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怪奇幻想読書倶楽部 第27回読書会 参加者募集です
怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫) 白魔(びゃくま) (光文社古典新訳文庫)
 2020年2月23日(日曜日)に「怪奇幻想読書倶楽部 第27回読書会」を開催いたします。若干名の参加メンバーを募集しますので、参加したい方がおられたら、メールにて連絡をいただきたいと思います。
 連絡いただきましたら、改めて詳細をメールにてお送りいたします。

お問い合わせは、下記アドレスまでお願いいたします。
kimyonasekai@amail.plala.or.jp


開催日:2020年2月23日(日曜日)
開 始:午後13:30
終 了:午後17:30
場 所:JR巣鴨駅周辺のカフェ
参加費:2000円(予定)
テーマ アーサー・マッケンと怪奇小説の巨匠たち
課題書
ブラックウッド他『怪奇小説傑作集1英米編1』(平井呈一訳 創元推理文庫)
アーサー・マッケン『白魔』(南條竹則訳 光文社古典新訳文庫)

※「怪奇幻想読書倶楽部」は、怪奇小説、幻想文学およびファンタスティックな作品(主に翻訳もの)についてのフリートークの読書会です。
※オフ会のような雰囲気の会ですので、人見知りの方でも安心して参加できると思います。
※「怪奇幻想読書倶楽部」のよくある質問については、こちらを参考にしてください。


 今回は、日本における怪奇小説アンソロジーの基本図書というべき『怪奇小説傑作集』の1巻とアーサー・マッケンの傑作集『白魔』を取り上げたいと思います。
 ブラックウッド、マッケン、M・R・ジェイムズの三大巨匠を始め、怪奇小説の代名詞的作品「猿の手」やリットン、ベンスン、レ・ファニュなど、名作中の名作が収められたセレクション。こちらに収められたマッケンの代表作「パンの大神」と合わせ、マッケン作品の魅力にも迫ってみたいと思います。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

怪奇幻想読書倶楽部 第26回読書会 開催しました
アメリカ怪談集 (河出文庫)
 2019年12月22日(日曜日)、JR巣鴨駅前のカフェにて「怪奇幻想読書倶楽部 第26回読書会」を開催しました。
 第一部は課題図書として、荒俣宏編『アメリカ怪談集』(河出文庫)を取り上げました。
 ポオ、ホーソーン、ヘンリー・ジェイムズから「ウィアード・テイルズ」で活躍したジャンル作家まで、バランス良く編まれた怪奇アンソロジーです。
 第二部では、毎年恒例の本の交換会を行いました。例年になく、持ち寄った本が量・質ともに充実しており、皆さん良い収穫を得られたのではないかと思います。

 今回は、この読書会が結成されてから三周年ということで、手製本として『怪奇幻想読書倶楽部 三周年記念小冊子』を作成し、参加者の方に配らせてもらいました。
 過去に参加してくださった方、常連として参加し続けてくれている方に感謝したいと思います。

 それでは、当日の会の詳細について、ご報告したいと思います。

 今回も、参加者全員のプロフィールをまとめた紹介チラシを作りました。チラシをPDFにしたものを、メールにて事前に配信しています。

 それでは、以下話題になったトピックの一部を紹介していきます。


■第一部 課題図書 荒俣宏編『アメリカ怪談集』(河出文庫)


●ナサニエル・ホーソーン「牧師の黒いヴェール」

・解釈が分かれる作品だと思うが、宗教的な背景があるのは間違いない。

・黒いヴェールは傲慢の罪の象徴? キリスト教、キングの『スタンド』でも似たようなモチーフがあった。

・周りの人間に罪を自覚させるために、牧師はヴェールをかぶった?

・不気味ではあるけれども、周りの人間がヴェールをかぶった牧師をそんなに怖がる理由がよくわからない。

・色が「黒」であることには意味がある? もし白だったり、他の色であれば意味合いが違ってくるのだろうか。

・ホーソーン『緋文字』の逆バージョンとも取れるのではないか。主人公の不倫相手が牧師なのだが、その罪がもしばれていなかったら、この「牧師の黒いヴェール」のような話になるのでは?

・牧師が過去に何か罪を犯したという具体的な描写でもあれば、分かりやすいのだが、そういう描写もないために、解釈に迷う作品となっている。

・ヴェールをかぶるに至る理由やきっかけも示されないのが不気味。

・ホーソーンの作品では「きず」がどこか似た印象を受ける作品。

・ヴェールによって「顔」を隠すというのが重要? 初めて読んだとき、梅毒にでもかかっているのかとも思った。

・牧師が死ぬ直前に捨て台詞のようなセリフを吐くのもどうかと思う。

・牧師は「言葉」によって神の言葉を伝える人のはずなのに、言葉以外のもの(ヴェール)によって語りはじめてしまった…という風にも見える。そういう意味では切ない話でもあるのでは。

・言葉では伝わらないものに気づいてしまった男の物語? この牧師のみが断絶を感じているのかもしれない。

・この世では顔を隠しているが、あの世の神の前では顔をさらす…という解釈もある?

・カトリックでは告解があるが、プロテスタントにはそれがない。牧師にも聞いてもらいたいという欲求があったのかもしれない。

・聞いてもらいたいけれども、話すこともできないという牧師の絶望が描かれている?

・ヴェールの下に真実の姿がわるわけではなく、人間は全てヴェールをかけており、またそれが本質?

・コッパードの短篇「おーい、若ぇ船乗り!」に服を脱いでいくと消滅してしまう幽霊が出てくるが、あれと似たものを感じる。


●ヘンリー・ジェームズ「古衣裳のロマンス」

・ジェームズとしてはわかりやすいゴースト・ストーリー。

・超自然現象よりも姉妹の確執の方がメイン?

・途中から財産目当てみたいな話になってしまうのがよくわからない。この時代としては衣装は財産と同等の価値のあるものという認識?

・結婚相手の男性としては、特に妹に執着していたわけではない? 姉と妹どちらでも良かったような印象を受ける。

・ジェームズの長篇『ねじの回転』は想像力を働かせないとわかりにくい話だった。ただのヒステリーの話とも読める。

・先妻が亡くなるときに後添えをもらわないでほしい…という話は、日本でもよくある。
・ジェームズの他作品に比べ、登場人物の感情や輪郭もはっきりしている。二時間サスペンスっぽい?


●H・P・ラヴクラフト「忌まれた家」

・ラヴクラフトとしてはマイナーな部類の作品だが力作だと思う。

・登場する怪物の正体がはっきりしないところがある。読んでいてスティーヴン・キングの『IT』を連想した。

・怪物に対抗しようとして、調査したり寝ずの番をしたりするシーンなど、どこかホジスンの「カーナッキもの」に近い印象がある。

・最終的に怪物を硫酸で倒すみたいな描写があるのがちょっと怪しい。

・結末はともかく、それまでの展開は結構怖い。

・アンソロジーの中ではかなり読みにくい部類の作品だった。

・前振りが長い。幽霊屋敷ものはもうちょっと導入部をさらっとやってほしい。

・最終的に怪物を倒せるという点で、ラヴクラフト作品としては珍しい。ラヴクラフトは作品は大抵、主人公が死ぬか発狂して終わるものが多いので。

・ラヴクラフト入門としては、新潮文庫から最近出たラヴクラフト傑作集がお薦め。
創元推理文庫の全集では、4巻、5巻、1巻あたりがお薦め。

・ラヴクラフト作品は、ただただ人間がやられるだけ、という話が多い。


●アルフレッド・H・ルイス「大鴉の死んだ話」

・インディアンの民話みたいな話。超自然現象自体は起こっていない?

・アメリカには大西洋から「妖精」は導入できず、代わりにインディアンやアフリカの人々の神話や文化がその役目を果たしている? ラテンアメリカっぽさもある。

・このアンソロジーの収録作家を見ていくと、主流のアメリカ文学史で取り扱われる作家とそれほどずれてこないというのが興味深い。

・アメリカ・ゴシックの研究書、八木敏雄『アメリカン・ゴシックの水脈』について。イギリスのゴシック小説がアメリカに移入されたとき、アメリカにはない要素の置き換えとして、大自然やインディアンの恐怖が登場するようになった。

・アメリカ・ゴシック作品では、イギリス作品におけるよりも主人公側が抵抗の姿勢を見せることが多い。ヒロインが出てくる場合でも、イギリス作品よりも主体性が強い。

・インディアンのモチーフが重要とはいいつつ、あまり怪奇幻想ジャンルで登場するものは見ることが少ないような気がする。ブラックウッド作品ではよく出てくるが、そういう意味ではブラックウッドはイギリスというよりアメリカ的な作家?

・インディアンであるとか、ヴードゥであるとか、アンソロジー全体に、編者がアメリカの怪奇幻想作品を網羅しようとする意思が感じられる。


●メアリ・E・カウンセルマン「木の妻」

・山間が舞台で、銃や車が登場したりと、アンソロジー内でも、読んでいてアメリカだと感じる要素が強かった。

・導入部は都会的なのだが、話が進むと19世紀のような暮らしをしている人たちが登場したりと、両極端な人々の差が現れているのが面白い。

・カウンセルマンの「七子」について。黒人の家庭にアルビノが生まれる物語。文明と非文明についての物語でもある。

・青年を殺してしまう父親は、ある種の名誉殺人? 娘に子供が出来ているのに父親は気付いていたのだろうか? 気付いていたら結婚式を挙げさせて私生児にはしないようにすると思うので、気付いていなかったのだと思う。


●ヘンリー・S・ホワイトヘッド「黒い恐怖」

・ブードゥーもの作品だが、ファンタジーというよりリアリスティックにそれを描いている作品。

・ホワイトヘッドはもっとファンタジー寄りの作品が多く存在するが、その中でわざわざリアルな要素の強いこの作品をアンソロジーに取っているというのが興味深い。

・結局ブードゥーが押さえられているので、キリスト教的な視点から描かれている感が強い。恐怖小説としてはあまり面白くない気がする。

・キリスト教に帰依したとしても現地の人にはブードゥーの信仰は残っていたりする。

・実際の魔術では、呪った相手に呪いをかけたことを伝えるらしい。それによって心理的に怖がらせる。

・過去に読んだドルイドもの作品で、髪の毛が呪いに使われるので落とさないようにする…という描写があった。


●メアリ・E・ウイルキンズ=フリーマン「寝室の怪」

・下宿の一部屋が異世界につながってしまうという物語。暗闇の中でだけ空間がつながらうという発想が面白い。

・下宿人が行方不明になる(異世界に行ってしまった?)のは、美しい女性を始め、そちらの世界に魅了されてしまったという解釈でOK?

・物語の最初と終わりに出てくる家主の夫人がすごく現実的な人物なのが面白い。

・山の中の妖精郷であるとか、たまたま異世界に遭遇するという話はよくあるが、この話のように条件を同じにすると毎回行ける…というのがシステマチックでSF的な発想だと思う。

・最後の方で「五次元」という言い方をしているが、無理に解釈づけなくても良かったような気はする。

・日本でもこういう空間的なアイディアを使った作品はある? 民話的なモチーフのものはある。「見るなの座敷」など。日本の話では空間が外に広がっていく感じ。

・暗闇の中で別世界に行くとどうなるのだろうか? 感覚的なもので世界を感じ取れるようになるのだろうか。

・ウイルキンズ=フリーマン作品に登場する女性は「強い」女性が多い。「南西の部屋」「ルエラ・ミラー」など。

・「ルエラ・ミラー」について。周りの人々の生気を吸って無意識に人を殺してしまう精神的吸血鬼の物語。

・物語自体が下宿の女主人について語られているので、内容が本当かどうかわからない?信用できない語り手ものとも読めるかも。

・ホール・ベッドルームについて。どういう部屋なのか調べてもちょっとわからなかった。廊下の突き当たりにある小さい部屋、という記述があった。当時の家としては小さい部屋?


●イーディス・ウォートン「邪眼」

・語り手は善人であるといいながら、実はその心の邪悪さが「眼」となって現れている?
・J・D・ベレスフォードの「人間嫌い」という作品を思い出した。

・「眼」によって人が死ぬわけではなく、邪悪さが現れているだけ?

・ブラックウッド「炎の舌」について。似た印象のある作品。ささいな悪口の繰り返しが地獄の罰になって帰ってくる話。内側に地獄がある?

・「邪眼」は本人の幻覚・妄想? 最後に第三者が目撃する描写があるので実在する?

・ウォートンは他の怪奇幻想ものでも、超自然現象が妄想や幻覚である可能性よりも、実在するとはっきり言ってしまう作品が多い。


●アンブローズ・ビアス「ハルピン・フレーザーの死」

・時系列が非常に難しい作品。場所に関しても今どこにいて、どこから来たのかもはっきりしないところがある。

・冒頭の引用文は作者の創作らしい。

・悪霊に憑かれた母親によって息子が殺される…という怪奇小説。クトゥルー神話ものとして分類されることもあるらしい。

・夢の中で殺された結果、現実に死んでしまったのか、悪霊に憑かれた母親の肉体は現存しているのか、など疑問点が多い。

・冒頭、男が森で起き上がる描写があるのだが、これはすでに男が死んでいるのか、それともこれから死ぬところなのか。

・クトゥルー神話ものの怖さについて。宗教的なものというよりも、物理的な巨大さからくる怖さがある。

・荒俣さんがどこかのエッセイで書いていたが「身近なものの恐怖」というのがあって、身内や親愛の情を抱いている人が怪物となって襲ってくる…というのは、単純に怪物が襲ってくるよりも怖い。スティーヴン・キング『ペット・セメタリー』など。


●エドガー・アラン・ポオ「悪魔に首を賭けるな」

・冗談小説みたいな作品。ポオには結構ユーモア小説的な作品もある。

・ユーモアということでは「使いつぶした男」がひどい発想の作品だった。


●ベン・ヘクト「死の半途に」

・過去の殺人の記憶に囚われる男の話。

・老婆は生きているが、登場する猫は幽霊? 猫は殺された被害者の飼い猫だと思うが、ちょっと邪魔をするのがわからない。


●レイ・ブラッドベリ「ほほえむ人びと」

・題材はB級だが、ブラッドベリならではの詩的な表現で成り立っている作品。

・サイコ・スリラー的な作品。死体を並べてずっとそのままにしているなど、主人公の精神状態はおかしくなっている。

・「十月のゲーム」など、ブラッドベリ作品はその「クサさ」が気になってしまうものもある。

・死体などグロテスクなものが出てきても、ブラッドベリは生理的不快感がほとんどなく美しく描かれることが多い。

・このアンソロジーの中ではちょっと浮いている感じがする。モダンすぎる作品?


●デヴィッド・H・ケラー「月を描く人」

・精神病院で狂った画家が絵を描く、というイメージが魅力的。

・登場する絵が魅力的なのだが、レイアウトが複雑で想像しにくい。

・作中に登場するホイッスラーの絵は実在するもの。

・母親が吸血鬼になって帰ってくる。母親への恐怖、女性への恐怖心が描かれている。

・絵に描かれた女性がだんだん古くなってくる…というのも、女性全体への恐怖を表している。

・映像化すると映える話だと思う。


■第二部 本の交換会

 持ち寄った本の数が多かった関係で、具体的なタイトルは省略させていただきます。すでに絶版・品切れになった本を多く持ってきてくれた方が多く、皆さん自分で持ってきたよりも多くの本を持ち帰れた人も多かったようです。タイトルや簡単な内容を紹介したりしたことをきっかけに、話がはずむこともありますね。
 毎年だいたい年末にやっている企画ですが、これは続けていきたいなと思っています。


次回「怪奇幻想読書倶楽部 第27回読書会」は、2020年1月26日(日)に開催予定です。テーマは、

課題図書:モーリス・ルヴェル『夜鳥』(田中早苗訳 創元推理文庫)

の予定です。

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怪奇幻想読書倶楽部 第26回読書会 参加者募集です
アメリカ怪談集 (河出文庫)
 2019年12月22日(日曜日)に「怪奇幻想読書倶楽部 第26回読書会」を開催いたします。若干名の参加メンバーを募集しますので、参加したい方がおられたら、メールにて連絡をいただきたいと思います。
 連絡いただきましたら、改めて詳細をメールにてお送りいたします。

お問い合わせは、下記アドレスまでお願いいたします。
kimyonasekai@amail.plala.or.jp


開催日:2019年12月22日(日曜日)
開 始:午後13:30
終 了:午後17:30
場 所:JR巣鴨駅周辺のカフェ
参加費:2000円(予定)
テーマ
第一部:課題図書 荒俣宏編『アメリカ怪談集』(河出文庫)※読む本は旧版でも構いません。
第二部:読書会結成三周年企画 本の交換会

※「怪奇幻想読書倶楽部」は、怪奇小説、幻想文学およびファンタスティックな作品(主に翻訳もの)についてのフリートークの読書会です。
※オフ会のような雰囲気の会ですので、人見知りの方でも安心して参加できると思います。
※「怪奇幻想読書倶楽部」のよくある質問については、こちらを参考にしてください。


 今回は、アメリカの怪奇幻想小説を集めたアンソロジー、荒俣宏編『アメリカ怪談集』を取り上げたいと思います。ポオやホーソーンを始めとして、ビアス、ラヴクラフト、ブラッドベリまで、時代的にもバランスの取れた傑作集です。アメリカ怪奇小説の魅力について話していきたいと思います。

 第二部では、本の交換会を行います。処分してもいい本を持ち寄り、他の人の本と交換しようという趣旨の企画です。お持ちいただくのは何冊でも構いません。ジャンルは特に怪奇幻想にこだわらなくても結構ですので、ご自由にお持ちください。
 処分する本が特にない場合は、お持ちいただかなくても構いません。もらうだけでも結構です。

※2019年12月2日追記 定員になりましたので、第26回読書会の募集を締め切らせていただきました。

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怪奇幻想読書倶楽部 第25回読書会 開催しました
幽霊島 (平井呈一怪談翻訳集成) (創元推理文庫)
 2019年10月22日の火曜日(祝日)、JR巣鴨駅前のカフェにて「怪奇幻想読書倶楽部 第25回読書会」を開催しました。
 今回は課題図書として『幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成』(創元推理文庫)を取り上げました。平井呈一は、日本の怪奇幻想小説翻訳ではビッグネームといってよい存在です。その翻訳の魅力を初めとして、取り上げられた作家の作品についてや、周辺領域の文化や思想についてなども含め、幅広い話題が出たように思います。

 それでは、当日の会の詳細について、ご報告したいと思います。

 今回も、参加者全員のプロフィールをまとめた紹介チラシを作りました。チラシをPDFにしたものを、メールにて事前に配信しています。

 それでは、以下話題になったトピックの一部を紹介していきます。


・作品集の前半は、派手めな吸血鬼ものが多かったこともあり割と読みやすかったが、後半は長めの作品が続いていて、ちょっと読みにくいところもあった。

・解説で平井呈一の生涯を知って、永井荷風との関係を初めて知ってびっくりした。

・平井呈一の創作『真夜中の檻』はなかなか面白かった。小説での作風はマッケンぽい感じがする。

・エッセイで紹介されている作品を見渡すと、後年、平井自身の翻訳を含め、日本に紹介されてきた作品が多く、戦後日本の怪奇幻想小説紹介史につながっていくんだなあという感じがした。

・奇しくも同時期に出た『幻想と怪奇傑作選』で同人誌「THE HORROR」が復刻されていて、平井呈一の文章は『幽霊島』収録のものとかぶっているものが多い。「THE HORROR」は古書店で売っているのを見たことがあるが、結構大きい判型の雑誌だった。

・「幻想文学」誌の「THE HORROR」復刻特集について。「アーサー・マッケン特集号」に最初に復刻版が掲載された。同号には平井呈一の小特集もあった。

・平井呈一の翻訳には、ここにこんな訳語を持ってくるのかという面白さがある。語彙のポテンシャルが深い。女性のセリフが伝法なのか上品なのかわからないところも面白い。

・デ・ラ・メア「失踪」の平井呈一訳について。関西弁で訳したという変わり種の作品。「わて」や「でんがな」のインパクトは強烈。

・平井呈一役のエラリイ・クイーン『Yの悲劇』(講談社文庫)について。江戸っ子口調で訳されている変わり種翻訳。


●H.P.ラヴクラフト「アウトサイダー」

・ポオ作品の影響が濃い?

・世界観がわかりにくいところがある。地下に世界がある?

・主人公は死者(ゾンビ的な存在)なのか? 怪物(生者)?もしくは幽霊?

・キリスト教的に考えると、死者だと思う。キリスト教的な「復活」の前に蘇った人ではないか。

・主人公に記憶がないが、人間的な行動をしているので、やはり「怪物」ではなく人間だと思う。

・二目と見られぬ容貌の普通の人間が、地下に監禁されているという話かと思った。

・主人公が幽霊のような存在と触れあう…という描写があり、人間世界に受け入れられなかった主人公が最終的に孤独ではないと自覚する、という解釈もできるのではないか。

・ポオの「影」という作品の引用のような部分がある。

・平井呈一訳はちょっと気取りがあって、ラヴクラフトには合わないかも。


●アルジャーノン・ブラックウッド「幽霊島」

・家に侵入してくるインディアンのような男たちは、幽霊なのか実在の人間なのか? どちらとも取れるような書き方をしている。

・男たちが引きずっている死体(?)の顔が語り手の顔になっている、というのは、霊現象なのか、それとも主人公が幻影を見ているのだろうか? いろいろ考えると矛盾点があったりするのだが、それを含めて面白い作品ではある。

・主人公の幻覚だとすると、どこからが幻覚なのだろうか? 死体の顔が自分になっているのは、未来のビジョン?

・主人公が、最初から部屋に対して恐怖感を覚えているので、超感覚的な力が強い人だと思う。

・主人公が初めから死んでいるという解釈も成り立ちそう。

・地元のおじいさんと会っているという描写もあるので、主人公が死んでいるという解釈は難しいと思う。

・インディアンたちの白人世界に対する「グローバルな因縁話」? それがブラックウッド特有の自然観と結びついている作品ではないか。

・民族的な因縁の恐怖を描いた作品?

・「家」自体の持っている記憶が再現された話の可能性もある。

・もし過去に惨劇があったとして、その詳細を描かないので「因縁」がわからず、単純な因縁話にならないのはブラックウッドの手腕だろうか。

・ブラックウッドは、大自然の小島が舞台になる作品が多い。大自然に一人、というシチュエーションがすでにして怖い。

・古い怪談話では、学生が一人で田舎に勉強に行く、というシチュエーションが結構多い気がする。


●ジョン・ポリドリ「吸血鬼」

・吸血鬼ものの古典。

・ドラキュラもそうだが、吸血鬼は「約束」とか「ルール」にこだわる傾向が強い。

・主人公が徹底的に痛めつけられている。すごく一方的。

・吸血鬼はバイロンを現しているという説もある。

・平井呈一のこの作品に対する評価はかなり厳しい。

・弱点も明かされず、一方的に消えてしまう…というのが今読むと逆に斬新に感じる。

・吸血鬼が日の光の下でも普通に動いている。


●E・F・ベンソン「塔のなかの部屋」

・集中でもかなり怖い作品。後半よりも前半の夢の部分の方が怖い。

・近年出たアトリエサードのベンスン怪談集の訳と比べると、わかりにくい部分はある。ただ雰囲気は非常に出ていると思う。

・実際に怪現象に遭遇するシーンになると、妙に客観的な視点になるのも面白い。

・「夢日記」的なモチーフが感じられる。ただ夢にしては理路整然としている。

・ジャックという友人は実在しているのだろうか? 夢の中だけに出てくる独自の人物? 夢の中で、実際に嫌いだった人物の姿を借りているのかもしれない。

・『デミアン』の逆バージョン?

・作中に登場するストーン夫人には「グレート・マザー」の趣もある。

・ベンスン作品では、嫌な予感がしてもそのまま主人公が突き進んでしまうことが多い。恐れつつも惹かれる…というのは、ベンスン作品の重要なモチーフかもしれない。


●F・G・ローリング「サラの墓」

・ストレートな吸血鬼ホラー作品。かなり典型的。

・これは死後になって吸血鬼になったタイプ?

・最後にちょっと不安を残して終わる…という終わり方が定番だが楽しい。

・最後に出てくる女の子は家畜に噛まれた?

・直接語り手が語るのではなくて、手記を通じて語られるというのも典型的。

・墓を動かすというのがいまいちイメージしにくかった。別に新しい穴を掘ってそこに棺ごと動かすというイメージ?

・死体が原型をとどめているという描写があるが、土葬にしてミイラ化したりするのは一般的なのだろうか? ヨーロッパの地方によってはそうなりやすいところもあるらしい。

・同じキリスト教でも、カトリックでは腐らない死体は聖人扱いだが、正教系では魔物扱い?


●F・マリオン・クロフォード「血こそ命なれば」

・前段で語られる塚の上の霊現象は印象的。

・吸血鬼になる娘が生前愛していた男を呼び寄せるなど、メロドラマ感がちょっと強い。日本の幽霊ものと似ている感じもする。

・クロフォード作品は全般的にロマンス要素が濃い。


●W・F・ハーヴェイ「サラー・ベネットの憑きもの」

・生者と死者のそれぞれの孤独と断絶を描いた作品?

・サラーの旦那はかなりひどい人物。旦那の霊は救われていない気がする。

・「炎天」もそうだが、ハーヴェイ作品は暗示にとどめる描写が多い。

・「炎天」の最後に人が殺されるのではないかと推測させる描写は上手い。

・文章を書く課題について。小説講座で、死体を出さずに死体があるかのように感じさせる文章を書くという課題があったらしいが興味深い。


●リチャード・バーラム「ライデンの一室」

・黒魔術テーマの作品。錬金術? 黒魔術?

・青年は悪魔と契約している? 真相がはっきり描かれないのも怖い。

・当時としてはオランダ・ライデンは科学研究の最先端地域。

・娘の髪の毛は呪いに使われている? 生け贄?

・語りの構成が多重になっていて、誰が誰について話しているのかわかりにくい。

・語り手の個性が強いのも気になる。連作のエピソードの一つというのも関係しているのだろうか。


●M・R・ジェイムズ「若者よ、笛吹かばわれ行かん」

・呪いのアイテムにより怪現象が起こる話。

・妙なユーモア感がある。出てくる怪物もどこか弱々しげな印象。

・『イギリス怪談集』収録の翻訳の方がユーモア感がよく出ている。序盤で主人公が同僚がからかわれるシーンがあるのだが、平井訳ではそのあたりがよくわからなくなっている。

・ジェイムズは紀田順一郎訳の方が読みやすい印象。


●J・D・ベリスフォード「のど斬り農場」

・怪奇小説ではない解釈も可能な作品? かってに事態を解釈して逃げ出す男の物語としても読めるのでは。

・作中に出てくる「メモ」は語り手が書いたもの? それとも別の人間が書いたもの? 農場で過去に犠牲になった人物のものかと思った。

・平井呈一は直感的な部分が強くて、英語の文法はよくわかっていなかった、という話もある。

・結末の一文は原文ではどうなってるのだろうか?

・原文がわからないので何とも言えないが、ユーモア小説として書かれている可能性もある?

・どんどん家畜や人物がいなくなってくる…というシチュエーションは確かに怖い。

・これは当時としては「怪談」として分類するには微妙なラインの作品である気がする。平井呈一はこの作品やハーヴィー「炎天」のような作品が好きだったようだが、都筑道夫がかってアンソロジー『幻想と怪奇』で、本来怪談とはされていなかった、カポーティ「ミリアム」やスタインベック「蛇」といった作品を怪談だと解釈して収録したのと通じるところがあるような気がする。

・タイトルからして怖い。作中でつけられたあだ名にしても悪意のあるあだ名の付け方だと思う。


●F・マリオン・クロフォード「死骨の咲顔」

・ゴシック小説感が強い。超自然現象はそれほど重要ではなく、一族と恋人たちの行方がメインになっている。

・父親が隠している秘密は、今の読者ならすぐにわかってしまうと思う。

・乳母が得体が知れなくて怖い。

・ハッピーエンド? 妙に結末が爽やか。

・一族の呪いをテーマにした作品のバリエーション。

・長篇『プラハの妖術師』も面白かった。ロマンス味の強い神秘小説。

・クロフォードはロマンス味が強く甘い作風だと思うのだが、平井呈一は意外にロマンス味のある作品が好き? 創作の「真夜中の檻」「エイプリルフール」も一種の恋愛ものだった。


●シンシア・アスキス「鎮魂曲」

・先祖の霊に憑依される女性の話。

・語り手は女性が憑依されているのに気付いていない? 医者であることもあり、少なくとも憑依の事実は信じていないようだ。

・当時の精神病理学的な知識が反映されているように思う。呼吸困難になるシーンなどはヒステリーの症状ではないか。

・先祖のことを知識として知ったヒロインが先祖のふりをしている…という解釈も可能?本当に霊に憑かれていたのか、二重人格だったという解釈もできる。


●オスカー・ワイルド「カンタヴィルの幽霊」

・「カンタヴィルの幽霊」では、BOOKS桜鈴堂さんの翻訳がすごく読みやすくて良かった。

・これは平井訳が非常に合っていたように思う。元々サッカレーなども訳している人だから、ユーモア小説には親和性が高いのかも。

・アメリカ人家庭から中盤で幽霊に視点がずれるのが面白い。幽霊の衣装や当たり役がいろいろ出てくるのもおかしい。

・この作品の幽霊は物理的に接触できているのが面白い。

・アメリカの研究者の論文によると、アメリカ人家庭の娘と幽霊との間に性的な接触があったのではないかという説があるらしい。

・アメリカ的なものとイギリス的なものとの混合?

・アメリカ人を馬鹿にしている感覚があるが、当時のアメリカ人はこれを読んで怒らなかったのだろうか。


●平井呈一、生田耕作 対談「恐怖小説夜話」

・平井呈一の手前、普段はちょっと偉ぶっている生田耕作が割と下手に話しているのが印象的だった。

・編集者はゴシックの話をしてほしがっていたようだが、二人はどんどん翻訳論の話になってしまっているのが面白い。

・二人の評価が高いのは『オトラント城』『ヴァテック』『フランケンシュタイン』あたり。それぞれ『オトラント城』『ヴァテック』の訳者なので、評価が高いのも当然?

・『オトラント城』は、そんなに傑作だろうか? 歴史的評価は別として、どちらかというと『ヴァテック』の方が今でも傑作であるように思える。

・結構けなしているものが多いが、この対談を読んでゴシック小説を読みたいと思う読者がいるのだろうか。

・『オトラント城』は講談社文庫、『ヴァテック』は角川文庫にかって翻訳が入っていたことがある。

・『オトラント城』の翻訳の種類について。平井呈一の現代語訳、古典語訳の他、講談社文庫、国書刊行会など。近年出た研究社版もある。

・クララ・リーヴ『イギリスの老男爵』について。ゴシック的な部分よりも、財産分与の話がやたら長くて閉口した。

・アン・ラドクリフ『ユドルフォの秘密』について。ゴシック小説の代表的な作品だが、未だに翻訳がないので、読んでみたい作品。『赤毛のアン』にも『ユドルフォ』を読んでいるシーンがある。ラドクリフは『イタリアの惨劇』が面白かった。少女漫画の原型的な作品?

・現代の「ゴス」趣味を考えても、ゴシック小説が今なら受けるような気がする。

・チャールズ・ブロックデン・ブラウン『エドガー・ハントリー』について。非常にアクション要素が強く活動的なゴシック小説。主人公がインディアンと格闘したりする。

・メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』について。ゴシック小説の中で、これは飛び抜けた作品だと思う。

・ヤン・ポトツキ『サラゴサ手稿』について。完訳はいつ出るのだろうか? 以前刊行予告が出たときは文庫の予定だったようだが、文庫で出たとしたらやたらと厚い本になるのでは。

・『サラゴサ手稿』の映画化作品について。入れ子状の構造がすごい作品だった。

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怪奇幻想読書倶楽部 第25回読書会 参加者募集です
幽霊島 (平井呈一怪談翻訳集成) (創元推理文庫)
 2019年10月22日(火曜日・祝日)に「怪奇幻想読書倶楽部 第25回読書会」を開催いたします。若干名の参加メンバーを募集しますので、参加したい方がおられたら、メールにて連絡をいただきたいと思います。
 連絡いただきましたら、改めて詳細をメールにてお送りいたします。

お問い合わせは、下記アドレスまでお願いいたします。
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開催日:2019年10月22日(火曜日・祝日)
開 始:午後13:30
終 了:午後16:30
場 所:JR巣鴨駅周辺のカフェ
参加費:2000円(予定)
テーマ
課題図書
『幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成』(創元推理文庫)

※「怪奇幻想読書倶楽部」は、怪奇小説、幻想文学およびファンタスティックな作品(主に翻訳もの)についてのフリートークの読書会です。
※オフ会のような雰囲気の会ですので、人見知りの方でも安心して参加できると思います。
※「怪奇幻想読書倶楽部」のよくある質問については、こちらを参考にしてください。


 今回は、怪奇幻想小説の名訳者として知られる平井呈一の怪奇小説翻訳を集めたアンソロジー『幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成』を課題書として取り上げます。
 個々の作品だけでなく、英米の怪奇幻想小説や平井呈一の翻訳についても話していきたいと思います。

※2019年10月10日追記 募集を締め切らせていただきました。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

怪奇幻想読書倶楽部 第24回読書会 開催しました
特別料理 (ハヤカワ・ミステリ文庫) さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)
 2019年9月22日の日曜日、JR巣鴨駅前のカフェにて「怪奇幻想読書倶楽部 第24回読書会」を開催しました。
 今回のテーマは「異色短篇の愉しみ」。課題図書として、スタンリイ・エリン『特別料理』(田中融二訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)とフレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい』(星新一訳 ハヤカワ文庫SF)を取り上げました。
 両書とも、もともと<異色作家短篇集>の一冊、「異色短篇」という共通項はあるものの、エリンの部ではミステリ寄り、ブラウンの部ではSF寄りと、範囲的にも幅広い話題が出て、バラエティに富んだ会になったのではないかと思います。

 それでは、当日の会の詳細について、ご報告したいと思います。

 今回も、参加者全員のプロフィールをまとめた紹介チラシを作りました。チラシをPDFにしたものを、メールにて事前に配信しています。

 それでは、以下話題になったトピックの一部を紹介していきます。


■第一部 課題図書 スタンリイ・エリン『特別料理』(田中融二訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)

・再読しても面白い短篇集。むしろ再読の方が味わいが増すのでは。

・エリンは意外とアイディア自体はシンプルなものが多い。ただ小説技術の上手さで読ませる。

・短篇「ロバート」について。オールドミスの教師が得体の知れない少年に自殺に追い込まれてしまう物語。エラリイ・クイーンから掲載を断られた唯一のエリン短篇。確かにあまりエリンらしくない感じはある。

・エラリイ・クイーンがエリンを評価したのはすごいと思う。全然作風が違う作家を評価できるのはクイーンの懐の広さを感じる。

・海外ミステリ作家の顔や書斎を紹介した本『推理作家の発想工房』(南川三治郎)の紹介。エリンの素顔も紹介されている。苦労人らしい味わいのある写真。

・藤子不二雄はエリンが好きらしい。藤子作品の主人公として良くサラリーマンが出てくるのはエリンの影響かも。例えば『笑ゥせぇるすまん』はエリンぽい。

・仄めかしオチの作品について。このタイプの話が受け付けない人がたまにいる。

・エリンの長篇作品について。どれもジャンルは異なれど、短篇に比べてストレートな作品が多い。エンタメ作品としてお薦めなのは『バレンタインの遺産』と『カードの館』。

・エリンと似た作家はいる? 基本的にはいないといっていいが、方向性が近い作家としては、ディヴィッド・イーリイやパトリシア・ハイスミスの一部の作品は近いのでは。ジェラルド・カーシュやジョン・コリアなども、似ている部分はあるかもしれない。

・ミステリの死体処理法について。溶かす、食べる、冷凍庫に保管する、など。この手のテーマでは阿刀田高「干物と漏電」が面白かった。

・シャーリイ・ジャクスンの短篇集『くじ』について。短篇「くじ」以外の作品は印象が薄かった。「くじ」は本当に嫌な話。


●「特別料理」

・オチがわかっても楽しめる作品だと思う。描写そのものを楽しむ作品?

・ブックガイドや他の本でオチまで紹介されてしまったことがある。

・作中で失踪した画家についてのエピソードがあるが、これは恐らくアンブローズ・ビアスを仄めかしているのだと思う。

・料理の描写が非常に上手い。

・作中で「食べられてしまった」人物は年配のような感じだが、その肉はおいしいのだろうか? 料理法が上手いので、おいしいのではないだろうか。

・ある程度店に通わせて「肉付き」を良くするというのは意図的なのかもしれない。

・リチャード・マシスンにも同じようなテーマの作品があった。

・デビュー作とは思えない上手さ。

・綾辻行人『眼球綺譚』にも「特別料理」からインスパイアされたらしき話があった。

・「特別料理」はエリン作品の中でもかなりの異色作? 仄めかしが多い。他の作品では結構はっきりとした描写が多いように思う。

・ダンセイニ「二壜の調味料」について。「特別料理」と並ぶこの手のテーマの名作。

・「人肉」アンソロジーはあるのだろうか? 日本では『猟奇文学館 人肉嗜食』というアンソロジーがあった。

・料理をテーマにしたアンソロジーについて。アイザック・アシモフ編『16品の殺人メニュー』、ピーター・ヘイニング編『ディナーで殺人を』など。

・そういえば料理テーマの作品は、ディナーが多い気がする。モーニングは少ないのではないか?

・現実に起きたカニバリズム事件について。中国やドイツの事例など。


●「お先棒かつぎ」

・「お先棒」という言葉を知らなかった。「お先棒をかつぐ」という表現で、誰かの手先になって働く…というような意味らしい。意味がわかると、非常に上手い邦題。

・エリン作品に登場する求職中の人物は非常にリアリティがある。実体験が反映されているのだろうか。

・寡作だったことを考えると、それほど作家業で資産を築いていたような作家ではないと思う。その点、作品を読んでいても、非常に現実をシビアにとらえている人なのでは。

・殺人が行われたらしいのだが、その現場自体は描かないのがスマート。

・主人公はお金が欲しいということはもちろんだが、それ以上に「安定した環境」を求めている…というタイプの人物だと思う。

・雇い主が主人公にやらせている仕事が無駄だと明かす必要はないのでは? わざわざモチベーションを下げるのは何故? とことん馬鹿にした上でもなお命令に従う人物だと考えているということかもしれない。非常に意地悪な話。

・フィクションによくある、いわゆる「資料室勤務」みたいな仕事は実際にあるのだろうか? 現実ではあまり聞いたことがない。


●「クリスマス・イヴの凶事」

・憎み合う姉弟を描く物語。

・延々と繰り返される憎悪の恐ろしさを描く作品?

・途中まで読んでいて、語り手の弁護士が何度も惨劇を繰り返すというループものかと思った。

・アメリカ南部が舞台? フォークナーっぽい話。姉弟が憎み合いながら離れないのは「家」への執着かも。

・弟の妻の死が本当に事故であったとしたら、更に救われない話では。

・舞台は現代なのだろうが、古い時代でも成立する話な気がする。


●「アプルビー氏の乱れなき世界」

・次々と妻殺しをする男の物語。ブラック・ユーモア味が強い。

・エリン作品で犯罪を犯す人物は、金や富自体が欲しいというよりは、自分の世界を守りたい・維持したい…というタイプの人物が多いように思う。

・綺麗にまとまっている作品。

・オチが楽しい。

・海外ものにはよくある「妻殺し」もののバリエーション。

・妻の方も夫を何人も殺しているのかと思った。

・夫の過去の殺人を知りながら結婚している妻は怖い。

・ダール監修のドラマシリーズで映像化されていた。


●「好敵手」

・チェスの一人遊びをしている内に、自分の深層心理が分身として現れるという話。

・凶暴な人格に最後は乗っ取られてしまった?

・本人格(ジョージ)より凶暴な人格(ホワイト)の方がチェスが少し上手い、というのが面白い。これはジョージの普段の遠慮がちな性格のせいで全力を出し切れない、ということだろうか。

・普段抱いている奥さんに対するささいな悪意が巨大化した?

・エリンの描く登場人物は男も女も嫌な性格の人が多い。あまり「善人」が出てくる作品が思い浮かばない。

・エリンの描く世界はせまい範囲のことが多い。一つの家や家族だけ、など。あまり外に広がっていく感じはないように思う。

・現代のネット社会では少なくなってきたタイプの物語だろうか。


●「君にそっくり」

・育ちのよい青年の真似をして上流階級の振る舞いを身につけた青年が成り上がろうとするが墓穴を掘ってしまう…という物語。

・社長や令嬢が気に入った主人公の青年の振るまいの元が、そもそも手癖が悪くて感動した息子から来ている…というのが皮肉。


●「壁をへだてた目撃者」

・主人公が善人なのが、エリン作品としては珍しい。

・原題が「裏切り者」というような意味で、非常によく出来たテーマの作品。裏切られつづけた女性を最後に「裏切る」のが、その女性を助けようとした主人公だった…という皮肉の効いた作品。

・叙情性があったりと、ちょっと日本のサスペンス番組みたいな趣がある。

・描ききこんでいくと長篇にもできそうなテーマをさらっとまとめているのがすごい。

・ウィリアム・アイリッシュっぽさもある。


●「パーティーの夜」

・エリンには珍しい、超自然的要素のある作品。

・「ループ」する物語なのだが、短篇集を順番に読んでいると、ここで超自然味が急に出てくるので、一瞬話がわからなくなる。

・実は主人公は死んでいるのでは? 昏睡状態などで死の寸前の可能性も?

・主人公が現実に適応できない人物で、何事からも逃げようとしている。

・主人公が逃げることをやめ、現実を認めないと「ループ」から逃げられない…という話?

・作中に登場する医師は超自然的な人物? 神や審判者みたいな役割なのだろうか。


●「専用列車」

・妻の愛人を事故に見せかけて殺そうとする夫の話。かなりストレート。

・結末のひっくり返しのシーンは印象的。

・悪くないのだが、シンプルなだけにエリン作品としてはどうかな…という気もしてしまう。


●「決断の時」

・謎が謎のままで終わる「リドル・ストーリー」

・この作品が最後に収録されているのは気が利いている。配置的に絶妙。この短篇集中では、「特別料理」かこの「決断の時」が最後にくる配置がいいと思う。

・結末に至るまでの人物や人間関係の描写が非常に上手い。キャラクターの掘り下げが濃い。

・対立する二人が、イギリス人とアメリカ人のある種のタイプを象徴している。


■第二部 課題図書 フレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい』(星新一訳 ハヤカワ文庫SF)

・星新一の影響からブラウンを読み出したという人も多い。

・ブラウンは日本SFに強い影響を与えたがゆえに、日本のSF作品を読み慣れた目から見ると、逆に古く見えてしまう面もある。

・ショート・ショートは星新一と見分けがつかないぐらい。面白いのだが、タイトルと内容が結びつかないことがある。ちょっと長めの短篇の方が印象が強い。

・全体に暗いトーンの作品と明るいトーンの作品がある。

・短篇「闘技場」について。ブラウンの傑作の一つだと思う。登場する「赤い球」の「赤」は共産主義のメタファーかも。

・長篇は今読むと、ちょっと引き延ばし感がある。

・長篇『73光年の妖怪』について。宇宙人が地球の生物に憑依してくるという物語。地球人と宇宙人の知的対決が面白い。

・星新一の連作『ノックの音が』について。ブラウンの「ノック」から影響を受けた作品。

・読んでいて、星新一作品で似たものを思い浮かべてしまう。

・ロバート・ブロック編『フレドリック・ブラウン傑作集』(サンリオSF文庫)は非常に良いセレクションの傑作集。代表作がほとんど入っている。

・ブラウンはショート・ショートにも面白い話がたくさんある。「唯我論者」「黄色の悪夢」「こだまガ丘」など。

・短篇「星ねずみ」について。宇宙人に知能を上げてもらったねずみの物語。名前といい設定といい、ミッキーマウスのパロディーなのだが大丈夫なのだろうか。

・ディズニーの著作権に関するしばりはきついらしい。比べるとサンリオはすごいと思う。

・シャーリイ・ジャクスン作品の映画化の話について。「くじ」や「ずっとお城で暮らしてる」の映画化の話があったが、どうなっているのだろうか? 実際に原作のトーンがずっと続くとすると、すごく嫌な作品になるのでは。

・リチャード・マシスンの映像化について。『リアル・スティール』『運命のボタン』『アイ・アム・レジェンド』『激突!』など。短篇の映像化は長編映画にするのは難しい。『運命のボタン』はわけのわからない映画になっていた。

・ブラウンのミステリ作品について。ストレートすぎて今読むには微妙な作品もあるが、先駆的なアイディアを使ったものも。ミステリ系では短篇集の方が面白い。

・エドガー・アラン・ポオの影響がある作家について。ロバート・ブロック、ラヴクラフトなど。ブロック「ポオ収集家」は面白い。


●「みどりの星へ」

・不時着した惑星で宇宙飛行士が脱出のために彷徨うという話。

・この作品でもそうなのだが、昔のSF作品の惑星というのは、大抵熱帯風でジャングルがあるという設定が多い。これは食料や生き延びるために好都合、という面もあるのだろうか。

・救出に来た人間に話を聞いた途端にぱっと幻想から覚めるというシーンは印象的。

・星新一っぽい話。話そのものは違うが「処刑」という作品に印象が似ている。

・星新一が「孤島マンガ」を集めていたというエピソードも何となく関連がありそうで興味深い。


●「ぶっそうなやつら」

・精神病院から脱走した狂人をめぐる話。

・ユーモアたっぷりで、シチュエーション・コメディっぽい。

・疑心暗鬼の囚われた人間同士という設定が面白い。筒井康隆にも似たような話があった。

・駅舎という舞台設定も興味深い。見知らぬ者同士が集まるという意味で使われることが多いのだろうか。

・ホラー映画『ダークレイン』について。駅舎で見知らぬ者同士が集まるというシチュエーションが使われていた。


●「おそるべき坊や」

・奇術師のふりをしていた悪魔の復活を子供が止める…という話。

・星新一が、日本人には悪魔の存在が馴染みが薄いので解説を加えているらしいとのこと。


●「電獣ヴァヴェリ」

・電気を食べる異生物のせいで、電気が使えなくなった世界を描く物語。

・電気が使えないため蒸気機関が活躍するということで、「スチームパンク」の早い例と捉える事も可能?

・怪物を倒す…という展開ではなくて、倒すのは無理だから現状に適応する…という発想が面白い。

・怪物の意思がはっきりしない。自然災害に近い感覚だろうか。

・電気がなくなって、エコになった世界が良い社会として描かれている。ちょっと牧歌的。

・タイトルは怪獣ものっぽい。短篇集の表題作にしたら勘違いして買いそう。


●「ノック」

・人類が滅亡寸前なのに明るいトーンの作品。

・書き出しの勝利といっていい作品。

・文化や感性が全く違う異星人と人間との行き違いという部分も面白い。

・世界が狭い「セカイ系」作品と似たものを感じる。

・宇宙人と簡単にコミュニケーションを取れる、というのは今読むとちょっと不自然に感じることも。現代SFではそのために言語学者が登場したりと、リアルさを求められる傾向がある。

・フィクションの異星人があまりに人間と異なりすぎると話が難しくなる(スタニスワフ・レムなど)。ある程度は通じるものがないと面白くないのでは。

・「異世界転生もの」について。念じるだけで異世界に行けるエドガー・ライス・バローズ作品の遠い子孫? ジャック・フィニィ式のタイムトラベルも思い込みで過去に行くという面で面白い。SFファンだと、異世界に飛ぶ過程がすごく気になる。

・日本SFは伝統的に幻想・ファンタジー味が強い? ハードSF派が中心になると官僚的になってしまう傾向があるのでは。

・ブラウンは作品の肉付けよりも骨組みで勝負しているところがある。そのあたりは、星新一も時事風俗を扱わないなど、似た感じがある。


●「ユーディの原理」

・何でもかなえてくれる小人の原理を描いたファンタジー作品。

・概念的なファンタジー? 映像化は難しそう。

・お題を用意して、そこから物語をひねり出したような印象がある。

・ブラウンの本の解説で、ブラウンのネタが哲学的なものから来ているのではないか、という話があったが頷ける。


●「シリウス・ゼロ」

・ユーモアタッチのスペース・オペラ風作品。

・人間と異星生物との相対性、ファースト・コンタクトテーマの作品でもある。異星生物の正体が面白い。

・思いもかけなかったものが知的生物だった…という話は多い。マレイ・ラインスター「考える葦」など。ブラウンには他にも知的生物が思いもかけない形をしていた、という話があった。


●「町を求む」

・とぼけた語り口のミステリ作品。メタな感覚の結末も面白い。

・読者に問いかける形の風刺的な作品? あなたの街もそんなにクリーンではない…という感じなのだろうか。


●「帽子の手品」

・話のテーマがちょっとわかりにくいかも。実は侵略SFホラー。

・コミック化された作品を読むとテーマがわかりやすい。

・昔講談社文庫で出ていた福島正実編のアンソロジーでも収録されていた。「奇妙な味」テーマの作品集だったと思うが、あちらに収録されているとテーマ的にしっくりくる感じがする。

・SFの入門的にはテーマ別アンソロジーがいちばんわかりやすいと思う。河出文庫で出た『20世紀SF』も良いアンソロジーだったが、年代別だとテーマはいろいろになってしまう。


●「不死鳥への手紙」

・放射能の影響でほぼ不死になった男が人類史を語るという物語。

・「狂気」があるからこそ人類は何度もやり直せる…という発想は面白い。

・主人公が体質上、長期間眠らないといけないという設定。楳図かずおの漫画『おろち』でも、長期間眠らないといけないという設定が使われていた。


●「沈黙と叫び」

・殺人を疑われている男が本当に殺人を犯したのか、それとも事故だったのか? というのが読みどころ。これは確信犯だと思う。実際、仄めかしが結末付近で現れている。

・殺された妻の親族である駅長が、犯人らしい夫を自殺に追い込むために何度も話をしている…というのは怖い。

・最初のお題がなくても成立するような気がするが、「ノック」と同様、最初に置かれていることでインパクトが強くなっている。


●「さあ、気ちがいになりなさい」

・ナポレオンであるという妄想患者のふりをして入院した記者が実はナポレオンだった…というすごい話。発想がすごい。

・精神が時代を超えて移動させられる…という点で、H・P・ラヴクラフト『時間からの影』と発想が似ている。作品自体もどこかクトゥルー神話っぽさもあるような。

・サイコ・スリラー的な話かと思いきや、SF風な展開になるのにびっくりした。最後の収束の仕方も面白い。

・ナポレオンの精神がジョージ・ヴァインの体に宿ったということは、元のナポレオンの体には誰かの精神が行っているのだろうか? ジョージ・ヴァインの精神が行っている?

・ナポレオン妄想を持ったジョージ・ヴァインが、実際のナポレオンの体に入ったという話も書いてくれていたら面白かったのでは。そうなると「異世界転生もの」になるのでは。

・知性体の正体が意外で面白い。リチャード・マシスンの「こおろぎ」、レイ・ブラッドベリ「監視者」なども似たテーマ。

・欧米の人は、日本人以上に虫嫌いなのだろうか? キリスト教圏ではやはり人間とそうでない生物との間に明確な線があるので、そうした生物に対する恐怖というのも日本人以上なのかもしれない。

・蟻は集合体のイメージでよく使われるようだ。共産主義のイメージ?

・マンガ化作品もよくできていた。

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怪奇幻想読書倶楽部 第23回読書会 開催しました
ホフマン短篇集 (岩波文庫) 千霊一霊物語 (光文社古典新訳文庫)
 2019年8月11日の日曜日、JR巣鴨駅前のカフェにて「怪奇幻想読書倶楽部 第23回読書会」を開催しました。今回のテーマは「ホフマンとデュマのコント・ファンタスティック」として、E・T・A・ホフマン『ホフマン短篇集』(池内紀訳 岩波文庫)とアレクサンドル・デュマ『千霊一霊物語』(前山悠訳 光文社古典新訳文庫)を取り上げました。
 ドイツのみならず世界幻想文学の巨匠の一人と言えるホフマン、数々の名作を残したストーリーテラー作家デュマ、それぞれの作品、そしてデュマにおけるホフマンの影響などについても話し合いました。

 それでは、当日の会の詳細について、ご報告したいと思います。

 今回も、参加者全員のプロフィールをまとめた紹介チラシを作りました。チラシをPDFにしたものを、メールにて事前に配信しています。

 以下話題になったトピックの一部を紹介していきますね。


■E・T・A・ホフマン『ホフマン短篇集』(池内紀訳 岩波文庫)

・作品の中に必ずといっていいほど芸術がテーマとして出てくる。

・作品内に出てきた物事をちゃんと説明しないことが多いのだが、そこがいいという人と悪いという人とに分かれるようだ。

・ホフマン作品には完全な形でのハッピーエンドは少ない。幻想世界に行ってしまうとか、芸術家として全うする…というタイプの結末はあっても、地上の幸福と同時に芸術上の幸福を手に入れる…というタイプのハッピーエンドは見当たらないような気がする。これがいわゆるロマン派芸術というものなのだろうか。

・オッフェンバックのオペラ『ホフマン物語』と同名の漫画化作品『ホフマン物語』(水野英子)について。昔の新潮文庫にも『ホフマン物語』があったが、あれは原作を三篇入れたものでオペラ版ではなかった。光文社古典新訳文庫でもこの三篇が読める。

・オペラ映画『ホフマン物語』について。わりと原作のエッセンスを汲んでいる作品だと思う。衣装や美術は手塚治虫の『リボンの騎士』に影響を与えているとか。

・男性作家が描くと、女性の登場人物は美女になってしまう? 不美人のヒロインが出てくるのはブロンテの『ジェーン・エア』が嚆矢?

・美男美女でない登場人物の魅力を読者に納得させるのは逆に難しいと思う。

・映画『ライフ・イズ・ビューティフル』について。作中で『ホフマン物語』の曲が印象的に使われていた。


●「クレスペル顧問官」について

・クレスペルのキャラクターが風変わりで面白い。「ホフマン風人物」の典型?

・作品冒頭のクレスペルが家を建てるシーンが面白い。キャラクターの奇矯さをよく現すためのエピソードなのだろうか。日本の前衛建築「二笑亭」を想起させる面も。

・クレスペルが妻を無言で放り投げるシーンがあって、あれには驚いた。唐突にこの文章を出すところにホフマンの文才を感じる。これにより妻が「改心」するのも面白い。

・アントニエの恋人の作曲者はあまり本筋に関わってこない感じがある。娘は最終的に芸術を選んで死んでしまうのだが、恋人の影響があってもなくても最終的には同じ結果になったのではないかと思わせる部分もある。

・娘が大事にしていたヴァイオリンが娘の死とともに壊れるというのが、象徴を上手く使っているように思う。


●「G町のジェズイット教会」について

・主人公が風変わりな画家・芸術家。

・画家の妻子がどうなったのか、画家自身の生死がどうなったのか、はっきり書かないところが興味深い。リドル・ストーリーのような味わいも。

・書かれてはいないが、画家は妻子を殺しているような気がする。

・幸せな結婚生活が逆に芸術の発展を阻害するというモチーフが扱われている。地上の幸福と天上の幸福との相克という、ホフマン作品によく使われるテーマ。

・地上の幸福を手に入れてしまった人間は芸術家として大成しない? ホフマン作品を読んでいるとそんな風に思える。

・イタリアが憧れの地として描かれているが、これは当時の実際の雰囲気が反映されている。ドイツ人はイタリアが好き? ゲーテ『イタリア紀行』、「グランド・ツアー」など。

・当時イタリアで修行したというのは、芸術家として箔がつくものとされていた。

・『ブランビラ王女』はイタリアが舞台。作品内にドイツ人たちが出てくるシーンがあるのが面白い。

・ホフマン作品に出てくる外国は、実際に行ったことのあるものより、本で得たイメージが多いようだ。


●「ファールンの鉱山」について

・本で紹介された17世紀の実話が元になっている。ホフマンが参照したのはその実話について書かれた哲学者G・H・シューベルトの本らしい。

・ヨハン・ペーター・ヘーベルの作品「思いがけない再会」も同じ「ファールンの鉱山」について取材した作品。こちらは邦訳にして2ページ程度の掌編。ホフマン作品と比較すると、ホフマンの作品の膨らませ方がすごいと感じる。

・すごくロマンティックな作品。

・同じ短篇集の他の作品は主人公たちが貴族的なものを背景にしているのが多いのに比べて、この作品は労働者階級の世界が中心になっているのが興味深い。

・当時としても、鉱山は宝石など宝が眠っている…というイメージがあったのだろうか。ちなみに、神秘主義者スウェーデンボルグは鉱山学者だった。

・<山の女王>と現実の婚約者、どちらを選ぶか?というモチーフが現れる。

・山の神様は女性が多いイメージ。ギリシャ神話でも大地は女神、地球自体も女性のイメージ。

・奈落を見下ろすシーンの後に海の描写が出てくるが、このイメージが壮大で面白い。

・ロマン派は「山」が好き? ホフマンも自然に対する憧れがよく出てくる。


●「砂男」について

・人造人間を扱ったSF作品でもあり、怪奇小説でもある作品。

・主人公がかなり精神的に病んでいる。他の作品も多かれ少なかれ奇矯な人物が多いが、中でも狂気度は高い。

・フロイトが注目して「トラウマ」の原型ともなった作品。

・当時の召使や下女などは東欧から来る人が多かった。この作品でも、都会人である母親に対して、砂男の怖さを吹き込む迷信深いばあやとが、二重構造の世界になっている。

・コッペリウスとコッポラが同一人物かどうかははっきりしない。主人公の妄想の可能性が高いのだが、名前が似ているということは何かしらの関係がある…という意味ではかなりフロイト的。

・人形を愛する「人形愛」テーマ、レンズをテーマに「レンズ幻想」の作品でもある。江戸川乱歩の「押絵と旅する男」にも影響を与えているのではないか。実際に両者を比較した『ホフマンと乱歩 人形と光学器械のエロス』(平野嘉彦 みすず書房)という評論も出ている。

・レンズや眼鏡を「覗き込む」と別世界に連れ去られてしまう。「夜目遠目笠の内」という言葉があるが、何かを間接的に挟み込むことで、女性が美しく見えてしまうのではないか。

・作品に登場する科学者スパランツァーニは同名の実在の人物。顕微鏡の祖であり、彼が作った顕微鏡には今でも謎があるらしい。

・夏目漱石「夢十夜」について。西洋、ヨーロッパ文化が反映されている作品。

・主人公の婚約者は非常に現実的・健康的なヒロイン。婚約者が別の男性と結婚して幸せに暮らしている、という結末はかなり皮肉を感じる。主人公が現実の女性ではなく幻想の女性を選んで破滅してしまった…というテーマを強調しているのだろうか。

・ホフマン作品のヒロインはあまり健康的でない女性が多いが、この作品のクララはかなり健康的に描かれている。もう一方のヒロイン、オリンピアが幻想的なものとして描かれているので、その対比として現実的なヒロインを登場させたのだろうか。

・怪談や幻想小説にはその当時最新のテクノロジーが出てくるといわれるが、ホフマンにとってのレンズや眼鏡はそれに近いものなのだろうか。


●「廃屋」について

・主人公がロマンティストで思い込みが強いという設定。彼が見ている事件はその通りでなかった…という意味では、アンチ幻想小説ともいえる?

・鏡によって幻影を見ている。

・アイザック・アシモフについて。彼の本領は科学エッセイ? オカルトなどには懐疑的だった人。

・ホフマンも『セラーピオン朋友会員物語』などでは、超自然的なことに対して登場人物に議論などをさせているところを見ると、オカルトや超自然に対してはわりと懐疑的な立場なのではないか。

・実際に廃屋(のようなもの)を見て、ホフマンはこの作品を発想したのかもしれない。

・廃屋の噂や実際に人に聞いた話などから、物語が広がっていく感じが上手い。じわじわ真相がわかってくるというのはミステリ的な作り。

・超自然的な幽霊などが出る話かと思っていたら、意想外の展開だった。逆に驚く。

・「砂男」でもそうだったが「思い込み」による物語。

・ホフマンは当時としてもかなり「ロマンティック」な作家だった? 今読むと甘ったるいと感じる人も。


●「隅の窓」について

・リアリズム視点で、晩年の作品。ミルハウザーに似ている。

・窓から見えた人間の観察をする作品だが、一つだけではなく複数の視点を提示するところが面白い。

・視点は、シャーロック・ホームズにも似ている

・筒井康隆は『短篇小説講義』(岩波新書)で、この作品について絶賛している。見方が独特で参考になる。筒井は、ホフマンは幻想作家としては古いが、リアリズム部分が本領ではないかという見方をしている。


■アレクサンドル・デュマ『千霊一霊物語』(前山悠訳 光文社古典新訳文庫)

・デュマの長篇は面白いが、だれるところも多い。『モンテ・クリスト伯』は抄訳版の方が面白いのではないか。

・明治時代の『モンテ・クリスト伯』の邦訳(『岩窟王』)は、登場人物名が日本名だったり、都市名は外国名のままだったりと、翻訳とも翻案ともつかない面白い翻訳だった。

・明治時代の人にとって『岩窟王』は非常に影響を与えた作品だったのでは。参加者の祖父の思い出なども。

・デュマ『ビロードの首飾りの女』の紹介。ホフマンを主人公とした幻想小説。『千霊一霊物語』の中にもホフマンの名前が言及されている。

・枠物語の形式はホフマン作品の影響もある?

・同時代のフランス革命とその後の時代背景がかなり強く出ている作品だと思う。市長のエピソードでは、そうした緊迫感がある。当時としてはすごくリアルな話だったのでは。

・首切りの話題についていくらか続いた後に、懐疑的な意見が交わされ、最終的に市長が実証的なエピソードを話す…という流れはすごく説得力がある。

・ギロチンで首を落とされた後に意識は本当にあるのか? 真相はよくわからない。

・ギロチン刑について。当時としては人道的な処刑方法という見方が強かったらしい。

・イギリスの医師のエピソードは、処刑した男の幻影に悩まされる男の話。現象の起こり方が妙で、実際の狂気はこんな感じなのだろうか。

・認知症の症状では実際に人がいたり喋ったりしているように感じる、ということが実際にあるらしい。参加者の家族の例など。

・登場する語り手たちが、超自然現象を信じている人とそうでない人がいるのが面白い。中立的な立場の人もいるようだ。

・ホフマンの枠物語では語り手たちのキャラクターが薄くて見分けがつかないが、デュマ作品では語り手たちのキャラクターが描き分けられている。

・イギリスの医師のエピソードは、シャルル・ラブー「検察官」の焼き直しだというマルセル・シュネデール説の紹介。ラブー作品は、妄想によって妻を殺してしまうという男の物語。

・『千霊一霊物語』の語り手たちは、実在の人物の名前が使われているものが多いらしい。当時としてはリアリティを持って読まれたのだろうか。

・デュマの伝記『パリの王様』(ガイ・エンドア)について。ゴシップ的な話題が多い。鹿島茂『パリの王様たち』ではちゃんと業績についても触れている。

・デュマには黒人の血が入っている。フランスにはそういう意味での人種差別がそれほどなかった?

・プロテスタントとカトリックの違いについて。フランスはカトリックが強い。黒人で重要な地位についていた人もいる。

・ルノワールが語る王墓を荒らすエピソードについて。実際にあった事件? 墓を荒らす…というのはキリスト教徒にとっては最悪?

・時代の転換期を描いた作品?

・デュマは革命派だが、心情的には貴族にも同情的な視線が感じられる。

・神父が語る泥棒が救いを求めるエピソードについて。綺麗な物語。神父が魅力的に描かれている。メダルの使い方も上手い。

・王墓荒らしのエピソードの後に、泥棒のエピソードが来るのは意識的なのだろうか。カトリックにおける遺体の扱いはかなり重要なテーマ。

・悪魔や地獄に対する恐怖は、日本人が考えているよりも大きい。映画『エクソシスト』やゾンビの話題など。

・カトリックの告解制度について。セラピーに近い制度。カトリックでは自殺率はプロテストタントよりも低い。

・文人アリエットが語るエピソードについて。不死だと広言している山師的な人物。信奉しているのがジャック・カゾットだというのも面白い。

・グレゴリスカ夫人が語る吸血鬼のエピソードについて。作中で一番長い。ゴシック・ロマンス的な要素も強い。東欧、山脈の中の城、呪われた血の家系など、耽美な物語。母親のキャラクターが特徴的。不倫の子である弟の方を母親が愛している…というところも面白い。

・東欧が舞台になっているのは、ヨーロッパの人からすると「辺境」に近い意識? ブラム・ストーカー『ドラキュラ』もそういう感覚。

・『ドラキュラ』について。ドラキュラは「迷信の国」から来る感覚。吸血鬼の特性というかルールはアシモフの「ロボット三原則」に似ている。

・『ゲゲゲの鬼太郎』について。最新のアニメ版はすごくシビアなカラーになっている。原作でも社会風刺的な要素は意外と強い。

・水木しげるの海外作品の翻案作品について。『怪奇小説傑作集』やフィオナ・マクラウドを流用した作品など。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

怪奇幻想読書倶楽部 第24回読書会 参加者募集です
特別料理 (ハヤカワ・ミステリ文庫) さあ、気ちがいになりなさい (ハヤカワ文庫SF)
 2019年9月22日(日曜日)に「怪奇幻想読書倶楽部 第24回読書会」を開催いたします。若干名の参加メンバーを募集しますので、参加したい方がおられたら、メールにて連絡をいただきたいと思います。
 連絡いただきましたら、改めて詳細をメールにてお送りいたします。

お問い合わせは、下記アドレスまでお願いいたします。
kimyonasekai@amail.plala.or.jp


開催日:2019年9月22日(日曜日)
開 始:午後13:30
終 了:午後17:30
場 所:JR巣鴨駅周辺のカフェ
参加費:2000円(予定)
テーマ
異色短篇の愉しみ
課題図書
スタンリイ・エリン『特別料理』(田中融二訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)
フレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい』(星新一 訳 ハヤカワ文庫SF)
※課題書として読むのは〈異色作家短篇集〉版でも構いません。

※「怪奇幻想読書倶楽部」は、怪奇小説、幻想文学およびファンタスティックな作品(主に翻訳もの)についてのフリートークの読書会です。
※オフ会のような雰囲気の会ですので、人見知りの方でも安心して参加できると思います。
※「怪奇幻想読書倶楽部」のよくある質問については、こちらを参考にしてください。


 今回は、スタンリイ・エリンとフレドリック・ブラウン、共に短篇の名手と言われる二人の作家の代表的な作品集を取り上げます。
 緻密な構成とテーマ性の強い作品を書くエリンと、奔放な発想と想像力の光るブラウン、それぞれ独自の魅力を持った作家の魅力に迫ってみたいと思います。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

怪奇幻想読書倶楽部 第23回読書会 参加者募集です
ホフマン短篇集 (岩波文庫) 千霊一霊物語 (光文社古典新訳文庫)
 2019年8月11日(日曜日)に「怪奇幻想読書倶楽部 第23回読書会」を開催いたします。若干名の参加メンバーを募集しますので、参加したい方がおられたら、メールにて連絡をいただきたいと思います。
 連絡いただきましたら、改めて詳細をメールにてお送りいたします。

お問い合わせは、下記アドレスまでお願いいたします。
kimyonasekai@amail.plala.or.jp


開催日:2019年8月11日(日曜日)
開 始:午後13:30
終 了:午後16:30
場 所:JR巣鴨駅周辺のカフェ
参加費:2000円(予定)
テーマ
ホフマンとデュマのコント・ファンタスティック
課題図書
E・T・A・ホフマン『ホフマン短篇集』(池内紀訳 岩波文庫)
アレクサンドル・デュマ『千霊一霊物語』(前山悠訳 光文社古典新訳文庫)

※「怪奇幻想読書倶楽部」は、怪奇小説、幻想文学およびファンタスティックな作品(主に翻訳もの)についてのフリートークの読書会です。
※オフ会のような雰囲気の会ですので、人見知りの方でも安心して参加できると思います。
※「怪奇幻想読書倶楽部」のよくある質問については、こちらを参考にしてください。

 今回は、ホフマンの『ホフマン短篇集』とデュマの『千霊一霊物語』を取り上げたいと思います。
 ドイツのみならず欧米の幻想文学の祖の一人といえるE・T・A・ホフマンの作品は、19世紀フランスの作家たちに絶大な影響を与えました。デュマの怪異譚集『千霊一霊物語』もその流れの一つとして位置づけられます。
 ドイツ・フランス、それぞれの名手の幻想小説を読んでいきたいと思います

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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