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幽霊のいる物語  ウォルター・R・ブルックスほか『幽霊たちの館』
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 ウォルター・R・ブルックスほか『幽霊たちの館』(掛川恭子ほか訳 講談社青い鳥文庫)は年少読者向けに編まれた怪奇小説アンソロジー。古典的な作家から現代の作家まで、時代は幅広く取られているようです。

キャサリン・ストー「牧師館のクリスマス」
 牧師としてコーンウォルの僻地に赴任した兄ウィリアムとその家族のもとを訪れた妹たち。兄の息子ヒューは部屋で一人で眠るのを異様に怖がりますが、兄は甘やかしてはいけないとたしなめます。
 妹たちはたまたま出会った墓守から気味の悪い話を聞きます。かって罪深い行為を行った牧師が自死して以来、新しく赴任した牧師はろくに居着かずにいなくなってしまうと言うのです…。
 何やら邪悪な意思を感じさせる土地。兄の息子は一体何を怖がっているのか…? 非常に雰囲気のあるゴースト・ストーリーです。

ウォルター・R・ブルックス「ジミーとよわむし幽霊」
 ジミーは幽霊屋敷と噂される、かっての祖父の屋敷を訪れますが、そこには幽霊が住み着いていました。彼と仲良くなったジミーは姿を消す術を習い、おばを驚かせますが…。
 幽霊と友人になった少年を描くコミカルなゴースト・ストーリー。結末にはしんみりとした味わいもありますね。

ジョン・ゴードン「ひびわれた記憶」
 少年ベンは頭がぼうっとして、いろいろなことが思い出せないことに気がつきます。クラスメイトたちは彼のことを無視するような態度を取りますが、唯一彼と話をしてくれる少年を見つけたベンは、彼と行動を共にすることにします…。
 なかなか「怖い」幽霊物語。勘のいい読者はすぐに仕掛けに気付いてしまうかも。

ランス・ソールウェイ「かわいいジュリー」
 妹のジュリーのわがままに常々腹を立てていた兄エドワード。自分の部屋に恐ろしい幽霊がいるというジュリーの話をエドワードは否定しますが…。
 子どもの想像だと思っていたことが実は…という、アンファン・テリブルものホラー作品。

ジョン・ケンドリック・バングズ「ハロビーやしきの水おんな」
 ハロビーやしきの当主には、幽霊が取り憑いていました。毎年クリスマス=イブに女の幽霊が現れ、一晩中離れないというのです。水びたしの霊に取り憑かれ、死んでしまった当主もいたといいます。
 新しく当主となった若者は、彼女を退治する方法を考えますが…。
 水びたしの幽霊を退治するというユーモラスなゴースト・ストーリー。翻訳もいくつかあるアンソロジーピースですが、やはり名作ですね。

A・M・バレイジ「殺人者のへや」
 マリナーろう人形館を訪れ、館長に記事を売り込んだ記者のレイモンド・ヒューソン。殺人者のろう人形が集まる部屋で一晩を過ごし、その記事を売ろうというのです。名だたる殺人者の人形が並ぶなか、彼をおびえさせたのは、殺人を繰り返しながら捕まらず、そのまま行方不明になったというブルデット博士の像でした。深夜、ヒューソンは博士の像が動き出したのに気がつきます…。
 殺人者のろう人形部屋で一晩を過ごすことになった男を描く物語です。オーソドックスな題材ではあるのですが、演出が独特で非常に怖い作品になっています。現代で言うところの「都市伝説風」の味わいもありますね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』通販のお知らせ
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 文学フリマ東京で販売した同人誌、『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』 を盛林堂書房さんで通信販売いたします。

 文学フリマで販売したものは手製本でしたが、今回新たにオフセット印刷で刷りなおしています。
 『物語をめぐる物語ブックガイド』は、物語や本をテーマにした小説作品のガイド、『迷宮と建築幻想ブックガイド』 は、迷宮や建築をテーマにした小説作品のガイドです。仕様は以下の通りです。

『物語をめぐる物語ブックガイド』
サイズ:A5
製本仕様:無線綴じ
本文ページ数:36 ページ
本文の印刷方法:モノクロ
用紙:色上質最厚口
表紙用紙の色:レモン
表紙印刷:カラー

『迷宮と建築幻想ブックガイド』
サイズ:A5
製本仕様:無線綴じ
本文ページ数:32 ページ
本文の印刷方法:モノクロ
用紙:色上質最厚口
表紙用紙の色:レモン
表紙印刷:カラー

盛林堂さんの販売ページはこちらです。
http://seirindousyobou.cart.fc2.com/

2019.12.28追記
二冊とも初回納品分は完売いたしました。再納品をしていますので、年明け2020年1月4日以降、通販再開する予定です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

恋と冒険  ロバート・ルイス・スティーヴンソン『眺海の館』
眺海の館 (論創海外ミステリ)
 ロバート・ルイス・スティーヴンソン『眺海の館』(井伊順彦ほか訳 論創海外ミステリ)は、バラエティに富んだ作品が収録された傑作集。翻訳があるものの、入手難になっている作品が多く集められており、スティーヴンソンファンにとっては貴重な作品集になっています。

 収録作中では、何といっても表題作の「眺海の館」が一番の絶品です。恋と冒険を扱った非常にロマンティックな作品です。

 「わたし」ことフランク・カシリスは、天涯孤独な青年。人間嫌いな性格も災いして、友人と言えば同じく人間嫌いな男ノースモア一人だけでした。ノースモア家が所有するグレイドン・イースターの地に招待されたカシリスは、ノースモアとけんか別れをしてしまいます。
 九年後ふとしたことから、かっての友人の領地を訪れたカシリスは、ちょうど船から数人の人間が降りてくるのを目撃します。ノースモアの他、美しい若い娘と老人がいるのを確認したカシリスはノースモアに声をかけますが、彼は短剣で突然切りかかってきました。かろうじて防いだカシリスは、ノースモアが何をしているのか調べようと考えますが…。

 かっての旧友の家を訪れた青年が陰謀に巻き込まれるという冒険小説なのですが、そこにヒロインをはさんで三角関係が繰り広げられるというロマンス風味が合わさった作品です。
 わりと正統派の冒険ロマンスなのですが、この作品を面白くしているのがノースモアというキャラクターの存在。人間嫌いで短気、口も悪いが情には厚いという複雑な性格です。激昂すると何をするか分からない怖さがありながら、積極性と勇気とも持ち合わせています。
 実際、流れ的に主人公カシリスとノースモアは味方になるのですが、二人の間が次にどうなるかわからない…という人間関係の強烈なサスペンスがありますね。
 なお、この作品の翻訳は、初出誌版によっているらしいのですが、後の版では普通の一人称の語りになっているのに対して、この初出誌版では、死の床の主人公が子供たちに妻との馴れ初めを語る…という語り口になっています。そのため主人公がヒロインと結ばれること、命を永らえることがわかった状態で物語を読むことになります。
 ただ、それがわかった状態でもサスペンスが途切れないのは、さすがに文豪スティーヴンソンというところでしょうか。

 邸に閉じ込められた青年が結婚を強要されるというロマンティック・サスペンス「マレトロワ邸の扉」、アイスランドを舞台にした民話風の怪奇小説「宿なし女」、捻りの利いた掌編集「寓話」、本邦初訳の掌編「慈善市」なども面白いですね。

 フランソワ・ヴィヨンをテーマにした「一夜の宿り」、陽気な芸人夫婦の冒険を描いた「神慮はギターとともに」に関しては、岩波文庫の『マーカイム・壜の小鬼 他五篇』で手軽に読めるのではありますが、原著の『新アラビア夜話』第二巻収録の四篇(「眺海の館」「一夜の宿り」「マレトロワ邸の扉」「神慮はギターとともに」)が日本語でまとめて読めるのは、現在この本だけだと思います。
 ちなみに原著の『新アラビア夜話』一巻には、有名な「自殺クラブ」「ラージャのダイヤモンド」が収められています。こちらの内容は、『新アラビア夜話』(南條竹則訳 光文社古典新訳文庫)で読むことができます。

 特筆したいのは、掌編集「寓話」全20篇が新訳で収録されているところです。全訳は1976年の牧神社刊『寓話』以来ではないでしょうか。集英社文庫から刊行された『スティーヴンソン ポケットマスターピース8』(2016年刊)にも一部が収録されているのですが、こちらは抄訳になっています。
 「寓話」中では間違いなく傑作といえるのが「エルド(老い)の家」

 民が皆足枷をつけている国に住む少年ジャックは、その境遇に不満を持っていました。旅人から足枷は「エルドの森」に住む魔法使いが作ったという話を聞いたジャックは、神が鍛えたという剣を手に「エルドの森」に向かいます…。

 怪奇幻想色の濃いヒロイック・ファンタジーといった趣の作品で、味わいとしてはロード・ダンセイニの短篇「サクノスを除いては破るあたわざる堅砦」などに似た感触です。ただ、かなりブラックな結末が待っており、不思議な味わいの短篇だと思います。

テーマ:怪談/ホラー - ジャンル:小説・文学

孤独と復讐  ステフェン・ギルバート『ウイラード』
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 ステフェン・ギルバート『ウイラード』(村社伸訳 角川文庫)は、孤独な青年が飼育したネズミを利用して犯罪に手を染めていく…というサスペンス作品です。

 かって社長だった父親のもと裕福な生活を送っていた「ぼく」は、父の死後零落し、かっての父の部下ジョーンズのもとで、一事務員として働いていました。家にネズミが出るということで、母親から駆除を頼まれた「ぼく」は罠をしかけますが、哀れみから彼らの命を助けます。
 「ぼく」になつくようになったネズミたちの中で、飛び切り知能の高い特殊なネズミが生まれ、「ぼく」は、そのネズミに「ソクラテス」と名付け特別に躾けます。やがて「ソクラテス」は仲間を率いて集団で行動するようになります。
 経済的に行き詰った「ぼく」はネズミたちを使い、食料や金を奪うようになりますが…。

 物語が始まった段階で、主人公の青年は非常に虐げられた環境に置かれています。家は経済的に没落しており、それにも関わらず母親のプライドから広大な屋敷は手放さずにいます。また父親のかっての部下ジョーンズは、主人公に対して屈折した感情を抱いており、安月給でこきつかっているのです。
 友人や恋人もいない主人公は、知能の高いネズミ「ソクラテス」と出会い、彼を親友とも思うようになります。やがて「ソクラテス」がネズミの群れをコントロールできることがわかると、彼らを使って盗難を繰り返すようになるのです。

 あらすじや表紙からは、ネズミが人間を襲うホラーのような印象を抱きがちなのですが、そういう感じではありません。確かに人間を襲うシーンもあることはあるのですが、それは一部で、大部分は屈折した青年がネズミとともに社会に復讐していく…という内容で占められています。
 その意味で、全体としては「ピカレスク小説」的な要素が強い作品だと思います。また、青年の犯罪計画の他、ネズミの飼育や躾けに対する試行錯誤、ネズミ飼育を周りに隠していることに対するサスペンスなど、いろいろ読みどころがあります。

 クライマックスに至るとホラー味もかなり強くなってくるので、ホラー小説として読んでも楽しめる作品かと思います。動物が人を襲うという、いわゆる「動物パニックもの」作品の中でも、ちょっと毛色の変わった作品で、一読の価値ある作品ではないでしょうか。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

幽霊探偵 in 1953
 死んでしまった主人公が幽霊となって(生き返って)、自分を殺した犯人を探すという、いわゆる「幽霊探偵もの」作品。現在ではそれほど珍しいテーマではありませんが、このジャンルの先駆的な作品とされる三作が、奇しくも全て1953年に発表されています。
 同じようなテーマを扱いながらも、その取扱い方にはそれぞれ工夫がされており、読み比べてみると、なかなか面白いものがあります。それぞれ紹介していきましょう。


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J・B・オサリヴァン『憑かれた死』(田中小実昌訳 ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
 タワー・シティの新聞でコラムニストとして名を馳せたピーター・パイパーは、ある夜自宅で飲んでいたところ、拳銃で射殺されてしまいます。しかし、その直後ピーターは自分が幽霊となって自分の体のそばに倒れていることに気付きます。
 犯人の顔を見ていなかったピーターは、自分を殺した犯人を見つけようと、家族や知り合い、警察の捜査などを観察して回ることになりますが…。

 幽霊が探偵するという、いわゆる「幽霊探偵」もの作品なのですが、1953年発表と、このテーマのものとしては非常に速い作例ですね。
 語り手ピーターは幽霊なので、物理的に何かを動かすこともできませんし、生者に話しかけることもできません。その意味でただ事態を傍観するだけの語り手ではあります。
 探偵役は別におり、ピーターの未亡人マリオンが捜査を依頼したスティーヴ・シルクという私立探偵、そして警察のタルボット警部が同時進行で捜査を行うのを、ピーターが見ていく…という構成になっています。

 面白いのは、この未亡人マリオンが非常に魅力的な女性で、タルボット警部と恋仲だったところをピーターの出現によって引き裂かれたという過去があるところです。ピーターとの仲が冷えていたマリオンが作った愛人フォウセットが殺人の容疑者となったことから、タルボットはフォウセットに憎しみを抱き、フォウセットを追い詰めていきます。それに危惧を抱いたマリオンは私立探偵シルクに依頼をすることになるのです。そしてシルクもまたマリオンに惹かれつつある…という設定。
 他にもマリオンの妹ベテイと彼女に恋する青年デレック、パイパー家の居候マーチン、ピーターの浮気相手ミッシェルなど、複雑な人間関係が事態を混乱させていきます。語り手のピーターもまた、それらの人間関係のドラマを見ながら、自らの人生について振り返るようになっていく…という人間描写の面白さがありますね。

 作品のトーン自体は私立探偵シルクを主人公としたハードボイルド調です。ただ、そこに幽霊の語り手というファンタジー的な要素を入れているにもかかわらず、作品のカラーが崩れていないのが面白いですね。そもそも幽霊とはいいながら、物理的に移動しなければ、他の場所の様子は窺えないし、幽霊だからといって、人の内面がわかるわけではありません。その意味で、ファンタジー的な要素を採用していても、そこに頼っていないしっかりした描写力の感じられる作品になっています。
 これは今でも読む価値のある作品といっていいのではないでしょうか。



死後 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 433)
ガイ・カリンフォード『死後』(森郁夫訳 ハヤカワ・ミステリ)
 世間の評価も高い作家ギルバート・ワースは、ある日、身内の人間が自分に対して殺意を抱いていることを知ります。最初に気がついたのは、階段の電球が切れ掛かっていることと、転びそうな場所におはじきが置いてあったこと。そして二度目は毒入りの牛乳でした。
 どちらも何を逃れたものの、最終的には書斎でうたた寝をしていたギルバートが気がつくと、目の前には拳銃で頭を吹き飛ばされ死んでいる自分の体がありました。幽霊になってしまったギルバートは、自分を殺したのが誰なのか、家族や知り合いの人間の様子を探ることになりますが…。

 幽霊になった男が探偵となって、自分を殺した犯人とその理由を探し求める…という物語です。ただこの作品、ミステリの叢書に入ってはいるものの、殺人の謎を論理的に解いていくというような感じではありません。
 語り手が幽霊となったことによって、人前では見せない人間の隠された本性を暴き立てていく…というような感じが近いでしょうか。イギリス作家らしい、皮肉なタッチのブラック・ユーモア小説となっており、メインは人間観察の面白さということになると思います。

 幽霊となった主人公ギルバートにしてから、利己的で尊大で自信家、あまり好きになれない人物ではあるのですが、ギルバートの殺人容疑者というべき家族や使用人、友人たちもまた、誰一人欠点を持たない人間はいないとばかり、ブラックな人物描写がなされていくのが特徴です。
 感情をほとんど表さない冷たい妻シルヴィア、作家志望の享楽主義者の長男ジュリアン、聖職者を目指す偽善者の次男ロバート、母親思いながら感情的な娘ジュリエット、ギルバートの愛人兼秘書の奔放なロジーナ、シルヴィアに横恋慕する友人ケントなど、登場人物はくせものばかり。使用人たちにしても、主人を悪く言うものばかりで、容疑者が絞り込めないぐらいであるのです。
 ギルバートの死後、家族たちの間で複雑な人間関係が起こりますが、特に目立つのはロジーナをめぐってのあれこれ。彼らの軋轢と葛藤を追うだけでも非常に面白い物語になっています。

 この『死後』、同テーマの作品であるJ・B・オサリヴァン『憑かれた死』と比較しても、なかなか個性が強い作品になっているように思います。面白いのはオサリヴァン作品の幽霊がわりと無色なナレーターであるのに対して、カリンフォード作品では、語り手の個性が強いことです。
 語り手ギルバートが非常に皮肉屋なのですが、そのシニカルな視線によって、人物たちがデフォルメされていきます。ただ、ギルバートが人々の動向を見ていくうちに、ある人間の善良な部分やそれまで気がつかなかった本音が垣間見れたりするところも面白いですね。

 犯人探しという意味では、わりとあっさりと決着がついてしまうのではありますが、思ってもみなかった展開があり、家族の葛藤が変わった形で解決される…というのも面白いところです。
 皮肉の効いた、文学性高めのブラック・ユーモア小説として一読に値する作品だと思います。



51番目の密室〔ハヤカワ・ミステリ1835〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
C・B・ギルフォード「探偵作家は天国へ行ける」(宇野利泰訳 石川喬司編『世界ミステリ全集18 37の短篇』早川書房 収録)
 52歳の有名な探偵作家アリグザンダー・アーリントンが気がつくと、彼は天国におり、天使長ミカエルと相対していました。てっきり心臓発作で死んだと思っていたアリグザンダーは、ミカエルから自分のs死因は殺人だと告げられショックを受けます。
 犯人がわからなければ天国には行けないというアリグザンダーに対し、ミカエルは、殺される前の12時間をもう一度過ごす機会を与えますが…。

 J・B・オサリヴァン『憑かれた死』、ガイ・カリンフォード『死後』と並び、1953年に発表された「幽霊探偵もの」の嚆矢となる作品です。
 この作品の場合、主人公はもう一度生き返っているので、厳密に言うと「幽霊探偵もの」とは言いにくいかもしれません。
 ただ、最終的に殺されると言う運命は逃れられないとされており、主人公ができるのは犯人を特定するために捜査をすることだけなのです。またその行動も大きく「運命」を外れることはできない…という設定も面白いところです。

 主人公の周りの人物が皆動機を持っている人物ばかりで、容疑者を絞り込むのが難しくなってきますが、ちゃんと論理的に犯人が特定されるなど、ミステリとしての枠はしっかりしています。
 主人公の行動を監視するミカエルから何度も電話がかかってくる、というのもユーモアたっぷりで楽しいですね。

 この「探偵作家は天国へ行ける」『37の短篇』から再編された二冊のアンソロジーの一つ『天外消失 世界短篇傑作集』(ハヤカワ・ミステリ)で、今でも読むことができます。



こわい部屋―謎のギャラリー (ちくま文庫)
ブライアン・オサリヴァン「お父ちやん似」(高橋泰邦訳 北村薫編『謎のギャラリー こわい部屋』ちくま文庫 収録)
 9つの少年の「ぼく」は近所の7つの少年マイケル・メイアーと仲良くしていました。マイケルの母親が病死したことから、「ぼく」の両親はマイケルの面倒を度々見ることになります。
 マイケルの父親メイアーが、見るからに体調を崩していくなか、ある日「ぼく」と遊んでいたマイケルはカウボーイごっこの最中に首吊りの輪を作り始めますが…。

 ついでに、J・B・オサリヴァンの息子ブライアン・オサリヴァンが9歳の時に書いたということで有名な短篇も紹介しておきましょう。
 子供の視点が上手く使われています。9歳で書いたとは思えないほど、完成された作品ですね。アンソロジーの『こわい部屋』に収録されていることからも予想がつくように、ちょっと「こわい」話でした。

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はじめまして
 はじめまして。このブログでは、自分が読んで面白かった本やCDを紹介したいと思います。まだ始めたばかりで、使い方がよくわからないので、その点はご容赦ください。今回は最初なので、僕の読書傾向を少し書きたいと思います。
 子どものころから、長編は苦手で短編集ばかり読んでいました。初めて読んだものから50冊くらいは、全部短編集だったんじゃないでしょうか。そして出会ったのが、早川書房の異色作家短編集です。この叢書の中では、ロアルド・ダールやスタンリイ・エリン、シャーリィ・ジャクスンなどを上位にあげる人が多いようですが、僕はロバート・ブロックやリチャード・マシスンといった作家の方が好みです。ダールやエリンのような、わかる人にはわかる、というハイブロウな味よりも、起承転結のはっきりした物語性の強い作品の方が好きなんですね。もちろんダールやエリンも好きですが。
 最近では、短編の復権の傾向があり喜んでいます。河出書房の奇想コレクションだとか、晶文社の晶文社ミステリなどは、往年の異色作家短編集を彷彿とさせる企画ですね。本家の異色作家短編集も復刊が始まっていて、一昔前の状態を考えると夢のようです。デイヴィッド・イーリイの単行本未収録の作品を読むために、ミステリマガジンのバックナンバーを一生懸命集めた日々が思い出されます。今ではイーリイは二冊も短編集が編まれていて、雑誌に埋もれた作品はあまり残っていないようですが。あとミステリマガジンで読んだ作家といえば、これも最近単行本が出たジャック・リッチーもいいですよね。多分単行本にはならないだろうけれど、いい作家はたくさんいます。ロバート・マクニア、ミリアム・アレン・デフォード、ジェイムズ・パウエルなど。そのうち雑誌に埋もれた作品の紹介もしたいと思いますので、どうぞよろしく。


プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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