〈奇妙な味〉と〈異色作家〉の不思議な関係
江戸川乱歩全集 第26巻 幻影城 (光文社文庫) 血は冷たく流れる (異色作家短篇集) キス・キス リュシエンヌに薔薇を ブラック・ユーモア選集〈6〉外国篇 (1976年)
 〈奇妙な味〉とは、作家の江戸川乱歩が提唱した概念。乱歩は『英米短篇ベスト集と「奇妙な味」』『幻影城』収録)という評論で、「奇妙な味」について説明していますが、文中でも明確な定義は下していません。
 具体的な作品のあらすじを紹介し、それをもって、読者にその味わいを伝えようとしています。具体的には、ロバート・バー『健忘症連盟』、ロード・ダンセイニ『二瓶の調味剤』、ヒュー・ウォルポール『銀仮面』、コナン・ドイル『赤髪連盟』、トマス・バーク『オッタモール氏の手』などが挙げられています。
 『銀仮面』の無邪気な残酷さ、『健忘症連盟』『赤髪連盟』の人を喰ったようなユーモアなど、実際に作品を読んでみると、乱歩のいいたい味わいは何となく分かるのですが、それらの作品から共通要素として抽出されるような特性は何だと聞かれると、答えに窮してしまうというのも事実なのです。
 その意味で、〈奇妙な味〉というのは、当時のミステリ(探偵小説)における分類からはみ出た特徴を持つ作品、という捉え方もありなのかもしれません。
 ちなみに、乱歩の「奇妙な味に重きを置く場合」の短篇ベストを挙げておきましょう。

ポー「盗まれた手紙」
バー「健忘症連盟」
ドイル「赤髪連盟」
チェスタートン「変てこな足音」
ダンセニー「二瓶の調味剤」
ジェプソン、ユーステース合作「土耳古風呂で」
ノックス「密室の行者」
ウォルポール「銀仮面」
バーク「オッタモール氏の手」
クリスティー「夜鶯の家」
バークリー「偶然は裁く」
ウールリッチ「爪」

 これらの短篇のほか、長編でも、フランシス・アイルズ『ビフォア・ザ・ファクト』『犯行以前』、別題『レディに捧げる殺人物語』)、リチャード・ハル『伯母殺し』『伯母殺人事件』)、エラリイ・クイーン『Yの悲劇』などに「奇妙な味」が濃厚だとしています。

こう考えて来ると、近年の傑作と云われる長編の多くに「奇妙な味」が含まれていることを悟るのである。

…この「奇妙な味」の要素は謎と論理の要素と殆ど肩を並べるほどに、探偵小説の重大な特徴となりつつあるのではないかとすら思われるのである。
 かかる「奇妙な味」が探偵小説界に於て特別に歓迎せられる理由は何かと考えて見ると、すぐ思い浮かぶのは、本来の探偵小説の重大な条件である「意外性」の一つの変形ではないかということである。


『英米短篇ベスト集と「奇妙な味」』『幻影城』収録)より

 乱歩が〈奇妙な味〉が濃厚だとした長編作品、フランシス・アイルズやリチャード・ハルの作品などを見る限り、異常心理を扱った作品が多く取り上げられています。とくに犯人が道徳性に欠ける人物だったり、精神異常者だったりと、心理的に独自性があるものが多いようですね。
 それまで、ミステリにおける最重要要素だった「謎と論理」に変わり、新たに〈奇妙な味〉がクローズアップされるようになってきた。乱歩はそう言っていますが、これは、ミステリにおける「動機」や「心理」が重要な要素になり、「フーダニット(誰がやったのか)」や「ハウダニット(どうやってやったのか)」から「ホワイダニット(どうしてやったのか)」への変化という時代的な流れとも重なります。
 その意味で、乱歩が考えていた狭義の〈奇妙な味〉に近い作品は何だと考えてみると、異常心理を扱ったサスペンス風味の作品、短篇で言えば、パトリシア・ハイスミスやルース・レンデルあたりの作品がいちばん近いのではないか? というのは、僕の感覚ではあります。
 ただ、現代における〈奇妙な味〉は、乱歩が言い出した当時から、かなりの拡大解釈がされているのも事実です。
 例えば、以下に見るような解釈もそのひとつです。

〈奇妙な味〉というのは、江戸川乱歩の造語で、本来は英米ミステリの一傾向をさす言葉だったが、拡大解釈が進み、いまでは「読後に論理では割り切れない余韻を残す、ミステリともSFとも幻想怪奇小説ともつかない作品」くらいの意味で使われることが多い。下手に定義を試みるよりは、サキ、ギルバート・K・チェスタトン、ジョン・コリア、ロアルド・ダール、チャールズ・ボーモントといった代表的作家の名前をあげるほうが手っとり早い。たしかに、ジャンルの枠にはおさまりきらない作風だといえる。

中村融『街角の書店 18の奇妙な物語』(創元推理文庫)編者あとがきより

 現代では、乱歩が想定していたミステリだけでなく、SF、怪奇小説、ファンタジーなどでも、その概念が使われることが多いようです。〈奇妙な味〉の捉え方や定義は一定しておらず、人によって異なっているのです。

 〈奇妙な味〉と似た概念として、〈異色作家〉というものがあります。早川書房のシリーズ《異色作家短篇集》の収録作品は、まさに〈奇妙な味〉としかいいようのないものなのですが、〈異色作家〉と〈奇妙な味〉は、イコールと考えていいのでしょうか?

一応、ミステリーふうではある。でも、ファンタジーや怪奇小説、はたまたSF的な要素もふくまれている不可思議な小説。1950年代に、そんな雰囲気の短編を発表していた作家を“異色作家”と命名し、叢書〈異色作家短篇集〉を刊行した早川書房とその編集部のセンスの良さと先見性について、いまさら説明する必要はないだろう。

尾之上浩司『奇妙な味の作品群』『幻想文学55』アトリエOCTA掲載)より

 上記のような意見を見る限り、《異色作家短篇集》と〈奇妙な味〉は、ほぼイコールと捉えても問題ないような気がします。
 ただ、《異色作家短篇集》収録作家では、ロアルド・ダールやスタンリイ・エリンあたりは、乱歩の〈奇妙な味〉の概念に当てはまるように思いますが、シリーズには、ジャック・フィニィのようなファンタジー、ロバート・シェクリイのようなSF作品までも含んでいます。
 この《異色作家短篇集》において、乱歩の〈奇妙な味〉の概念はすでに拡大されているといってもいいのかもしれません。

 《異色作家短篇集》が日本に受け入れられていく過程で、〈異色作家〉〈異色短篇〉というネーミングもまた市民権を得ていきます。実はこの時期、版元の早川書房では、いくつか、別の概念を提唱していました。
 早川書房のミステリ誌『ミステリマガジン』には、創刊から現在に至るまで〈異色作家〉の作品がよく掲載されていますが、1960~1970年代には、その種の作品の紹介文には〈異色短篇〉〈恐怖小説〉〈幻想と怪奇〉〈ブラックユーモア〉〈フィーリング小説〉など、様々なコピーがつけられていました。
 とくに注目したいのは〈フィーリング小説〉という概念。早川書房から1970年代に出されたシリーズに、《世界の短篇(フィーリング小説集)》というものがあります。これは、ほとんど《異色作家短篇集》の姉妹編といっていいシリーズです。実際、収録作家には、ジャック・フィニィ、シャーリイ・ジャクスン、ジョン・コリア(これは未刊ですが)などが含まれています。
 他の収録作も、ブルース・ジェイ・フリードマン、ローラン・トポール、ナイジェル・ニールなど、《異色作家短篇集》に含まれていてもおかしくない味わいの作品集です。
 また、一部の作品に《異色作家短篇集》的な要素を含む、《ブラック・ユーモア選集》というシリーズもありました。こちらは、ブラック・ユーモアの要素が突出した作品が集められていましたが、味わいとしては《異色作家短篇集》にも近いものがあります。
 〈フィーリング小説〉というネーミングは根付きませんでしたが、これもまた〈奇妙な味〉の類似概念といっていいかもしれません。〈ブラック・ユーモア〉に関しては、ジャンル小説名というよりは、作品を形容する言葉として残った感じでしょうか。

 〈異色短篇〉や〈奇妙な味〉の概念は、非常に曖昧ですが、それだけに広い範囲の作品を取り込める懐の深さがあります。
 逆に、定義があいまいなら、何でもありなんじゃないか? と考えてしまいますが、やはりこういう要素がないと〈異色短篇〉や〈奇妙な味〉とは呼べない、という部分はあると思います。

「幻想、ユーモア、恐怖を豊かに織りこみ短篇小説に新しい息吹きを与える画期的シリーズ」

刊行時の《異色作家短篇集》のコピーより

 コンパクトにまとまったコピーだと思います。それぞれ、ある作品が〈幻想小説〉であったり、〈ユーモア小説〉であったり、〈恐怖小説〉であったとしても、必ずしも〈異色短篇〉とは呼べないと思いますが、これらの要素が複数あった場合は、〈異色短篇〉に近づいた感じはします。このあたり、いろいろ考えてみるのも、面白いかもしれません。
 1950年代に活躍した作家の短篇集を多く含む《ソノラマ文庫海外シリーズ》(朝日ソノラマ文庫)と、その後継的シリーズである《ダーク・ファンタジー・コレクション》(論創社)、主にミステリ畑から、デイヴィッド・イーリイやジャック・リッチーなど、埋もれた短編の名手たちを発掘した《晶文社ミステリ》(晶文社)および《KAWADE MYSTERY》(河出書房新社)、SF・ファンタジー系の作家を集めた《奇想コレクション》(河出書房新社)、現在進行中のシリーズ《予期せぬ結末》(扶桑社ミステリー)などは、《異色作家短篇集》の影響を感じさせますね。

 現代でも、ちょっと不思議な味わいの短篇集が出ると、〈奇妙な味〉や〈異色作家〉と形容されたりすることがあります。例えば、イタリアの作家ディーノ・ブッツァーティや、セルビアの作家ゾラン・ジヴコヴィッチなどの作品を分類するとすると、やはり〈奇妙な味〉や〈異色作家〉がしっくりきます。
 定義は曖昧だけれども、読書人にその作風を伝えるのには非常に便利な概念。現代ではそんな感じの使われ方をされているようですね。

※今回の記事は「怪奇幻想読書倶楽部 第2回読書会」第2部テーマ用に作成したレジュメをもとに作成しています。

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二つの「弾丸」をめぐって  SFとファンタジーに見る世界観の違い
sfsahou.jpg 壜の中の世界 (文学の冒険シリーズ)
 ベン・ボーヴァ『SF作法覚え書 あなたもSF作家になれる』(酒井昭伸訳 東京創元社)は、SF作家にして編集者でもあるベン・ボーヴァが、SF小説の作法について解説した技法書です。
 文章の技法などには触れず、あくまでプロットやお話の組み立て方に特化して書かれています。例となるSF短篇を取り上げ、それを元にいろいろ解説していますが、それぞれの章で、モデルとなる短篇がまるごと収録されているのが特徴です。
 収録された短篇はボーヴァ自身の作品で、技法書でありながらボーヴァ短篇集でもあるというお得な作り。
 さて、この本に収録された作品で『平和的な人々』という作品があり、これが科学的な設定を使った面白い短篇でした。

 地球のあちこち、そして衛星上でもロシアとアメリカが争いを起こしているなか、月基地においては、両国が平和的に共存しています。国連代表トーガスンは、訪れたアメリカ基地で、平和的に共存するための方法を探り出そうとします。話相手のパットン大佐から、突然伏せるように言われたトーガスンは、伏せた直後に何かが壁を貫通していくのを目撃します。
 それは大量の弾丸でした。月に基地を建設した直後に、小競り合いにおいて発射された弾丸は、摩擦がないために、月の周回軌道に乗り、ずっと飛び続けているというのです…。

 実際に月で発砲して、弾丸が飛び続けることになるかはともかく、科学的には説明がつけられ、読者にはなるほどと思わせる作りになっています。
 一方、ドイツの作家クルト・クーゼンベルクの『休まない弾丸』(前川道介他訳『壜の中の世界』国書刊行会収録)という短篇では、定期的に弾丸が飛んでくる…という、同じようなシチュエーションが扱われています。

 ある射手が試し撃ちのような形で発射した弾丸には、魔女の血が含まれていました。その影響で、弾丸はエネルギー法則を無視し、永遠に飛び続けることになります。障害物があってもそれを貫通し、突き進むのです。
 やがてその軌道が判明し、観光のような形で有名になる一方、その軌道に人を誘い込み殺人に利用する人物も現れますが…。

 こちらでは、魔女の呪い(?)で永遠に飛び続けることになった弾丸がテーマになっています。物理的に止められないため、これを利用して殺人が起こったりと、様々な事件が発生します。
 同じような事象を取り上げながら、科学的な説明があるのかないのかで、だいぶ作品のカラーが変わってくるものですね。『休まない弾丸』でも、一応、弾丸が飛ぶ理由は述べられています。ただ理由が「呪い」とか「魔術」だった場合、SFとは捉えにくくなっており、ジャンル分けするとすれば、ファンタジーになるのでしょうか。

 料理の仕方次第で、いろんな作品が出来るという例ではあるのですが、ただ、どちらが魅力的かといえば、圧倒的にクーゼンベルクの作品なのですよね。
 ここまで書いてきて、ふと思い当たりました。自分は真相が明確でない物語が好きなんじゃないかと。例えば、イタロ・カルヴィーノとか、スティーヴン・ミルハウザーの一部の作品によく登場する言い回し、「~であると言われている」「~であるという説もある」「~であるのかもしれない」という部分が、とても好きなんですよね。
 事象に対して、しっかりとした説明を与えれば、リアリティが増す…。確かにそうなのですが、物語のジャンルによっては、曖昧にした方が魅力的になることもあるのです。真相ははっきりしないが、Aかもしれない、またはBかもしれない。物語に広がりが出るというか、読者の想像の余地が増えるというか。そのあたりに魅力の核があるような気がしています。

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H・G・ウエルズのSF・幻想短篇を読む
458529127X未来を覗く H・G・ウェルズ ディストピアの現代はいつ始まったか
小野俊太郎
勉誠出版 2016-07-08

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 先日、小野俊太郎『未来を覗くH・G・ウェルズ』(勉誠出版)という本を読みました。H・G・ウェルズのSF小説、『タイムマシン』『モロー博士の島』『透明人間』『宇宙戦争』など、代表作を中心に、それぞれの作品が含む問題提起について、丁寧に解説した良書です。
 代表作だけでなく、いくつかの短篇についても触れられています。読んだ後、ウェルズの作品が再読したくなり、手持ちの短篇集を引っ張り出してきて、いろいろ読み直してしまいました。

 改めて紹介すると、イギリスの作家、H・G・ウェルズ(1866-1946)は、フランスのジュール・ヴェルヌと並び、SFジャンルの開祖とされる作家です。ともに、未来の社会や技術をテーマとして取り上げた作家ですが、ヴェルヌがあくまで当時の技術の発展上の世界を描くのに対して、ウェルズはそれにこだわりません。
 「タイム・マシン」や「透明人間」など、ウェルズの作品では、今現在でも実現されていない技術、そもそも実現が可能なのかどうかもわからないアイディアが多く扱われています。そのアイディアの幅は広く、SFの基本となるテーマは、ウェルズがほぼ出しているといってもいいほどです。
 アイディアの先駆性を別にしても、ウェルズの作品は今読んでも、物語として面白いものが多いです。SFだけにとどまらず、ファンタジー・幻想小説としてみても、優れたものが多く見られます。


 ウェルズの短篇集は、各社からいくつも出ていたのですが、近年は品切れになっているものも多いようですね。いちばん手に入りやすいのは、岩波文庫の『タイム・マシン -他九篇』(橋本槇矩訳)と『モロー博士の島 -他九篇』(橋本槇矩、鈴木万里訳)でしょうか。
 岩波文庫では、他に中篇『透明人間』(橋本槙矩訳)も入手可能です。



4003227611タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫)
H.G. ウエルズ 橋本 槇矩
岩波書店 1991-05-16

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 『タイム・マシン』は、時間旅行を扱った名作『タイム・マシン』のほか、地球外の惑星の光景が映る水晶球を描いた『水晶の卵』、常人の数千倍で動ける薬を扱った『新加速剤』、あらゆる奇跡を起こせるようになった男を描く『奇蹟を起こした男』、魔法のお店を描いた『マジック・ショップ』、別世界への扉が現れるという『塀についた扉』、盲人だけで構成された国に迷い込むという『盲人国』などを収録。



4003227638モロー博士の島 他九篇 (岩波文庫)
H.G.ウエルズ 橋本 槇矩
岩波書店 1993-11-16

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 『モロー博士の島』は、動物を人間に改造しようとするモロー博士の野望を描く表題作のほか、絶滅したはずのエピオルニスの雛を手に入れた男を描く『エピオルニス島』、蛾をめぐる二人の科学者の争いを描く『蛾』、体重がなくなってしまった男を描く『パイクラフトの真実』、人格交換を描いた『故エルヴィシャム氏の物語』、突然地球の反対側の情景が見えるようになるという『デイヴィドソンの不思議な目』などを収録しています。


 岩波文庫の次に入手しやすいのは、創元SF文庫の《ウェルズSF傑作集》2冊です。



B007TAKMS4タイム・マシン ウェルズSF傑作集
H・G ウェルズ 阿部 知二
東京創元社 1965-12-03

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 『タイム・マシン』(阿部知二訳)は、 『塀についたドア』『奇跡をおこさせる男』『ダイヤモンド製造家』『イーピヨルスの島』『水晶の卵』などを収録。『ダイヤモンド製造家』は、ダイヤモンドを製造する方法を見つけた男の悲喜劇を描く作品です。



B007TAKL8K世界最終戦争の夢 ウェルズSF傑作集
H・G ウェルズ 阿部 知二
東京創元社 1970-12-18

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 『世界最終戦争の夢』 (阿部知二訳)は、南米でのアリとの戦いを描く『アリの帝国』、吸血花を扱った『珍しい蘭の花が咲く』、深海の生物に襲われる『海からの襲撃者』、ダイヤモンドを飲み込んだダチョウをめぐるコミカルな小品『ダチョウの売買』、近未来の戦争を予告する『世界最終戦争の夢』などを収録。



4336025630白壁の緑の扉 (バベルの図書館 8)
H・G・ウェルズ ホルヘ・ルイス・ボルヘス
国書刊行会 1988-09-24

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 ボルヘス選の文学全集シリーズ《バベルの図書館》のウェルズの巻『白壁の緑の扉』(小野寺健訳 国書刊行会)には、5篇を収録しています。他の作品集で読める作品ばかりですが、中では『プラットナー先生綺譚』が珍しいでしょうか。化学の実験中の爆発により、異世界に飛ばされてしまった教師を描く作品です。



4042703062タイムマシン (角川文庫)
H.G. ウェルズ Herbert George Wells
角川書店 2002-06

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 『タイム・マシン 他六篇』(石川年訳 角川文庫)
 鉄の潜水艦で、深海世界を冒険する『深海潜航』、ネアンデルタール人を描く先史小説『みにくい原始人』の収録が貴重でしょうか。


 ハヤカワ文庫では、《H・G・ウェルズ傑作集》全4巻が出ていましたが、すべて品切れ中です。各巻のタイトルは『モロー博士の島』『タイム・マシン』『透明人間』『神々の糧』。短篇集は『モロー博士の島』『タイム・マシン』の2冊です。



4150103461神々の糧 (ハヤカワ文庫 SF 346)
H.G.ウェルズ 小倉 多加志
早川書房 1979-06

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 長編『神々の糧』(小倉多加志訳)は、発達促進剤ヘラクレフォービアにより、際限なく生物が巨大化していくという世界を描いた作品です。



415010266Xモロー博士の島 (ハヤカワ文庫 SF―H・G・ウエルズ傑作集 (266))
H・G・ウエルズ 宇野 利泰
早川書房 1977-11

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 『モロー博士の島 H・G・ウェルズ傑作集1』収録作では、発電機を神とあがめる未開人が生贄を捧げてしまうという『ダイナモの神』、妖精の女王によって妖精国に連れ去られた青年を描くファンタジー『妖精の国のスケルマーズデイル君』が面白いですね。



タイムマシンタイム・マシン (ハヤカワ文庫 SF 274)
H.G.ウェルズ 宇野 利泰
早川書房 1978-01

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 『タイム・マシン H・G・ウェルズ傑作集2』
 鋼鉄の戦艦が登場し、近代戦争を予言したとされる『陸の甲鉄艦』、細菌学者の家から盗まれた最近をめぐる『盗まれたバチルス』などを収録。



B000J7Y6A4ザ・ベスト・オブ・H・G・ウエルズ (1981年) (サンリオSF文庫)
H.G.ウェルズ 浜野 輝
サンリオ 1981-06

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 『ザ・ベスト・オブ・H・G・ウェルズ』(サンリオSF文庫 浜野輝訳)は、SF以外の作品も含めた作品集。意識が肉体を離れて遊離するという『手術を受けて』、22世紀の恋愛を描く『近い将来の物語』、亡き王妃のために作られた豪華な霊廟をめぐる寓話『愛の真珠』などを収録しています。



イカロスイカロスになりそこねた男
H.G. ウエルズ Herbert George Wells
ジャストシステム 1996-05

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 『イカロスになりそこねた男』(橋本槙矩訳 ジャストシステム)は、ウェルズの珍しい作品を集めた作品集ですが、全体にSF味は薄いです。
 『空中飛行家』『イカロスになりそこねた男』は、空中飛行への憧れと挫折を描いた作品。ほかに、怪奇小説『ウォルコート』など。



433475208X盗まれた細菌/初めての飛行機 (光文社古典新訳文庫)
ハーバート・ジョージ ウェルズ Herbert George Wells
光文社 2010-07-08

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 『盗まれた細菌/初めての飛行機』(南條竹則訳 光文社古典新訳文庫)は、ウェルズのユーモア要素のある作品を集めています。
 資産家の屋敷を狙う泥棒を描いた『ハマーポンド邸の夜盗』、飛行機で飛び立った青年が村に大騒動を巻き起こすという『初めての飛行機』など。
 ウェルズの多面性を知るにはいいと思いますが、最初に読むウェルズ作品集としては、あまりオススメできない感じではあります。


 他にアンソロジー収録作品としては、アフリカの呪術師に呪われるという怪奇小説『ポロ族の呪術師』(池央耿訳 アシモフほか編『クリスマス13の戦慄』新潮文庫収録)、成仏できずにさまよう幽霊をブラック・ユーモアたっぷりに描いた『不案内な幽霊』(南條竹則訳 『イギリス恐怖小説傑作選』ちくま文庫巣収録)、呪われた部屋をめぐる本格怪奇譚『赤の間』(斉藤兆史訳 由良君美編『イギリス怪談集』河出文庫収録)などが面白いですね。


 基本的に、岩波文庫と創元社の短篇集があれば、代表的な作品は読めます。ただ、ウェルズファンとしては、SF・幻想短篇を集成した決定版の短篇集が欲しいところです。

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怪奇マンガ強化週間
4865370595戦後怪奇マンガ史
米沢 嘉博 赤田 祐一
鉄人社 2016-07-22

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 米沢嘉博『戦後怪奇マンガ史』(鉄人社)を購入し、さっそく一読しました。
 この本は、漫画評論家の米沢嘉博が、戦後の怪奇マンガの歴史を辿った本です。1980年代の中頃から終わり頃までホラー雑誌に連載されていたものなのですが、その当時すでに古典になりつつあった作品を中心に紹介されており、あまり新しい作家は扱われていません。
 貸本時代の作品から始まり、水木しげる、楳図かずお、古賀新一、萩尾望都、山岸凉子、日野日出志、手塚治虫、諸星大二郎、永井豪、つのだじろうなどが取り上げられています。怪奇専門の作家だけでなく、一時的に怪奇ものに手を染めた作家にも触れられています。
 全体に、古典よりの作品に力が入っているのですが、類書が全くないので、資料的にも貴重な本になるのではないでしょうか。

 もともと、怪奇マンガは大好きなジャンルなのですが、この本を読んで、怪奇マンガ熱が高まってしまいました。そんなわけで、最近読んだ中から、新旧合わせて、いくつかの作品を紹介していきたいと思います。



B016XZZPXM人面蝶
池上 遼一
グループ・ゼロ 2015-10-21

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池上遼一『人面蝶』(講談社KCスペシャル)
 劇画の巨匠として知られる作者の、初期に書かれた怪奇もの作品集です。
 表題作の『人面蝶』のインパクトが強烈です。蝶の採集に訪れた青年は、山の中で男が落石に会う場面に遭遇します。岩がそれたにもかかわらず、全身をつぶされて死んでしまうのを見た青年は、蝶に卵を産み付けられた人間は、蝶が死ぬと同時に死んでしまうのではないかと考えますが…。
 他に、狂った鳩が人間を襲う『狂い鳩』、鬼女に惑わされる三人の足軽の運命を描いた『安達ケ原の鬼女』など。

 

4063131084佐伯かよのSFミステリー傑作選 アリスの13時間 (KCデラックス)
佐伯 かよの
講談社 1989-11-13

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佐伯かよの『アリスの13時間』(講談社KCDX)
 表題作『アリスの13時間』は、難破した船の乗客たちが無人島にたどり着くものの、ラジオにより13時間後にその島で核実験が行われることを知り、実験が始まる13時間以内に島を脱出しようとする物語。外的な脅威に加え、仲間内で争いが始まり…というサスペンスたっぷりな話です。
 理由もなく、次々と自殺する人間たちの謎を追う『黄泉からの声』、人の心が読める少年が人々の心の醜さを暴いていくという『ジムニイの箱』、脳が異常発達し、知能が急激に上がった少女を描く『割れたカップ』など、SF味の強いホラーといった感じでしょうか。
 あらゆる現象が願った通りになる少女の登場する『午後5時1分前…!』は、破滅SFもののバリエーション。
 佐伯かよのの初期作品は、アイディアに富んでいて、今でも面白く読めるものが多いです。



4197805330怖すぎる永井豪 (トクマコミックス)
永井 豪
徳間書店 2012-07-03

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永井豪『怖すぎる永井豪』(トクマコミックス)
 収録作品中でいちばん有名なのは、突然大人たちが子供を殺し始める『ススムちゃん大ショック』でしょうか。レ・ファニュの原作を漫画化した『シャルケン画伯』、亡き親友の恋人と結婚した男の体験を描く『遺品』、いじめっ子たちがいじめられた子の怨念に殺される『雪』など。
 少年向けでも、永井豪作品は描写に容赦がないので、迫力がありますね。



4344836340ぐらんば (バーズコミックス)
押切蓮介
幻冬舎 2016-02-24

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押切蓮介『ぐらんば』(バーズコミックス)
 長年虐げられてきた老婆が、突如煉獄から来た巨大な化け物たちに襲われ、一人立ち向かう…というアクションホラーマンガ。ギャグすれすれの設定なのですが、怪物の造形や、その破壊力がすさまじく、まるでアメコミの実写化を観ているような迫力で楽しめます。



4845844273盆の国 (torch comics)
スケラッコ
リイド社 2016-07-11

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スケラッコ『盆の国』(リイド社torch comics)
 ご先祖様の霊を見ることができる少女は、お盆の同じ一日を何度も繰り返していることに気付きます。霊の話を聞くことができる青年と出会った少女は、協力して止まった時間を動き出させようとしますが…。
 青年の正体、少女の能力の由来、家族の過去…。絵柄はシンプルながら、丁寧に作られた作品です。盆が舞台になっているというのもありますが、清涼感のあふれるファンタジーです。



4022131470眠れぬ夜の奇妙な話コミックス りんたとさじ (ソノラマコミックス 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
オガツ カヅオ
朝日新聞出版 2009-10-07

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オガツカヅオ『りんたとさじ』(眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
 霊能力を持ち、怪奇現象に関わるバイトをしている「りんた」と、その恋人の「さじ」が巻き込まれる事件を描いた連作短篇集です。ユーモアの溢れる日常シーンと怪奇シーンとの落差が絶妙です。日常の風景が突然奇妙な情景に移り変わる瞬間が素晴らしい。
 どのエピソードも読み応えがありますが、新婚の妻の話が、だんだんと不穏な方向に向かう『炬燵の人』、両親を殺した男が時空のひずみに取りこまれる『穴の人』、愛猫の死を悲しむ男が隠していた真実が暴かれる『鳴く人』などが、印象に残ります。
 とくに、人生の真実が二転三転し、それが見事に怪奇現象と直結している『鳴く人』は、傑作だと思います。

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謎だらけの物語、または「真相がわからなくても人は物語を楽しめるのか」
B01CK7EE3Oミステリー・ゾーンDVDコレクション(67) 2016年 3/30 号 [雑誌]
アシェット・コレクションズ・ジャパン 2016-03-16

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 オムニバスドラマシリーズ『新トワイライトゾーン』に、『恐怖のメッセージ』(原作シドニー・シェルダン)というエピソードがあります。こんな話です。
  とある町で広がっているという伝染病について調べるため、派遣された調査員エドワード。あらゆる人間に感染するというその病は、人の正気を失わせるというのです。調査の結果、感染した人間が口にする、あるメッセージを耳にしたとたん、その人間の正気が失われることがわかりますが…。
 人間の正気を失わせる「恐怖のメッセージ」が描かれるのですが、そのメッセージの内容は全く描かれません。表面上、人から人へと、ただ狂気が伝染していくという演出が効果を上げています。

 『恐怖のメッセージ』を観ていて、既視感を覚えました。これと似たような話を、観たり、読んだりしたことがあるような気がする…。



4894565900夜が明けたら (ハルキ文庫)
小松 左京
角川春樹事務所 1999-11

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 まず、思いつくのが、小松左京のショート・ショート『牛の首』『夜が明けたら』ハルキ文庫ほか収録)。
 「牛の首」という、タイトルだけが、世間に流布している怪談がありました。誰もが口をそろえて「あんな恐ろしい話は聞いたことがない」と言うのです。しかし、具体的にどんな話なのか誰に聞いても教えてもらえない…という話。



4480429050謎の物語 (ちくま文庫)
紀田 順一郎
筑摩書房 2012-02

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 または、クリーブランド・モフェットの『謎のカード』(深町眞理子訳 紀田順一郎編『謎の物語』(ちくま文庫収録)。
 アメリカ人の青年が、旅先のパリで、見知らぬ美女から一枚のカードを手渡されます。カードには、フランス語らしい言葉が書かれていましたが、フランス語の読めない彼は、ホテルの支配人にそれを読んでもらいます。
 とたんに顔色を変えた支配人は、青年をホテルから追い出してしまいます。それ以降もカードの文面を見た人々はこぞって理由も話さずに青年を拒否するのですが…。
 


4336034621怪奇小説の世紀 第2巻 がらんどうの男
西崎 憲
国書刊行会 1993-02-25

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 ハリファックス卿『ボルドー行の乗合馬車』(倉阪鬼一郎訳 西崎憲編 『怪奇小説の世紀2』国書刊行会収録)も、似た感じの作品です。
 語り手が歩いていると、複数の男がやってきて、ある頼みごとをします。それは通りの突き当たりに立っている女性に、ボルドー行の乗合馬車は何時に出発するのか尋ねてほしい、とのことでした。女性にその件を尋ねると、語り手はなぜか警察に連行されてしまいます。挙句の果ては、裁判で有罪を宣告され、収監されてしまうのです…。



B000HA4E1E-less[レス] [DVD]
ジャン=バティスト・アンドレア
クロックワークス 2006-10-27

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 映画では、ちょっと方向性が違うのですが、『-less レス』(ジャン=バティスト・アンドレア&ファブリス・カネパ監督)が、似たテイストの作品ですね。
 クリスマス・イブの夜、ある一家が、車で親戚のパーティーに向かいます。近道をしようと人気のない森を抜けていくことになりますが、なぜか、行っても行っても出口が見えてきません。
 突然、道ばたに赤ん坊を抱いた白いドレスの女が現れ、車はあわてて停車します。何を聞いても答えず、しかも怪我をしているらしい女を放っておくこともできず、車に同乗させることになります。携帯電話も通じないため、やがて古びた山小屋を発見した一家は、そこで電話を借りようとしますが、つながりません。
 直後に、娘のボーイフレンドが、謎の黒いクラシックカーで連れ去られてしまいます。やがて道ばたに青年の変わり果てた姿を見つけます。その後も、車を止めるたびに、黒いクラシックカーが現れ、家族が殺されてしまうのです…。


 これらの物語、分類するとすると、謎が謎のままで終わるという「リドルストーリー」と言えます。ただ、上記の物語群は、その「リドルストーリー」の中でも、何か妙な魅力があるのです。
 物語中で、主人公や語り手に対して、何か重要な情報が隠されていることが明示されます。そしてその真相を求めて、主人公は駆け回るのですが、結局真相は明かされない…というのが、上記の物語群の骨格といえましょうか。
 読者や視聴者に対し、重要な情報を隠したまま展開する作品、といえば、いわゆる「サスペンス」作品ということになると思います。ただ、サスペンス作品では、真相や謎は最後には明かされます。それに対して、上記に挙げた物語は、隠された情報が結末になっても明かされません。
 真相が、作中で明確には示されない、という作品もないことはありません。例えば、ジーン・ウルフやクリストファー・プリーストの一部の作品。ただ、作中で明確に真相は明かされないものの、読者の推測で真相が窺えるようにはなっていることが多いです。対して、上記の物語群では、真相を明かす気がさらさらない…といった感じなのです。
 ただ、それでも「面白く」感じるということは、ここら辺に、何か「サスペンス」の原型的な味わいが隠されているような気がするのです。

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ボタンさまざま  リチャード・マシスン『Button, Button』をめぐって
運命のボタン (ハヤカワ文庫NV) 運命のボタン [DVD] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(66) 2016年 3/16 号 [雑誌] 縛り首の丘 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)
 DVDマガジン『ミステリーゾーン』66巻に『欲望のボタン』という作品が収録されています。これ、『新トワイライトゾーン』の1エピソードなのですが、原作はリチャード・マシスン『Button, Button』、脚本ローガン・スワンソン(マシスンの別ペンネームですね)、監督はピーター・メダックという、豪華布陣になっています。

 経済的に苦しく、仲も芳しくない夫婦の家に、ある日、透明なカバー付きのボタン装置が送られてきます。家を訪れた男は、そのボタンを押せば大金が手に入るが、その代わり、夫婦の知らない誰かが死ぬと話します。
 夫は詐欺だと信じませんが、妻はそのボタンに執着するようになり、夫婦のいさかいの原因にもなっていきます。そしてとうとう妻はボタンを押してしまうのですが…。
 
 いかにもマシスンらしいエピソードなのですが、原作小説とは結末が異なっています。原作はショート・ショートといっていい長さの作品ですが、結末の男のセリフが強烈で、印象に残る作品になっています。
 結末が異なるとはいえ、どちらも、マシスン作品のテーマである、「アイデンティティーに起因する不安」を扱った作品だということには変わりなく、考えさせるところのある作品ですね。

 原作の初訳(『死を招くボタン・ゲーム』)が1979年なのですが、それ以前に、小鷹信光編訳のマシスン傑作集『激突』(ハヤカワ文庫NV)の解説で、この短篇のあらすじが紹介されており、非常に面白い作品だな、と思ったのを覚えています。
 『死を招くボタン・ゲーム』が訳載されたのが、雑誌『日本版プレイボーイ』であったため、一般には読みにくい状況が続いていました。広く読めるようになるには、映画化に合わせて編まれた短篇集『運命のボタン』(尾之上浩司編 ハヤカワ文庫NV)が出る2010年まで待たねばなりませんでした。
 その際、『運命のボタン』に収録された表題作を初めて読んだのですが、初めて読んだ気が全然しなかったのは、『新トワイライトゾーン』と小鷹さんによる『激突』解説のおかげでしょうか。

 2010年の映画化作品、リチャード・ケリー監督『運命のボタン』では、原作をかなり脚色しているのですが、単なる脚色というよりは、ほとんど別の作品になってしまっている印象です。
 導入部の設定こそ原作と同じですが、その後、ボタンをめぐる謎を調べてゆくというミステリ風の展開になってしまいます。それも普通のミステリならいいのですが、監督が難解な作風で知られる人(代表作は『ドニー・ダーコ』)のため、非常にわかりにくい映画になってしまっています。
 マシスンの原作は、非常にシンプルでメッセージ性の強いものなので、もともと長い映像化には向かないのでしょう。『新トワイライトゾーン』のエピソードでも、一番重要な部分が改変されていたので、原作に近い形の再映像化が望まれます。

 さて、後年、この『運命のボタン』と設定がそっくりな話を読みました。
 それは、19世紀ポルトガルの作家、エッサ・デ・ケイロースの『大官を殺せ』(彌永史郎訳『縛り首の丘』白水Uブックス収録)という作品です。
 手もとのベルを鳴らすと、中国の奥地に住む大官が死に、その莫大な遺産が自分のものとなるという提案を持ちかけられた男の物語です。
 似ているのは導入部だけで、後の展開は全く異なるのですが、設定がじつによく似ています。もともとヨーロッパで19世紀に寓話として広く知られた話らしいのですが、倫理を論ずるために使われた寓話のようです。
 同じような設定を使っても、マシスン作品の方は、きわめて現代的な作品に仕上げており、改めてマシスンの筆力には驚かされますね。

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堂々巡り  《ループもの》作品概観3
 前2回で取り上げ切れなかった作品を、まとめて紹介しておきたいと思います。


415208682313のショック (異色作家短篇集)
リチャード マシスン Richard Matheson
早川書房 2005-11

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リチャード・マシスン『死の宇宙船』(吉田誠一訳『13のショック』早川書房収録)
 移住可能な惑星を探して、宇宙飛行を続けている3人の飛行士たちは、ある星で何か光るものを見つけます。そこにあったのは、大破した宇宙船でした。船の中に3人の乗組員の死体を発見しますが、その顔は自分たち3人とそっくりでした…。
 外惑星を舞台にしたSFホラー作品。登場人物たちがいろいろ仮説を立てますが、何の現象が起こっているかが全く説明されないため、不条理感の強い作品になっています。ドラマシリーズ『ミステリー・ゾーン』でも映像化されている名作短篇です。


4488501079怪奇小説傑作集〈2〉英米編2 (創元推理文庫)
ジョン コリアー 中村 能三
東京創元社 2006-03

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L・E・スミス『船を見ぬ島』(宇野利泰訳 平井呈一編『怪奇小説傑作集2』創元推理文庫収録)
 難破した船員の男は、島影を見つけ、そこを目指して泳ぎ始めます。ただ一人生き残った男が島で出会ったのは、同じように難破した人間たちでした。3人の男と1人の女は、それぞれ100年以上前からこの島で生活しており、この島で暮らす限り、歳も取らず死ぬこともできないと話します。しかも、島から出ようとしても必ず戻ってきてしまう。話を信じない男は脱出を考えますが…。
 永遠に出られない、呪われた島をめぐる怪奇小説です。主人公の男が聞く内容は、ほぼ伝聞で、描写もあっさりしているところが、逆に想像力をかき立てます。


4044743010サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)
河野 裕 椎名 優
角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-05-30

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河野裕『サクラダリセット』(角川スニーカー文庫)
 その街、咲良田では、住む人間それぞれに超能力が発現します。記憶したことを忘れないという能力を持つ主人公の少年、浅井ケイは、世界を三日分、元に戻す能力を持つ少女、春埼美空とともに、「奉仕クラブ」の一員として、様々な事件を解決していきます…。
 主人公のみが「リセット」されても、記憶を保持しているという設定です。感情的に問題のある少女の人間的な成長を「リセット」することにためらいを覚えるなど、情感が細やかに描かれます。


4336035970魔法の書 (文学の冒険シリーズ)
エンリケ アンデルソン=インベル Enrique Anderson Imbert
国書刊行会 1994-12

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エンリケ・アンデルソン=インベル『魔法の書』(鼓直/西川喬訳『魔法の書』国書刊行会収録)
 大学教授が古本屋で見つけた一冊の古本。それは無意味なアルファベットの羅列に見えますが、集中して始めから読んでいくと、内容を認識できるのです。ただし、少しでも気をそらすと、意味をとれなくなってしまいます。本を読破しようと考える教授でしたが…。
 永遠に終わらない本をめぐる、哲学的な幻想小説です。


4167900467もっと厭な物語 (文春文庫)
文藝春秋
文藝春秋 2014-02-07

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アルフレッド・ノイズ『深夜特急』(高見沢芳男訳 文藝春秋編『もっと厭な物語』文春文庫収録)
 それはバックラム装丁の痛んだ古本。タイトルは「深夜特急」。少年は、幼いころに見つけたその本に引き込まれますが、あるページの挿絵になぜか恐怖を覚え、それ以上読み進むことができません。成人した少年は、再びその本に出会い、幼い頃読めなかった続きを読もうとしますが…。
 掌編ながら、鮮やかさの際立つ作品です。


4150312087さよならアリアドネ (ハヤカワ文庫JA)
宮地 昌幸 坂本 ヒメミ
早川書房 2015-10-21

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宮地昌幸『さよならアリアドネ』(ハヤカワ文庫JA)
 妻と幸せな生活を送るアニメーター服部政志のもとに、ある日、「アリアドネ邦子」を名乗る中年女性が現れます。彼女は、政志が15年後に妻に見捨てられ、不幸になると話します。ただし、15年後のある日を繰り返せば、破滅の回避ができる可能性があるというのです。そのリミットは72回。しかし、壊れきった妻との仲や友人関係などを修復するのは容易ではありません…。
 試行錯誤するタイム・トラベルもの。オーソドックスといえばオーソドックスなのですが、なかなか読ませます。ループを繰り返すのは1日ですが、ささいなきっかけや気付きが、人生を変えていくという、地に足のついたテーマは好感が持てます。後半は、邦子の話にシフトしていくところもユニークです。


4167712016都市伝説セピア (文春文庫)
朱川 湊人
文藝春秋 2006-04

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朱川湊人『昨日公園』『都市伝説セピア』文春文庫収録)
 仲の良い友人と公園で遊んでいた少年は、別れた後に友人が事故で亡くなったことを知らされます。翌日公園を訪れた少年は、友人がそこにいることに驚くと同時に、時間が昨日に巻き戻っていることに気がつきます。
 事故に気をつけるように友人に念を押しますが、友人はまた別の事故で亡くなってしまいます。何度、過去に戻っても友人の死を防げないことに少年は絶望しますが…。
 情感のあふれる切ない作品です。主人公の過去の回想という形で語られるのですが、同じような現象が、現在にも起こっているのではないかと匂わせる結末も見事ですね。


4086800098螺旋時空のラビリンス (集英社オレンジ文庫)
辻村 七子 清原 紘
集英社 2015-02-20

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辻村七子『螺旋時空のラビリンス』(集英社オレンジ文庫)
 時間遡行機「アリスの鏡」によって、過去へのタイムトラベルが可能になった近未来。極端な貧富の差がある世界において、過去の美術品を盗み出し、資産家に売るという商売が横行していました。泥棒のルフは、商品を持ち出し19世紀のパリに逃げ込んだという幼馴染の女性フォースを連れ戻すという依頼を受けます。彼女は「椿姫」マリーになりすましているというのです。しかも肺病を患った状態で。
 帰ることを拒否するフォースの態度に困惑しているうちに、「アリスの鏡」の不調により、装置を通るたびに、初めにその場所を訪れた時点にループしてしまうことに気付いたルフでしたが…。
 同じ時間を繰り返すたびに、過去の自分が増えていってしまう…というユニークな設定が使われています。自分が勝手なことをすると、「次の」自分の首を絞めてしまうという制約があったりするのが面白いところです。


4122033160潤一郎ラビリンス〈8〉犯罪小説集 (中公文庫)
谷崎 潤一郎 千葉 俊二
中央公論社 1998-12-18

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谷崎潤一郎『呪われた戯曲』(千葉俊二編『潤一郎ラビリンス8』中公文庫ほか収録)
 悪魔的な男は、愛人と一緒になるために妻を殺そうと考えます。男は、妻を殺す計画を戯曲の形にして作成し、それを妻に読んで聞かせようとしますが…。
 物語自体が何重もの入れ子構造になるという、目の回るような作品です。


4882930676鬼火 (ふしぎ文学館)
横溝 正史
出版芸術社 1993-10

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横溝正史『蔵の中』『鬼火』出版芸術社ほか収録)
 妻を亡くした雑誌編集者は、ある日、美少年が持ち込んできたという原稿を読み始めます。亡き姉への思慕を語ったその内容は、やがて編集者自身の殺人の疑惑を指摘し始めます。原稿に書かれた場所へ現れた少年は、原稿の後編を取り出しますが…。
 作中に登場する原稿の中にさらに原稿が登場するという、虚構と現実とがごっちゃになった怪奇探偵小説です。上記の『呪われた戯曲』に影響を受けたと言われていますが、こちらの方がエンターテインメントとしては面白いですね。


4041851033火の鳥 (3) (角川文庫)
手塚 治虫
角川書店 1992-12

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手塚治虫『火の鳥 異形篇』(角川文庫ほか)
 左近介は、横暴な父に男として育てられた女性でした。ある日、父の病気の治療に訪れた八百比丘尼を見た左近介は、自らが年を取ったような容貌の尼に驚きます。父を憎んでいた左近介は、寺を訪れ尼を殺害しますが、その直後から、なぜか寺から出ることができなくなってしまいます…。
 『火の鳥』シリーズ自体が、円環構造をテーマとした作品ですが、この《異形編》は、とくにループものとしての要素の強い作品です。


4091910173半神 (小学館文庫)
萩尾 望都
小学館 1996-08

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萩尾望都『金曜の夜の集会』『半神』小学館文庫収録)
 アメリカの平和な町で幸せな生活を送る少年は、ある夜、自分の両親を含めた大人たちが集会を行っていることを聞きます。ひそかにその場所を訪れた少年は、大人たちが話す内容に驚きますが…。
 未来のない平和や幸せに意味があるのか。哲学的なテーマもはらんだ傑作短篇です。


488570412XWho!超幻想SF傑作集 (マイ コミックス)
佐々木淳子
東京三世社 1981

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佐々木淳子『リディアの住む時に』『Who―超幻想SF傑作集』東京三世社収録)
 山の中で女性のみで静かに暮らす館を訪れた青年は、年齢の離れた女性たちが互いにそっくりなのに驚きを隠せません。皆が好意的に接してくる中で、ただ一人シーラだけは、青年に冷たく当たりますが…。
 時間に閉じ込められた女性を描いています。一人の女性の生涯が一つの館の中に集約されてしまうという、SF的アイディアの光る作品です。


4063707660永遠の夜に向かって…(1) (講談社漫画文庫)
佐伯 かよの
講談社 2010-11-12

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佐伯かよの『永遠の夜に向かって…』(講談社漫画文庫)
 その日は、高校の一学期の終業式でした。教師の有田は、周りの人間たちが、1日の出来事を何度も繰り返していることに気がつきます。しかもその繰り返しは数時間であり、最終的には外からの巨大な光でリセットされてしまうのです。学校の外に出ることはできず、なぜか生徒の数は段々と減っていきますが…。
 ループの秘密については、早々と明かされてしまうのですが、作品自体はとても魅力的です。毎回それぞれの教師や生徒にスポットが当てられ、その人間性や思いについて描かれるという、ヒューマン・ストーリーになっています。全体を通しての謎も、結末で上手く明かされており、コンパクトにまとまった佳作だと思います。


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覆水盆に返る  《ループもの》作品概観2
 《ループもの》といえば、時間的なループをまず考えますが、空間的なループ作品も存在します。登場人物によって、空間的な繰り返しが体験される作品、とでもいいましょうか。先日紹介した、映画『パラドクス』も、そのタイプの作品でした。
 今回は、空間的な《ループもの》を取り上げていきたいと思います。


4336045690アジアの岸辺 (未来の文学)
トマス・M.ディッシュ 若島 正 浅倉 久志
国書刊行会 2004-12

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トマス・M・ディッシュ『降りる』(若島正、浅倉久志他訳『アジアの岸辺』国書刊行会収録)
 デパートで買い物をした主人公は、下りのエスカレータに乗りますが、いつまで経っても一階にたどり着きません。意地になった彼はひたすら降り続けますが、エスカレーターは延々と続いているのです…。
 悪夢のような不条理作品です。空間的ループといえば、まず挙げたい作品ですね。


4652005148おとうさんがいっぱい (新・名作の愛蔵版)
三田村 信行 佐々木 マキ
理論社 2003-02

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三田村信行『ぼくは五階で』『おとうさんがいっぱい』フォア文庫収録)
 少年が、遊びに出かけようと、ドアを開けて外に出ますが、気がつくと、そこはなんと同じ部屋の中なのです。何度くり返しても外には出られません。ベランダを越えて、となりの部屋に行っても、そこはまた同じ部屋でした…。
 永久に外に出られない少年を描く作品。寓話としても、気味の悪い作品です。


4003279018悪魔の涎・追い求める男 他八篇―コルタサル短篇集 (岩波文庫)
コルタサル 木村 栄一
岩波書店 1992-07-16

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フリオ・コルタサル『続いている公園』(木村栄一訳『悪魔の涎・追い求める男』岩波文庫収録)
 ミステリーを読みふけっている男は、いつの間にか本の中の被害者となってしまいます…。
 現実と虚構が交錯する、超絶技巧的な小品です。


yosen.jpg
呉均『陽羨鵝籠』 (井波律子訳 『ミステリマガジン1991年8月号』早川書房収録)
 ある男が山の中を歩いていると、一人の書生に出会います。書生は、男に食事をご馳走するといいますが、見ていると、口から食物を盛った盤を吐き出します。やがて書生は、一人の美しい女を吐き出しますが、書生が酔って眠ると、女は自分の口から、恋人の男を吐き出します…。
 口の中から出てきた人間の口の中から、さらに人間が出てくるという、目の回るような作りの物語です。


4150119899輪廻の蛇 (ハヤカワ文庫SF)
ロバート・A. ハインライン Robert A. Heinlein
早川書房 2015-01-23

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ロバート・A・ハインライン『歪んだ家』(矢野徹他訳『輪廻の蛇』ハヤカワ文庫SF収録)
 その家は、三次元かつ四次元的に建てられた家でした。地震のせいで四次元空間がたわんでしまったために、その家からは人が出られなくなってしまいます…。
 脱出の顛末をコミカルに描くSF作品です。


カットナー

ヘンリー・カットナー『大ちがい』(小笠原豊樹訳『ボロゴーヴはミムジィ』ハヤカワSFシリーズ収録)
 精神科医にかかっている男は、自分の今の状態は夢を見ており、本当の自分は別の世界にいると話します。一方、別の世界で、異様な姿をした生物が精神科医に、自分は夢を見ているのだと話していました。二つの世界の精神科医は、患者の妄想を正すために、それぞれ強硬な治療を始めますが…。
 「ループ」というのとは、ちょっと違いますが、別世界にいる同一人物が「行ったり来たり」するという、奇妙な味のファンタジーです。


ヴィスコチル
そうはいっても飛ぶのはやさしい (文学の冒険)
イヴァン・ヴィスコチル カリンティ・フリジェシュ 千野 栄一
国書刊行会 1992-07

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イヴァン・ヴィスコチル『ズビンダおじさんの<冬外套>』(千野栄一訳『そうはいっても飛ぶのはやさしい』国書刊行会収録)
 女好きで人の良いズビンダおじさんが失踪し、残ったのは、彼が借金のかたに置いていった冬外套のみでした。女友達とのデートの日に、コートを汚してしまった「ぼく」は、ズビンダおじさんの冬外套を着ていくことになります。切符を入れたはずのポケットから、切符が見つからず驚いた「ぼく」は、ポケットを探っているうちに、女友達ともどもポケットの中に落ちてしまいます…。
 ポケットの中に異世界があり、現実世界とつながっているというファンタジー。外套を着たまま、外套の中に落ちるという、目の回るような作りが楽しいです。


4092510063第四次元の小説―幻想数学短編集 (地球人ライブラリー)
R・A ハインライン 三浦 朱門
小学館 1994-08

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A・J・ドイッチュ『メビウスという名の地下鉄』(三浦朱門訳 クリフトン・ファディマン編『第四次元の小説』収録(小学館の新版もあり))
 ボストンの地下鉄で、夕方の混雑時にに86号列車が消失してしまいます。列車はどこに消えたのか、ハーバード大学の数学者は調査を開始しますが…。
 「メビウスの輪」を作品に仕立て上げた、数学的SF作品です。
 

433603060X壜の中の世界 (文学の冒険シリーズ)
クルト クーゼンベルク Kurt Kusenberg
国書刊行会 1991-10

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クルト・クーゼンベルク『壜(ラ・ボテリヤ)』(前川道介他訳『壜の中の世界』国書刊行会収録)
 老船長が空にした壜の中のボトルシップの話が、いつの間にか南国のスクーナー船の話になってしまう…。
 ストーリーがループするという、技巧的な名品。



4894565021男を探せ (ハルキ文庫)
小松 左京
角川春樹事務所 1999-03

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小松左京『長い部屋』『男を探せ』ハルキ文庫ほか収録)
 大杉探偵は、ボディガードを依頼された天才科学者の家を訪れますが、直後に主人の死体を発見します。部屋の向こう側に犯人らしき姿を認めた探偵は、拳銃を発射しますが、同時に自分も弾丸を打ち込まれ、意識を失ってしまいます…。
 わざわざ見取り図まで掲載されるという、本格密室ミステリ《風》作品。真相には唖然とさせられます。読者をおちょくるユーモアSF作品です。


コミックからもいくつか。


B017LG9JRK百万畳ラビリンス(上) (ヤングキングコミックス)
たかみち
少年画報社 2015-08-10

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たかみち『百万畳ラビリンス』(少年画報社ヤングキングコミックス)
 ゲーム会社でバイトする二人の若い女性が、突如、謎の巨大建築物の内部にいることに気がつきます。家具も揃った、妙に生活感に満ちた部屋に違和感を抱く二人ですが、部屋の扉を開けても、そこにはまた別の部屋が続いているのです。脱出の方策を探る二人でしたが…。
 《迷宮ループもの》の決定版ともいうべきコミック作品。この手のテーマに興味があるなら、読むべき作品でしょう。


パラノイア
パラノイア・トラップ
高山和雅
青林堂 1986-10

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高山和雅『楽観』『パラノイア・トラップ』青林堂収録)
 全裸で目覚めた5人の男女。彼らは一人として記憶がありません。自分たちがいた建物を探っていくと、そこは建物ではなく、トンネル内を走る巨大な車だったことがわかります。目的も理由もわからないが、走っているならばいずれ目的地に着くはずだと楽観しますが、男の一人は、車内にあった装置から、自分たちに対して行われている計画を推測し始めます…。
 閉鎖的な環境から始まる、不条理SFスリラーというべき作品。急展開する結末が、じつに鮮やかです。


402269064X瓜子姫の夜・シンデレラの朝 (朝日コミック文庫)
諸星大二郎
朝日新聞出版 2016-01-07

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諸星大二郎『見るなの座敷』『瓜子姫の夜・シンデレラの朝』朝日コミック文庫収録)
 田も持たない貧しい百姓の男のもとに、旅の女が居つき妻になります。よく気のつく妻のおかげで、生きがいを感じ始めた男でしたが、妻が何かをしているらしい納戸が気になり、中を覗こうとしますが…。
 民話をモチーフにしていますが、時間・空間ともに似たシチュエーションが繰り返されるという、構成の見事な作品です。


488379153X結晶星
たむら しげる
青林工芸舎 2004-03

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たむらしげる『青いビー玉』『スモール・プラネット』『結晶星』青林工芸舎収録)
 博士はビー玉を覗き込みながら、その中の世界に思いを馳せます。家の外に出た博士は自分の体がだんだんと大きくなっていくのに気がつきます。やがて地球よりも大きくなった博士は、宇宙の果ての壁に辿り着きますが、そこから見えたものとは…。
 宇宙自体がループしているという、壮大かつファンタスティックな一篇です。


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行ったり来たり  《ループもの》作品概観1
 SFのサブジャンルのなかに、《ループもの》があります。《ループもの》とは、作中で、登場人物が、ある一定の時間を何度も繰り返すという設定の物語です。《タイムトラベルもの》のバリエーションといっていいかと思います。
 《タイムトラベルもの》自体、非常に人気のあるジャンルなのですが、そのバリエーションの中でも、《ループもの》は、ことに魅力があります。昔から、短篇のテーマとしては存在しましたが、世間的にメジャーになったのは、ケン・グリムウッド『リプレイ』が刊行されてからでしょうか。
 小説作品と映画作品に分けて、紹介していきたいと思います。

●小説作品


4102325018リプレイ (新潮文庫)
杉山 高之 ケン・グリムウッド
新潮社 1990-07-27

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ケン・グリムウッド『リプレイ』(杉山高之訳 新潮文庫)
 うだつの上がらない中年男性が心臓発作で突然死しますが、気がつくと若い頃の時代に戻って、人生の再スタートをする、という物語です。一度目の人生の記憶を使って、二度目の人生を成功させますが、一度目と同じ年齢で死を迎え、再度若い時代に戻ってしまいます…。
 多分に願望充足的な要素の多い物語で、「リプレイ」現象そのものよりも、人生のやり直しという部分に重点が置かれています。


4062638606七回死んだ男 (講談社文庫)
西澤 保彦
講談社 1998-10-07

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西澤保彦『七回死んだ男』(講談社文庫)
 ランダムに同じ1日が9日間繰り返される体質を持っている高校生が主人公です。ループに入る最初の1日は完全にランダムで、自分で選べませんが、最終日の行動が実際の現実として確定されるため、そこまでの日数を上手く使って最善の結果を出そうとする、という設定のパズル・ストーリー。


4094511555クイックセーブ&ロード (ガガガ文庫)
鮎川 歩 染谷
小学館 2009-08-18

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鮎川歩『クイックセーブ&ロード』(ガガガ文庫)
 頭の中で「セーブポイント」を作ると、死んでもその時点に戻れる…という、ゲーム的な発想の物語です。その設定ゆえ、物事に失敗すると、毎回自殺をして元に戻るという、不謹慎な話ではあります。かなりご都合主義的な話に見えますが、後半はその設定を上手く掘り下げていて、なかなか面白い作品ですね。


415071956X特別料理 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スタンリイ エリン Stanley Ellin 田中 融二
早川書房 2015-05-08

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スタンリイ・エリン『パーティの夜』(田中融二訳『特別料理』早川書房収録)
 美貌だが退屈な妻、そして同じ芝居の繰り返し。才能を持ちながらも、同じことの繰り返しに耐えられない気質の役者の男は、愛人とともに、パーティから逃げ出そうとしますが…。
 主人公の人生に対する姿勢が、パーティの席に現れた精神科医によって代弁されますが、それが作品そのものを象徴しています。繰り返しを嫌悪する男が、まさにその繰り返しをしているという、皮肉かつ技巧的な作品です。


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魔女も恋をする―海外ロマンチックSF傑作選1 (1980年) (集英社文庫―コバルトシリーズ)
風見 潤
集英社 1980-01

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J・T・マッキントッシュ『第十時ラウンド』(風見潤編『魔女も恋をする』コバルト文庫所収)
 失った恋人を取り戻すために人生を何度もやり直す主人公が描かれます。


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J・T・マッキントッシュ『プレイバック』(早川書房編集部編『壜づめの女房』収録)
 愛妻が死ぬと、過去に戻り、妻との生活を何度も繰り返すという物語。

 たいていの《ループもの》では、ループ期間が短めに設定されています。いわばループが牢獄のような役目を果たしているといっていいでしょうか。


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宇宙の妖怪たち (1958年) (ハヤカワ・ファンタジイ)
中村 能三
早川書房 1958

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リチャード・R・スミス『倦怠の檻』(ジュディス・メリル編『宇宙の妖怪たち』所収 ハヤカワ・SF・シリーズ)。
 主人公の男は、火星人との戦争のさなかに略奪した装飾品を地球に持ち帰ります。装飾品の台座から宝石をえぐり出した後、バスルームに入っていた男が気づくと、ふたたびテーブルの前にいるのです。同じ現象が何回も繰り返された後、男はようやく気づきます。あの宝石は作動させた人間を時間に閉じ込める装置なのだ!…。
 制限時間はたったの10分間という、かなり強烈な《ループもの》。まさに「時間の牢獄」というべき作品ですね。


4122022061東海道戦争 (中公文庫)
筒井 康隆
中央公論社 1994-12

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筒井康隆『しゃっくり』『東海道戦争』中公文庫ほか収録)
 こちらも、同じ10分間が何度も繰り返されます。ループそのものよりも、人間の醜さを描くためといった感じが強いですね。


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恐怖のハロウィーン (徳間文庫)
アイザック アシモフ
徳間書店 1986-10

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リュイス・シャイナー『輪廻』(アイザック・アシモフ編『恐怖のハロウィーン』所収 徳間文庫)
 若者たちが怪談の会を催している晩に、かっての仲間からひとつの作品が送られてきます。そのタイトルは「輪廻」。小説で語られているのは、怪談会を催している若者たちの話なのです。しかも、これは彼らに恨みを抱く青年が書いた、呪いの小説だったのです…。
 タイトル通り「輪廻」する小説に閉じ込められた人間たちを描く技巧的な作品です。


4163818103たったひとり
乾 ルカ
文藝春秋 2013-01

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乾ルカ『たったひとり』 (文藝春秋)
 大学の廃墟サークルのメンバー5人は、27年前に事故で崩壊したホテルを訪れます。そこでは、当時身元不明の1人の遺体が発見されていました。
 メンバーたちはなぜか、27年前の事故寸前の時間にタイムスリップしてしまいます。何度逃げ出しても、最初の時間にループしてしまうのです。サークルのリーダーは、当時の事故と同様に1人が死なないと、このループからは逃げ出せないのではないかと推測します。死ぬべき「1人」とはいったい誰なのか…。
 被害者探しミステリのバリエーション的な作品です。メンバーそれぞれの人間性が順に描かれていくのですが、ちょっと「イヤミス」的な香りのする作品ですね。


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ディック傑作集〈2〉時間飛行士へのささやかな贈物 (ハヤカワ文庫SF)
フィリップ・K. ディック 浅倉 久志
早川書房 1991-01

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フィリップ・K・ディック『時間飛行士へのささやかな贈物』(浅倉久志訳『時間飛行士へのささやかな贈物』ハヤカワ文庫SF収録)。
 国家プロジェクトとしてタイムマシンに乗り込んだクルーたちが、事故に巻き込まれ死亡します。しかし死んだはずの彼らは何度も姿を現します…。
 クルーたちがループしているのかどうかははっきりしないのですが、《ループもの》に分類してもいい作品かと思います。


4150116156スロー・バード (ハヤカワ文庫SF)
イアン ワトスン Ian Watson
早川書房 2007-06

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イアン・ワトスン『知識のミルク』(大森望訳 佐藤高子他訳『スロー・バード』ハヤカワ文庫SF収録)
 中年のはずの主人公は、突如自分が14歳の時の肉体に戻っていることに気がつきます。未来の記憶を利用して人生を改善しようとしますが…。
 技巧的な《ループ》作品です。


4044292051涼宮ハルヒの暴走 (角川スニーカー文庫)
谷川 流 いとう のいぢ
角川書店 2004-10-01

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谷川流『エンドレスエイト』『涼宮ハルヒの暴走』角川スニーカー文庫収録)
 主人公涼宮ハルヒの願望のせいで、夏休みが延々と繰り返されます。
 短篇に過ぎないこの話を、アニメ版では、8話連続ほぼ同じ内容を繰り返すという、前衛的な試みを行い、話題になりました。


4150117764ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)
テッド・チャン クリストファー・プリースト リチャード・A・ルポフ ソムトウ・スチャリトクル F・M・バズビイ イアン・ワトスン ロベルト・クアリア ボブ・ショウ ジョージ・アレック・エフィンジャー ロバート・シルヴァーバーグ シオドア・スタージョン デイヴィッド・I・マッスン H・ビーム・パイパー 大森望
早川書房 2010-09-22

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リチャード・A・ルポフ『12:01P.M.』(大森望訳 大森望編『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』ハヤカワ文庫SF収録)
 時間の檻に囚われた男を描く作品です。同じ1時間をループし続けており、その中でやれることは限られています。時間について詳しい大学教授に自分の事情を分かってもらおうとしますが…。閉塞感ただよう短篇です。
  上記ルポフの短篇を映像化したものとして、オムニバスドラマシリーズ『世にも悲しい放浪者たち』の1エピソード『時間の牢獄』と、長編化した『タイムアクセル12:01』(ジャック・ショルダー監督)もあります。

ソムトウ・スチャリトクル『しばし天の祝福より遠ざかり』(伊藤典夫訳 大森望編『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』ハヤカワ文庫SF収録)
異星人により強制的なタイム・ループに囚われた太陽系。しかもその期間は七百万年だというのです。主人公である俳優は、何とか1日の決まったパターンを変化させようと努力を続けますが…。

H・ビーム・パイパー 『いまひとたびの』(大森望訳 大森望編『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』ハヤカワ文庫SF収録)
戦争で死んだ中年の男性が、子供時代の自分の体に意識だけ戻る、という話。厳密にはループ作とはいえませんが、先駆的な作品といっていいでしょうか。


430946203020世紀SF〈2〉1950年代―初めの終わり (河出文庫)
レイ ブラッドベリ フィリップ・K. ディック リチャード マシスン ゼナ ヘンダースン ロバート シェクリイ 中村 融
河出書房新社 2000-12

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フレデリック・ポール『幻影の街』(伊藤典夫訳 中村融/山岸真編『20世紀SF2 1950年代 初めの終わり』収録)
 ふと日常生活に違和感を感じた男は、街全体が作られた閉鎖的な空間だということに気がつきます。街の住人は、毎晩記憶をリセットされて同じ一日を繰り返し続けるのです。街を作った者たちの目的は何なのか?
 幻影の街の目的が壮大なものではなく、矮小なものであるという、風刺的な発想の物語です。


4043892039秋の牢獄 (角川ホラー文庫)
恒川 光太郎
角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-09-25

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恒川 光太郎『秋の牢獄』『秋の牢獄』角川文庫収録)
 同じ1日を繰り返す主人公は、やがて自分と同じような環境に囚われた仲間たちと出会います…。同じ1日を繰り返している人間たちが集まって、集団行動をし始める…というユニークなシチュエーションの作品です。


4086302195All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)
桜坂 洋 安倍 吉俊
集英社 2004-12-18

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桜坂洋『All You Need Is Kill』(スーパーダッシュ文庫)
 異星人との戦いの最中に死亡した初年兵が、目覚めると出撃の朝に戻っていることに気がつきます。ループすると、記憶のみが蓄積されることを利用して、主人公は戦闘技術を高めていき、ループから脱出しようとします。
 映画版とコミック版もありますが、基本コンセプトは同じ。


4488629075永遠へのパスポート (創元推理文庫 629-7)
J.G.バラード 永井 淳
東京創元社 1970-07

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J・G・バラード『逃がしどめ』(創元SF文庫『永遠へのパスポート』収録)
 テレビを眺めていた男は、突然同じ番組が繰り返されているのに気づきます。しかし妻は、そんなことはないと言い張ります。自分だけが短い時間のループに巻き込まれている気づいた男は、時間の繰り返しから脱出しようとしますが…。
 解決があっさりしていますが、なかなか面白い作品ですね。

●映画作品


B004E2YUVA恋はデジャ・ブ [DVD]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2011-01-26

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ハロルド・ライミス監督『恋はデジャ・ブ』
 田舎町で、高慢な男性が、ある祭日の1日間を繰り返すことになるという物語です。最初はやりたい放題ですが、やがて空しさを感じ始め、人々のために働くようになります。
 閉塞的なループ環境から絶望するものの、やがて前向きになるという、非常にポジティブなSFコメディ。名作だと思います。


B000AM6R00バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション [DVD]
ジェネオン エンタテインメント 2005-10-21

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エリック・ブレス/J・マッキー・グルーバー監督『バタフライ・エフェクト』
 主人公の青年が過去に書いた日記を読むことにより、書かれた過去の時点に戻れるという物語です。
 幼馴染の女性を助けようと、過去を変えますが、何かが好転しても、別の誰かが不幸になってしまいます。ささいなことが大きな改変を惹き起こすという、バタフライ効果をモチーフにした作品です。「タイム・ループもの」の完成形ともいうべき傑作。


B006O3S2NYミッション:8ミニッツ [DVD]
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 2012-03-21

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ダンカン・ジョーンズ監督『ミッション: 8ミニッツ』
 列車の中で目を覚ました大尉は、直後に列車の大爆発に巻き込まれて意識を失います。彼は、列車爆破事件の犯人を捜すために、爆破直前8分間の犠牲者の意識に入り込むというミッションに従事していたのです。捜索に使えるのは、わずか8分。何度も死を体験しながらも、繰り返し同じ環境の中に飛び込んでいきますが…。
 これは既に起こってしまった過去のシミュレーションを繰り返す、という設定の作品ですが、後半それが現実とリンクしていくという、凝った作りになっています。


rivers.jpg
リバース【字幕版】 [VHS]
日本コロムビア 1999-03-20

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ルイス・モニュー 監督『リバース』
 女刑事のカレンはある夫婦の車にヒッチハイクします。夫婦は浮気問題から喧嘩が始まり、とうとう妻は射殺されてしまいます。目撃者であるカレンも殺されかかったところを逃げ出し、近くにあった建物に逃げ込みます。そこには、政府が極秘に研究していた、時間を巻き戻す装置があり、それを作動させてしまったカレンは過去に戻ってしまいます。カレンは、未来に起こる殺人を防ごうと考えますが…。
 目的を達成するために何度も時間をループするという、まさに《ループもの》の定義にふさわしい作品。サスペンス味たっぷりの、小粋なSFスリラーです。


B00JIM65FAハウンター [DVD]
TCエンタテインメント 2014-07-02

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ヴィンチェンゾ・ナタリ監督『ハウンター』
 ある日、自分の周囲で起きる出来事が昨日と全く同じだと気付いた少女リサは、翌日以降もまた同じ出来事が繰り返されているのに気がつきますが…。
 《ループもの》とゴースト・ストーリーを組み合わせた、異色のホラー作品です。

 他にも、以前にちょっと紹介した『トライアングル』(クリストファー・スミス監督)、『ミステリーゾーン』の1エピソード『審判の夜』もループものの一種ですね。これらは、オチに直結しているので、あらすじは記しません。

 たいていの作品では、自発的かどうかにかかわらず、ループに入った主人公が、目的のために試行錯誤を繰り返す…というパターンが多いようですね。この場合は、目的は別にあり、その達成のためにループを利用する、という形になります。
 また、災害のような形で、意図せずループに巻き込まれるタイプの作品では、そのループからの脱出自体が目的となりますね。ループの理由も目的もわからなかったり、脱出が不可能だったりすると、不条理なスリラー、または寓話的な要素を帯びてくる傾向があります。

 《ループもの》作品は、どれも非常に魅力的なものが多いのですが、その魅力はどこにあるのでしょうか。
 本来は一度しかない人生のやり直しが可能になる…というところが《タイム・トラベルもの》の魅力だと思いますが、その「やり直し」の回数を極端にすると《ループもの》になるような気がします。
 その意味で、ありえたかも知れない人生の可能性、未来の可能性を、同時に複数垣間見せてくれるのが、《ループもの》の魅力なのではないでしょうか。
 ミステリで、「多重解決もの」というジャンルがあります。作中でいろいろな推論が出されては否定される…というタイプの作品なのですが、どこか《ループもの》と共通する魅力があるような気がするのです。このあたりを考えてみると、面白いかもしれません。

 次回に続きます。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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