2010年を振り返って
失はれる物語 (角川文庫) ZOO 1 (集英社文庫) GOTH 夜の章 (角川文庫) さみしさの周波数 (角川スニーカー文庫) 暗黒童話 (集英社文庫) 平面いぬ。 (集英社文庫) 天帝妖狐 (集英社文庫)
新生活読本魔術師 (双葉文庫名作シリーズ) SFロマン タイム・スクーター (双葉文庫名作シリーズ) ロマン劇場地球最後の日 (双葉文庫名作シリーズ) ポーラレディ (双葉文庫名作シリーズ) (双葉文庫 さ 10-27 名作シリーズ) SFシリーズ ミステリアン (双葉文庫名作シリーズ) 謎の怪人 蜃気郎(1)(双葉文庫名作シリーズ) (双葉文庫 さ 10-25 名作シリーズ)
 今年は例年になく、忙しかったです。とくに年末。なかなか記事を更新できませんでした。読書欲もあり、本の購入数もそんなに減っていないのですが、とにかく時間がない!
 そんななか、今年いちばんはまったのは、やっぱり乙一の作品でしょうか。デビュー作『夏と花火と私の死体』は以前に読んでいたのですが、そのときはそれほど感銘は受けなかったんですよね。今年になって、アンソロジーでいくつか短編作品を読む機会があり、意外といいなあ、と思いはじめたのが読み出すきっかけです。
 まず最初に手にとった短編集『ZOO』(集英社文庫)でやられてしまいました。収録作品はどれも良かったのですが、ことに『SEVEN ROOMS』のインパクトは圧倒的。続けて読んだ『平面いぬ。』『失はれる物語』『さみしさの周波数』『天帝妖狐』『暗黒童話』『GOTH リストカット事件』と、どれも面白く読むことができました。
 この作家の魅力は「せつなさ」にある、というのが世間一般の定評のようです。たしかにそうした魅力はあるのですが、個人的に惹かれる理由を考えると「せつなさ」とか「情感」よりも、その小説作法の「天衣無縫さ」にあるのではないかと思えてきました。
 ジャンル小説を長年読んでいると、ジャンルの「型」とか「形式」が何となくわかってきます。この作品は「あのパターン」だな、とか何となく読めてくるわけです。けれど、乙一の作品にはそうした既視感がない。そこらへんに、個人的に惹かれる魅力があるのかな、という気がします。
 あと、西岸良平の短編マンガ作品の魅力にも目覚めました。『三丁目の夕日』で知られる作者ですが、過去にSFやファンタジーめいた短編マンガを多く描いているんですよね。それらの作品が、今年になって双葉文庫から続けて文庫化されました。『ポーラーレディ』『ヒッパルコスの海』『ミステリアン』『地球最後の日』『魔術師』『タイム・スクーター』『赤い雲 青春奇談』『謎の怪人蜃気郎』など。《異色短編》や《奇妙な味》風味の短編が盛りだくさんで、この手の作品が好きな人は、ぜひ読んでみていただきたいです。
 藤子・F・不二雄に似た感じのテイストですが、この作家特有の人情味もあって、後味はすごく良いのがウリですね。どれも面白かったのですが、驚いたのは『謎の怪人蜃気郎』。これ、なんと江戸川乱歩風の怪盗ものです。正直、西岸良平のタッチと「乱歩」というのは、ミスマッチみたいな気がするのですが、これはこれでなかなか味のある作品ですね。

年内最後の更新になるかと思います。今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。
1月の気になる新刊
1月8日刊 北村薫・宮部みゆき編『とっておき名短篇』(ちくま文庫 予価798円)
1月8日刊 北村薫・宮部みゆき編『名短篇ほりだしもの』ちくま文庫 予価798円)
1月8日刊 『ちくま文学の森6 恐ろしい話』(ちくま文庫 予価1155円)
1月18日刊 パトリシア・ギアリー『ストレンジ・トイズ』(河出書房新社 予価2415円)
1月20日刊 都筑道夫『怪奇小説という題名の怪奇小説』(集英社文庫 予価450円)
1月20日刊 レオ・レオーニ『平行植物 新装版』(工作舎 予価2310円)
1月27日刊 J・G・バラード『千年紀の民』(東京創元社 予価2100円)
1月27日刊 リン・カーター『クトゥルー神話全書』(東京創元社 予価2100円)
1月27日刊 D・M・ディヴァイン『五番目のコード』(創元推理文庫 予価987円)
1月27日刊 デボラ・ソロモン『ジョゼフ・コーネル 箱の中のユートピア』(白水社 予価3990円)
1月下旬刊 エリック・マコーマック『ミステリウム』(国書刊行会 予価2625円)
1月刊 P・G・ウッドハウス『お呼びだ、ジーヴス』(国書刊行会 予価2310円)

 以前にも、同コンビでアンソロジーが出ていましたが、再びちくま文庫から2冊のアンソロジーが登場です。たぶん収録作品は日本作家のものなのだと思うのですが、短編ファンとしては楽しみですね。
 都筑道夫『怪奇小説という題名の怪奇小説』は、復刊になりますが、モダンホラーの先駆としても面白い作品です。レオ・レオーニ『平行植物 新装版』は、架空の植物について語った博物誌的作品。ときとして、その記述は限りなく幻想小説に接近します。とても魅力的な作品なのでオススメです。
 来月のいちおしはこれ、エリック・マコーマック『ミステリウム』です。マコーマックは、長編『パラダイス・モーテル』や短編集『隠し部屋を査察して』など、とにかく魅力的な物語を作ることにかけては、超一級の作家です。紹介文によく「カフカ的」とか「迷宮」とか記されることが多いのですが、それらのキーワードから推測されるような難解さとは無縁、すばらしいストーリーテラーです。
12月の気になる新刊
12月10日刊 G・K・チェスタトン『四人の申し分なき重罪人』(ちくま文庫 1050円)
12月11日刊 ジョン・フランクリン・バーディン『悪魔に食われろ青尾蠅』(創元推理文庫 予価735円)
12月14日刊 エドワード・ゴーリー絵 ヒレア・ベロック文『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』
(河出書房新社 予価1050円)
12月15日刊 レオ・ペルッツ『ウィーン五月の夜』(法政大学出版局 予価3990円)
12月18日刊 エドワード・D・ホック『サイモン・アークの事件簿2』(創元推理文庫 予価1050円)
12月18日刊 シャーロット・アームストロング『魔女の館』(創元推理文庫 予価945円)
12月18日刊 高橋良平+東京創元社編集部編『東京創元社 文庫解説総目録』 (東京創元社 5250円)
12月21日刊 メビウス画 アレハンドロ・ホドロスキー原作『L'INCAL アンカル』(小学館集英社プロダクション 予価3990円)
12月22日刊 西崎憲『蕃東国年代記』(新潮社 予価1470円)
12月25日刊 P・G・ウッドハウス『お呼びだ、ジーヴス』(国書刊行会 予価2310円)

 今月の創元推理文庫からは、いくつかサスペンスの名作が出ます。まずは、ジョン・フランクリン・バーディン『悪魔に食われろ青尾蠅』の文庫化。サイコ・サスペンスの古典です。サスペンスというよりは、もうほとんどホラーといっていい作品ですね。バーディンは、邦訳された3作、『悪魔に食われろ青尾蠅』『殺意のシナリオ』『死を呼ぶペルシュロン』と、どれも傑作なのでオススメです。
 アームストロング『魔女の館』は、かってトパーズ・プレスから出ていたものの文庫化。これも良質のサスペンスですね。
 レオ・ペルッツは本邦では幻想小説で知られる作家ですが、『ウィーン五月の夜』は、どうやら普通小説や評論を収めた作品集のようです。硬派の文学ファン向けでしょうか。
 『東京創元社 文庫解説総目録』は、創元推理文庫の創刊時から2010年までの文庫全点の目録です。創元ファンとしては、ぜひ欲しいところですが、さすがにこの値段だと考えてしまいます。
 今月いちばんの要注目作はこれ、メビウス画 アレハンドロ・ホドロスキー原作『L'INCAL アンカル』です。このところ続いている、バンド・デシネ邦訳の真打ち登場といった感じですね。 


プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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