 ブラッドベリの映像化についても、少し語っておきたいと思います。ブラッドベリの作品は映像化不可能だ、とする意見もあるようですが、それなりに成功した作品もあると、個人的には思っています。フランソワ・トリュフォー監督の『華氏451度』は、ブラッドベリのセンスとは異なるとはいえ、映像美としてはかなりのものでしたし、ディズニーの『何かが道をやってくる』も悪くはありませんでした。 短編の多いブラッドベリだけに、海外のドラマシリーズなどでは、ちょくちょく映像化もされているみたいです。未見ですが『ミステリー・ゾーン』でも、いくつかのエピソードが放映されています。僕の見たことのあるものでは『新トワイライトゾーン』の二つのエピソード、『エレベーター』と『バーニングマン』があります。どちらも大したことのない作品で、どうも作品選択が間違ってるんじゃないかという節があります。 個人的に一番評価したいのは、カナダで作られたオムニバス形式のドラマシリーズ『レイ・ブラッドベリ・シアター』。関東では、13年前ぐらいに、テレビ日本などで『怪奇の館』というタイトルで放送されていたので、ご覧になった方もいるかもしれません。 ブラッドベリ本人が監修しているだけあって、作品のムードを実によく再現していたように思います。ちなみにビデオ化もされています(廃盤のようですが)。毎回冒頭に、ブラッドベリ本人が現れて、自分の部屋で前置きを語るシーンが映されるのですが、この部分だけでも、ブラッドベリ好きとしては、感涙ものです。 映像化された原作を挙げると、『風』『骨』『少年よ、大茸をつくれ!(ぼくの地下室においで)』『泣き叫ぶ女』『群衆』『誰も降りなかった町』『ティラノザウルス・レックス』『こびと』『マリオネット株式会社』『使者』『遊園地』『ダドリィ・ストーンのすばらしい死』『みずうみ』『歓迎と別離』『棺』『草原』『鉢の底の果物』など。ブラッドベリファンなら泣いて喜ぶタイトルが目白押し。 『使者』での詩的な結末、『ダドリィ・ストーンのすばらしい死』で原稿をばらまく幻想的なシーンなど、印象的な映像が今でも記憶に残っています。 あと注目すべきエピソードとしては、『雷のような音』。原題は"A Sound of Thunder"。そう、これ、この前公開されたピーター・ハイアムズ監督『サウンド・オブ・サンダー』と同じ原作。 近未来、タイムマシンが開発されますが、それは過去の時代での恐竜狩りをするという商売に使われていました。ある日、客の一人が、ふと蝶を踏みつぶしてしまったことから、未来が変わってしまう…という話。原作はごく短い短編で、過去のささいな出来事が未来に甚大な影響を及ぼすという、いわゆる「バタフライ効果」を扱った作品。 ついでに、映画版『サウンド・オブ・サンダー』にも触れておきましょう。映画版では、過去からあるものを持ち帰ってしまったがために、未来が変わってしまうのですが、その影響が「時間の波」として、視覚化されるのが特徴。それによって、次々と植物や動物などの進化の道筋が変わってしまい、世界は荒廃してしまう…という展開になっています。一気に未来が変わるのではなく、何回かに別れて変化が訪れるので、人間には最後に影響が及ぶという設定になっています。 この辺がどうもご都合主義な感じがするのですが、まあそれは良しとしましょう。あと、CGがけっこうしょぼいです。何しろ序盤の恐竜狩りのシーンが使い回しの映像を使ってたりしますから。でも、まあそれもあんまり気になりません。 この映画の見所は、過去を元に戻そうという主人公たちが、異様な進化を遂げた動物や植物の攻撃をかわしながら、現代にものを持ち帰ってしまった客を捜す、というサバイバル的な部分にあるからです。このあたりは、いわゆるパニック・ホラーとして、なかなか秀逸。特殊CGを使った映像スペクタクルを期待すると、がっかりするでしょうが、演出もなかなか手堅く、飽きさせない作りになっています。そういう意味では、傑作ではないものの、まあまあ楽しめる佳作といえるでしょう。 でも、ブラッドベリの作品とは全然違うトーンの作品であることは確かです。どうせ映画化するなら、短編を集めたオムニバスにしてほしかった…というのが、個人的な希望です。 映像化、といえば萩尾望都の漫画化作品『ウは宇宙船のウ』(小学館文庫)も忘れられません。熱狂的なブラッドベリファンであるらしい作者が漫画化しただけあって、原作に対する愛情が感じられるところが、嬉しいところですね。 画風的には好みではないのですが、うまく原作を視覚化していると思います。中では『泣き叫ぶ女の人』や『びっくり箱』などが気に入っています。 『びっくり箱』といえば、M・ナイト・シャマラン監督の映画『ヴィレッジ』が『びっくり箱』にそっくりだ、という話があったようです。たしかにメインとなるネタはかぶっているような気がします。ただ、これ以前にも似たネタを使った映画や小説はあったようですし、パクリとか盗作というには当たらないような気がします。実際僕が思いつく範囲でも似たようなネタを使った作品があります。チャールズ・ボーモント『ロバータ』とかイアン・バンクス『蜂工場』、服部まゆみ『この闇と光』なんかも、そうでしょうか。 問題は、長編映画であのオチを持ってくるところにあるのではないかと思います。しかも結末ではなく、その一歩手前でネタあかしをしてしまうところに、さらに問題が。要するに演出次第・上映時間次第では、もっとうまく出来たのではないかと思わせられるという意味で、お世辞にも傑作とは言えない、というところです。 ちょっと脱線してしまいましたが、映画化においてはブラッドベリは今のところ、あんまり恵まれていないというのが正直なところですね。ただ前出の『レイ・ブラッドベリ・シアター』は、掛け値なしに素晴らしい出来なので、もし中古ビデオ屋で見かけたら、購入しておくことをオススメしておきます。 テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学
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