6月の気になる新刊
6月9日刊 ロベルト・ボラーニョ『通話』(白水社 予価2310円)
6月10日刊 ウラジーミル・プロップ『魔法昔話の研究 口承文芸学とは何か』(講談社学術文庫)
6月12日刊 徳永康元『ブダペストの古本屋』(ちくま文庫 予価945円)
6月19日刊 柴田元幸編訳『いずれは死ぬ身』(河出書房新社 予価1995円)
6月中旬刊 鹿島茂『馬車が買いたい! 新版』(白水社 予価3360円)
6月25日刊 チャイナ・ミエヴィル『ペルディード・ストリート・ステーション』(早川書房 予価3360円)
6月25日発売 『ミステリマガジン8月号』(特集=幻想と怪奇 ポー生誕200周年〉(早川書房 840円)
6月30日刊 大森望・日下三蔵編『超弦領域 年刊日本SF傑作選』(創元SF文庫)
6月刊 『SF本の雑誌』(本の雑誌社 予価1575円)

 徳永康元『ブダペストの古本屋』は、元本を既読なのですが、味のあるエッセイ集でした。古本の話題もありますが、戦前の外国語学習や留学の話がとても面白く、興味深く読めます。
 柴田元幸編の最新アンソロジーは、「死、喪失、別離、崩壊」を扱ったもの。今回はかなりシリアスなテーマですね。ただ編者には、以前にも老人を扱ったアンソロジー『いまどきの老人』があって、ただ重いだけではなくて、軽妙な作品も混ぜたりと、上手い編集になっていたので、今回も期待できそうです。
 『ミステリマガジン』は、恒例の《幻想と怪奇》特集。ポーを主眼とした特集が組まれるようです。
 大森望・日下三蔵編の《年刊日本SF傑作選》は、はやくも続編が登場です。こういうアンソロジーは末永く続けてほしいですね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

機械のための機械  ヒース・ロビンソン
4480877126わが庭に幸いあれ―紳士の国の園芸術
K.R.G. Browne W.Heath Robinson 中尾 真理
筑摩書房 1998-03

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1585679801Heath Robinson Contraptions
Geoffrey Beare
Overlook Pr 2007-11

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 SF作家の星新一は、欧米の一コマ漫画に興味を持っていて、その探求成果を『進化した猿たち』(新潮文庫)という楽しい本にまとめています。これはテーマ別にスクラップした一コマ漫画を、文章とともに紹介するというものでした。僕がこの手のジャンルの漫画に興味を持ったのも、おそらく、この本がきっかけだったと思います。
 その後、一コマ漫画を扱った本をいくつか読む機会がありましたが、とりわけ印象に残ったのが、やたらと機械が出てくる漫画でした。本来、機械というものは実用に役立てる便利なもののはずですが、その漫画では、やたらと複雑化して、どう考えても役に立つとは思えない機械がところ狭しと描かれていました。
 気になったものの、その機械の漫画の作者名はわかりませんでした。こうした一コマ漫画を扱った本は、以前は作者名を記していないものが多かったのです。そんな折り、古本屋で手に入れた『文藝春秋デラックス 世界のマンガ』(文藝春秋)という本で、ようやく機械の漫画の作者名を知ることができました。
 その名は、ウィリアム・ヒース・ロビンソン。イギリスで19世紀末から20世紀前半に活躍した有名な画家兼漫画家でした。家族がみな画家の一家で、兄のチャールズ・ロビンソンなどは、非常に美しい絵を描いています。
 ヒース・ロビンソンにも正統的な挿絵の仕事がありますが、彼を有名にしたのは、やはりナンセンスな機械を描いた一連の漫画です。単なる日常的な作業をするための巨大で複雑な機械、生活を便利(不便)にするための奇想天外なアイディア。今見てもユーモアにあふれた、楽しい絵なのです。
 彼の絵の魅力は、その機械のナンセンスさはもちろん、込み入った機械のディテールまで丁寧に細かく描かれているところでしょう。実際に3次元で作ろうと思えば作れるほど細かく描かれていて、実際に作ってみた例もあるようです。
 日本語で読める本は少ないのですが、筑摩書房から出た『わが庭に幸いあれ 紳士の国の園芸術』(K.R.G.ブラウン文・ヒース・ロビンソン絵 中尾真理訳)はお勧めの本ですね。一見、園芸に関する蘊蓄をユーモアを交えて語ったエッセイ集みたいに見えるのですが、その実、完全なおふざけで書かれた冗談みたいな本です。コーリイ・フォードの『わたしを見かけませんでしたか』(ハヤカワepi文庫)と似たタッチの本と言えば、分かる人もいるかもしれません。
 そして注目すべきは、ヒース・ロビンソンの挿絵です。ここでも彼は園芸をテーマに、奇想天外な機械を描いています。「屈まなくてもすむ方法」「拡声器つき鳥脅し装置」「猫用水かけ装置」「花粉飛ばし器」「鳥が動かすカラスの行水式バード・バス」など、ユーモアにあふれた機械の数々が紹介されます。ブラウンの文、ヒースの絵、ともに楽しめる第一級の「ユーモア・スケッチ」作品です。
 ヒース・ロビンソンの漫画をまとめて見たいという方には、洋書ですが近年出た『Heath Robinson Contraptions』(Overlook Pr)がお勧め。ヒース・ロビンソンの漫画の傑作集で、カラー図版も収録されています。
ヒース1 ヒース2 ヒース3 ヒース4 ヒース5 ヒース6 ヒース7 ヒース8

テーマ:アート - ジャンル:学問・文化・芸術

SFのふるさと  山本弘『トンデモ本?違う、SFだ!』正・続
4896918320トンデモ本?違う、SFだ!
山本 弘
洋泉社 2004-07

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4862480098トンデモ本?違う、SFだ!RETURNS
山本 弘
洋泉社 2006-03-01

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 数あるSF関連ガイドの中でも、これほど楽しく読める本は、なかなかないでしょう。山本弘『トンデモ本?違う、SFだ!』と続編である『トンデモ本?違う、SFだ! RETURNS』(ともに洋泉社)は、かってSFが持っていた原初的な面白さ、「センス・オブ・ワンダー」にあふれた作品を紹介しようというコンセプトのガイドです。
 ここで取り上げられるのは、正統派のSFというよりも、読者をあっと驚かせてくれるアイディアに溢れた作品たち。結果、長編よりも短編、メジャーよりもマイナーな作品が多数を占めています。著者の山本弘は、このあたりの事情を次のように語っています。

 私見だが、SF作家の偉大さは「バカ度」で決まると思っている。世間の目を気にしてか、あるいは自己満足か、地味で飛躍のないブンガク的作品しか書かない作家は、普通の作家としてならともかく、SF作家としての適性には欠けている。異星人の侵略、パラレルワールド、タイムトラベル、日本沈没……「そんなバカなことがあってたまるか!」と一笑に付されるような荒唐無稽な設定を、バカにすることなく、信念を持って、真剣に書き上げるのが、本物のSF作家なのだ。
 こう言い換えてもいい。
 「SFとは筋のとおったバカ話である」


 一般的にも名の知られたフレドリック・ブラウンやシオドア・スタージョンはともかく、チャールズ・L・ハーネス、ダニエル・F・ガロイ、トム・ゴドウィン、フィリップ・レイサムあたりになると、あまり馴染みのない人がいるかもしれません。しかし、これらのマイナー作家のマイナー作品にこそ、力の入った紹介がなされています。
 とにかく著者の「面白い作品をぜひ読んでもらいたい」という熱意が伝わってくるような文章で、実際に作品を読んでみたくなってきます。
 基本的には、特定作家の作品を章ごとに紹介するスタイルをとっていますが、もちろんその中で、同じ作家の別の作品や関連作品についても言及されていて、よくできたガイドになっています。あとは「インターミッション」として、テーマ別に書かれた長めのエッセイが入っていますが、これがまたどれも面白い!
 『マレイ・ラインスターの魅力』『タイムトラベルSFオンパレード』『海外SF、名タイトル総まくり』『SF版ノックスの十戒を考えよう』『パラノイアSFの系譜』『あの名作の元ネタはこれだ!』など、興味深いテーマが並びます。
 とくに、タイムトラベルの各種類ごとに作品を分類した『タイムトラベルSFオンパレード』と、本当はこの世界は現実ではない…というテーマを並べた『パラノイアSFの系譜』の充実度は半端ではありません。
 紹介されている主だった作品は、1940年~50年代の海外SFが中心となってはいますが、現代の作品やマンガ、映画作品にも筆が割かれていて、とにかく「面白くてしょうがない」作品を集めたという感じの、楽しいおもちゃ箱のような本です。
 正続、二冊のガイドを読み終えたら、読みたい本がたくさん増えているはずです。実際、僕も、ライトノベルだと思って手を出していなかった高畑京一郎『タイム・リープ』や谷川流『涼宮ハルヒの憂鬱』を読む気になったのは、この本のおかげです。
 SFを読んでみようかなと思っているSF初心者の方、そしてSFからは離れてしまった往年の読者の方にもお勧めしたいSFガイドです。
悪夢と哄笑  仁賀克雄編訳『新・幻想と怪奇』
4150018243新・幻想と怪奇〔ハヤカワ・ミステリ1824〕 (ハヤカワ・ミステリ 1824)
仁賀克雄
早川書房 2009-05-08

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 先日、収録作品を紹介した『新・幻想と怪奇』 (仁賀克雄編訳 ハヤカワ・ミステリ)が発売されましたので、内容を紹介したいと思います。
 結果から言うと、編者が以前に編んだハヤカワ文庫版の『幻想と怪奇』に連なる路線のアンソロジーでした。狭義の「怪奇小説」だけでなく、SFやミステリ的な要素も含んだ、エンタテインメント作品全般を集めたアンソロジーになっています。
 それでは、以下いくつかの作品について、ご紹介します。

 ローズマリー・ティンパリー『マーサの夕食』 家事をそつなくこなし、夫に対して常に尊敬の念を忘れない理想の妻マーサ。それをいいことに、夫のポールは愛人エステルとの逢瀬を繰り返していました。しかしある日、約束通りエステルの家に着くと、彼女はいませんでした。不審に思いながらも、自宅に戻ったポールに対し、マーサは不可解な態度をとりますが…。
 完璧な妻マーサが見せる静かな狂気とは…? 抑えた筆致で描かれるサイコ・スリラーの佳品です。

 ロバート・シェクリイ『思考の匂い』 星間郵便配達人のクリーヴィは、宇宙船の故障で、未開拓の惑星に不時着を余儀なくされます。その星で出会った生物には、どれも眼と耳がありませんでした。しかしそれにもかかわらず、獣たちは、クリーヴィを食べようと襲ってきます。なんと獣たちはテレパシーで思考を読むことによって、獲物をとらえていたのです! クリーヴィは彼らの注意をそらせようと、必死に考えますが…。
 「思考の匂い」が読まれてしまう惑星で、獣たちから逃れようとする男を描いたアイディア・ストーリーです。思考の中で牝になってみたり、猛獣になってみたりと、試行錯誤が非常に愉しい作品。

 チャールズ・ボーモント『不眠の一夜』 怪奇現象について盛り上がっている一座のなかで、ひとり沈黙を守っている男クリールは、皆の求めに応じて自らの体験を語り始めます。それは奇妙な話でした…。
 非常に短い作品ながら、無気味な余韻を残す都市伝説風の奇談です。

 アンソニイ・バウチャー『ジェリー・マロイの供述』 芸人コンビ、ジェリーとジーンの人気はうなぎのぼりでした。しかもジーンには、ステラという美しい恋人もできていたのです。しかしジーンとジェリーとの仲を嫉妬するステラは、ジーンにジェリーとのコンビを解消するようにそそのかします…。
 人間関係のもつれから破局が訪れるクライム・ストーリー、と思いきや、語りに仕掛けがしかけられています。結末を読んでから再読したときに、その上手さが感じられる技巧的な作品。

 アラン・ナース『虎の尾』 万引を繰り返す女を見つけたデパートの店員は驚きます。ハンドバッグの中に、とんでもない数の品物を放り込んでいたからです。しかもそれだけの品物を入れながら、ハンドバッグは一向に膨らまないのです。やがて捕らえた万引犯は、万引の事実を覚えていませんでした。ハンドバッグを調べた科学者のコリンズは、バッグの中は別の世界に通じていることを発見しますが…。
 バッグを通じて品物を集める「かれら」の目的はいったい何なのか? 侵略SFのバリエーション的な作品です。

 リチャード・ウィルスン『ひとけのない道路』 夜半まで運転していた男は、眠気を感じて、コーヒーでも飲もうと食堂に立ち寄ります。店には客はおろか、店員もいませんでした。不審に思いながらも、料金を置いて運転に戻った男は、ガソリンスタンドにも、町にすら人が一人もいないのを確認して、驚きを隠せません…。
 自分以外の人間がいなくなってしまうという、いわゆる「マリー・セレスト」風奇談。過去に死んだ息子の話をからめて、主人公の孤独感がじつに上手く表現されています。雰囲気もすばらしい傑作。

 ウィリアム・テン『奇妙なテナント』 ビル管理の責任者ブレイクのもとに、ある日、奇妙な二人組が現れます。トウフとボウフと名乗る二人組は、十三階のフロア全体を借りたいと申し出ます。しかしこのビルの十二階の次は十四階であり、十三階は存在しないのです! ブレイクは事情を説明し断りますが、二人組は本社にかけ合い、十三階を借りてしまいます。やがて訪れた二人組はエレベーターに乗って、存在しないはずの十三階に行ってしまいます。掃除婦やエレベーター係などから、十三階が実在することを聞いたブレイクは、真偽を確かめるため、十三階に行こうとしますが、どうしてもたどり着くことができません…。
 存在しない十三階をめぐる、スラップスティック風味のファンタジー短編。終始、陽気な雰囲気で進むものの、結末はかなりブラックです。

 A・M・バレイジ『暗闇のかくれんぼ』 クリスマス・イブの夜、ジャクスンは遊びに加わらない理由を訊ねられ、話を始めます。過去にかくれんぼの最中、階段から落下して死んだ女の子がいたというのです。そして数年後、「スミー」と呼ばれるかくれんぼを同じ屋敷で行った客たちは、不思議な現象に出会います…。
 内容的にはオーソドックスなゴースト・ストーリーですが、語り口が上手いので、飽きさせずに読ませます。かくれんぼの最中に起こる怪奇現象の雰囲気は秀逸。

 リチャード・マシスン『万能人形』 芸術家の夫妻の間に生まれた赤ん坊ガードナーは、ひどく性格が悪く、両親の作品を壊しては、親を嘆かせていました。子供に友人を与えればおとなしくなるのではないかと考えた母親は、高価な「万能人形」を買い与えます。歩き、話し、食べることもできるその人形を与えてから、ガードナーはおとなしくなったように思えましたが…。
 赤ん坊に悩まされる夫婦の話、なのですが、ストーリーが進むにつれブラックな雰囲気が増していく怪作。

 ローズマリー・ティンパリー『レイチェルとサイモン』 ジョンは、引越先で出会った美しい女性アンジェラ・フランシスに心惹かれます。彼女にはレイチェルとサイモンという二人の子供がいるという話を聞きますが、夫は亡くなっていると知り、彼女と親交を深めようと考えます。しかしいつまで経っても、レイチェルとサイモンには会えず、姿はおろか声さえも聞くことができません。やがてジョンは、用務員から、アンジェラには子供などいないということを聞きます…。
 いないはずの子供がいると言い張るアンジェラは気が狂っているのだろうか? やがて破局が訪れて…。
 ティンパリーの名作短編『ハリー』にも通じるところのある、ゴーストストーリーの変種的作品。ただ結末はやさしさに満ちていて、読後感は悪くありません。

 既訳もいくつかあるものの、全体的に質が高く楽しめます。ハヤカワ文庫版『幻想と怪奇』が好きだった人は買いでしょう。もちろん、旧版を読んでない方にもお勧めです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

幻想と怪奇と恐怖  怪奇小説アンソロジーの難しさ
 今月発売予定の『新・幻想と怪奇』(仁賀克雄編訳 ハヤカワ・ミステリ)の収録内容が、早川書房の新刊案内で発表されました。

 ローズマリー・ティンパリー『マーサの夕食』
 ゼナ・ヘンダースン『闇が遊びにやってきた』
 ロバート・シェクリイ『思考の匂い』
 チャールズ・ボーモント『不眠の一夜』
 ジョージ・フィ-ルディング・エリオット『銅の鋺』
 ゴア・ヴィダール『こまどり』
 アンソニイ・バウチャー『ジェリー・マロイの供述』
 アラン・ナース『虎の尾』
 フィリップ・ホセ・ファーマー『切り裂きジャックはわたしの父』
 リチャード・ウィルスン『ひとけのない道路』
 ウィリアム・テン『奇妙なテナント』
 マンリー・ウェイド・ウェルマン『悪魔を侮るな』
 A・M・バレイジ『暗闇のかくれんぼ』
 リチャード・マシスン『万能人形』
 ロバート・ブロック『スクリーンの陰に』
 レイ・ラッセル『射手座』
 ローズマリー・ティンパリー『レイチェルとサイモン』

 ロバート・シェクリイ、チャールズ・ボーモント、リチャード・マシスン、ロバート・ブロックなど、いわゆる異色作家中心のアンソロジーになるようです。個人的には、ローズマリー・ティンパリーの作品が二編収録というところが嬉しいですね。
 さて、『新・幻想と怪奇』というタイトルから察しがつくと思いますが、すでに『幻想と怪奇』というタイトルのアンソロジーが存在します。ただ問題は、同名のタイトルがいくつかあるということ。ひとつは、同じハヤカワ・ミステリから出ている都筑道夫編の『幻想と怪奇』。そしてもう一つは、今回のアンソロジーと同じ編者、仁賀克雄の手になるハヤカワ文庫版の『幻想と怪奇』です。さらにややこしいことに、70年代に刊行された雑誌の『幻想と怪奇』も存在します。
 考えてみると、怪奇小説アンソロジーって似た名前の本が多いんですよね。例えば、月刊ペン社から出たアンソロジーは『恐怖と幻想』、角川文庫から出たのは、これまた似たタイトルの『怪奇と幻想』です。初心者は間違えそうですね。
 ちょっと今、思い付いた怪奇小説アンソロジーのタイトルを並べてみましょう。ちなみに日本で編まれたアンソロジーに限ります。

 都筑道夫編『幻想と怪奇』 (ハヤカワ・ミステリ)
 矢野浩三郎編『恐怖と幻想』(月刊ペン社)
 矢野浩三郎編『怪奇と幻想』(角川文庫)
 仁賀克雄編『幻想と怪奇』(ハヤカワ文庫NV)
 平井呈一ほか編『怪奇小説傑作集』(創元推理文庫)
 平井呈一編『恐怖の愉しみ』(創元推理文庫)
 南條竹則編『怪談の悦び』(創元推理文庫)
 中野善夫、吉村満美子編『怪奇礼賛』(創元推理文庫)
 倉阪鬼一郎、南條竹則、西崎憲『淑やかな悪夢』(創元推理文庫)
 中田耕治編『恐怖の1ダース』(講談社文庫)
 中田耕治編『恐怖通信』(河出文庫)
 西崎憲編『怪奇小説の世紀』(国書刊行会)
 
 うーん、厳密にはみな違う名前ですが、似たような印象のタイトルが多いですね。何でこんなに似たようなタイトルが多いんでしょうか。
 数十年前のものだと、戦略的にわざとこういうタイトルにした、という考え方もできそうです。今だったら、収録作品のどれかをタイトルにしたり、アンソロジーのテーマに沿ったタイトルをつけたりしますが、それだとパッとタイトルを見て、どういう内容のアンソロジーかがわかりにくいですし。少なくとも「怪奇」とか「恐怖」という名詞があれば、ホラー関係の内容だというのは一目瞭然です。
 問題は、近年刊行されたアンソロジーでも、似たようなタイトルがつけられているものがある、ということです。それもまあ、わが国のアンソロジーの伝統に連なるタイトルをつけていると考えれば、納得はできますが。
 それだけに、似たようなタイトルの中にあって、たまにユニークなタイトルに出会うと印象が残りますね。上に挙げた書名の中では、『淑やかな悪夢』なんかは、インパクトのあるタイトルだと思います。
 ここでふと考えると、日本で編まれた怪奇小説アンソロジーって、ほとんどテーマ別に編まれたものがないんじゃないか、と思い当たりました。テーマがあれば、それに沿ったタイトルをつけられますが、ないとすれば、タイトルをつけるのも難しいですよね。その意味では、抽象的な「怪奇」や「恐怖」を使ったタイトルは無難なのかもしれません。
 個人的には、無骨で地味な「怪奇」やら「恐怖」のついたタイトルも好きなのですが、もっとユニークなタイトルも見てみたい、と思っています。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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