3月の気になる新刊と2月の新刊補遺
発売中 ウィンザー・マッケイ『リトル・ニモの大冒険』(パイインターナショナル 3360円)
2月28日刊 イバン・バレネチェア『ボンバストゥス博士の世にも奇妙な植物図鑑』(西村書店 予価1995円)
3月6日刊 アイザック・アダムスン『コンプリケーション』(ハヤカワ・ミステリ 予価1785円)
3月6日刊 ブレイク・クラウチ『パインズ 美しい町』(ハヤカワ文庫NV 予価945円)
3月10日刊 真鍋博『超発明 創造力への挑戦』(ちくま文庫 予価860円)
3月12日刊 ショーン・タン『見知らぬ国のスケッチ アライバルの世界』(河出書房新社 予価1890円)
3月14日刊 グスタフ・マイリンク『ゴーレム』(白水Uブックス 予価1785円)
3月19日刊 フィリップ・K・ディック『変種第二号 ディック短篇傑作選4』(ハヤカワ文庫SF 予価1071円)
3月22日刊 ロバート・F・ヤング『時が新しかったころ』(創元SF文庫 予価840円)
3月28日刊 北村薫『書かずにはいられない』(新潮社 予価1785円)
3月下旬刊 リチャード・マシスン『リチャード・マシスン短編集』(仮題)(扶桑社ミステリー)

 アメリカ漫画の黎明期の傑作、ウィンザー・マッケイ『リトル・ニモの大冒険』が新訳で刊行されていました。旧邦訳版はすさまじい古書価がついていたので、これは朗報ですね。
 イバン・バレネチェア『ボンバストゥス博士の世にも奇妙な植物図鑑』は、架空の幻想的な植物を描いた絵本だとのことで、レオ・レオーニの『平行植物』などのような感じなのでしょうか。気になります。
 『たんぽぽ娘』のヒットが効いたのでしょうか。創元からは、なんとロバート・F・ヤングの長編 『時が新しかったころ』が登場です。タイムトラベルもののようですね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

『ミステリーゾーン』と『新トワイライトゾーン』
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新トワイライトゾーン (扶桑社ミステリー)
J.M. ストラジンスキー 尾之上 浩司
扶桑社 1991-05

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 アシェット社から刊行中のDVDマガジン『ミステリーゾーン』。順調に巻を重ね、今のところ、12巻まで刊行されています。
 予定巻数が84巻と、やけに多いので、もしかして『ミステリーゾーン』(旧トワイライトゾーン)だけでなく、『新トワイライトゾーン』まで、収録するのではないかと言われていたのですが、案の定だったようです。
 先日、公式ホームページで刊行予定のエピソードリスト一覧が発表されたのですが、『ミステリーゾーン』のあとに、『新トワイライトゾーン』のエピソードが連なっていました。
 しかも嬉しいことに、日本でもビデオ・LDが発売された第一シーズンだけでなく、ソフト化されていなかった第二・第三シーズンが含まれています。
 トム・ゴドウィン『冷たい方程式』、シオドア・スタージョン『孤独の円盤』等の名作の映像化も楽しみですが、個人的に楽しみにしているのは、J・M・ストラジンスキーの脚本エピソードです。
 ストラジンスキーは、第二・第三シーズンにおいて、多く脚本を手がけている作家なのですが、その脚本を自ら小説化した短編集が、1991年に扶桑社ミステリーから刊行されています(『新トワイライトゾーン』尾之上浩司訳)。この短編集がめっぽう面白くて、映像化作品もぜひ見たいものだと思っていたので、今回その夢が20年越しに叶いそうです。
 このストラジンスキーの『新トワイライトゾーン』、どの収録短編も面白く、ぜひ再刊してほしい短編集です。自分の記憶を売ることになってしまう男を描いた『サイモン・フォスターの心』、世界が消滅しないようにガラクタを集め続ける老人の物語『エドガー・ウイザースプーン氏の奇妙な症例』など、面白い話が目白押しですが、いちばんの力作は『われらがセレナは死にゆく』でしょう。ロッド・サーリングが残したあらすじを元に、ストラジンスキーが脚本を書いた作品なのですが、なかなかの衝撃作だと思います。
 さて、『新トワイライトゾーン』の第一シーズンはビデオが発売されていたので、すべて鑑賞しています。記憶に残っているエピソードを挙げておきましょう。

 ロバート・R・マキャモン原作『帰還兵』
 ヘンリー・スレッサー原作『試験日』
 ウィリアム・M・リー原作『時を越えたメッセージ』
 ジョー・ホールドマン原作『悪魔の方程式』
 シオドア・スタージョン原作『時のすきま』
 ロバート・シルヴァーバーグ原作『無視刑囚』
 スティーヴン・キング原作『おばあちゃん』
 グレッグ・ベア原作『地獄への運び屋』
 リチャード・マシスン原作『欲望のボタン』

 旧シリーズと同様、原作にSF・ホラー・ファンタジー作家の作品がたくさん使われており、異色短編のファンにとっても楽しめるシリーズになっています。
 ただ、今回のDVDコレクション、84巻と長大なシリーズなので、最後まで刊行されるかどうかは未知数です。旧『ミステリーゾーン』ももちろん楽しみですが、『新トワイライトゾーン』完結まで応援していきたいと思っています。

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最近読んだ本

4336057605ボリバル侯爵
レオ・ペルッツ 垂野創一郎
国書刊行会 2013-11-22

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 ナポレオン麾下として、スペインに侵攻したドイツ・ナッサウ連隊。しかし、占領下のラ・ビスバル市では、ゲリラによる反乱活動の噂が耐えませんでした。そしてその中心にいるのは、怪しいうわさの耐えない怪人物ボリバル侯爵。青年将校たちは、不可思議な運命に巻き込まれてしまいます…。
 これは素晴らしい。謎の侯爵、さまよえるユダヤ人、不可思議な運命。緊迫した政治情勢のなか、追い詰められていく主人公たち。サスペンスあふれる中にも、ユーモラスな場面も忘れないところがにくいですね。先に出た 『夜毎に石の橋の下で』とは、また違った味わいの作品です。どちらかと言えば 『第三の魔弾』に近い味わいですね。



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ぼくが死んだ朝 (扶桑社ミステリー)
ロバート・コーミア Robert Cormier
扶桑社 1991-09

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 幼い子供たちが乗るスクールバスをバスジャックした某国のテロリストたち。たまたま運転手の代わりを務めていた少女ケイトは、まだ少年といっていいテロリストの一人ミロに、犯行をやめるよう説得を続けます。一方、政府の秘密機関の長官を務める准将は、犯人との交渉に自分の息子ベンを使おうと考えますが…。
 バスジャックを巡るサスペンス小説です。ヤングアダルト向けに書かれたそうですが、その内容は実にハード。子供も容赦なく殺されてしまいますし、それ以上に残酷なのが、主人公ベンの運命。読後感も非常にやるせないものですが、傑作といっていい作品でしょう。



4480804501注文の多い注文書 (単行本)
小川 洋子 クラフトエヴィング商會
筑摩書房 2014-01-23

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 久々となる、クラフトエヴィング商會の新刊は小川洋子との共作でした。小説中に登場する架空の「もの」を探してほしい、という依頼に答えて「ないもの」を取り出してみせるという、じつにクラフトエヴィング商會らしい作品です。
 「肺に咲く睡蓮」や「バナナフィッシュの耳石」など、小川洋子が提出してみせるテーマが、クラフトエヴィング商會の味わいとじつにマッチしています。コラボレーションの見本ともいうべき作品集でしょう。



4582836410星を賣る店
クラフト・エヴィング商會
平凡社 2014-01-27

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 こちらは、クラフトエヴィング商會の展覧会の公式図録として作られた作品集です。 『どこかにいってしまったものたち』 『クラウド・コレクター』で見せてくれた、架空の商品の紹介のほかに、クラフトエヴィング商會が装丁した本のカタログにもなっています。このユニットのファンならマストバイの図録ですね。


次はコミックからいくつか。


4778322215バベルの図書館 (FX COMICS)
つばな
太田出版 2014-01-22

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 紙に触っただけで、そこに書かれた全ての文章を読む力を持つ少年と、天使の存在を信じる少女が出会ったときに起こったのは悲劇なのか…?
 つばな作品には珍しい、シリアスなトーンの物語です。結末は賛否両論分かれるかも。



4396765959雪女幻想 みちゆき篇 (フィールコミックス) (Feelコミックス)
安堂維子里
祥伝社 2014-01-08

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 前作の 『Silent Blue』が、正直微妙な作品だったのですが、今回はなかなか。永遠の愛をもとめて遍歴を続ける、現代の雪女を描いた物語です。オムニバスになっており、男に結局裏切られ続ける主人公がまた旅に出る…というテーマで描かれています。主人公を追いかけ続ける男や、主人公の姉なども登場し、物語全体の引きも十分。続刊もあるようですが、期待できそうです。


4396460473夜とコンクリート
町田 洋
祥伝社 2014-02-03

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 デビュー短編集 『惑星9の休日』が素晴らしかった町田洋の第二作品集です。描かれたのは、こちらの方が古いようですが、すでに作風として完成されているのに驚かされます。
 建物の声を聞くことのできる青年と出会った建築士の物語『夜とコンクリート』、何十年も前に失踪した友人を救うために、別の世界から来たという老人に協力することになった青年とその仲間を描く『夏休みの町』、空想の友人を持つ少女が、現実で始めて友人になった男は不思議な能力を持っていた…という『青いサイダー』、青春スケッチ風の『発泡酒』の4編が収められています。
 『夜とコンクリート』の味わいも良いのですが、なんと言っても『夏休みの町』『青いサイダー』が素晴らしいです。とくに『夏休みの町』は、失踪した老人の友人の物語が、主人公の物語と一体となるクライマックスが、じつに味わい深い。オススメの作品集です。
ふらんす幻想  長島良三編『フランス怪奇小説集』
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フランス怪奇小説集 (偕成社文庫)
長島 良三
偕成社 1988-08

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 各国の怪奇小説は、やはりそれぞれの国の特色があります。例えばイギリスが「怪奇」、ドイツが「神秘」だとするならば、フランスの作品は「幻想」という言葉がぴったりくるように思います。
 長島良三編『フランス怪奇小説集』(偕成社文庫)は、そんなフランスの怪奇小説を集めたアンソロジーです。いちおう、年少の読者向けに編まれたアンソロジーだと思われますが、中身はなかなか本格的です。
 いわゆる名作に加え、マイナーな作家の作品もちりばめられており、バランスのいいアンソロジーになっています。収録作品は次のとおり。


ジャック・ヨネ『牝猫』
マルセル・エイメ『壁抜(かべぬ)け男(おとこ)』
プロスペル・メリメ『大蛇(だいじゃ)』
ギイ・ド・モーパッサン『手(て)』
アンドレ・モーロワ『家(いえ)』
アレクサンドル・デュマ『サン・ドニの墓(はか)』
ジェラール・ド・ネルヴァル『緑色(みどりいろ)の怪物(かいぶつ)』
ポール・フェバール『罰(ばち)あたりっ子(こ)』
アルフォンス・ドーデー『ウッズタウン』
ヴィリエ・ド・リラダン『断頭台(だんとうだい)の秘密(ひみつ)』
ギョーム・アポリネール『オノレ・シュブラックの失踪(しっそう)』
マルセル・シュウォップ『ミイラづくり』
モーリス・ルブラン『記憶(きおく)のある男(おとこ)』


 モーパッサン、ネルヴァル、リラダン、アポリネール、シュウォップの作品は、定番のアンソロジー・ピースですね。
 メリメもアンソロジーの定番ですが、『大蛇』は、ちょっと珍しい作品です。アフリカに軍務で派遣された軍人が出会う、不思議な魔術を描いた作品。雰囲気は良いのですが、オチがいただけない作品です。
 モーロワ『家(いえ)』は、内田善美の『星の時計のLiddell』を彷彿とさせる幻想小説、ドーデー『ウッズタウン』は、文明に侵食された木々が人間に反乱を起こすという物語です。
 ポール・フェバールは、日本ではこの短編ぐらいしか翻訳はないんじゃないでしょうか。『罰(ばち)あたりっ子(こ)』は、フランス革命を舞台にした物語です。
 革命思想に熱狂的になった若い夫妻が、恩人である老僧を自らギロチンで処刑してしまいます。処刑台の下で生まれた娘は、生まれつき狂ってしまっており、そのことの心労から母親は死んでしまいます。村八分にされた父親は、密輸に手を染め、官憲から追われる身になります。やがて娘の意図せぬ行動が父親を追い詰めることになりますが…。
 因果応報話といっていいのでしょうが、超自然的な要素をあまり使わず、現代的な要素のある作品ですね。
 このアンソロジーでいちばんの力作は、巻末に収められた、モーリス・ルブラン『記憶のある男』でしょう。
 弁護士の語り手は、ふとしたことから列車で、一人の男と相席になります。ジュスティニアン・ロックと名乗る男は、以前に自分と会ったことがあると言いますが、語り手にはそんな記憶は全くないのです。男と話しているうちに、本当に会ったことのあるような気がしてきた語り手は、気味悪く思いはじめます。
 新たに乗り込んできた別の乗客の男に対しても、ロックは同じく以前に会ったと話をし始めます。やがて母娘と入れ替わりに降車した語り手は、妙な気持ちになりながらもその場を離れます。
 ところが翌日の新聞を見て、語り手は驚愕します。ロックが列車で一緒になった男と母娘を車内で殺害したというのです。しかもロックは語り手を弁護士に指定していました。 面会に訪れた語り手に対し、ロックは信じられないような話を始めますが…。
 ミステリアスな導入部、奇想天外なテーマ、倒錯した男の論理。間然するところのない傑作です。

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プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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