最近読んだ本

B002X8EIJ6S-Fマガジン 2010年 01月号 [雑誌]
早川書房 2009-11-25

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『SFマガジン 創刊50周年記念特大号 海外SF篇』
 『SFマガジン』は、節目節目に特大号を出しますが、今回は創刊50周年ということで、なかなか感無量です。看板作家の未訳短篇と、過去の名作の再録で、アンソロジーとしても読めるお得用になっています。
 未訳の方が、テッド・チャン、グレッグ・イーガン、ジーン・ウルフ、シオドア・スタージョンなど。再録の方は、ディック、ラファティ、ティプトリーなど。再録の方の数が少なめなのがちょっと残念ですね。
 あと小説に比べて、エッセイが少なめなので、もう少し多くしてもよかった気がします。
 今回から新連載の『「新版」世界SF全集を編む』(大森望、中村融、山岸真)は、なかなか面白いです。『ミステリマガジン』の方の『世界ミステリ全集』企画に触発されたんでしょうか。実際に出版になる可能性を考慮した企画ということで、かなり現実的な提案がなされているのが興味深いところ。
 巻末の執筆者コメントを見ていたら、気になるニュースが。まず《奇想コレクション》のフリッツ・ライバー短編集『跳躍者の時空』が一月に刊行予定だそうです。あと宮脇孝雄氏のコメントで、ジョン・クロウリー『エジプト』がもうじき訳了だとか。



4575289191現代SF最前線
双葉社 1998-12

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森下一仁『現代SF最前線』(双葉社)
 著者が雑誌に連載していたSF小説の紹介文を集めたものです。1983~1997年に発売された本が対象になっています。一冊あたりのスペースが長めにとられているので、わりと詳細な紹介になっています。簡単なあらすじから、テーマや意義など批評的な側面まで、難し過ぎず簡単過ぎず、非常にバランス感覚の優れたガイドになっています。
 80年代の最初のころは、今は亡きサンリオSF文庫もいくつか紹介されているなど、絶版になってしまったものが多いというのがネックですが、読んで楽しい、上質のブックガイドです。



4105451014ビヨンド
檜垣 嗣子
新潮社 2004-12-22

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マイケル・ベンソン『ビヨンド』(新潮社)
 これは、惑星探査機が送ってきた太陽系の惑星や衛星などの写真を集めた写真集。これはすごいです。何の仕掛けもしていないのに、下手なSFのイメージよりよっぽど壮大なスケールを感じさせてくれます。木星のアップ写真など、ほとんど異世界。



4840231826ある日、爆弾がおちてきて (電撃文庫)
メディアワークス 2005-10

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古橋秀之『ある日、爆弾が落ちてきて』(電撃文庫)
 すべての収録作品に「時間」テーマをからませた短編集です。大甘なラブストーリーが多いのですが、意外と本格的なSFネタをからませていて、SFファンには楽しめるのではないかと思います。
 好意を寄せていた少女が「爆弾」になって降ってくるという表題作『ある日、爆弾が落ちてきて』は、ちょっとついていけないものがありますが、それ以外は、なかなか楽しめる作品があります。
 実体を持たず、毎日クラスメイトの「誰か」に乗り移ることで存在する人格「日渡千晶」を描いた物語『出席番号0番』は、グレッグ・イーガンみたいな話。学校の窓が別の時間とつながるという、ジャック・フィニィ風の『三時間目のまどか』、一時的に人格が過去の自分になってしまうという『おおきくなあれ』など、全体にオールドSFっぽい雰囲気が漂っているのが特徴。



4764822784映画で読むエドガー・アラン・ポー (SCREEN新書)
近代映画社 2009-11

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北島明弘『映画で読むエドガー・アラン・ポー』(近代映画社)
 映像化されたポー作品について紹介しているガイド。なかなか目のつけどころのよい本ですね。ポーの映像化といえば、60年代のロジャー・コーマンのものが有名ですが、それ以前と以後にもたくさんの映像化作品があることがわかります。映画草創期にもたくさんのポー原作作品があることに驚きます。
 そういえば、最近では、あんまり映像化されたポー作品って、見当たらないような気がしますね。
12月の気になる新刊と11月の新刊補遺 
11月24日刊 『瀬下耽探偵小説選』(論創社 2940円)
11月26日刊 H・P・ラヴクラフト 宮崎陽介画『邪神伝説 クトゥルフの呼び声』(PHP研究所 1050円)
11月26日刊 チャールズ・ディケンズ 坂田靖子画 『クリスマス・キャロル』〈古典新訳コミック〉(光文社 予価1260円)
11月下旬刊 北島明弘『映画・TVで見るエドガー・アラン・ポー』(仮題)(近代映画社 予価945円)
12月10日刊 A・E・コッパード『天来の美酒/消えちゃった』(光文社古典新訳文庫)
12月10日刊 スチュアート・M・カミンスキー編『ポーに捧げる20の物語』(ハヤカワ・ミステリ 予価1680円)
12月11日刊 ギルバート・アデア『閉じた本』(創元推理文庫 予価882円)
12月14日刊 長山靖生『日本SF精神史 幕末・明治から現代まで』(河出ブックス 予価1260円)
12月15日刊 中井英夫『新装版 トランプ譚 幻想博物館』(講談社文庫)
12月16日刊 M・A・アストゥリアス『グアテマラ伝説集』(岩波文庫)
12月19日刊 ヘレン・マクロイ『殺す者と殺される者』(創元推理文庫 予価903円)
12月25日刊 ローレンス・ブロック『やさしい小さな手』(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価924円)

 論創社はマイナーな探偵作家の作品集を続々と刊行していますが、今回はなんと瀬下耽の作品集。彼の作品は、怪奇小説の名作『柘榴病』の他、数編がアンソロジーで読める程度でした。作品数も少ない関係で、今回の作品集はほぼ「全集」になるようです。怪奇探偵小説のファンなら買いでしょう。
 対照的なコミカライズが2作出ます。ラヴクラフトの漫画化『邪神伝説 クトゥルフの呼び声』は、タイトルからして、ちょっとB級っぽいですね。坂田靖子の 『クリスマス・キャロル』は、なかなかセンスのいいセレクションかも。この〈古典新訳コミック〉、継続的にシリーズ化するのだとすると、楽しみですね。
 来月のいちばん気になる新刊はこれ。A・E・コッパード『天来の美酒/消えちゃった』。幻想短篇の名手コッパードの短編集が、まさか古典新訳文庫から出るとは。本当に侮れない叢書ですね。
 以前に国書刊行会から出た作品集『郵便局と蛇』では、文学臭の強い作品が多かったのですが、今回は文庫ということもありますし、もう少しとっつきやすい作品が集められているのかもしれません。ちなみに、表題作の『消えちゃった』は、平井呈一の翻訳もある、ユーモアあふれる幻想譚です。お勧め。
 前回の『幽霊の2/3』に続いて、ヘレン・マクロイの『殺す者と殺される者』がついに刊行。こちらはサスペンス風味が強そうなので、期待しています。
宇宙をやりなおしてでも  うえお久光『紫色のクオリア』
404867904X紫色のクオリア (電撃文庫)
アスキーメディアワークス 2009-07-10

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 最近のライトノベルは、一般の小説作品と比べても、遜色のないものが多くなってきている…。そんな気はしていましたが、ここまで来ると、立派なSF作品と呼んでいいのではないでしょうか。
 うえお久光『紫色のクオリア』(電撃文庫)は、一見、何気ない学園ドラマから始まりながら、あれよという間に壮大なスケールへと舞台を広げていきます。そのイメージの飛躍はまさに驚異的。
 語り手の少女、波濤マナブの親友である毬井ゆかりには、ある特殊な能力がありました。彼女の眼には、あらゆる人間がロボットに見えるというのです。ただ、自分の姿を除いて。
 ゆかりは、美しい外見にもかかわらず、周りの人間たちに対してコンプレックスと疎外感を抱いていました。またそれゆえ、人一倍周りの人間たちに対して、愛情を抱いてもいたのです。そんなゆかりに愛しさを感じるマナブでしたが、ある事件をきっかけにして、二人の人生は大きく変化していきます。
 ゆかりには人間が全てロボットに見える。それはまた、その人間の能力や性質が、具体的なイメージとなって、眼に見えるということでもありました。その能力ゆえに、警察からも一目置かれる存在になっていたのです。
 連続殺人の犯人を写真から指摘したゆかりでしたが、それが原因で、マナブは殺人鬼に誘拐されてしまいます…。
 上に紹介したあらすじは、第一章『毬井についてのエトセトラ』についてのもの。ここまででも、それなりに魅力的な物語ではあるのですが、この作品が本当に傑作になるのは、次章の『1/1,000,000,000のキス』からです。
 誘拐事件をきっかけにして、ある特殊な能力を手に入れた波濤マナブは、ゆかりの危機を救うために、能力を駆使していきます。その過程を通じて、マナブは神にも等しい超越的な存在になっていくのです。しかし、その超越的な力をもってしても、ゆかりの運命を救うことはできません…。
 これ以上、具体的な詳細を書くと、未読の方の興味を削いでしまうので書きませんが、パラレルワールドを利用したネタとだけ言っておきましょう。
 神にも等しい能力を手に入れたマナブの唯一の「誤算」とは? 変わり過ぎてしまったマナブに対して、ゆかりが放った言葉とは?
 親友を救うために、世界、そして宇宙、時空までもを犠牲にしてしまうという、壮大なスケールの物語。たった一人の友のために、全てをなげうつ愚かしさと、そして愛しさ。
 ライトノベルの枠を超えた大傑作。近年稀に見る日本SFの収穫といっていいのではないでしょうか。
最近読んだ本など(まとめて)
 最近忙しく、本の感想を書く時間もなかなかありません。そういうわけで、まとめて簡単に。


4042980015地球の静止する日 (角川文庫)
南山 宏
角川グループパブリッシング 2008-11-22

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『地球が静止する日』(角川文庫)
 創元の同名アンソロジーと同じく、映像化された短篇SFを集めたアンソロジーです。表題作の『地球が静止する日』(ハリー・ベイツ)は、展開が地味だというのを除いても、かなり古びてしまってますね。本好きにはたまらない、『ミステリーゾーン』原作の『廃墟』(リン・A・ヴェナブル)、そして『ターミネーター』のネタ元として有名な、『38世紀から来た兵士』(ハーラン・エリスン)が楽しめます。『闘技場』(フレドリック・ブラウン)は何度目かの再読になりますが、やっぱり名作だと思います。



4488715036時の娘 ロマンティック時間SF傑作選 (創元SF文庫)
中村 融
東京創元社 2009-10-10

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中村融編『時の娘 ロマンティック時間SF傑作選』(創元SF文庫)
 巻頭作の、『チャリティのことづて』(ウィリアム・M・リー)は、かってオムニバスドラマシリーズ『新トワイライト・ゾーン』で映像化されたこともある作品。オーソドックスながら味わいのある佳作です。
 『台詞指導』(ジャック・フィニイ)や『時が新しかったころ』(ロバート・F・ヤング)は、それぞれの持ち味が出た安定した作品。『時の娘』は、ハインラインの『輪廻の蛇』を思わせる、タイム・パラドックスを使った怪作でした。全体に、あまり斬新な作品は見当たらないのですが、ロバート・M・グリーン・ジュニア『インキーに詫びる』は、じつに独創的な時間SFで、驚かされました。
 個人的には満足できたアンソロジーなのですが、人によっては食傷気味になってしまうような気もします。



4152088222ミスフォーチュン
Wesley Stace
早川書房 2007-06

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ウェズリー・ステイス『ミスフォーチュン』(早川書房)
 ひょんなことから、富裕な貴族ラヴホール家の当主に拾われた主人公ローズは、跡取り娘として何不自由ない生活を送ります。しかし、レディとして育てられたローズは、実は「男」だったのです。長じるにしたがって、違和感に苦しむローズ。そして、その秘密を知った親戚たちは、遺産を横取りするために館に乗り込んできます…。
 19世紀初頭、イギリスを舞台にしたディケンズ風大河小説です。とにかく、波瀾万丈で最後まで飽きさせません。主人公が、父親を失ったあと、あれよという間に邸や財産を乗っ取られるなど、展開はオーソドックスで、新味はありませんが、安定した出来で楽しめます。最後の方の展開に、かなりご都合主義的なものが続くのはちょっと気になりますが、それを差し引いても充分良質なエンタテインメントと言えるかと思います。
 作者がミュージシャンだけあって、作中で、歌が重要な役割を果たすのも読みどころ。



4043943180嘘神 (角川ホラー文庫)
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-10-24

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三田村志郎『嘘神』(角川ホラー文庫)
 主人公のコーイチは、ある日気づくと、高校の仲間5人とともに、見たことのない部屋に閉じ込められていました。「嘘神」と名乗る存在から、「ゲーム」に勝てば、この部屋から生きて帰れると、いくつかのルールを提示されます。しかし、そのルールの中には、ひとつだけ嘘があるというのです。最初は協力し合っていた仲間たちは、やがて仲間割れを起こして、殺し合いが始まります…。
 極限状況でのサバイバルを描く、いわゆる「デスゲーム」小説です。正直、人物描写が全体に浅いのが気になります。わざとなのかもしれませんが、会話もちょっといただけません。趣向自体は面白いと思いますが、「小説」としてはかなり落ちる作品。



4047260851芋虫 (BEAM COMIX)
エンターブレイン 2009-10-26

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丸尾末広『芋虫』(エンターブレイン)
 江戸川乱歩の『芋虫』を漫画化した作品です。戦傷で両手両足を失った夫を介護する妻という、原作からしてドロドロの情念に満ちた作品なのですが、この漫画化作品では、それがさらに倍加された感じです。独特の文章のトーンにくるんで語られる原作小説に比べ、具体的な映像表現を使わざるを得ない漫画では、あまりに身も蓋もない描写になってしまうので、「幻想」や「ファンタジー」の入る余地がないんですよね。
 これはこれで傑作だと思うのですが、個人的には、前作『パノラマ島綺譚』のような幻想的な味を、もう一度味わいたいと感じてしまいます。

 
4152087110アトモスフィア〈1〉 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
早川書房 2006-03

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西島大介『アトモスフィア』(ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)
 ある時を境に、世界中に人々の「分身」が現れます。自分と入れ替わろうとした「分身」から、すんでのところで「守る会」に助けられたヒロインは、「会」に参加します。しかし分身現象はまったく収まらず、コピーは増え続けていきます…。
 「分身」現象の原因を合理的に解き明かすとか、「分身」たちと本体たちとの壮絶な戦いを描くとか、そういう方面の話ではありません。世界にも自分にもまったく「期待しない」という、空虚なヒロインが、世界や自分に対して折り合いをつけるという、いわゆる「セカイ系」の物語。


プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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