9月の気になる新刊
9月5日刊 レイ・ブラッドベリ『黒いカーニバル 新装版』(ハヤカワ文庫SF 予価1050円)
9月6日刊 エイミー・ワインスタイン『むかしむかしの絵本の挿し絵 ヴィクトリア朝の挿し絵300点とそのエピソード』(グラフィック社 予価2940円)
9月11日刊 アンドリュー・カウフマン『銀行強盗にあって妻が縮んでしまった事件』(東京創元社 予価1260円)
9月12日刊 東雅夫編『日本幻想文学大全 I 幻妖の水脈』(ちくま文庫 予価1365円)
9月12日刊 植草甚一『いつも夢中になったり飽きてしまったり』(ちくま文庫 予価1155円)
9月12日刊 筒井康隆編『異形の白昼 恐怖小説集』(ちくま文庫 予価945円)
9月13日刊 スティーヴン・キング『11/22/63 上・下』(文藝春秋 予価各2205円)
9月19日刊 谷口基『変格探偵小説入門 奇想の遺産』(岩波現代全書 2415円)
9月20日発売 《ナイトランド》 (トライデント・ハウス 1700円)
9月25日刊 ヒュー・ハウイー『ウール 上・下』(角川文庫 予価各840円)
9月25日刊 ロミ『三面記事の歴史』(国書刊行会 予価3990円)
9月25日刊 生田誠・石川桂子『小林かいち 大正京都の夢 乙女を描く』(河出書房新社 予価1785円)
9月28日刊 セルジオ・トッピ『シェヘラザード 千夜一夜物語』(小学館集英社ブロダクション 予価3360円)

9月下旬発売
東京創元社 復刊フェア
F・W・クロフツ『殺人者はへまをする』
G・K・チェスタトン『奇商クラブ』
イーデン・フィルポッツ『闇からの声』
ロス・マクドナルド『ミッドナイト・ブルー』
ウォルター・デ・ラ・メア『死者の誘い』
A・E・ヴァン・ヴォークト『原子の帝国』
フィリップ・K・ディック『タイタンのゲーム・プレーヤー』
R・A・ハインライン『宇宙(そら)に旅立つ時』
ジェームズ・ブリッシュ『悪魔の星』
E・F・ラッセル『わたしは"無"』


 レイ・ブラッドベリ『黒いカーニバル』は、初期のホラー味の強い幻想小説を集めた作品集です。『10月はたそがれの国』と並び、ブラッドベリの最良の部分が出ている作品集だと思いますので、未読の方はぜひ。
 筒井康隆編『異形の白昼』は、日本怪奇小説アンソロジー史に残る名作集です。小松左京『くだんのはは』、筒井康隆『母子像』、遠藤周作『蜘蛛』など、名作中の名作が集められています。
 《ナイトランド 7号》のメイン特集は「妖女」、リチャード・マシスンの追悼特集も予定されています。順調に刊行されているようで、嬉しいですね。
 毎年恒例の創元社の復刊フェアから、いちばんのオススメはE・F・ラッセル『わたしは"無"』でしょうか。今なら≪奇想コレクション≫から刊行されてもいいような、広く一般読者にお勧めできる短編集です。同じく創元文庫から刊行されていたラッセルの短編集『パニック・ボタン』も非常にいい作品集だったので、こちらも復刊をお願いしたいところです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

怪奇小説のできるまで  都筑道夫『都筑道夫のミステリイ指南』
都筑道夫都筑道夫のミステリイ指南 (講談社文庫)
都筑 道夫
講談社 1990-07

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4939138607黄色い部屋はいかに改装されたか?増補版
都筑 道夫 小森 収
フリースタイル 2012-04-17

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 都筑道夫は、エンターテインメント小説の創作作法に関して、意識的だった作家です。作家自身の資質ともいえるのでしょうが、エッセイや評論でときおり言及される創作作法が、非常に論理的、かつ説得力があるものなのです。
 例えば、『私の推理小説作法』『黄色い部屋はいかに改装されたか?増補版』フリースタイル収録)というエッセイがあります。この手の創作技法に関する本だと、得てして精神論的な面が強調されることが多いのに対して、都筑道夫のエッセイでは、具体的かつ詳細にミステリ小説をどう構成して書いていくのかが、書かれています。エッセイ自体が立派なエンターテインメントといってもいいかと思います。
 都筑道夫はミステリだけでなく、いろいろなジャンルの作品を書いた作家ですが、その活動のなかでも大きな部分を占めているのが、怪奇小説です。エッセイにおいても、たびたび言及されますし、上記の『私の推理小説作法』でも、一章が『幽霊探偵について』という、ゴースト・ハンターものの考察にあてられています。
 そんな都筑道夫の怪奇小説の創作方法を具体的に語っているのが、『都筑道夫のミステリイ指南』(講談社文庫)です。
 本書自体は、エンターテインメント小説全般に関する創作の本です。ただ、この本、怪奇小説の創作方法に関する内容が、非常に大きな割合を占めています。二章分が怪奇小説にあてられていて、「怪奇小説を読む」「怪奇小説を書く」がそれに当たります。
 カルチャースクールの創作講座がもとになっているらしく、「怪奇小説を書く」では、生徒の作品の添削なども出てきますが、面白いのは『怪談作法』という短編が、できあがるまでの経緯を語った部分でしょう。実際に目にした情景から、どう着想し、どんな構成にするのか、どんな描写を入れるのか。このあたりの文章は、とても面白く読むことができます。
 しかし本書でいちばん注目すべきは、「怪奇小説を読む」の章でしょう。『風見鶏』という、都筑作品では名作に挙げられる怪奇小説作品がありますが、主にこの作品について語られています。
 なんと、この作品、つごう3回書き直されていて、その全てのバージョンを読むことができます。メインとなるプロットは同じですが、長さもまちまち、設定も微妙に変わっていたりと、読み比べることで、作者の狙いがわかってくるという仕組み。
 作品の推敲過程や異同について、研究者などが考察するというのは、よくあると思うのですが、これを作者自身がやった例は、あまりないのではないでしょうか。ミステリだけでなく、怪奇小説についても、ここまで理詰めで考えているのか、ということがわかって、驚かされます。
 それでいながら、彼自身の怪奇小説の理想は、理知的な作風に反するような、岡本綺堂や内田百閒だったりというのですから、それもまた面白いところですね。
とある惑星の出会い  町田洋『惑星9の休日』
4396460430惑星9の休日 (単行本)
町田 洋
祥伝社 2013-08-12

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 星と月と宇宙。ボーイ・ミーツ・ガール。町田洋のコミック作品『惑星9の休日』(祥伝社)は、辺境の小さな星、「惑星9」に暮らす人々を描いた連作短編集です。
 情感を盛り込みながらも、陰湿にならず、軽さを感じさせる作風は独特です。収められた8編、それぞれ独自の味がありますが、とくに印象的なのは『惑星9の休日』『衛星の夜』の二編です。
 表題作『惑星9の休日』は、このような話。惑星9は、恒星に対して垂直に自転しています。そのため、永遠に光が当たらない窪地があり、そこは「永久影」と呼ばれています。影の中には、町がまるごとひとつ凍りついているのです。その影の町に永遠にたたずむ少女に惹かれる男と、その男を追いかける時計店の少女を描いた物語です。
 クリストファー・プリーストの『限りなき夏』、あるいは梶尾真治の『美亜へ贈る真珠』を思わせるようなストーリーですが、面白いのは『惑星9の休日』に登場する男には、悲壮感がないところ。過去に固定された少女に惹かれながらも、男には過去に対する執着はないようなのです。後半に起こる事件により、「永久影」は姿を消すことになりますが、残るのは絶望ではなく希望なのです。
 『衛星の夜』は、惑星9から月が永久に離れてしまう夜を舞台にした物語。かって月に行ったという男の回想が描かれます。月の調査にたった一人で派遣された男は、窪みに落下してしまい、死ぬしかない状況におかれていました。彼を助けたのは、月で生まれた粘菌のような生物。粘菌は生物の頭の中から情報を取り出し、どんな形にもなれる生物でした。宇宙船内のポスターに映った少女そっくりになった粘菌は、男によりワルツと名づけられます。
 ワルツの希望はただ一つ、友達でした。永遠に近い時間を孤独に過ごしたワルツの思いを知った男は、ワルツを故郷に連れ帰ろうと考えますが…。
 物悲しい結末を迎える作品においても、そこに暗さはなく、ある種、あっけらかんとしたオプティミズムが感じられます。清涼感に満ちた読後感が、魅力の一つでしょう。


プロフィール

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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