3月の気になる新刊と2月の新刊補遺
2月予定 オレスト・ソモフ『ソモフの妖怪物語』(群像社 予価1050円)
3月9日刊 『ちくま文学の森8 怠けものの物語』(ちくま文庫 1155円)
3月10日刊 デイヴィッド・ゴードン『二流小説家』(ハヤカワ・ミステリ 予価1785円)
3月10日刊 アンブローズ・ビアス『アウルクリーク橋の出来事/月明かりの道』(光文社古典新訳文庫)
3月12日刊 安堂維子里『妖精消失』(徳間書店 予価620円)
3月17日刊 サム・ウェラー『ブラッドベリ年代記』(河出書房新社 予価3465円)
3月17日刊 ウィリアム・コッツウィンクル『ドクター・ラット』(河出書房新社 予価1995円)
3月18日刊 ショーン・タン『アライバル』(河出書房新社 予価2625円)
3月18日刊 三津田信三『七人の鬼ごっこ』(光文社 予価1890円)
3月21日刊 ウェルズ恵子編『狼女物語 美しくも妖しい短編傑作選』(工作舎 予価2520円)
3月24日刊 千街晶之『幻視者のリアル 幻想ミステリの世界観』(東京創元社 予価2730円)
3月25日刊 乙一『箱庭図書館』集英社 予価1365円)

 光文社古典新訳文庫から、ビアスの新訳短編集が刊行です。ビアスの短編には「怪談もの」が多いので、怪奇小説ファンにもお勧めです。
 ブラッドベリの公式の伝記『ブラッドベリ年代記』は、けっこうなお値段ですね。個人的に、後期のブラッドベリには魅力を覚えないのですが、とりあえず買ってしまいそうです。
 かってこのブログでも紹介した傑作絵本、ショーン・タン『アライバル』の日本語版がついに登場です。文字がないので、正直、日本語版を買う必要性が感じられないのですが、日本の読者に広く知られるという意味では大歓迎ですね。これを機に、タンの他の作品も邦訳が進むことを期待したいところです。
 3月の新刊でいちおしは、これ、ウェルズ恵子編『狼女物語 美しくも妖しい短編傑作選』です。「狼女」が登場する幻想小説を集めたというアンソロジーだそうですが、ずいぶん的を絞った編集ですね。収録作家は、マンリー・バニスター、クレメンス・ハウスマン、エリック・ステンボック、ギルバート・キャンベル、ジョージ・マクドナルド、キャサリン・クロウ。
 千街晶之は、評論家、書評家の中でも、ひとひねりした作品や、変わった作品に強い興味を抱いている人です。それゆえ、ミステリ畑をメインの活動場所にしながらも、幻想小説ファンにとっても親しい評論家です。以前出た『怪奇幻想ミステリ150選』(原書房)も、非常に魅力的なガイドブックでした。そんな彼の新しい評論集が『幻視者のリアル 幻想ミステリの世界観』です。前作と同様、幻想的なミステリを集めたものようで、このジャンルに興味をもつ人には必読の本でしょう。
『血の本』の2つの映画化
クライヴ・バーカー 血の本 [DVD] クライヴ・バーカー ドレッド[恐怖] [DVD]
 才人として知られる英国の作家、クライヴ・バーカー。最近こそファンタジーづいていますが、初期の作品はホラー作品が中心でした。強烈な印象を残したデビュー短編集『血の本』は、今でもその価値を失っていません。
 さて、このバーカー、もともと映像指向の強い人で、自ら監督したものも含めて、自作小説の映画化作品が数多くあります。『キャンディマン』という佳作もありましたが、正直どの映画化作品も「いまひとつ」という感じが否めませんでした。
 そもそも疑問だったのは、『血の本』が、秀作目白押しなのに、そこからの映画化が少ないということでした。ところがここに来て、『血の本』収録作品が続々と映画化されており、その質もなかなか高いことに驚かされました。そこで今回は、『血の本』の2つの映像化作品を紹介します。
 まずは『クライヴ・バーカー 血の本』。これは独立した短編ではなくて、短編集『血の本』のプロローグとエピローグに使われている、いわゆる「枠物語」の外枠の部分のお話を映像化したものです。
 心霊現象の研究者である、女性心理学者が主人公です。少女が悪霊によって殺されたという噂のある屋敷に、調査にやってきます。調査を進めている最中に出会った青年サイモンが、霊能力を持っていることを知った主人公は、屋敷の調査に参加してほしいと頼みます。やがて、常識では考えられないような現象が次々と起こりはじめます…。
 正直後半まで、そんなに派手な展開はなく、地味な怪奇現象が続くのですが、雰囲気描写が巧みなので、飽きずに見させます。そしてクライマックスシーン、ここ下手な演出をすると、すごく馬鹿らしくなってしまいそうなシーンなのですが、上手く盛り上げていたと思います。
 二つ目は『クライヴ・バーカー ドレッド[恐怖]』『腐肉の晩餐』が原作です。
 大学の課題として、人間の恐怖の心理を研究することになった、スティーヴンとクエイド。女子学生のシェリルを加えた3人は、人々に恐怖体験をインタビューし始めます。しかし、両親を目の前で惨殺されたという経験を持つクエイドは、彼らの体験話の生温さに満足できなくなってきます。
 やがてクエイドには、異常な行動が目立つようになっていきます。行方不明になったシェリルの行方をたずねるスティーヴンに対し、クエイドはシェリルを監禁したと話し始めます…。
 これは原作の雰囲気を崩さずに、かなり脚色を加えている作品です。顔にあざを持つ女子学生や、耳に障害のある青年など、原作にはない登場人物を加えたり、男女間の恋愛や嫉妬といった要素を持ちこんだりと、物語を複雑にさせる要素を多く加えています。
 一番大きな改変は結末でしょう。ある種の予定調和を思わせる原作小説に対し、より残酷さを増した結末となっています。これは原作を読んでから見ていただきたい作品ですね。物語の膨らませ方が実に見事です。
 『血の本』からの映像化作品としては、他に北村龍平監督『ミッドナイト・ミートトレイン』があります。これは日本では劇場公開されず、3月にDVDがリリース予定だそうです。これも楽しみですね。


プロフィール

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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