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最近観た映画と「怪奇幻想映画ベスト」
 最近観た映画について、感想をまとめておきたいと思います(といってもホラー映画ばかりですが)。


ハッピー・デス・デイ ブルーレイ+DVD [Blu-ray]
クリストファー・B・ランドン監督『ハッピー・デス・デイ』(アメリカ 2017)

 主人公が何度も同じ一日を繰り返すという「ループもの」に、殺人鬼と犯人探しの要素を加えた作品です。
 性悪なヒロインがパーティーの翌日に見知らぬ青年の部屋のベッドで目を覚ましてから、同じ一日がずっと繰り返されるという物語。しかも最後には必ず仮面をかぶった殺人鬼に殺されてしまい、その結果、もとの時間・場所に戻ってしまうのです。
 ヒロインの性格が悪いため、必然的に協力者はおらず、そのため何度も殺人鬼に殺されてしまいます。やがて自らの行動を振り返ったヒロインが改心しつつ、純粋に恋をするようになる…という流れは上手いですね。
 ループとはいいつつ、殺されるたびにヒロインの体にダメージが蓄積されていく…という設定も秀逸。無制限のループというわけではないのです。コメディ的な演出もありながら、ループの性質や殺人鬼の正体を探っていく過程はサスペンスたっぷりで楽しめます。



ハッピー・デス・デイ 2U ブルーレイ+DVD [Blu-ray]
クリストファー・B・ランドン監督『ハッピー・デス・デイ 2U』(アメリカ 2019)

 『ハッピー・デス・デイ』の直接的な続編になっており、ループから逃れたばかりのヒロインが再び同じ一日のループに巻き込まれてしまいます。面白いのは「平行世界」のアイディアを持ち込んでいることで、ヒロインが新たに巻き込まれたループ世界は、元の世界とは違う世界だったという設定。
 登場人物は共通しているものの、性格や行動が異なっていたり、人間関係も少しづつ異なっているのです。こちらの世界では、前作で主人公が殺される原因になった事件が起きておらず、それゆえ、前作と殺人鬼の正体が異なる…というのも面白い仕掛けです。
 結果として、前作を観ていると、先入観によるミスディレクションが発生してしますのです。主人公は元の世界に戻ろうとしますが、そこである葛藤に巻き込まれてしまいます。元の世界に戻るのか、今の世界にとどまるのか…? 主人公の決断がどうなるのかという部分も興味深く観れますね。
 一作目では、ループもの映画の名作『恋はデジャ・ブ』、二作目では、タイムトラベル映画の金字塔『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のタイトルが作中で言及されるのですが、それらを含め、ところどころに過去のジャンル映画の影響やオマージュ的な表現が見られるところも面白いです。
 殺人鬼がかぶる仮面が、スラッシャー映画『スクリーム』の殺人鬼を思わせるなと思っていたら、デザインしている人は同一らしいです。
 わざとループさせるために主人公が自ら死ぬ…というブラックなシーンもありますが、基本コメディ調に展開される物語で、残酷シーンなども控えめです。ストーリーの面白さで見せる作品で、これはお薦めしたいですね。
 特に二作目は、一作目の内容自体を伏線とした話になっており、ミステリ好きの人にも楽しめる作品だと思います。



霊的ボリシェヴィキ [DVD]
高橋洋監督『霊的ボリシェヴィキ』(日本 2017)

 廃工場に集められた数人の男女、彼らは皆何らかの形で「死」に触れたことのある人間でした。子供の頃に数ヶ月神隠しにあったことのある由紀子は、婚約者に連れられて会合に参加します。彼らの目的はそれぞれの怪異を語ることにより「あの世」を呼び出そうというものでした…。
 基本的には「百物語」といっていいのでしょうか。怪を語ることにより怪を呼び出そうとする…というテーマなのですが、演出が斬新です。それぞれの登場人物の語りが回想シーンにはならず、ほとんど人物が話すだけ、という地味な展開なのですが、音響の上手さもあり、見ていて「怖い」のですよね。
 話と話の合間に、ふとした違和感や怪異現象のかけらのようなものが挟まれていくのが雰囲気を高めています。主人公由紀子の話を含め、正直なところ、物語の真相ははっきりわからないのですが、とにかくすごい作品を観た、という感覚があります。
 ネットの評を見てもあんまり指摘している人がいないようなのですが、これもしかしてアーサー・マッケンの影響があるんじゃないでしょうか。ところどころマッケン的なモチーフが現れるのと、「パンの大神」を思わせる部分もあります。
 幽霊や怪異の描写もあるのですが、基本的には地味な演出なので、明確なホラー映画を求める人には物足りないかもしれません。ただ「行間を読む」と、いろいろ面白い演出や展開にあふれた映画作品です。古典怪奇小説が好きな人にはすごく面白い映画じゃないでしょうか。
 タイトルもそうですが、突然歌を歌いだしたり、怖い話をしている最中に笑い出したりと、妙な「笑い」の要素があるにもかかわらず、全体としては「怖い」という稀有な作品です。
 シュールかつ前衛的なホラー映画で、観る人は選びそうですが、個人的には面白く観れました。



ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談 [DVD]
ジェレミー・ダイソン、アンディ・ナイマン監督『ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談』(イギリス 2017)

 幽霊現象を暴くのが仕事の合理主義者グッドマン教授が、失踪していた高名な同業者のキャメロン博士から連絡をもらいます。キャメロン博士は自分の仕事は間違っていた、心霊現象は全て存在すると主張します。
 懐疑的なグッドマンに対して、キャメロン博士は3つの超常現象の事件の調査を依頼しますが…。
 探偵訳の教授が3つの事件を順番に調査していくという、いわゆる「ゴースト・ハンターもの」風の展開なのですが、その後が斜め上の展開で、説明しにくいのですが、ここら辺の感覚、小説作品で言うとジョナサン・キャロルっぽいのです。
 この映画については賛否両論で、否定派が結構多いようですね。3つの心霊現象事件がありふれていて「陳腐」であるという意見もありました。でもこの映画、事件がありふれているのはわざとであって、それが結末につながっている感覚が強いのですよね。
 観ているときよりも、観終わって反芻すると評価がぐんと上がるタイプの作品です。ジョナサン・キャロル作品が好きな方とか、幻想小説とミステリとのハイブリッド作品なんかが好きな方は、すごく気に入る作品だと思いますのでお薦めしておきます。



人喰いトンネル MANEATER-TUNNEL [DVD]
マイク・フラナガン監督『人喰いトンネル』(アメリカ 2010)

 アメリカの田舎町、隣町に続く小さなトンネルのそばに住む主婦トリシアは、七年前から失踪した夫ダニエルをずっと探し続けていましたが、捜索をあきらめ死亡証明書を出してもらおうとしていました。そんな折、かって麻薬中毒だったトリシアの妹キャリーが数年間の放浪生活から家に帰ってきます。
 キャリーはジョギングの最中、トンネルで浮浪者のような男から助けを求められますが、そのまま走り去ってしまいます。トリシアは失踪事件の担当の刑事マロリーと恋仲になっており、お腹には赤ん坊もいました。
 マロリーとの新生活を始めようとするトリシアでしたが、日常生活のあちこちで、夫ダニエルの幻影が見えるのです…。
 中盤までは、失踪した夫をあきらめ、新しい恋人と生活を始めようとしている姉、麻薬中毒から更生した妹と、どこかシリアスなホームドラマのような雰囲気で話は進みます。その間に、モチーフにもなっているトンネルの不気味な描写がはさまれますが、あまり物語は進展しません。
 主婦トリシアがやたらと夫の幻影を見るシーンが挿入され、おそらく夫は死んでいるのではないかと思わせます。死者の幻影に悩まされる女性の話なのかなあと思っていると、中盤から意想外の展開に。夫の生死が判明するのですが、そこからが奇想SFのような展開になります。
 とはいいつつ、終始、派手なエフェクトもビジュアルもない低予算の作品で、あくまで登場人物たちの心理を地道に描いていくのがメインの作品になっているので、はっきりしたホラー作品を好む人には不評かもしれません。
 たぶんお話のネタとしては、ありふれたB級のそれなのですが、シリアスな演出や語り口で装い直した…というタイプの作品です。こんな語り口もあるんだ、という面白さがありますね。かすかなクトゥルー風味もあったりなど、見所のいろいろある作品だと思います。 地味ではあるのですが、面白い発想・演出の作品でした。



(r)adius/ラディウス [DVD]
キャロライン・ラブレシュ、スティーヴ・レナード監督『(r)adius ラディウス』(カナダ 2017)

 交通事故で記憶を失った男リアムは、近くの町を訪れますが、その町の住民は皆死んでいました。ようやく生存者を発見するも、彼が近づこうとすると、突如として目の前で死んでしまいます。やがて分かったのは、リアムの半径50フィート以内に近寄った人間は死亡してしまうということ。
 人間を避け家に隠れ潜んでいたリアムでしたが、家を訪れた女性が即死しないのを見て驚きます。リアムと同じく記憶喪失だという女性ジェーンがそばにいる限り、リアムの能力は抑えられることがわかります。二人はこの能力の謎について調べようとしますが…。
 なぜか近づくだけで即死してしまうという能力を持った男を描いたSFホラー作品です。記憶喪失の男が、人に助けを求めようとしてもどんどん目の前で死んでしまう…という序盤の情景はインパクト充分です。主人公の能力を抑える女性が登場してからは、いかに引き離されずに行動できるか、というのがポイントになります。
 殺人の容疑者となってしまった二人が警察に追われてしまう…という展開もお約束ながらサスペンスたっぷりです。説明不足なところもあるので好き嫌いは分かれると思いますが、アイディアの優れた面白い作品ですね。


 ついでに、以前に考えてtwitter上に公開した「怪奇幻想映画ベスト」を挙げておきたいと思います。オールタイムベストの他に、ジャンル別にいくつかベストを作ってみました。


顔のない眼 [DVD] サラゴサの写本 [DVD] ザ・チャイルド 30周年特別版 [DVD] ザ・ブルード/怒りのメタファー [DVD] サスペリア 4K レストア版 Ultra HD Blu-ray 通常版 ゾンゲリア [Blu-ray] ペーパーハウス/霊少女 [DVD] デモンズ ’95 -HDリマスター版- [Blu-ray] マウス・オブ・マッドネス [Blu-ray] アザーズ [DVD]
<怪奇幻想映画ベスト>
『顔のない眼』(ジョルジュ・フランジュ監督 1960)
『サラゴサの写本』(ヴォイチェフ・イエジー・ハス監督 1965)
『ザ・チャイルド』(ナルシソ・イバニェス・セラドール監督 1976)
『ザ・ブルード/怒りのメタファー』(デヴィッド・クローネンバーグ監督 1979)
『サスペリア』(ダリオ・アルジェント監督 1977)
『ゾンゲリア』(ゲイリー・シャーマン監督 1981)
『ペーパーハウス 霊少女』(バーナード・ローズ監督 1988)
『デモンズ'95』(ミケーレ・ソアヴィ監督 1994)
『マウス・オブ・マッドネス』(ジョン・カーペンター監督 1994)
『アザーズ』(アレハンドロ・アメナーバル監督 2001)


恐怖の魔力/メドゥーサ・タッチ Blu-ray イベント・ホライゾン デジタル・リマスター版 [DVD] ファイナル・デスティネーション [Blu-ray] -less[レス] [DVD] キャビン スペシャル・プライス [DVD] 恐怖ノ黒電話 [DVD] 私はゴースト [DVD] オキュラス/怨霊鏡 [DVD] ハウンター [DVD] パラドクス [DVD]
<奇想ホラー映画ベスト>
『恐怖の魔力/メドゥーサ・タッチ』(ジャック・ゴールド監督 1978)
『イベント・ホライゾン』(ポール・W・S・アンダーソン監督 1997)
『ファイナル・デスティネーション』(ジェームズ・ウォン監督 2000)
『-less レス』(ジャン=バティスト・アンドレア&ファブリス・カネパ監督 2003)
『キャビン』(ドリュー・ゴダード監督 2011)
『恐怖ノ黒電話』(マシュー・パークヒル監督 2011)
『私はゴースト』(H・P・メンドーサ監督 2012)
『オキュラス/怨霊鏡』(マイク・フラナガン監督 2013)
『ハウンター』(ヴィンチェンゾ・ナタリ監督 2013)
『パラドクス』(イサーク・エスバン監督 2014)


たたり [DVD] チェンジリング [Blu-ray] インフェルノ [DVD] エンゼル・ハート [Blu-ray] スリーピー・ホロウ スペシャル・コレクターズ・エディション [Blu-ray] 回路 [DVD] 輪廻 プレミアム・エディション [DVD] フッテージ スペシャル・プライス [DVD] ジェーン・ドウの解剖 [Blu-ray]
<心霊・オカルトホラー映画ベスト>
『たたり』(ロバート・ワイズ監督 1963)
『リーインカーネーション』(J・リー・トンプソン監督 1977)
『チェンジリング』(ピーター・メダック監督 1979)
『インフェルノ』(ダリオ・アルジェント監督 1980)
『エンゼル・ハート』(アラン・パーカー監督 1987)
『スリーピー・ホロウ』(ティム・バートン監督 1999)
『回路』(黒沢清監督 2001)
『輪廻』(清水崇監督 2006)
『フッテージ』(スコット・デリクソン監督 2012)
『ジェーン・ドウの解剖』(アンドレ・ウーヴレダル監督 2016)


血みどろの入江 -HDリマスター版- [DVD] 影なき淫獣 完全版 -デジタル・リマスター版- [DVD] 悪魔のいけにえ 公開40周年記念版(価格改定) [Blu-ray] テラー・トレイン [DVD] 誕生日はもう来ない [DVD] シャドー -HDリマスター特別版- [Blu-ray] フェノミナ インテグラルハード完全版 デジタル・ニューマスター [DVD] アクエリアス -HDリマスター特別版- [Blu-ray] スクリーム [Blu-ray] ミッドナイト・ミート・トレイン [DVD]
<スラッシャーホラー映画ベスト>
『血みどろの入江』(マリオ・バーヴァ監督 1970)
『影なき淫獣』(セルジオ・マルチーノ監督 1973)
『悪魔のいけにえ』(トビー・フーパー監督 1974)
『テラー・トレイン』(ロジャー・スポティスウッド監督 1980)
『誕生日はもう来ない』(J・リー・トンプソン監督 1981)
『シャドー』(ダリオ・アルジェント監督 1982)
『フェノミナ』(ダリオ・アルジェント監督 1984)
『アクエリアス』(ミケーレ・ソアヴィ監督 1986)
『スクリーム』(ウェス・クレイヴン 1996)
『ミッドナイト・ミート・トレイン』(北村龍平監督 2008)

テーマ:ホラー映画 - ジャンル:映画

闘争と逃走  『プリズナーNo.6』
プリズナーNo.6 Blu-ray Collecter's BOX(5枚組) 『プリズナーNo.6』完全読本
 1967~1968年にかけてイギリスで放映されたテレビドラマシリーズ『プリズナーNo.6』。放映から50年以上が経ちますが、今でもその前衛的かつシュールな内容は高く評価され、カルト的な人気を博しています。
 最近、初めて全17話を鑑賞する機会があったのですが、よくこんな内容をテレビドラマでやろうと思ったなあ、というのが正直な感想です。

 一話完結の番組なのですが、毎回シュールなストーリーが展開されてびっくりします。 基本のストーリーは次のようなもの。諜報員らしき主人公が、職場を辞職して家を出ようとしたところ、拉致され謎の村に連れてこられます。その村では人々は数字で呼ばれていました。主人公は「No.6」と名付けられ、辞職した理由を聞かれ続けますが、絶対に話そうとしません…。

 村のトップは「No.2」と呼ばれる存在なのですが、毎回、主人公にいろいろな手段で口を割らそうとします。一方、主人公は村を脱出しようとしますが失敗してしまいます。いろいろバリエーションはあるものの、基本のストーリーは毎回このパターンです。

 ユニークなのは、敵方のトップ「No.2」が毎回変わること。特に説明はされないのですが、毎回「No.2」が新しくなるのです。その「No.2」も男だったり女だったり、若かったり年配だったりと様々。エピソードによっては、思わぬ人物が「No.2」だった…というパターンもあります。
 毎エピソード、「No.2」が交代するのはもちろん、一話の中で交代することもあります。更にその交替劇がプロットに組み込まれたエピソードまであるという複雑さ。

 敵の組織が秘密を聞き出すために行う手段や作戦が、非常に持ってまわったもので、村全体で主人公をあざむいたり、脱出できたように見せかけたりと、大掛かりかつ手間のかかるものばかりなところが、シュールな印象を強めています。
 面白いのは、主人公以外のレギュラーキャラが基本的に登場しないところ。それゆえキャラの掘り下げがなく、人間同士の関係性で話が展開してゆく…ということもありません。主人公を補助するキャラが登場しても、それが敵か見方かもわからないのです(大抵は敵なのですが)。

 主人公含め皆が番号で呼ばれること、舞台となる「村」や登場する機械類やガジェットにどこか「作りもの感」があること、ストーリー自体に抽象性が強いことなど、作品が全体に寓話的な空気を帯びているのも特徴ですね。

 このドラマに登場するユニークなガジェットの一つに、村人を監視・拘束する謎の白い球体「ローヴァー」があります。後半はあまり登場しなくなるのですが、存在感は強烈です。主人公が外部に逃げようとしても、大抵これにつかまってしまうのです。

 傑作エピソードは前半に集中している感じでしょうか。後半はかなりだれるエピソードも多い印象です。ただ最終二話はシュールさの桁が外れている感じで、一見の価値があるかと思います。
 面白かったエピソードとしては、壮大な脱出劇が虚構だったことがわかる第2話「ビックベンの鐘」、秘密を聞き出すため夢をコントロールされるという第3話「A,B&C」、閉鎖された村で行われる選挙を描く皮肉な第4話「われらに自由を」、主人公の偽者を用意し主人公自身が本物を演じている偽者だと思わせるという第5話「暗号」、村全体が突然もぬけの殻になる第7話「皮肉な帰還」、敵のはずの「No.2」を守る羽目になるという第11話「暗殺計画」、人格入れ替わりが行われるSF色の強い第13話「思想転移」などが印象に残ります。

 観ていて、あの作品に設定が似ているな…と思わせることが多いのは、後続の作品に広い影響を与えているという証拠でしょう。閉鎖空間に閉じ込められるというテーマの作品も、現在では珍しくなくなりました。ただ閉鎖空間なのに「デスゲーム」的展開にならないというのもこのドラマのユニークな点ですね。主人公がいくら反抗しようとも、敵の組織は彼を殺そうとはせず、また主人公も相手を殺そうとはしないのです。
 その意味で、主人公と相手の組織との関係は「馴れ合い」と見える部分もあり、作品全体が「箱庭」であるかのような印象も受けます。

 シュールかつ不条理なスリラーです。フランツ・カフカ、ホルヘ・ルイヘ・ボルヘス、ディーノ・ブッツァーティ、カリンティ・フェレンツ。あるいは、リチャード・マシスン、J・G・バラード、トマス・M・ディッシュ。こうした作風の作家が好きな方には、面白く観れるシリーズではないでしょうか。

  ちなみに、尾之上浩司編「『プリズナーNo.6』完全読本」(洋泉社)は非常に参考になるガイドブックで、これを片手に視聴すると、より楽しめるかと思います。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

異世界のオムニバス  ラジオ・サイレンス他監督『サウスバウンド』
B06XZQHMJ2サウスバウンド [DVD]
キングレコード 2017-07-05

by G-Tools

 『サウスバウンド』(2015年 アメリカ)は、砂漠に面した街道を舞台に、それぞれゆるくつながった5つのエピソードを描く、オムニバス・ホラー映画です。それぞれのエピソードは、突然始まり突然終わる…といった感じの不条理感が溢れており、独特の味わいがあります。

ラジオ・サイレンス監督『The Way Out』
 街道を走る車の中の二人の男は血まみれでした。車の後ろからは、謎の怪物が空に浮かんだまま、追いかけてきます。
 立ち寄ったドライブインを出て、再び街道を走っていると、再び同じドライブインの前に来てしまいます。何度行っても同じ場所に戻ってしまうのです。その間にも怪物が近づいてきますが…。

ロクサーヌ・ベンジャミン監督『Siren』
 ガールズバンドを組んでいる3人の若い女性は、乗っている車が街道でパンクしてしまいます。通りかかった夫婦の家に一泊することになった3人でしたが、セイディ以外の2人は、食事に出された異様な肉を食べ、気分を悪くしてしまいます。2人は謎の薬を飲まされた直後、セイディを置いて姿を消してしまいます…。

デビッド・ブルックナー監督『The Accident』
 よそ見運転をしていたルーカスは、道に飛び出してきた女性を轢いてしまいます。救急車を呼ぶものの、場所がわからず呼ぶことができません。救命士から自ら病院へ患者を運ぶように言われたルーカスは、車で病院を探すことになります。
 やがて見つけた病院でしたが、なぜか誰も人がおらず、治療をすることができません。電話の主は、指示をするから、ルーカス自身に治療をして欲しいと話しますが…。

パトリック・ホーバス監督『Jailbreak』
 バーに銃を構えて入ってきた男は、自分は強盗ではない、妹を捜しているだけだと話します。突如、客の一人の手がかぎ爪に変化し、男の背中を襲います。銃で客の手を吹き飛ばした男は、妹を知っているという店主に案内をさせることになりますが…。

ラジオ・サイレンス監督『The Way In』
 夫、妻、娘の家族は、別荘で一家団欒をしていました。ドアを叩く音がしたかと思うと、仮面をかぶった3人の男が押し入ってき、夫妻は拘束されてしまいます。目的は何だと叫ぶ夫ですが、やがて理由に思い至り謝罪を始めます。娘だけは助けてくれと言う夫でしたが…。

 それぞれのエピソードは、ゆるくつながっています。例えば1話の登場人物が入ったモーテルの別の部屋に泊まっていたのが、2話目の主人公たちだったり、という感じです。
 内容はバラエティに富んでいて、1話は謎の怪物、2話はカルト教団、3話は不条理スリラー、4話は怪物の町、5話は集団殺人鬼がテーマとなっています。
 1話に登場する怪物の造形がなかなかユニークで、インパクトがあります。宙を飛ぶ骸骨といった感じの造形なのですが、他のエピソードにもちょこっとずつ顔を出します。5話目で再び怪物の由来にスポットが当たるという構成も見事です。
 5話全てがつながっているといっても、演出上ゆるやかにつながっているというだけです。直接、話がつながっているのは1話と5話だけで、他のエピソードは直接的な世界観はつながっていないようですね。

 一番面白かったのは3話目の『The Accident』。よそ見運転で人を轢いてしまった男が、自分で治療をする羽目になるという不条理スリラーです。
 事故を起こした現場の周りに何もなかったり、たどり着いた病院が無人だったりと、その時点で不条理感が満載なのですが、病院についてからの展開がさらに不条理で強烈です。
 電話でつながった救命士と医者(らしき人物)の指示の通りに、患者の治療を進めることになるのですが、指示通りにするたびに、患者の容態が悪化していくというブラック・ユーモアあふれる作品です。

 他のエピソードにも共通するのですが、起こっている現象や事件に対して説明があまり加えられないのが特徴です。例えば、4話目の怪物のいる世界は何なのか? とか、5話目の夫が過去に犯した罪は何なのか? など、わからないままのことが多く、それがまた不条理感を高めています。
 ただそれゆえに、明快な起承転結を求めるタイプの人には、もやもやした感じを与えがちな作品ではありますね。
 全体の整合性とかバランスなどを考えると「傑作」とは言いにくいのですが、妙な魅力がある作品です。曖昧な点が多いせいもあり、物語の「深読み」が可能であり、その意味で作品世界に広がりがあります。鑑賞した後、誰かと話し合いたくなるような面白さがありますね。

テーマ:ホラー映画 - ジャンル:映画

侵略する雨  イサーク・エスバン監督『ダークレイン』
B01MY27UGVダークレイン [DVD]
アメイジングD.C. 2017-04-05

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 世界中が激しい豪雨に見舞われていたある夜、人里離れたバスの待合所内では、数人の人々がバスを待っていました。しかしバスは数時間も遅れており、一向にやってくる気配がありません。
 客がいらだちを募らせるなか、ウィルスに感染したらしい人間が現れます。やがて一人一人感染者が増えていきますが、なぜか待合所からは出られません。ガラスは防弾になっており、銃ですら開けることができないのです。
 ラジオからは、世界中で同じように、伝染病でパニックが起きているらしいことがわかりますが…。

 イサーク・エスバン監督『ダークレイン』は、1960年代のメキシコを舞台にした超常スリラー映画です。
 序盤から、世界中で何かが起きているらしいこと、バスが一向に現れないこと、待っている客たちがいらだちを募らせていることなどがわかりますが、それに加えて、登場人物たちがどれも不穏な状況を抱えているらしいことが、見ている者の不安に拍車をかけます。
 妻の出産にかけつけようとしている夫、暴力をふるう夫から逃げ出してきた臨月の妊婦、言葉が通じないシャーマンの老婆、反政府運動に従事しているらしい医学生、重い障害がある息子とその母親など。そんな人物たちが閉鎖的な環境に閉じ込められたことから、互いに不信感を抱き、争いが起き始めます。
 ウィルス感染らしき患者が現れたことから、それが政府の陰謀だと思い込んだり、悪魔の呪いだと言い出したりする人間がいるなか、とうとう暴力が発生してしまいます。

 作品のメインとなる「病」が単なる病気というよりは、超自然的な様相を持つものなので、「病」の原因は合理的なものではないことが予想はできるのですが、加えて、一向にやまない雨や、なぜか出ることのできない待合所などの要素も、超自然的な印象を高めます。
 出来事の原因や全体像が一向につかめない中盤までの展開は、とてもサスペンスフルです。中盤あたりから事態の原因がなんとなくわかってくるのですが、そこからはまた別の異様な要素が投入され、違った味わいの作品になっていきます。

 舞台は、ほぼ待合室の中だけに限定されています。おそらく低予算ゆえなのでしょうが、待合室の外、そして世界がどうなっているかが全くわからず、ラジオから断片的な情報だけが流れてくるという演出が、観ている者の想像力を高めます。
 また、「病」が蔓延した結果、世界中が変化してしまうのですが、その「病」の内容が人間の本質を問うものであったり、1960年代という時代が登場人物の設定に深みを与えるなど、いろいろと細かい部分で工夫がされています。

 監督のイサーク・エスバンは、ループものの新機軸というべき『パラドクス』を撮った人ですが、本作も、単純なSFやホラーには当てはまらない怪作です。前作もそうですが、SFやホラーに、ちょっと哲学的なスパイスを利かせた感じの作風が特徴です。
 この監督、非常に癖があるので、一般受けは難しいかもしれませんが、非常に独創的な作品を作る人なので、次回作が楽しみですね。

テーマ:洋画 - ジャンル:映画

『新トワイライトゾーン』第3シーズン完結
ミステリー・ゾーンDVDコレクション(75) 2016年 7/20 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(76) 2016年 8/3 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(77) 2016年 8/17 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(79) 2016年 9/14 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(80) 2016年 9/28 号 [雑誌]: ミステリー・ゾーンDVDコレクション 増刊 ミステリー・ゾーンDVDコレクション(82) 2016年 10/26 号 [雑誌]: 増刊
 DVDマガジンで刊行されてきた『ミステリーゾーン』にて、『新トワイライトゾーン』の第3シーズンが完結しました。第3シーズンは、大部分がカナダで作成されたシリーズらしいのですが、一番の特徴は、J・マイケル・ストラジンスキーが脚本家として関わっているということ。
 ストラジンスキーは、自らの脚本をノベライズした短篇集『新トワイライトゾーン』(扶桑社ミステリー)を刊行しており、日本でも1991年に邦訳が刊行されています。この作品集が非常に面白かったため、第3シーズンが実際に視聴できる日を心待ちにしていました。
 以下、面白かったエピソードを紹介しておきたいと思います。

『猿の大群』
 ある夜、突然、年配の女性が目がおかしいと、病院に駆け込んできます。診察を待つ間に失明してしまった女性に驚く医者でしたが、翌日から世界中で同じように失明してしまう人間が現れ始めます…。
 なぜ、大量の人間が失明し始めたのか? 寓意性の強いミステリアスなエピソードです。

『テレビタレント』
 平凡な男ジョンは、洗面所で髭を剃っていた際に、ふとしたことから隠しカメラを見つけます。なんと彼の日常生活はテレビで放映され、いつの間にかスターになっていたのです…。
 映画『トゥルーマン・ショー』の先駆といえるアイディアが使われています。自分の人生そのものが虚構なのではないか…?という、深いテーマを含んだ佳作。

『特異な症例』
 精神科医のもとに、女性たちが相談に訪れます。エドガー老人が様々ながらくたを溜め込んだうえに、さらに新しいがらくたを探しているというのです。老人によれば、それらの品物は世界を救うために必要だというのですが…。
 世界のバランスはがらくたの上にできている…という、冗談のようなコメディSF。

『曲がり角』
 小児病棟を建設するために奔走している神父のマークは、あるとき、一台の赤い車が事故に遭い炎上するところを目撃します。しかしその光景はマークにしか見えないのです…。
 自分のなすべきことは何なのか? 罪の意識が見させる幻影なのか? 静けさに満ちた作品です。

『不思議な旅』
 治療士メアリーの仕事は、催眠術により患者の前世の記憶を呼び起こし治療するというものでした。ある日目覚めると、メアリーは、あらゆる人間が自分の前世について知っているという世界に転移していたのです…。
 主人公の設定もユニークなのですが、その設定を反転させたかのような別世界を登場させるという、アイディア勝ちのようなエピソードです。

『生への執念』
 老婦人セリーナは、死に直面していました。彼女の面倒を見るためにやってきた姪のデボラの手をつかんだ直後、セリーナは元気を取り戻します。セリーナが活気を取り戻すにしたがって、デボラは衰弱してきますが…。
 ロッド・サーリングの原案を、ストラジンスキーが小説化したという、文字通りサーリングの「新作」というべきエピソード。ゴシック風の雰囲気といい、ストーリーは面白いのですが、やはり尺が足りない憾みが残りますね。

『怒りの化身』
 主婦ルイーズは、夫から日常的に虐待を受けていました。ある日以来、ルイーズが怒りを感じると、本物のドーベルマンが現れるようになりますが…。
 ドーベルマンは、自分でも制御できない怒りの象徴なのか? 現代的なテーマを扱った意欲作。

『トランク』
 ホテルで働く純朴な青年ウィリーは、ある日、客室に置き忘れたトランクを見つけます。そのトランクは願えば、願ったとおりのものが現れるという不思議な力を持っていたのです。トランクの力を使い、いろんな品物を用意した彼はパーティを開いて、周りの人間たちを招待しますが…。
 本当の幸福は物質的なものにはない…という作品。

『約束』
 心臓移植の手術を終えたトムは、以前とは変わった行動を取るようになっていました。そして、散歩中に見かけたある女性に妙に心を惹かれるようになります。ウエイトレスとして働く女性のお店に通い、アプローチを続けるトムでしたが、相手には全くその気はありません…。
 序盤からネタが割れるような話ではあるのですが、当然ハッピーエンドになるのだろうな…という結末がそうならないところに、妙なオリジナリティを感じます。ある意味モダンな結末ですね。

『宇宙の法則』
 宇宙船のパイロット、トーマスは、熱病の血清をある星に届ける任務に当たっていました。最速で薬を届けるため、船には余計な荷物はなく、燃料も必要最低限しか積んでいません。ところが、その船に兄に会うために密航した少女がいることが発覚しますが…。
 少女の命と大量の人々の命、どちらかを捨てなければならないとき、人はどうすべきなのか? 究極の決断を描いた、トム・ゴドウィンの傑作短篇『冷たい方程式』の映像化作品です。シンプルな構造の原作だけに、映像化しても心に沁みる作品でした。

『壁の中の顔』
 ある療養所に赴任してきた精神科医マロリー。そこで出会った患者のジャロンは、部屋のシミや服の柄などに極度の恐怖を抱いていました。彼女の恐怖の秘密を探ろうと考えるマロリーでしたが…。
 壁の中には何がひそんでいるのか…? 正体がはっきりしないだけに、なかなか不気味なホラー・ストーリーでした。

『危険なチャレンジ』
 自分をビリヤードの達人と信じるジェシーは、今は亡き伝説の名人ビッグ・ブラウンの名を叫び、自分と勝負しろと叫びます。すると死んだはずのビッグ・ブラウン本人が現れ、彼と命をかけた勝負をしようと持ちかけてきますが…。
 オリジナル版の1エピソードのリメイク的作品ですが、なんとオリジナルとは異なる結末になっています。作品単体としてはどうということはないのですが、オリジナルエピソードを見ていると楽しめる作品ですね。

『信念の脱出』
 戦争につながる研究をしていたマーティンは、その研究を狙う組織に監禁され、拷問されていました。ある時、同じ独房に投獄されてきた男は、彼を助けに来たと放します。彼によれば、精神的な力でいつでも別の世界に脱出できるというのです。半信半疑のマーティンでしたが…。
 なんとなくオチの予想はつくのですが、さらにそれをひっくり返すオチがつくという、なかなか面白い作品です。精神的な脱出というテーマは、ジャック・ロンドン『星を駆けるもの』を思わせます。

『記憶の値段』
 失職したフォスターは、金を引き換えに質屋に記憶を売ってしまいます。ほんの少しだけと思いながら、何度も記憶を売っていった彼は大部分の記憶を失ってしまいますが…。
 アイディアはいいのですが、記憶のディテールが粗かったりと演出面で弱く、インパクトの薄い作品になっています。もったいない作品ですね。

『霊界のランデブー』
 老女バーバラは、死に取り憑かれていました。無関係な人の葬式に現れては、感銘を受けていたのです。自らも死を望む彼女の態度は、息子からも非難を受けていました。ある夜、瀕死の強盗が家に侵入しますが、バーバラは、彼が死にかけているのを静かに見つめ続けます…。
 死を追い求める老女という、何やらブラッドベリ風の空気に満ちたファンタジー。

『生の証明』
 79歳の経営者ダリアスは、本来なら死んでいたところを、人工の脳と体を手に入れることによって甦ります。精力的に働き始めた彼に対し、父親は死んだと信じるマイケルは、訴訟を起こしますが…。
 機械化された人間は本当に人間といえるのか…? 人工の脳は人間と見なせるのかという、現代的なテーマを扱った作品。30分で終わらせるにはもったいないですね。

 第3シーズンは、正直、平凡な作品が多かった印象です。ストラジンスキーが絡んだ作品はそれなりに面白く観れるのですが、小説版を先に読んでいると、やはり描写の足りないテレビ作品の方は貧弱に感じられてしまいますね。

 とりあえず、これで『ミステリーゾーン』『新トワイライトゾーン』のシリーズは全て視聴したことになります(未収録のエピソードも何話かありますが)。シリーズ開始から完結まで、3年半ぐらいでしたでしょうか。非常に長かった。
 ロッド・サーリング、リチャード・マシスン、チャールズ・ボーモントといった異色作家たちによるエピソードは、今観ても非常に面白いものが多かった反面、非常に古びてしまったエピソードも多かったです。
 時代的には新しい1980年代の『新トワイライトゾーン』のエピソードの方が、『ミステリーゾーン』のエピソードよりも古びているパターンもあり、それだけに、オリジナル版におけるサーリングの存在感を認識させられました。
 全体的に見ると、やはり一つ一つのエピソードの完成度は『新トワイライトゾーン』よりも、オリジナルの『ミステリーゾーン』の方が遙かに高い、というのは事実だと思います。
 ただ、『新』を含めて、観る《異色作家短篇集》とでもいうべきこのシリーズを通して視聴できたことは、このジャンルのファンとしては、長年の課題の一つを解決できたようで、ちょっとホッとしています。

テーマ:海外ドラマ(欧米) - ジャンル:テレビ・ラジオ

『新トワイライトゾーン』第2シーズン完結
ミステリー・ゾーンDVDコレクション(69) 2016年 4/27 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(70) 2016年 5/11 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(71) 2016年 5/25 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(72) 2016年 6/8 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(73) 2016年 6/22 号 [雑誌]
 DVDマガジンが刊行中の『ミステリーゾーン』、74巻にて『新トワイライトゾーン』の第2シーズンが完結しました。第1シーズンに関しては、ビデオで視聴していましたが、この第2シーズンからは、初見になります。
 以下、印象に残ったエピソードについて、まとめてみたいと思います。


『永遠の王』
 プレスリーのものまね歌手のゲーリーは、ある日、車の事故を起こしてしまいますが、事故の相手は何とプレスリー本人でした。いつの間にか、デビュー前のプレスリーの生きる時代にタイプスリップしていたのです。自分との接触によって、プレスリーの未来が変わる可能性に思い至ったゲーリーは、彼を説得しようとしますが…。
 脚本は、ジョージ・R・R・マーティン。過去の有名人との接触によって、人生に展望が開ける話…と思いきや、徹底的にダークな展開になるのが面白いですね。

『孤独の受け皿』
 ウェイトレスとして働くマーガレットは、孤独な女性でした。ある日、飛来したUFOとの接触によって、彼女は一躍時の人となりますが、やがてそれが原因でさらに孤独をかこつことになります…。
 原作は、シオドア・スタージョンの名作『孤独の円盤』。原作の味を上手く映像化している、名エピソードだと思います。

『生命の水』
 ニュースキャスターのクリスティは、容姿の衰えを気にしていました。同僚が勧めてきた若返りの水を試したところ、肌が若返ったことに喜びますが、その水には恐ろしい副作用がありました…。
 魔法のアイテムには落とし穴が…というタイプの作品ですが、予想外の結末で、後味はよい作品ですね。

『ストーリーテラー』
 かって僻地の村で教員として働いていたドロシーは、図書館で昔教えた少年マイカの面影を持つ男性を目撃し、そのあとを追うことになります。その少年は、授業中、ずっとノートに物語を書き続けていたのですが、彼にはそうする理由があったのです…。
 年老いた教員が、かっての教え子に出会い、過去を回想するという形式になっていますが、それが長い時間が経ったことを表現しており、物語の内容的にも必然性を伴っているのが上手いです。第2シーズン中の傑作エピソードの一つだと思います。

『世界の隣に』
 役に立たない物ばかりを作っている発明家バーニーは、毎晩別の世界の夢を見ていました。そこでは、彼は偉大な発明家なのです。やがてある日、地下室の扉からその別世界への入り口を発見しますが…。
 自分が重要人物であるという、願望充足的なパラレルワールドが登場するのですが、普通の文明の利器が発明されず、バーニーのへんてこな発明が一世を風靡しているという、奇妙な世界観が魅力的です。

『キャリバンのおもちゃ』
 老夫婦と、知的障害のあるその息子トビー。トビーには、絵で見たものを現実に実体化させるという超能力がありました。彼の能力が世間に迷惑をかけないよう、夫婦は彼を厳重に監視していました…。
 ジョージ・R・R・マーティン脚本。絶大な能力を持ちながらも、それを制御できない息子と、あくまで息子を愛する両親の家族愛を軸に描いた作品です。結末もこうならざるを得ないという意味で、完成された感があります。

『囚人のピアノ』
 無実の罪で刑務所に服役するピアニストのリックは、喧嘩の仲裁をきっかけにエディという老人と友人になります。彼から倉庫にあるピアノを弾いてほしいと頼まれたリックは、さっそくピアノを奏でますが、そのピアノには奏でたメロディーの時代へとタイプスリップする力があったのです…。
 ピアノの能力を利用して脱獄を図るのか、と思いきや、そう単純な話にならないところがミソ。ピアノが刑務所にあった由来や、エディの因縁も解消されたりと、伏線が上手く消化されるところが小気味よい秀作だと思います。

『クレジットカード』
 浪費癖のある主婦リンダは、滞納を続けて、カードを契約できない状態になっていました。ある日、彼女のもとにあるカード会社から勧誘があり、よく考えもせずに契約をしてしまいます。さっそく滞納をするリンダでしたが、それと同時に飼い猫が消えてしまいます…。
 いわゆる「悪魔との契約」テーマを扱っていますが、舞台は現代的。ブラックなストーリーが楽しい一篇です。

『シェルター・スケルター』
 ハリーは、用心深い性格で地下に秘密の核シェルターを作っていました。妻子が義姉の家に出かけた晩、家の近くで核爆発が起こります。たまたま居合わせた友人とともに、シェルターに非難するハリーでしたが、やがてシェルター内で諍いが起き始めます…。
 行動力があるものの、自尊心が高く自分勝手な男の運命とは…。皮肉な結末もなかなか。

『プライベート・チャンネル』
 飛行機の中でも携帯ラジオを離さない少年キース。トイレの洗面台で落としたラジオのイヤフォンをつけたとたん、周りの人間の心の声が聞こえることになります。隣の席の男が飛行機の爆破を考えていることを知ったキースは、彼を説得しようとしますが…。
 主人公であるキースが、前半では頭のからっぽな少年というイメージで描かれますが、後半では他人の心を変えようと奔走する真摯な少年に変わってゆくという、成長物語的な側面が強いエピソードです。

『未来へのレクイエム』
 部屋でピアノを弾く、作曲家のピンキーの前に、悪魔を名乗る男が現れます。彼はピンキーはすでに死んでおり、ピアノの演奏を時々披露してくれる代わりに、ピンキーの願いをかなえようと話しますが…。
 自分の単なる欲望から始まった願いが、やがて他人を救う事へとつながり、そして主人公自身の人生の意味をも変えることになるという、多様な要素がつまった傑作エピソード。第2シーズンでは最高のエピソードではないでしょうか。


 全体的にこの第2シーズン、エピソードごとの出来不出来が激しい気がします。第1シーズンは、もちろんつまらないエピソードもあるのですが、わりあい水準以上の作が多い印象があるのですが、第2シーズンは、傑作もあるかわりに、かなり退屈なエピソードもあるといった感じですね。
 第3シーズンも続けて期待したいと思います。

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『新トワイライトゾーン』第1シーズン完結
ミステリー・ゾーンDVDコレクション(62) 2016年 1/20 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(64) 2016年 2/17 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(65) 2016年 3/2 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(66) 2016年 3/16 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(67) 2016年 3/30 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(68) 2016年 4/13 号 [雑誌]
 DVDマガジンが刊行中の『ミステリーゾーン』、68巻にて『新トワイライトゾーン』の第1シーズンが完結しました。第1シーズンに関しては、日本でもビデオ化されていたため、ほぼ再見になります。ただ、観たのは30年近く前なので、初めて観るような気分で楽しめました。
 第1シーズンの総括的な意味で、ちょっとまとめておきたいと思います。

 全体的に玉石混交だな、というのが正直な感想です。エピソードごとの出来不出来が、非常に激しいのです。旧シリーズ(『ミステリーゾーン』)のように、ロッド・サーリングという強烈な個性が仕切っているわけではないので、シリーズを通して一貫性のようなものが少ないのですよね。
 逆に言うと、バラエティに富んでいる、ともいえます。SF、ファンタジー、ホラーと、いろいろなジャンルの作品を詰め込んでいて、ある種、何でもありの楽しさがあります。旧シリーズでは少なかったコメディタッチの作品や、本格的な怪奇物があったりするのも嬉しいところです。

 印象に残ったエピソードを挙げておきましょう。以前の記事で、序盤のいくつかのエピソードを紹介しているので、それ以降の作品を挙げてみます。

『復讐のハイヒール』
 気弱な女性マディは古着屋で働いています。ある日、店に亡くなった女性の遺品が送られてきますが、その中にあったハイヒールを履いたマディは、態度が豹変してしまいます…。
 チャールズ・ボーモント脚本の旧シリーズ作のリメイクですが、設定だけを使い、中身は全く別の話になっています。旧作と比べると、やはりモダンな印象です。この設定、話に広がりがあるので、映画化したら面白くなりそうな感じがしますね。

『解禁日』
 親友カールの妻サリーと不倫をしているジョーは、猟の解禁日にカールを殺害してしまいます。しかし気がつくと、自分はサリーと結婚しており、子供たちは自分のことを父親と呼ぶのです…。
 結局、誰が誰を殺したのか…? 主人公が体験する出来事は真実なのか? ミステリアスかつ幻想的な雰囲気のエピソードです。シリーズ屈指の作品ではないでしょうか。

『時空を超えて』
 常に怒りを抱えている作家のガスは、ささいなことから、子供時代から大切にしているオモチャを壊してしまいます。少年時代をすごしたオハイオに行くことを思い立ったガスは、そこで孤独な少年と出会い、親交を深めることになります…。
 少年時代の自分と向き合うことになるという、オーソドックスなテーマながら、味わいのあるエピソードです。原作はハーラン・エリスン。

『さまよえる魂』
 二人の科学者ケビンとダンは、ホログラムの研究を行っていました。ある日、プログラムした覚えのない人間の胎児がプロジェクターに現れ、だんだんと成長をしていきます。ケビンは、亡くなった女性の魂が機械に紛れこんだのではないかと考えますが…。
 あっという間に歳をとるホログラム内の女性に対し、思い入れをしてしまう科学者。必ず来る別れのときを、彼はどう迎えるのか? 壊れかかった夫婦の仲をからめて描く、意欲的なヒューマン・ストーリーです。監督は、ウェス・クレイヴン。

『コピー』
 秘書のカレンは、職場のボスから酷い扱いを受けていました。クリスマスの日に、大量のコピーをいいつけられたカレンは、見慣れないコピー機でコピーをとりますが、その直後から彼女を見る周りの目が変わったことに気がつきます…。
 異世界を行き来できるコピー機を扱った、コミカルなファンタジーです。

『現像』
 写真家のダニエルは、祖母の遺品の中から、フィルムが入ったままの古いカメラを見つけます。そのフィルムには、過去に行われた先住民族調査の記録が残っていました。彼らは、写真を写されると魂を奪われると信じていたというのですが…。
 写真によって魂を奪われる、というアイディア・ストーリー。後半の緊迫感はなかなかです。

『時のすきま』
 若夫婦が目を覚ますと、玄関の方で物音がしているのに気がつきます。黒ずくめの男たちが家具をどんどん運びだしているのです。夫婦が止めようとしても、彼らは気にかけません。外に出た夫婦は、周りの家には住民がおらず、自宅と同じように、黒ずくめの男たちが片づけをし続けているのを見て驚きますが…。
 時間のはさまに落ち込んでしまった夫婦を描くコミカルSF作品。馬鹿らしいアイディアながら、観ていてじつに楽しいエピソードです。原作はシオドア・スタージョン『昨日は月曜日だった』

『無視刑囚』
 その社会では、冷淡な人間は周りの人間から無視をされる「無視刑」を科されていました。無視刑囚となったミッチェルは、やりたい放題を繰り返しますが、やがて孤独から精神を病んでいきます…。
 人間は孤独では生きていけない…というテーゼをわかりやすく描いた作品です。盲人が主人公と会話をしている最中に、突然気がついて立ち去る…というシーンが印象的です。ヒューマニズム溢れる結末も見事ですね。原作はロバート・シルヴァーバーグ。

『意識の空白』
 技術者のフォアマンは、不治の病のため、冷凍睡眠に入っていました。未来で目覚めた彼が目にしたのは、科学ではなく精神的能力で運営されている社会でした。隕石衝突を防ぐために、彼の技術が必要だと知ったフォアマンは協力を惜しみませんが…。
 科学技術の発展を棄てた未来社会で、過去の価値観に囚われた男は社会に順応できるのか? そして彼の使命とは…? 文明批判の趣もある本格SFストーリーです。

『おばあちゃん』
 少年ジョージィは、兄の見舞いに出かけた母親の留守中に、祖母の面倒を見るように言いつけられていました。常日頃、祖母を怖がっているジョージィは、母親が帰ってくる前に、祖母が死んだらどうしようかと不安にかられます…。
 過去に暗いうわさの耐えなかった祖母の最期とは…。クトゥルー神話のバリエーション作品ですね。原作は、スティーヴン・キング『おばあちゃん』。近年、『スティーヴン・キング 血の儀式』として映画化もされています。

『銀貨の横顔』
 ハーバード大学教授フィッツジェラルド。彼は200年未来からやってきた時間旅行者でした。先祖でもあるケネディの暗殺を調査しにやってきていたのです。暗殺現場に立ち会った彼は、衝動的にケネディの暗殺を阻止してしまいますが、それが原因で歴史が変わりつつありました…。
 時間改変もの作品です。ケネディの死は避けられないという歴史的事実と、先祖でもあるケネディを助けたいという思いの葛藤が見所です。

『欲望のボタン』
 いさかいの耐えない夫婦のもとに送られてきた謎のボタン。やってきた男が言うには、そのボタンを押せば、誰か見知らぬ人間が死に、その代わりに大金が手に入る、というのです。妻は、考えた末にボタンを押してしまいますが…。
 見知らぬ人間であれば死んでもいいのか? という倫理的なテーマをはらみながらも、自分も他人にとっては「見知らぬ人間」に過ぎないのではないか…という疑問を抱かせる演出もなかなか。リチャード・マシスンの原作とは異なる結末ですが、これはこれで味わい深いですね。

『恐怖のメッセージ』
 とある町で広がっているという伝染病について調べるため、派遣された調査員エドワード。あらゆる人間に感染するというその病は、人の正気を失わせるというのです。病の元が、かって東洋を研究していた男にあることを突き止めたエドワードでしたが…。
 人間の正気を失わせる「恐怖のメッセージ」。メッセージの内容は全く描かれず、ただ狂気が伝染してゆくという、淡々とした演出が恐怖感を高めます。原作は、シドニー・シェルダン。

『赤い雪』
 北極圏で党員が謎の死を遂げたことから、調査に派遣されたKGBのウラノフ。調査の結果、党員の死は殺人であったことを知ります。過酷な村に隠された秘密を知ったウラノフは、自らの理想と義務に向き合うことになりますが…。
 管理された社会、過酷な僻地の生活。理想に破れた男が出会った真実とは…? 社会批判的なテーマもはらんだ本格怪奇譚です。映像的な見せ場も多く、密度の高いエピソードです。

『永遠のエンターティナー』
 トップコメディアンのビリーは、銃を持った売れないコメディアンともみ合いになった結果、撃たれてしまいます。薄暗い場所で気がついたビリーは、見知らぬ男に舞台に立たされることになりますが、そこでは、自分の罪を告白するたびに、観客が拍手喝采するのです…。
 これは試練なのか、それとも罰なのか…? 華やかな舞台が絶望に変わるラストシーンは印象的です。皮肉に満ちたエピソード。

『ライフ・ライブラリー』
 個人図書館で働くことになったエリーは、蔵書が全て人の名前になっていることに気がつきます。本には、生きているあらゆる人間の人生が描かれているのです。本に改ざんを加えると、その人の人生が変わってしまうことを知ったエリーは、他人の人生を変え始めますが…。
 ほころびを繕うために行った改ざんが、さらに事態を悪化させていきます。やっかいな隣人の人生を変えたと思ったら、その影響が別の人間に影響し、と連鎖的に世界が変わってしまうという設定が面白いですね。

『ナイトメア』
 アダム・グラントは被告席で死刑を宣告されますが、これは自分の夢に過ぎないと言い張ります。自分が死ねば、この世界そのものが消えるのだと。彼の言葉を信じる弁護人は、検察官を説得して死刑を中止させようと奔走しますが…。
 旧作シリーズのリメイクです。脚本はチャールズ・ボーモント、原作小説は『トロイメライ』
 舞台となる刑務所の描写がリアルで緊迫感があります。死刑執行時間までに事態を止められるか? といったタイムリミット・サスペンスの要素もあります。旧シリーズ版同様、リメイク版もなかなかの傑作エピソードだと思います。

 さて、次巻より第2シーズンが始まります。69巻の収録エピソードには、シオドア・スタージョンの名作『孤独の円盤』のタイトルも見え、観賞が楽しみです。

テーマ:海外ドラマ - ジャンル:映画

最近のホラー映画から
 ホラー映画が大好きでよく観るのですが、最近続けて観た作品が秀作ぞろいだったので、まとめて紹介したいと思います。


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TCエンタテインメント 2016-02-03

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『私はゴースト』(H・P・メンドーサ監督 アメリカ 2012年)

 大きな屋敷に一人で暮らす女性エミリーは、時折、家の中で違和感を感じつつも暮らしていました。やがて寝室で、自分に話しかける女性の声を聞きます。シルヴィアと名乗る彼女は、驚くべきことを言い出します。エミリーは既に死んでおり、それに気付いていないというのです。霊媒師であるシルヴィアは、エミリーの因果を解き明かせば、成仏できると話しますが…。

 除霊を扱った作品なのですが、なんと、視点を霊の側に置いたという、新感覚の作品です。除霊といっても、儀式とかお祓いをするわけではなく、死者に自分の死を自覚させるというもの。
 しかしエミリーの場合、その生い立ちや死の状況が特殊であったため、死の自覚だけではなく、死に至る理由を解き明かさねばならないのです。エミリーの生前の心理や生い立ちなどを探っていく過程は、なかなかスリリングで、いわば、霊媒師シルヴィアによる、エミリーのセラピーといった形をとります。
 基本的には二人(といっても一人は声だけですが)だけなので、後半までは、かなり地味な展開で、少々退屈するのも事実です。しかし、これはホラーじゃなくて、ミステリーじゃないのかな、と疑問を抱き始めた矢先の急展開がすさまじく、前半が「ため」だったと考えると、もの凄い演出ですね。
 「ゴースト・ストーリー」の新しい形といえる作品で、これは一見の価値があると思います。



B018RFB4C2400デイズ [DVD]
マット・オスターマン
アルバトロス 2016-02-03

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『400デイズ』(マット・オスターマン監督 アメリカ 2015年)

 宇宙探査旅行のシミュレーションとして、候補生の男女4人が、宇宙船内部を模して地下に作られた施設で400日間を過ごすことになります。訓練の途中で、本部との通信が途絶えてしまいますが、これも訓練の一環と考え、そのまま生活を続行することになります。
 訓練の終わりが近づいたある日、突如ハッチを叩く音が聞こえます。4人は訓練を中断し、外に出ますが、そこで見たのは、荒野と化した地表でした…。

 世間と切り離された環境で過ごしている間に、地球に何が起こったのか? 人類は絶滅してしまったのか? 説明してくれる人間は見つからず、砂埃に覆われた地表を宇宙服を着たまま歩き回るシーンは、不条理感に満ちています。
 地表が激変した理由が明確に語られず、登場人物たちの結末についてもはっきりしません。そのため「投げっぱなし」という評もあるようですが、ホラー作品として考えると、これはこれでありだと思います。



B00UULR6CYオキュラス/怨霊鏡 [DVD]
インターフィルム 2015-06-03

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『オキュラス/怨霊鏡』(マイク・フラナガン監督 アメリカ 2013年)

 両親と幸せに暮らしていた姉ケイリーと弟ティム。しかしあるときを境に、父母の様子がおかしくなります。父は母を殺害し、自らも射殺されてしまうのです。弟ティムは父親の殺害犯として捕らえられ、精神病院に送られてしまいます。
 ケイリーは、自宅にあった鏡が呪われた品物であり、父母がおかしくなった原因だと考えていました。再び鏡を手に入れたケイリーは、退院したティムとともに、鏡を破壊する計画を立てますが…。

 呪われた鏡「ラッサーの鏡」の存在感が半端ありません。影響力を及ぼした人間の精神を狂わせ、現実と幻を混同させるのです。鏡の力を知ったケイリーは、綿密に計画を立てます。真正面から壊そうとしても、自分が逆に殺されてしまう可能性があるのです。
 自分たちの姿を録画したり、定期的に恋人から電話連絡が来るようにするなどの対策を取ります。極めつけは、タイマーで一定時間後に作動する錨。自分たちに何かあった場合には、鏡が自動的に破壊されるようにする仕組みなのです。
 しかし、これだけの用意をしたにもかかわらず、姉弟は精神を翻弄されてしまうのです。

 子供時代の惨劇を描く過去パートと、成人した姉弟が鏡に挑む現代パートとが同時進行する過程はサスペンスたっぷり。過去パートの映像が、現代パートの幻影としても描かれるあたりの演出は素晴らしいです。
 鏡の力で幻覚が起こることが示されるため、登場人物たちの行動が現実なのか、幻覚なのかが観客まで段々わからなくなってきます。暴力やスプラッタシーンではなく、純粋に心理的な恐怖感とサスペンスで見せる技巧作です。



B017B9AZ70パラドクス [DVD]
アメイジングD.C. 2016-02-03

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『パラドクス』(イサーク・エスバン監督 メキシコ 2014年)
 
 刑事に追われた犯罪者の兄弟は、マンションの非常階段に逃げ込みますが、刑事の発砲した弾丸で兄は負傷し、逃亡をあきらめます。しかし、非常階段のドアから出ようとしても、ドアはどこの階も開かないのです。
 しかも、階段は上っても下っても、同じところに戻ってきてしまいます。階段内に設置された自動販売機の飲食物は、食べてもなぜか補充されるため、食料には困りません。しかし負傷した兄は、衰弱し、死が近づいていました…。
 一方、幼い兄妹は、義父と母とともに、車で旅行に出かけます。家族は、車で一本道を走っている途中、何度も前に来たところを走っていることに気がつきます。道だけでなく、左右からどこかに行こうとしても、同じところに戻ってきてしまうのです。やがて妹が喘息の発作を起こしますが、唯一の吸入器を義父が誤って壊してしまいます…。

 特定の空間に閉じ込められた人々を描く、いわゆる《ループもの》作品のバリエーションと言えるのですが、作品内では時間は経過し、登場人物は歳を取るので、ループしているのは、あくまで空間です。
 この手のジャンルでは、時間にせよ空間にせよ、閉じ込められたループ内からいかに脱出するか?というのがテーマになると思うのですが、この『パラドクス』はその点、じつにユニークです。
 脱出の試みは確かになされるのですが、それはすぐに失敗してしまいます。その後、閉じ込められた空間内でいかに生きていくのか?という点に焦点が当てられるのです。
 閉じ込められた人々のうち、年上の人々はすぐに諦め自暴自棄になったり、錯乱したりします。それに対して、子供や若者は体を鍛え、日常生活が送れる環境を自ら作り上げるのです。
 ループをすると、食料や持っていた荷物などの物質が元に戻る(物が増える)ため、それを使って、生活用具を作れます。例えば、ペットボトルを糸で大量に吊るし、シャワー代わりにしたりと、手持ちのアイテムを上手く使って、日常生活を生きるために利用します。このあたりの描写はアイディアに富んでいて、映像で見せられると新鮮な驚きがあります。

 階段に閉じ込められた兄弟がかばんの中に持っていたペーパーバックのタイトルがフィリップ・K・ディックの『時は乱れて』だったり、一本道に閉じ込められる家族の家に飾ってあるのが、エッシャーの版画だったりと、細かい小道具が作品のテーマを象徴しています。
 また、全編を通して、シューマンの交響曲4番が上手く使われていて、作品を引き立てます。

 ループの理由については、結末で明かされますが、作品内で語られる2つの事例が、さらに他の事例につながっているという、まるでエッシャーの版画を思わせるような作りになっています。
 もし自分がこの環境に置かれたら…と、思わず想像してしまうようなリアリティがあり、想像すると心底から怖くなってしまうような迫力があります。SFホラー映画の傑作といっていいでしょう。

 『パラドクス』を観ていて、《ループもの》についての興味が再燃したので、次回は、ちょっと《ループもの》について、書いてみたいと思います。

テーマ:ホラー - ジャンル:映画

運命を告げる家  アレハンドロ・イダルゴ監督『マザーハウス 恐怖の使者』
B014SMNQR4マザーハウス 恐怖の使者 [DVD]
アメイジングD.C. 2015-12-02

by G-Tools

 アレハンドロ・イダルゴ監督『マザーハウス 恐怖の使者』(2013 ベネズエラ)は、珍しいベネズエラ製ホラー作品です。

 主婦のドゥルセは、失業中の夫と二人の息子の四人家族で暮らしていました。ある夜、夫は殺され、長男のレオポルドが行方不明になります。
 凶器のナイフに指紋があったことから、夫と息子を殺した犯人とされたドゥルセは逮捕され、終身刑になってしまいます。
 30年後、保釈されたドゥルセは、自宅に戻ってきます。カウンセリングをすることになった神父は、母親が子供を殺すわけがないという信念から、30年前の事件の謎を調べ始めます。
 やがてドゥルセ一家が住んでいた家が、イギリス人の建築家によって100年以上前に建てられたこと、この家に住んでいた家族が皆姿を消しているという事実が判明しますが…。

 30年後のドゥルセと神父の現代パートと、30年前の家族の生活を描く過去パートが交互に展開されていきます。
 過去パートで、殺人事件が起きる前、家に何者かが侵入するという事件があったことがわかります。その際、子供二人が何者かに遭遇したことが仄めかされますが、はっきりした事実は示されません。
 この部分に限らず、何気ない日常生活描写にそれぞれ伏線が含まれており、後半になって、その意味がわかるという仕組みになっています。
 例えば、母親が息子にお守りとしてムーンストーンを渡すシーンがあります。このムーンストーンが様々な人の手に渡っていくのですが、その流れが実に見事。
 溜めに溜めた伏線が、後半30分ぐらいで一気に明かされる展開はすごいの一言です。クライマックスでは、なんと、三つの時間軸のエピソードが、同時に同じ家の中で展開されるのです。

 オカルトホラーという謳い文句から、典型的なお化け屋敷ものを想像しますが、実は少しジャンルの異なる作品です。
 序盤は明らかにお化け屋敷ものフォーマットに則った展開で、超自然的な怪物なり幽霊なりがいつ出るのか? といった興味で見る人が多いかと思います。そして、お化け屋敷ものとして観てしまうと、少々冗長なのも確かなのです。
 ただ、後半に伏線が回収されてみると、それまで冗長に感じていた前半の描写に新たな意味が与えられ、結末においても非常なカタルシスを得ることができます。
 先入観を抱かずに、まっさらの状態で観てもらうと、より楽しめる作品ですね。

テーマ:ホラー - ジャンル:映画



プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
2019年10月に作成した「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」を盛林堂書房さんで通信販売中です。
2019年12月に同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を刊行予定(盛林堂書房さんで通販予定です)。



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