集』(白水社 予価2592円)
8月28日刊 ポール・コリンズ『バンヴァードの阿房宮 世界を変えなかった十三人』(白水社 予価3888円)
8月28日刊 柴田元幸訳『マーク・トウェイン短編集』(新潮文庫)
8月29日刊 荒俣宏編『怪奇文学大山脈2 西洋近代名作選 20世紀革新篇』(東京創元社 予価2484円)
8月29日刊 マーガレット・ミラー 『悪意の糸』(創元推理文庫 予価972円)

 ジュール・ヴェルヌの入手困難な作品を復刊してきた文遊社。今回は『緑の光線』が刊行です。『緑の光線』と初期短編 『メキシコの悲劇』 が収録されるようです。
 ヴェルヌは昔から翻訳の数は多いのですが、絶版の数も多いです。入手の難しさで言うと≪ヴェルヌ全集≫(集英社)と≪海と空の大ロマン≫(パシフィカ)の2つのシリーズがとくに難しい。≪海と空の大ロマン≫に至っては、古書価が1冊数万円とか、とんでもない値がついていて、驚かされます。
 文遊社のヴェルヌ作品も、この2つのシリーズから復刊しているようなので、続刊も期待できそうですね

 ダンセイニ卿『賢女の呪い』は、盛林堂ミステリアス文庫の新刊。盛林堂ミステリアス文庫は、西荻窪の古書店、盛林堂書房さんが刊行している、ミステリ・幻想文学中心の叢書です。
 『賢女の呪い』は、ダンセイニの未訳の自伝的長編だということです。完全部数限定(200部)なので、気になった方は、早めにご予約することをオススメしておきます。

 ポール・コリンズ『バンヴァードの阿房宮 世界を変えなかった十三人』は、風変わりな人物のポートレイト集といった感じの本ですが、地球空洞説の提唱者ジョン・クリーヴズ・シムズとか、でたらめの台湾語を創作したサルマナザールなども取り上げられており、ひじょうに面白そうです。

 荒俣宏編『怪奇文学大山脈』の2巻は、20世紀革新篇ということで、ウェイクフィールド、メトカーフ、デ・ラ・メア、F・マリオン・クロフォードなど17篇収録。怪奇小説の巨匠の名前が多く挙がっていて楽しみです。
 1巻のクオリティがとても素晴らしかったので、全3巻というのが短く感じられてしまいます。好評だった場合、続刊などあるのでしょうか。

 <追記>創元社の近刊案内で、『怪奇文学大山脈〈Ⅱ〉西洋近代名作選 20世紀革新篇』の収録作品が公開されていましたので、紹介しておきたいと思います。

ロバート・ヒチェンズ『未亡人と物乞い』
F・マリオン・クロフォード『甲板の男』
E・L・ホワイト『鼻面』
H・H・エーヴェルス『白の乙女』
マッシモ・ボンテンペッリ『私の民事死について』
J・D・ベリズフォード『ストリックランドの息子の生涯』
A・E・コッパード『シルヴァ・サアカス』
L・P・ハートリー『島』
アーサー・マッケン『紙片』
ウォルター・デ・ラ・メア『遅参の客』
オリバー・オニオンズ『ふたつのたあいない話』
W・F・ハーヴェイ『アンカーダイン家の信徒席』
ジョン・メトカーフ『ブレナー提督の息子』
ヒュー・ウォルポール『海辺の恐怖──一瞬の経験』
H・R・ウエイクフィールド『釣りの話』
シルヴィア・タウンゼンド・ウォーナー『不死鳥』
ベネット・サーフ『近頃蒐めたゴースト・ストーリー』

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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