10月の気になる新刊
10月4日刊 シェヴィー・スティーヴンス『知らずにいれば』(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1050円)
10月5日刊 ギリアン・フリン『冥闇』(小学館文庫 予価970円)
10月6日刊 大森望『新編 翻訳SFウラ講座』(河出文庫 予価893円)
10月10日刊 キース・ロバーツ『パヴァーヌ』(ちくま文庫 予価998円)
10月上旬刊 小山正『ミステリ映画の大海の中で』(アルファベータ 予価3990円)
10月11日刊 ピランデッロ『月を発見したチャウラ』(光文社古典新訳文庫)
10月23日刊 スーザン・ヒル『黒衣の女』(ハヤカワ文庫NV 予価714円)
10月23日刊 ショーン・タン『エリック』(河出書房新社 予価1500円)
10月30日刊 ブノワ・ペータース/フランソワ・スクイテン『闇の国々II』(小学館集英社プロダクション  予価3990円)
10月刊 ホルヘ・ルイス・ボルヘス編『新編バベルの図書館』 第2巻(国書刊行会 6825円)

 10月の新刊でいちばん気になるのは、やはり、ブノワ・ペータース/フランソワ・スクイテン『闇の国々II』でしょうか。『闇の国々』が巣晴らしかったので、第2弾にも期待大です。
 スーザン・ヒル『黒衣の女』は、映画化による再刊のようですが、モダンホラーの名作なので、未読の方はぜひ。
 ショーン・タンは、コンスタントに作品が訳されるようになってきましたね。『遠い町から来た話』に収録されていた『エリック』と関係があるんでしょうか。
山口雅也トークショーとリドル・ストーリー
4152093188謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル) (ミステリ・ワールド)
山口 雅也
早川書房 2012-08-24

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 山口雅也さんの新刊『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル) 』(早川書房)は、リドル・ストーリーだけを集めた個人短編集という、斬新な作品集でした。表紙は≪異色作家短編集≫の初刊版を模したりと、遊び心に溢れています。
 先日ご紹介した『ミステリマガジン』の責任編集の仕事といい、マニア心をくすぐる作家さんですね。
 さて、『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル) 』刊行記念ということで開催されたトークショーの映像がニコニコ動画に挙がっており、興味深く見させていただきました。
 リドル・ストーリーの話からはじまって、≪異色作家短編集≫についての話、そして『ミステリマガジン』の責任編集の話など、興味深い裏話などもありました。
 『ミステリマガジン』の表紙絵やカット、レイアウトなどが、初期の『ミステリマガジン』を意識したつくりになっていたのに感心したのですが、山口雅也さん自身が全て指示したわけではなく、早川書房編集部の力によるところが多いようですね。
 気になったのは、山口雅也さん以外にも、何人かの作家に対して責任編集の話が行っていたというところ。綾辻行人、北村薫、法月綸太郎などの名前が出て、おおっと思いました。綾辻行人さんのセレクションなど見てみたいですね。
 リドル・ストーリー、異色作家、往年の『ミステリマガジン』などに関心のある方は、ぜひトークショーも見ていただくと面白いかと思います。




 ついでに、リドル・ストーリーに興味のある方に対して、参考書リストを挙げておきましょう。以前このブログで紹介したことのあるものが多いですが、ご容赦を。


4480429050謎の物語 (ちくま文庫)
紀田 順一郎
筑摩書房 2012-02-08

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 リドル・ストーリーのアンソロジーの決定版ともいうべき本です。リドル・ストーリーの代表作が網羅されており、これ一冊でリドル・ストーリー通になれます。旧版のちくまプリマーブックス版には異同作品があるので、興味のある方は読んでみるのも面白いでしょう。



4043455038山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー (角川文庫)
山口 雅也
角川書店 2007-12

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 山口雅也さん好みの作品を集めたアンソロジーです。本格風味の作品からSF的な作品までバラエティに富んだセレクション。『リドル・ストーリーの饗宴』という章で、ストックトン作品をはじめとする5編が収録されています。上記『謎の物語』が出るまでは、リドル・ストーリーをまとめて読める本は、この本ぐらいでした。



410137323X謎のギャラリー―名作博本館 (新潮文庫)
北村 薫
新潮社 2002-01

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  現在、ちくま文庫で復刊中の『謎のギャラリー』シリーズの解説編というべきエッセイ集です。いくつかのテーマごとに、対話形式で作品が紹介されています。リドル・ストーリーについての章が設けられています。



4061362186夢探偵―SF&ミステリー百科 (講談社文庫)
石川 喬司
講談社 1981-10

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 日本SF黎明期に、SFとミステリの啓蒙家として活躍した著者のガイド本です。ジャンル内のサブジャンルについて、初心者にもわかりやく解説しています。リドル・ストーリーについても触れられています。



4087203085ショートショートの世界 (集英社新書 (0308))
高井 信
集英社 2005-09-16

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 リドル・ストーリーのみならず、短編、ショートショートについての本としては、この本が決定版でしょう。著者のショートショート愛があふれた幸福な研究書。

 そして、現代日本でのリドル・ストーリーの実作としては、今回取り上げている山口雅也『謎(リドル)の謎(ミステリ)その他の謎(リドル) 』(早川書房)と米澤穂信『追想五断章』 (集英社文庫)が双璧でしょう。
米澤穂信の3冊
 米澤穂信は、最近、代表作の≪古典部シリーズ≫がアニメ化されたりと、人気の作家ですね。僕が読んだ作品は『インシテミル』(文春文庫)だけだったのですが、どうも波長が合わないな、という感じで追いかけてはいませんでした。
 アニメ化された『氷菓』は面白く観ていて、もう一度作品を読んでみようという気になりました。いくつかの作品を読んだのですが、これがなかなか面白い。ちょっと追いかけてみようという気になりました。



4087468186追想五断章 (集英社文庫)
米澤 穂信
集英社 2012-04-20

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 古書店でアルバイトする青年の前に、父親が過去に書いたという5つのリドル・ストーリーを探してほしいという女性が現れます。調査を続けるうちに、女性の父親が巻き込まれたという事件の謎が浮かび上がり…。
 なんといっても、「リドル・ストーリー」をテーマにしているという着想が魅力的です。ちゃんと作中作として、リドル・ストーリーが埋め込まれており、このジャンルの作品が好きな人にはたまらない魅力となっています。



4101287821儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)
米澤 穂信
新潮社 2011-06-26

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 ブラック・ユーモアに満ちた連作短編集です。連作をつなぐのは、謎の読書サークル「バベルの会」。ロアルド・ダールやスタンリイ・エリンを思わせる、異色短編集になっています。
 令嬢と彼女を慕う召使が殺人事件に遭遇する『身内に不幸がありまして』、邸を愛する管理人が、遭難した青年を監禁する『山荘秘聞』、成金の父親が雇った女性が作る料理を巡る奇譚『儚い羊たちの晩餐』などが面白いです。
 表題作『儚い羊たちの晩餐』にいたっては、スタンリイ・エリンの小説『特別料理』に登場する「アミルスタン羊」が言及されるなど、エリン作品に対するオマージュにもなっていて、異色作家好きとしては、にんまりとさせられます。



4101287813ボトルネック (新潮文庫)
米澤 穂信
新潮社 2009-09-29

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 二年前に事故で死んだ恋人、ノゾミを弔うため、東尋坊にやってきた主人公のリョウ。思わぬことから、崖から落下したリョウがふと気づくと、そこは金沢の自宅近くの公園でした。
 家に帰ったリョウを出迎えたのは、見たこともない少女。その少女サキは、自分はこの家の娘であり、リョウという息子は存在しないと言い張ります。リョウは、自分が生まれる前に死んでしまった姉が生きており、その代わりに自分が存在しないパラレルワールドにまぎれこんでしまったことに気が付きます…。
 今回いちばん衝撃を受けた作品がこれです。自分が生まれる代わりに、姉サキが存在する世界。リョウと異なり、陽性でポジティブなサキの影響で、世界は良い方向に変わっていました。自分は何のために生まれてきたのか? リョウは疑問を抱き始めます。そしてこの世界では、恋人ノゾミまでもが生きているのです。
 ノゾミの死の原因は? リョウをパラレルワールドに引きずり込んだのは誰の意思なのか? そもそもパラレルワールド自体が、実在の世界なのか? 多様な解釈が可能です。そしてすでに生きながら死んでいるような主人公リョウは、生き続けるのか? それとも死を選ぶのか?
 徹底的な絶望感と救いのなさ。後味の悪さは半端ではありません。けれど、これは稀にみる傑作だと思います。


 米澤穂信の本領は学園ものにあるようなので、やはり≪古典部シリーズ≫と≪小市民シリーズ≫も読むべきでしょうか。



最近読んだ本

三本の緑の小壜 (創元推理文庫) 悪魔はすぐそこに (創元推理文庫) ウォリス家の殺人 (創元推理文庫) 災厄の紳士 (創元推理文庫)

D・M・ディヴァイン『三本の緑の小壜』 (山田蘭訳 創元推理文庫)
D・M・ディヴァイン『災厄の紳士』 (中村有希訳 創元推理文庫)
D・M・ディヴァイン『ウォリス家の殺人』 (中村有希訳 創元推理文庫)
D・M・ディヴァイン『悪魔はすぐそこに』 (山田蘭訳訳 創元推理文庫)


 D・M・ディヴァインは、かって教養文庫から翻訳が刊行されていた時代から、好きな作家でした。しっかりとしたプロット、丁寧な人物造形、繊細な心理描写など、小説作りが非常に上手いのです。
 僕のミステリの読み方はかなり邪道です。ミステリのトリックやギミック部分は、正直そんなにこだわりません。物語として優れているかどうか、そこにミステリ部分が上手く噛み合っているか、という点が評価基準でしょうか。そういう意味で、僕が好きなミステリ作家の理想型に近いのがディヴァインなのです。
 上の四作はどれも面白かったのですが、人気作家とその家族の人間関係のねじれを描いた『ウォリス家の殺人』、少女の連続殺人事件をめぐるサスペンス風味の強い『三本の緑の小壜』の二作がベストでしょうか。とくに『三本の緑の小壜』は、各章語り手が変わることによって、それぞれの人間関係が多面的に描き出されるところが面白いです。



4488578039ゴースト・ハント (創元推理文庫)
H・R・ウェイクフィールド 鈴木 克昌ほか
東京創元社 2012-06-28

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 怪奇小説の最後の巨匠ウェイクフィールドの怪奇小説集です。この時代のゴースト・ストーリーは、現代人からはテンポが違いすぎて読みにくいことが多いのですが、さすがにウェイクフィールド、読みやすさは抜群です。そしてそれだけでなく、恐怖感の醸成もまた絶品。
 有名作『防人』、あるいは本書の表題作『ゴースト・ハント』などもそうですが、『ケルン』などを読むと、ウェイクフィールドのある種直接的なまでの手法がよくわかります。
 この『ケルン』は、雪のある時だけに怪物が現れるという山が舞台です。友人がその山を登っていくのを、主人公が望遠鏡で見ている眺めていると…という物語。実際の怪物の姿は定石通り描写されません。ただ、そこに至るまでのシチュエーションの作り方があまりに直截というか大胆なのに驚きます。それでも読ませてしまう、というのがウェイクフィールドの巨匠たるところなのでしょうか。



433605505X野性の蜜: キローガ短編集成
オラシオ・キローガ 甕由己夫
国書刊行会 2012-05-28

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 本邦では『羽根まくら』によって知られていた作家キローガ。30編ほどの短編が集められているので、正直、玉石混交の感はあります。ただ内容はどうあれ、彼の作品はそのどれもが、死のイメージに満ちています。
 奇妙な復讐物語『舌』、吸血鬼物語のバリエーション『羽根まくら』、結末まで間然するところのない傑作『頸を切られた雌鶏』、人間に化けた虎の少年を描く民話風の物語『フアン・ダリエン』などが注目作。話す猿を扱った怪作『転生』などという作品も面白いですね。



4309273424鳥の王さま ---ショーン・タンのスケッチブック
ショーン・タン 岸本 佐知子
河出書房新社 2012-08-25

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ショーン・タン『鳥の王さま ショーン・タンのスケッチブック』(岸本佐知子訳 河出書房新社)
 このところ邦訳が続いている、ショーン・タンのスケッチ・ブックを書籍化したもの。ラフやスケッチなど、作品以前のイメージが並んでいます。やはり、架空の動物や建物などを描いた絵に魅力がありますね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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