2月の気になる新刊とミステリマガジン特大号のこと
1月25日発売 『ミステリマガジン3月号』(特大号 特集 ベスト・オブ・ベスト・ショートストーリーズ)(早川書房 2800円)
2月4日刊 久生十蘭『十蘭万華鏡』(河出文庫 予価798円)
2月4日刊 レイ・ブラッドベリ『とうに夜半を過ぎて』(河出文庫 予価998円)
2月8日刊 『ちくま文学の森7 悪いやつの物語』(ちくま文庫)
2月9日刊 ミステリー文学資料館編『江戸川乱歩に愛をこめて光文社文庫 予価720円)
2月10日刊 早川書房編集部編『SFが読みたい! 2011年版』 (早川書房 予価735円)
2月12日刊 アントニイ・バークリー『第二の銃声』(創元推理文庫 予価987円)
2月17日刊 岩田託子・川端有子『図説 英国レディの世界』〈ふくろうの本〉(河出書房新社 予価1890円)
2月18日刊 ジャック・ボドゥ『SF文学』(白水社 文庫クセジュ 予価1103円)
2月25日刊 大森望編『不思議の扉 ありえない恋』(角川文庫 予価540円)

 ブラッドベリ『とうに夜半を過ぎて』は、かって集英社文庫で出ていたものの復刊のようですね。ブラッドベリの作品集としては、言及されることが少ないですが、なかなかに味のある作品が入っていると思います。
 岩田託子・川端有子『図説 英国レディの世界』は、以前出ていたものの新装版だと思うのですが、小説の副読本として最適な一冊です。ヴィクトリア朝の女性に関する品物や文化などについて語っています。谷田博幸『図説 ヴィクトリア朝百貨事典』(河出書房新社)と合わせて読むと、より楽しめるかと思います。
 ジャック・ボドゥ『SF文学』は、SFに関する入門書。『テーマ別紹介』だとのことですが、すでにSF関連書がたくさんある中で、どの程度独自色を打ち出せるかが気になるところです

 さて、今月25日発売予定の『ミステリマガジン3月号』を、神保町の早売りで入手してきました。というのも、今回の特集は、《ベスト・オブ・ベスト・ショートストーリーズ》ということで、短編ファンとしては早く読みたかったからです。
 今回の特集のウリは、「名作短篇&トリビュート」。名作短編と、それに触発されて書かれた日本作家の短編を収録するというものです。中でも面白かったのは、ストックトン『女か虎か』+山口雅也、M・R・ジェイムズ『銅版画』+三津田信三、トム・ゴドウィン『冷たい方程式』+石持浅海です。
 前々から、リドル・ストーリーへの偏愛を表明していた山口雅也が選んだのは、このジャンルの嚆矢ともなった『女か虎か』。ストックトンの作品に触発されて書かれた海外作家の翻訳、という体裁をとっているところからして既に遊び心たっぷりですが、続編『女と虎と』の作者として知られるモフェットの名前や、ストックトン自身の続編『三日月刀の促進士』が引用されたりと、わかる人にはわかる仕掛けがいっぱいです。内容の方も、複数の登場人物が、それぞれ疑心暗鬼にとらわれるという多重構造の心理サスペンスに仕上げており、リドル・ストーリーファンしては満足の一編でしょう。
 三津田信三が選んだのは、絵画怪談の名作、M・R・ジェイムズの『銅版画』。銅版画の中の人物がつぎつぎに動くという、オーソドックスな怪奇小説です。トリビュート短編の方は、三津田信三お得意のメタフィクション趣向をからめています。
 媒体がミステリ誌にも関わらず、SFの名作『冷たい方程式』が選ばれているのに驚いたのですが、トリビュート短編を読んで、なるほどと感心したのが石持浅海の作品。『冷たい方程式』は、宇宙船に密航した少女を船外にほうり出さなければいけない主人公の苦悩を描いた作品でしたが、トリビュートの方は、夫が極秘に開発した新型ペスト菌を殺虫剤と間違えてトイレに散布してしまったがために、トイレに閉じ込められることになった主婦の物語です。あらすじを書くとコメディみたいですが、これがシリアスに語られるところに面白味があります。ある種の感動すら覚える結末を含めて、なかなかの秀作。
 あとは、作家や翻訳家による「私の好きな短篇ベスト3」、再録になりますが、阿刀田高×石川喬司×都筑道夫による『座談会 短篇ミステリの娯しみ』などもあり、短編ファンとしては外せない一冊ですね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

正月の読書
 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
 さて、連休中は大抵そうなのですが、今年の正月も雑誌のバックナンバーを拾い読みしていました。以下、面白かった短編について、軽く紹介していきます。

デイヴィッド・ブリン『異形の痕跡』『SFマガジン』1994年4月号収録)
 近未来、巨大なゴミ捨て場を発掘する考古学の研究者たちが発掘したものは、人間の骨だった。続々と発掘される大量の人骨はいったいどこからやってきたのか…。
 解説でも触れられているのですが、小松左京の『骨』を思わせる作品。ほとんどホラーに近い肌触りの作品ですね。

松尾由美『メロン』『SFマガジン』1994年4月号収録)
 少子化対策として政府が考え出したのは、カップルがすぐに別れないように、事前にシミュレーションを重ねることでした。トラブルに満ちたイベントに強制的に参加させ、カップルの相性を確かめようというのです。主人公は恋人とともに「ハイキング」に参加します。しかし本来一組のカップルしかいないはずのそのイベントに、見知らぬ男が一人現れます…。
 近未来の管理社会を舞台にした作品、と思いきや、だんだんと物語はおかしな方向に向かっていきます。この著者ならではというべきか、変わった味わいの作品。

ローレンス・ワット=エヴァンズ『ミネソタ・ナンバーの空飛ぶ円盤』『SFマガジン』1994年9月号収録)
 この作者の有名(?)な短編『ぼくがハリーズ・バーガーショップをやめたいきさつ』の続編です。郊外に建つハリーのバーガーショップには、深夜ひっそりと、異次元や異世界からの客が訪れていました。その夜現れた男は壊れた乗り物を直せないかと相談を持ちかけます。しかしこの乗り物は「円盤」だったのです…。
 短い掌編ですが、ユーモラスな味わいに満ちた一編。このシリーズって2編だけなのでしょうか。

ケイト・ウィルヘルム『花の名前』『SFマガジン』1994年9月号収録)
 妻と別れて傷心の主人公は、ある日幼い少女と出会います。数日を経て、再会した少女は不自然なほどのスピードで成長していました。政府の調査員は、彼女は大富豪の孫であり、家に連れて帰るために協力してほしいと、主人公に要請します…。
 特殊な要因により、生まれつき成長の速い少女をめぐる物語です。出会うたびに成長する少女、というイメージは、ロバート・ネイサン『ジェニーの肖像』を思わせますね。

ケヴィン・J・アンダースン『最愛の記憶』『SFマガジン』1995年7月号収録)
 妻を亡くした男は、妻のクローンを作ろうと考えます。しかし、クローンが作れるのは肉体のコピーのみ。記憶に関しては再現できないのです。男は自分の記憶の中から、妻に関するものを抜き出し、それをクローンに移植しようと、記憶を再現し始めます…。
 自分に都合の悪い記憶は削除して「理想の妻」を作り出そうとする男の物語です。妻のクローンが出来上がる前の時点で、物語を終わらせているのが効果的ですね。

ブライアン・ステイブルフォード『枕もとの会話』『SFマガジン』1995年7月号収録)
 体の不調を覚えた青年が聞かされたのは、自分の体の中に、双子の兄弟の胚が成長途上のまま残っているということでした。母親や恋人の反対をよそに、彼は自らの体内で胎児を育てることを選択します…。
 男の「妊娠」を扱っています。恋人がゲイだったりと、いろいろタブーブレーキングな作品。

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プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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