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4月の気になる新刊
4月6日刊 ジョー・ヒル『ホーンズ 角』(小学館文庫 予価980円)
4月10日刊 都筑道夫『黄色い部屋はいかに改装されたか? 増補版』(フリースタイル 予価2100円)
4月12日刊 H・G・ウェルズ『タイム・マシン』(光文社古典新訳文庫)
4月17日刊 ホルへ・ルイス・ボルヘス『汚辱の世界史』(岩波文庫 予価567円)
4月19日刊 ティエリー・ジョンケ『私が、生きる肌』(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価672円)
4月25日刊 オラシオ・キローガ『キローガ短篇集成』(国書刊行会 予価3360円)
4月27日刊 パトリック・クェンティン『迷走パズル』(創元推理文庫 予価861円)
4月27日刊 アントニー・マン『フランクを始末するには』(創元推理文庫 予価924円)
4月27日刊 エリス・パーカー・バトラー『通信教育探偵ファイロ・ガッブ』(国書刊行会 予価2415円)

 『私が、生きる肌』は、数年前に邦訳されたサスペンス『蜘蛛の微笑』の作者ティエリー・ジョンケの新作、と思ったら、『蜘蛛の微笑』の改題新装版なのですね。どうやら映画化に合わせた再刊のようです。とても面白いサスペンス小説なので、未読の人はぜひ。
 4月のいちおしはこれ、オラシオ・キローガ『キローガ短篇集成』です。キローガは、ウルグアイの短編作家。本邦では『羽根枕』とか『彼方で』などが知られていますね。以前に、彩流社から短篇集が出たのですが、正直いまいちな出来だったような記憶があります。今回は30数編が収録された本格的な短篇集だそうですので、期待が高まります。
最近読んだ本と『ナイトランド』のこと

4582828795太古の呼び声
ジャック ロンドン Jack London
平凡社 1994-11

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ジャック・ロンドン『太古の呼び声』(辻井栄滋訳 平凡社)
 原始時代に生きる少年の成長と戦いを描いた作品です。ロンドンらしく、主人公の前には過酷な生存競争が待っています。しかし終始絶望が続くのではなく、生命に対する強い賛歌が感じられます。
 欧米には「先史もの」とでも呼ぶべき作品があって、僕もいくつか読みましたが、このジャンルの中では飛びぬけて素晴らしい作品かと思います。だいたい過去を舞台にして小説が書かれるとき、登場人物の考え方や人物像があまりに現代人に近すぎると、違和感を覚えるものですが、ロンドン作品では、そのあたりのバランスが上手いのです。



43092730843秒
マルク=アントワーヌ・マチュー 原 正人
河出書房新社 2012-02-24

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マルク=アントワーヌ・マチュー『3秒』(原正人訳 河出書房新社)
 サッカー界を舞台にした事件をめぐって展開されるコミックなのですが、物語の構成が前代未聞というべき形式で描かれています。すべてのシーンが、鏡や金属、水たまりなど光の反射によって進んでいくのです。ある場所に映った映像の中の物にさらに映った映像の中の物にさらに映った…というように、合わせ鏡のようにめまぐるしくシーンが展開するのです。
 本の中にあるパスワードで、特設サイトのデジタル版が見れるのですが、映像で見ると、さらにすごいですね。



4840145067エムブリヲ奇譚 (幽ブックス)
山白朝子
メディアファクトリー 2012-03-02

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山白朝子『エムブリヲ奇譚』(メディアファクトリー)
 旅に出れば必ず道に迷い、不思議な体験をするという道中記作者、和泉蝋庵。ふとしたころから、蝋庵のお供をすることになった男の奇妙な冒険行を描く連作短篇集です。
 胎児を拾った男の奇妙な冒険を描く冒頭の『エムブリヲ奇譚』から、度肝を抜かれます。人間の残酷さを描く『〆』『あるはずのない橋』『地獄』といった作品も面白いですが、なんと言っても、生まれ変わりを描く『ラピスラズリ幻想』が素晴らしいです。それを持った状態で死ぬと、もう一度自分の人生をやり直せるという、不思議な石を手に入れた女性の生涯を描いた作品です。単純な願望充足物語にならず、予想だにしない結末に至るまで、間然するところのない傑作。
 前作『死者のための音楽』を正調の幻想小説とするなら、今作は、黒い笑いに満ちた、まさに奇譚です。幻想小説、怪奇小説ファンなら必読でしょう。



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トライデント・ハウス(発行元 黒田藩プレス)から刊行予定だった、ホラー&ダーク・ファンタジー専門誌『ナイトランド』。出版社直販の雑誌ということで、一般販売はないようなので、定期購読を申し込もうかなと思っていたのですが、一部の書店で取り扱いもありとのことなので、とりあえず創刊号を見てからにしようかと考えました。
 というわけで、ジュンク堂書店池袋本店に行ってきました。文芸書の階に怪奇幻想関係のコーナーがあるのですが、そこで発見しました。パラパラとめくった後、購入決定です。コラムやエッセイがもう少し多いといいのですが、やはり翻訳短編が多く載っているのが魅力ですね。
 以下のアドレスに、取扱い書店が記されていますので、ご参考まで。
 http://www.trident.ne.jp/j/NL/faq/post-1.html

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

残虐への郷愁  真野倫平編訳『グラン=ギニョル傑作選』

4891768088グラン=ギニョル傑作選―ベル・エポックの恐怖演劇
真野 倫平
水声社 2010-11

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 グラン=ギニョル(ギニョール)とは、19世紀末から20世紀にかけて、フランスで流行した残酷劇の通称です。もとは特定の劇場の名前でしたが、その劇場で演じられるような、血みどろで、残酷な劇ジャンルを表すようになったものだそうです。
 邦訳されている、フランソワ・リヴィエール、ガブリエル・ヴィトコップ 『グラン=ギニョル―恐怖の劇場』(未来社)という研究書以外は、「怪奇幻想映画」もしくは「幻想文学史」に関する本などで、散発的に言及されることはあったものの、グラン=ギニョル作品は、実作としては紹介されていませんでした。
 そんなグラン=ギニョル作品としては、本邦初となる邦訳作品集が、真野倫平編訳『グラン=ギニョル傑作選――ベル・エポックの恐怖演劇』(水声社)です。
 もともと舞台劇なので、作品は全て戯曲の形になっています。ただ、戯曲といっても、もともと扇情的なスリラーやショッカーを目指しているジャンルですので、読みやすさは抜群です。
 収録作品からいくつかご紹介します。
 モーリス・ルヴェル『闇の中の接吻』は、恋人に硫酸をかけられ二目と見られぬ顔になった男の復讐劇。アンドレ・ド・ロルド、アンリ・ボーシェ『幻覚の実験室』は、事故にあった妻の情夫を治療することになった医師の悪魔的な所業を描く作品です。
 『悪魔に会った男』(ガストン・ルルー)は、悪魔との契約により、あらゆる賭けに勝つようになってしまった男の家に、たまたま泊まることになった数人の男女を描く作品。「悪魔に会った男」がメインテーマではなく、たまたま家に泊まった男女の不倫をめぐる心理劇がテーマになっているという異色作です。小説版も邦訳されているので、読み比べてみるのも一興ですね。
 『怪物を作る男』(マクス・モレー/シャルル・エラン/ポル・デストク)は、動物を改造して作った「怪物」をサーカスの見世物にしている男が登場します。団長の妻に思いを寄せている男は、引き抜きをあきらめる代わりに、妻をよこせと要求しますが…。集中では、もっともグロテスクな要素のある作品です。
 グラン=ギニョル作品の特徴としては、その恐怖の源泉が「人間の肉体」から来ている、ということが挙げられます。解説にもありますが、悪魔や幽霊や吸血鬼など、ひっくるめて言えば「超自然」的な要素はほとんど現れず、人間の肉体的・心理的な恐怖が主にとりあげられています。人間が人間に行う肉体的な拷問や心理的な圧迫など、「人間の怖さ」が描かれるのが特徴といえるでしょうか。
 読み終えて思ったのは、江戸川乱歩や「新青年」時代の探偵小説を彷彿とさせるなあ、ということ。これは当時一世を風靡したモーリス・ルヴェルの影響などもあるのでしょうね。
 本書には、実作のほかに『グラン=ギニョル主要作品紹介』として、主要作品のあらすじが紹介されています。これが数十作品も紹介されていて驚きます。面白そうな作品が多く、それらも読みたくなってきますね。
 解説・解題も詳細で、これ一冊でグラン=ギニョルの全体像がつかめる構成になっています。

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プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。
twitterアカウントは@kimyonasekai



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