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2月の気になる新刊
2月6日刊 シッゲ・エクランド『迷路の少女』(ハヤカワ文庫NV 予価1296円)
2月6日刊 エラン・マスタイ『時空のゆりかご』(ハヤカワ文庫SF 予価1188円)
2月7日刊 尾之上浩司編『ゴースト・ハンターズ完全読本 怪異を追う者たち『事件記者コルチャック』から『死霊館』まで』(洋泉社 予価2160円)
2月9日刊 長山靖生編『丘の上 豊島与志雄 メランコリー幻想集』(彩流社 予価2592円)
2月10日刊 山白朝子『私の頭が正常であったなら』(角川書店 予価1620円)
2月19日刊 イサベル・アジェンデ『日本人の恋びと』(河出書房新社 予価3024円)
2月20日刊 ケン・リュウ編『現代中国SFアンソロジー 折りたたみ北京』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 予価2052円)
2月20日刊 トマス・ペリー『アベルVSホイト』(ハヤカワ文庫NV 予価994円)
2月21日刊 ピーター・スワンソン『そしてミランダを殺す』(創元推理文庫 予価1188円)
2月21日刊 日下三蔵編 小泉喜美子『月下の蘭/殺人はちょっと面倒』(創元推理文庫 予価1404円)
2月23日刊 岡本綺堂『異妖新篇 岡本綺堂読物集六』(中公文庫 予価799円)
2月26日刊 森瀬繚『All Over クトゥルー クトゥルー神話作品大全』(三才ブックス 予価2480円)
2月28日刊 西崎憲『蕃東国年代記』(創元推理文庫 予価756円)
2月予定 中野善夫訳『夢のウラド F・マクラウド/W・シャープ幻想小説集』(国書刊行会)

 エラン・マスタイ『時空のゆりかご』は時間ものSF作品だそう。「めざすは1965年!? 自分の時間旅行が原因で世界を変えてしまった男の獅子奮迅の活躍をユーモラスに描いた時間テーマSFの傑作!」。

 『現代中国SFアンソロジー 折りたたみ北京』は、ケン・リュウが選んだ中国SFのアンソロジーだそうで、これは面白そうです。

 最近、小泉喜美子作品の復刊が相次いでいますね。『月下の蘭/殺人はちょっと面倒』は、短篇集二冊の合本です。特に『月下の蘭』は、花・星・蟲・鳥を題材とした短編を収める幻想的な作品集でお勧めです。

 あと、具体的な刊行日はまだ出ていませんが、中野善夫訳『夢のウラド F・マクラウド/W・シャープ幻想小説集』(国書刊行会)が2月刊行予定だそうです。
 (2018年2月4日追記)国書刊行会のサイトに詳細情報が出ていましたので、転載しておきたいと思います。

フィオナ・マクラウド/ウィリアム・シャープ『夢のウラド F・マクラウド/W・シャープ幻想小説集』(中野善夫訳 予価4,968円)
死後に同一人物であることが明かされた二人の作家、フィオナ・マクラウドとウィリアム・シャープ。尾崎翠が思慕し三島由紀夫が讃美した、稀有な魂をもつ作家の作品を初めてひとつに集成する。いま百年の時を経て瑞々しく甦るスコットランドの幻想小説集。
「毎朝こんなふうに世界の美しさに向かって帽子を取ることにしている」
蘇生するケルトの息吹、悲哀と慈愛のロマンス、哲学的な思索の旅……神秘のヴェールに包まれた伝説の作家の知られざる名作幻想小説20篇。

目次
●フィオナ・マクラウド
鳥たちの祝祭
夢のウラド
アンガス・オーグの目覚め
暗く名もなき者
聖別された男
島々の聖ブリージ
射手
最後の晩餐
ルーエルの丘
聖なる冒険
風と沈黙と愛

●ウィリアム・シャープ
ジプシーのキリスト
ホセアの貴婦人
彫像
フレーケン・ベルグリオット
丘の風
涙の誕生と死、そして再生
臆病者
〈澱み〉のマッジ
ヴェネツィア舟歌


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新年のご挨拶
 2018年最初の更新になります。今年もよろしくお願いいたします。

 昨年は読書会に関連して、同じテーマを扱った作品の集中読書をすることが多く、そのおかげで例年になく本が読めた年でした。ただそのおかげで、読みたい本、買い込む本が増えてしまい、結局、積読本が倍増してしまったのは、悩みどころでもありますね。

 年末、年初に読んでいた本からいくつか紹介していきたいと思います。



448801075X肺都(アイアマンガー三部作3) (アイアマンガー三部作 3)
エドワード・ケアリー 古屋 美登里
東京創元社 2017-12-20

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エドワード・ケアリー『肺都』(古屋美登里訳 東京創元社)
 堆塵館は崩壊し、穢れの町から逃げ延びたアイアマンガー一族は、ロンドンに入り込みます。一族の影響なのか、ロンドンの内部は闇におおわれ、人々の間では奇妙な病気が蔓延していました。
 ロンドンを支配しようとする一族に反発するクロッド、そして子供たちとともに逃げ延びたルーシーは、互いに相手を探し始めます…。

 《アイアマンガー三部作》の完結編です。舞台をロンドンに移し、各勢力が縦横無尽に動き回るという、大スペクタクルになっています。
 国をひっくり返そうとするアイアマンガー一族、ビナディットやピナリッピーとともに出奔したクロッド、アイアマンガー一族を追う警察、一族の宿敵とも言うべき謎の男ジョン・スミス・反アイアマンガー、ロンドンの子供たちの助けを借りクロッドを探すルーシー、クロッドの命を狙うモーアカス、暴走するリピット…。
 敵役だと思っていた人物が味方についたり、逆に裏切られたり、追い詰められた一族のためにクロッドが奔走したりと、個性豊かな登場人物たちがこれでもとばかりに動き回り、最後まで息つく暇がありません。
 クライマックスでは、絶大な力を持ちながら今まで受身だったクロッドの活躍も見られます。結末にたどり着いたときの感動はひとしおですね。
 一作目、二作目を含め、素晴らしいシリーズでした。



4885880947魔法にかかった男 (ブッツァーティ短篇集)
ディーノ ブッツァーティ Dino Buzzati
東宣出版 2017-12-13

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ディーノ・ブッツァーティ『魔法にかかった男』(長野徹訳 東宣出版)
 初期から中期にかけての、ブッツァーティの未訳作品を集めた作品集の第一弾です。てっきり落穂拾い的な作品集かと思っていたのですが、さにあらず。「全盛期」のブッツァーティ作品で、非常に充実した短篇集でした。
 迷い込んだ猫を隠したことから起こる事件を描いた「騎士勲章受勲者インブリアーニ氏の犯罪」、学校で「変わってしまった」弟を描く「変わってしまった弟」、悪魔との契約テーマの「エレブス自動車整備工場」、得体の知れない男に一生を通じて追いかけられるという「個人的な付き添い」、悪夢のような不条理小説「あるペットの恐るべき復讐」など。
 巻末の中篇といっていい長さの「屋根裏部屋」は特に力作です。ある日、画家の家の屋根裏部屋に突如リンゴの山が現れます。その香りと味はこの世のものとも思えず、しかもリンゴはいつまで経っても腐らないのです。これは「禁断」のリンゴかもしれないと考える画家でしたが…。
 最初から最後まで、リンゴをめぐる画家の「不安」のみが描かれるという、純度の高い寓話小説です。代表作『タタール人の砂漠』とどこか通じるところもある作品ですね。



4121015614吸血鬼伝承―「生ける死体」の民俗学 (中公新書)
平賀 英一郎
中央公論新社 2000-11

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平賀英一郎『吸血鬼伝承「生ける死体」の民俗学』(中公新書)
 フィクションの吸血鬼ではなく、主に東欧に伝わる吸血鬼伝承を追った本です。吸血鬼の本質は「生ける死体」だとしていて、それゆえ、血を吸わない吸血鬼というのも出てきます。「民俗学的な吸血鬼」なので、ドラキュラのようなスマートなものではなく、元は農民で体は半分腐っていてと、ほとんどゾンビみたいです。
 東欧、中欧、バルカン諸国、トルコなど、それぞれの国の吸血鬼伝承をその国の名称で細かく見ていくという堅実な内容です。吸血鬼といっても、国によってその内容に魔女や人狼、夢魔などを含んだりしていて、同じ「吸血鬼」でもその意味するところはグラデーション状…というのが興味深いですね。
 「ドラキュラ以前」の吸血鬼像を知りたい方には、オススメしておきたいと思います。ロシアや東欧の吸血鬼小説を読む際にも参考になるんじゃないでしょうか。



B000J8DKMS蛾 (1979年) (サンリオSF文庫)
ロザリンド・アッシュ 工藤 政司
サンリオ 1979-10

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ロザリンド・アッシュ『蛾』(工藤政司訳 サンリオSF文庫)
 大学教授ハリーは、古い屋敷に魅せられ、そこに通ううち、屋敷を見に訪れた人妻ネモに惹かれはじめます。屋敷で行われたパーティの席上、ハリーはネモに幽霊らしき存在が取り憑くのを目撃します。直後にネモと肉体関係を結んだハリーは、彼女に殺されそうになりますが、何とか逃れます。
 ネモの日記を盗み読んだハリーは、彼女が何人もの男性と関係した直後に、彼らを殺害していることを知ります。ハリーが目撃した幽霊は、かって屋敷に住んでいた女優サラ・ムーアであり、殺人を犯しているのはネモに取り憑いたサラではないのかと考えたハリーは、ネモを救うために奔走することになりますが…。

 人妻ネモは、最初は地味な中年女性として登場します。それだけに、人格が豹変したような行動は幽霊に憑かれたせい、と解釈してしまいがちなのですが、客観的に幽霊のせいだとは書かれていないのがポイントです。殺人もネモの妄想の可能性があり、ハリーも最初はその疑いを持って動くことになります。
 霊の存在はともかく、殺人自体の真実が疑えなくなった時点で、ハリーはネモを守ろうと決心します。場合によっては自分も人殺しを辞さないという覚悟を固めますが、その間にもネモは別の男性を誘惑し始めていました…。
 幽霊が本当に存在するのかが、最後まではっきりとわかりません。それに加えて、序盤は殺人が真実なのか否か、後半からは更なる殺人を防げるのか、ネモを救えるのか、といったサスペンスが発生するなど、一冊でいろいろな要素が楽しめます。
 ホラーとサスペンスの境界線上の作品として、秀作の一つではないでしょうか。



B000J835HI嵐の通夜 (1980年) (サンリオSF文庫)
ロザリンド・アッシュ 工藤 政司
サンリオ 1980-10

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ロザリンド・アッシュ『嵐の通夜』 (工藤政司訳 サンリオSF文庫)
 ヨーロッパに留学していたベスは、農園を営む実家に帰省します。両親はすでに亡く、双子の兄トムが農園を取り仕切っていました。帰省直後に強烈な嵐に襲われた館は、崩壊の危機に陥ります。飛行機でやってくるはずの従兄エドワードの行方もわからない状態で、一行は不安な夜を過ごしますが、館の外に出たベスの幼馴染モーリスが、首をはねられた状態で見つかります…。

 嵐を迎えた広壮な館の中で繰り広げられるゴシック・ロマンです。ヒロインのベスは、従兄エドワードに恋心を抱いていますが、野生的な魅力を持つモーリスにも惹かれています。兄のトムは妹に偏執的な愛情を抱いており、モーリスとの仲を嫉妬している…という、複雑な構図が描かれます。
 やがてモーリスが殺され、迷信深い使用人たちは怯え始めます。館の女中頭ナンは、現地の魔術師とされており、彼女の言動が混乱に拍車をかけていきます。
 嵐の一夜を描く物語であり、実際の一夜の時間経過がそれぞれの章を成しているという趣向です。
 『蛾』と異なり、明確に超自然現象が発生するという点で「ホラー小説」といっていい作品です。嵐がやってきてからの館の雰囲気は素晴らしいですね。後半に起こる超自然現象もじつに夢幻的で、幻想小説好きにはオススメしたい作品になっています。ちなみに、スティーヴン・キングが激賞した作品だとか。


 最後に、2018年度刊行予定の本の中から、気になる本をご紹介しておきたいと思います。

ホセ・ドノソ『夜のみだらな鳥』(水声社 2月予定)

マルク・パストル『悪女』(創元推理文庫 3月予定)
 「バルセロナの吸血鬼」と呼ばれた実在の犯罪者に想を得て書かれた作品だそうです。

ミック・ジャクソン『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』(東京創元社 11月予定)
 『10の奇妙な話』の作者による短篇集です。

アンナ・スメイル『鐘』(東京創元社 12月予定)
 鐘の音で人々が支配される世界を舞台にした作品、らしいです。世界幻想文学大賞受賞作品。

アナトール・フランス『ペンギンの島』(白水Uブックス 3月予定)
 洗礼を施されたペンギンが人間になってしまうという作品。中央公論社の『世界の文学』に入っていたこともある作品ですね。

オラフ・ステープルドン『スターメイカー』(ちくま文庫)
 国書刊行会から単行本の出ていた作品の文庫化。

スティーヴン・ミルハウザー『危険な笑い』(白水社 6月予定)
 ミルハウザーの短篇集です。

シャルル・バルバラ『ウィテイントン少佐』(国書刊行会)
 表題作は、雑誌『幻想文学32号』に翻訳が掲載されてますね。人形テーマの幻想小説ですが、短篇作品なので、他にも作品が収録されるんでしょうか。

フィオナ・マクラウド『夢のウラド』(国書刊行会)

南條竹則編訳『英国怪談集成』(国書刊行会)

垂野創一郎編訳『ドイツ幻想小説集』(国書刊行会)

イサベル・アジェンデ『日本人の愛人』(河出書房新社)

ダグラス・アダムス『長く暗い魂のティータイム』(河出文庫 3月予定)
 「ダーク・ジェントリー」の2作目。

ケラスコエット『サタニエ』(河出書房新社)
 『かわいい闇』で話題を呼んだバンド・デシネ作家の新作だそう。

マリアーナ・エンリケス『わたしたちが火の中で失くしたもの』(河出書房新社 9月予定)
 「ラテンアメリカ新世代の「ホラー・プリンセス」による悪夢のような12の短篇集」だそうで、これは気になりますね。


 ※ネット上に公開されていた、「読んでいいとも!ガイブンの輪」の「来年の隠し玉」の内容レジュメを参照させていただきました。

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2017年を振り返って
 もうすぐ、2017年が終わります。今年は昨年に引き続き、個人的にはなかなか充実した年になったのではないかと思います。

 昨年末から始めた「怪奇幻想読書倶楽部 読書会」が本格的にスタートし、レギュラーメンバーも定着してきました。テーマ別読書会ということで、毎回テーマに関してはいろいろ考えているのですが、「夢と眠りの物語」(第4回)や「リドルストーリー」(第5回)あたりは、なかなかユニークなテーマだったのではないかと思います。
 幻想文学的なテーマに混ぜて「私の読書法」(第3回)とか「ブックガイドの誘惑」(第5回)なんてのも取り上げました。年末にやった「本の交換会」(第10回)や「年間ベストブック」(第11回)も好評だったようです。
 7月開催の第7回からは、テーマとして個人作家の特集を始めました。この路線はわりと好評で、ラヴクラフトやシャーリイ・ジャクスンの回はなかなか盛り上がりました。
 来年も、この作家特集は続けていきたいと思っています。取り上げたいと思っている作家は、エドガー・アラン・ポオ(一月予定)、ステファン・グラビンスキ、ディーノ・ブッツァーティ、ロード・ダンセイニ、レイ・ブラッドベリ、ロアルド・ダール、スタンリイ・エリンなど。

 読書に関していうと、この一年は読書会のテーマに合わせて、旧作の再読や読み残し的な読書が多かったな、という印象です。作家のまとめ読みをしたことで、ラヴクラフト、シャーリイ・ジャクスン、リチャード・マシスン、H・G・ウェルズといった作家像が新たになったという収穫もありました。
 個人的に一番の収穫だったのは、古典から現代ものまでの怪奇・ホラー作品をかなりの数読めたということでしょうか。ゴシック・ロマンスやモダンホラー系の長篇は、じっくり読んでみるとそれぞれの面白さがありました。
 ハヤカワ文庫の《モダンホラー・セレクション》に関しても、ほぼ読破できました。B級作品はたくさんあるものの、つまらなくて読めない…という作品がなかったのは、意外でしたね。

 結果的に、今年の新刊はまだ読めていないものが多いのですが、面白かったものに関して、言及しておきたいと思います。


 まず、日本作家から。



恐怖小説 キリカ ししりばの家
 『ぼぎわんが、来る』でファンになった澤村伊智の作品が、今年2冊ほど出ました。メタな趣向を使った『恐怖小説 キリカ』(講談社)、幽霊屋敷ものにひねりを加えた『ししりばの家』(角川書店)、2作とも水準以上の秀作でした。



奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い (角川ホラー文庫) ハラサキ (角川ホラー文庫) 迷い家
 今年度の日本ホラー小説大賞作品からは、木犀あこ『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』(角川ホラー文庫)、野城亮『ハラサキ』(角川ホラー文庫)、山吹静吽『迷い家』を読みました。
 異世界とサイコスリラーを合わせたかのような『ハラサキ』、不思議な道具を使った異界の屋敷探検が楽しい『迷い家』もなかなかですが、メタな趣向と登場する怪奇現象の新しさで、『奇奇奇譚編集部 ホラー作家はおばけが怖い』が一番面白かったでしょうか。



わざと忌み家を建てて棲む 忌物堂鬼談 (講談社ノベルス) 魔邸
 三津田信三作品も、安定した作りで楽しませてもらいました。人工的な幽霊屋敷というテーマを扱った『わざと忌み家を建てて棲む』(中央公論新社)、所有するだけで祟られる「忌物(いぶつ)」をめぐる連作短篇集『忌物堂鬼談』(講談社ノベルス)、「神隠し」とミステリを組み合わせた『魔邸』(角川書店)もなかなかでした。



君と時計と嘘の塔 第一幕 (講談社タイガ) 君と時計と塔の雨 第二幕 (講談社タイガ) 君と時計と雨の雛 第三幕 (講談社タイガ) 君と時計と雛の嘘 第四幕 (講談社タイガ)
 タイムリープをテーマにした、綾崎隼《君と時計》4部作(講談社タイガ)は、ハラハラドキドキの連続で楽しませてもらいました。


 海外の翻訳ものもいろいろな秀作・傑作がたくさんありました。



約束 時間のないホテル (創元海外SF叢書) 深い穴に落ちてしまった 鏡の前のチェス盤 (古典新訳文庫) 引き潮 穢れの町 (アイアマンガー三部作2) (アイアマンガー三部作 2) 魔法にかかった男 (ブッツァーティ短篇集)
 まずは文学作品。
 イジー・クラトフヴィル『約束』(河出書房新社)は、監禁をテーマにしたサスペンスがとんでもない展開になってしまうという怪作。
 ウィル・ワイルズ『時間のないホテル』(東京創元社)は、エッシャー風のホテルで展開するモダンホラー的長篇でした。これは読書会でも話題になりましたが、前半が面白いという人と後半が面白いという人に分かれていましたね。
 イヴァン・レピラ『深い穴に落ちてしまった』(東京創元社)は、穴に落ちた兄弟をめぐる寓話で、なかなか考えさせられる作品でした。
 『鏡の前のチェス盤』(光文社古典新訳文庫)は、イタリアの異色作家ボンテンペッリのファンタジー長篇。「不思議の国のアリス」的な世界観で展開されるナンセンス作品でした。
 ロバート・ルイス・スティーヴンスン&ロイド・オズボーン『引き潮』(国書刊行会 2700円)は、オフビートな航海物語で、妙に心に残る作品でした。
 マリオ・レブレーロ『場所』(水声社)は、エンタメに富んだ不条理小説。
 話題になった、エドワード・ケアリー《アイアマンガー三部作》も評判に違わぬ傑作でした。
 ロマン・ギャリ『ペルーの鳥 死出の旅へ』(水声社)は、秀作が集められた短篇集。とくにジャンル小説というわけではないのですが《異色作家短篇集》に入ってもおかしくないテイストの作品集だと思います。
 年末から刊行の始まった、ブッツァーティ未訳短篇集の第一弾、『魔法にかかった男』(東宣出版)も非常にいい企画でした。



闇夜にさまよう女 最後の乗客 (マグノリアブックス) 魔女の棲む町 (マグノリアブックス) ダーク・マター (ハヤカワ文庫 NV ク 22-4) 誰がスティーヴィ・クライを造ったのか? (DALKEY ARCHIVE)
 エンタメ作品では、以下の作品に楽しませてもらいました。
 セルジュ・ブリュソロ『闇夜にさまよう女』(国書刊行会)は、凝りに凝ったサイコスリラー。ひっくり返しが好きな人には楽しめるのでは。
 マネル・ロウレイロ『最後の乗客』(マグノリアブックス)は、幽霊船テーマにひねりを加えた作品。
 トマス・オルディ・フーヴェルト『魔女の棲む町』は、超自然現象に対するアプローチが面白かったですね。
 ブレイク・クラウチ『ダーク・マター』(ハヤカワ文庫NV)は、パラレルワールドをテーマにしたSFサスペンス作品。
 《ドーキー・アーカイヴ》の新刊、マイクル・ビショップ『誰がスティーヴィ・クライを造ったのか?』(国書刊行会)は、ホラーがかったメタフィクションで、ブラック・ユーモアにあふれた秀作でした。



ドラゴン・ヴォランの部屋 (レ・ファニュ傑作選) (創元推理文庫) 人形 (デュ・モーリア傑作集) (創元推理文庫) ぼくが死んだ日 (創元推理文庫) 夜の夢見の川 (12の奇妙な物語) (創元推理文庫) FUNGI-菌類小説選集 第Iコロニー(ele-king books) 時をとめた少女 (ハヤカワ文庫SF) ヒトラーの描いた薔薇 (ハヤカワ文庫SF) イヴのいないアダム (ベスター傑作選) (創元SF文庫)
 短篇集では、J・S・レ・ファニュの怪奇小説集『ドラゴン・ヴォランの部屋』(創元推理文庫 予価1080円)、、デュ・モーリアの初期作品を集めた、ダフネ・デュ・モーリア『人形 デュ・モーリア傑作集』(創元推理文庫)、ひねりの効いたゴースト・ストーリー集、キャンデス・フレミング『ぼくが死んだ日』(創元推理文庫 予価972円)など。
 アンソロジーでは、「奇妙な味」作品を集めた作品集である、中村融編『夜の夢見の川 12の奇妙な物語』(創元SF文庫)、菌類をテーマにしたユニークなアンソロジー、オーリン・グレイ/シルビア・モレノ編『ファンギ 菌類文学アンソロジー』(Pヴァイン)が面白かったです。
 SFでは、ロバート・F・ヤング『時をとめた少女』、ハーラン・エリスン『ヒトラーの描いた薔薇』(ハヤカワ文庫SF)、アルフレッド・ベスター『イヴのいないアダム』(創元SF文庫)などのベテラン勢の短篇集が、安心して楽しめる作品集でした。



魔術師の帝国《1 ゾシーク篇》 (ナイトランド叢書) 魔術師の帝国《2 ハイパーボリア篇》 (ナイトランド叢書) 魔女を焼き殺せ! (ナイトランド叢書2-6) 魔女王の血脈 (ナイトランド叢書2-7) ジョージおじさん〜十七人の奇怪な人々 (ナイトランド叢書)
 《ナイトランド叢書》(アトリエサード)は、クラーク・アシュトン・スミス『魔術師の帝国1、2』、オーガスト・ダーレス『ジョージおじさん 十七人の奇怪な人々』、A・メリット『魔女を焼き殺せ!』、サックス・ローマー『魔女王の血脈』が出ました。
 なかでは、ダーレスの手堅い怪奇小説集『ジョージおじさん』とメリットの怪奇スリラー『魔女を焼き殺せ!』が面白かったですね。



アンチクリストの誕生 (ちくま文庫) ワルプルギスの夜:マイリンク幻想小説集 永久パン 他一篇 火の書
 クラシック作品では、レオ・ペルッツ『アンチクリストの誕生』(ちくま文庫)、グスタフ・マイリンク『ワルプルギスの夜 マイリンク幻想小説集』(国書刊行会)、アレクサンドル・ベリャーエフ『永久パン 他一篇』(アルトアーツ)、ステファン・グラビンスキ『火の書』(国書刊行会)など。



怪談生活 江戸から現代まで、日常に潜む暗い影 (立東舎) バッドエンドの誘惑~なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか~ (映画秘宝セレクション) 死の舞踏: 恐怖についての10章 (ちくま文庫) H・P・ラヴクラフト:世界と人生に抗って
 評論・エッセイでは、読んだものは少ないですが、以下のような本を面白く読みました。
 高原英理『怪談生活 江戸から現代まで、日常に潜む暗い影』(立東舎)は、江戸の怪談随筆をめぐるエッセイと著者の回想が入り混じったユニークな作品。
 真魚八重子『バッドエンドの誘惑 なぜ人は厭な映画を観たいと思うのか』(洋泉社)は、タイトル通り、バッドエンド映画の魅力について語った評論です。
 何度目かの復刊ですが、スティーヴン・キング『死の舞踏』(ちくま文庫)は、小説、ラジオ、テレビ、映画など多面的にホラー作品について語った評論集で、今でも読み応えがあります。新たについた序文や索引など、資料としても有用ですね。
 ミシェル・ウエルベック『H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って』(国書刊行会)は、客観性には欠けるものの、著者の筆致の面白さを楽しむタイプの評論といっていいでしょうか。個々のラヴクラフト作品のあらすじや評価について知りたい読者には、ちょっと方向性が違う本かもしれません。


 あと、コミック作品で記憶に残った作品です。



《完全版》サイコ工場 A(アルファ) (LEED Cafe comics) 《完全版》サイコ工場 Ω(オメガ) (LEED Cafe comics) 黄色い悪夢 (LEED CAFE COMICS) 本田鹿の子の本棚 暗黒文学少女篇 (LEED CAFE COMICS)
 今年は、リイド社の「リイドカフェコミックス」レーベル作品が非常に面白かったです。
 1990年代作品に増補改定を施したという、谷口トモオ『《完全版》サイコ工場 A(アルファ)』『《完全版》サイコ工場 Ω(オメガ)』は、強烈かつシャープなサイコホラー作品集でした。
 黄島点心『黄色い悪夢』は、絵柄がグロテスクなものも多いですが、奇想に富んだ作品揃いで楽しませてもらいました。蚊の視点から描いたホラーなんて初めてです。
 佐藤将『本田鹿の子の本棚 暗黒文学少女篇』は、お父さんが娘の本棚の小説を盗み読むという面白いコンセプトで楽しい作品でした。



BOX~箱の中に何かいる~(3)<完> (モーニング KC) 諸星大二郎劇場 第1集 雨の日はお化けがいるから (ビッグコミックススペシャル)
 諸星大二郎は、迷宮やゲームをテーマにした『BOX~箱の中に何かいる~』が3巻で完結。年末には、読み切りを集めた『諸星大二郎劇場 第1集 雨の日はお化けがいるから』(ビッグコミックススペシャル)も出て、こちらも安定した出来の作品集でした。



<たそがれの市 あの世お伽話 夢十夜 桜の森の満開の下 (岩波現代文庫) 夜長姫と耳男 (岩波現代文庫)
 近藤ようこは、このところぐんと評価が上がっている作家ですね。
 『夢十夜』(岩波書店)は、漱石の同名作品のコミカライズ化。復刊ものも何冊か出ました。坂口安吾原作の『桜の森の満開の下』『夜長姫と耳男』(岩波現代文庫)、『帰る場所』『水の蛇』(ビームコミックス)。
 いちばん良かったのは、あの世とこの世の往還を描いた『たそがれの市 あの世お伽話』(角川書店)でしょうか。



狂気の山脈にて 1 ラヴクラフト傑作集 (ビームコミックス) 狂気の山脈にて 2 ラヴクラフト傑作集【電子特典付き】 (ビームコミックス) 狂気の山脈にて 3 ラヴクラフト傑作集 (ビームコミックス) 狂気の山脈にて 4 ラヴクラフト傑作集 (ビームコミックス)
 近年、ラヴクラフトのコミカライズを精力的に進めている田辺剛の『狂気の山脈にて』(ビームコミックス)は、4巻で完結。これは今のところ、作者の最高傑作といっていいんじゃないでしょうか。



辺獄のシュヴェスタ(5) (ビッグコミックス) 辺獄のシュヴェスタ(6) (ビッグコミックス) キリング・アンド・ダイング
 竹良実『辺獄のシュヴェスタ』は六巻で完結。非常にハードな復讐物語でしたが、結末では感動が得られます。
 エイドリアン・トミネ『キリング・アンド・ダイング』(国書刊行会)は、じんわりとした感動がくるグラフィック・ノヴェル。



アマネ†ギムナジウム(1) (モーニング KC) 好奇心は女子高生を殺す 1 (サンデーうぇぶりSSC) 惑星クローゼット (1) (バーズコミックス) 銀河の死なない子供たちへ(上) (電撃コミックスNEXT) HOTEL R.I.P. 1 (秋田レディースコミックスデラックス) ことなかれ(1) (Nemuki+コミックス)
 連載中で追いかけ始めたのは、以下の作品です。
 古屋兎丸『アマネ†ギムナジウム』(モーニングKC)は、趣味で作った少年人形と学園が実体化するという作品。生徒の少年たちの青春模様と、学園の「作者」であるヒロインのメタな物語が組み合わさったユニークな作品です。
 高橋聖一『好奇心は女子高生を殺す』(サンデーうぇぶりSSC)は、女子高生のコンビが毎回不思議な目にあうというSFファンタジー。つばな『第七女子会彷徨』に似たテイストですが、あちらよりもシビアで苦い味わいです。
 つばな『惑星クローゼット』(バーズコミックス)は、眠るたびに他惑星に転送されてしまうというヒロインが主人公。そこで出会った少女とともに、その星の秘密を探っていくという冒険もの。
 施川ユウキ『銀河の死なない子供たちへ』(電撃コミックスNEXT)は、不死の子供たちが生命について学ぶという物語。長大な時間の流れがあっさりと表現されるのに驚きます。
 西倉新久『HOTEL R.I.P.』(秋田レディースコミックスデラックス)は、あの世とこの世の境にあるホテルで展開されるヒューマン・ストーリー。単純な人情話にならないところにバランスの良さを感じます。
 オガツカヅオ、星野茂樹『ことなかれ』(Nemuki+コミックス)は、都市伝説を調査する「ことなかれ課」の活躍を描いたオカルト連作ストーリーです。日常と非日常の境目の描写が上手いですね。



五佰年BOX(1) (イブニングコミックス) 五佰年BOX(2) (イブニングコミックス)
 今一番続きが楽しみなのが、宮尾行巳『五佰年(いほとせ)BOX』(イブニングコミックス)。
 隣人の家から見つかった奇妙な箱の中には、数百年前と思しい人々が生活する世界が入っていました。主人公は、箱の中で襲われている少女をとっさに助けてしまいますが、その結果、現実の歴史も変わっていたのです…。
 異色のパラレルワールド+歴史改変もの作品です。主人公は元の世界を取り戻そうとしますが、歴史が変わる条件もわからず、試行錯誤を繰り返すのです。2巻まで出ていますが、本当に物語の予測がつかず、続刊が楽しみです。


Mooncop
 最後に、洋書ですが、Tom Gauldのコミック『Mooncop』(Drawn & Quarterly Pubns)。
 タイトルは「月のお巡りさん」とでもいった感じでしょうか。過疎化する月の町で、孤独な生活を送る警官の物語です。だんだんと町の人々は地球に帰ってしまい、店もどんどんと機械化されていくなか、警官は…という物語。ブラッドベリ『火星年代記』を思わせるテイストで、しみじみとした味わいがあります。
 作者のTom Gauld(トム・ゴールド)は、旧約聖書のエピソードを元にしたグラフィック・ノヴェル『ゴリアテ』(パイインターナショナル)が紹介されています。
Mooncop2.jpg Mooncop1.jpg


 新年初めには、また記事を更新したいと思いますが、今年は一旦これで終了としたいと思います。一年間ありがとうございました。

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1月の気になる新刊と12月の新刊補遺
発売中  武田雅哉『中国飛翔文学誌 空を飛びたかった綺態な人たちにまつわる十五の夜噺』(人文書院 6696円)
12月26日刊 『別冊映画秘宝 鬱な映画』(洋泉社 予価1620円)
12月26日刊 トーマス・カリナン『ビガイルド 欲望のめざめ』(作品社 予価3024円)
1月6日刊 ジョイス・キャロル・オーツ『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』(河出文庫 予価1404円)
1月10日刊 パコ・ロカ『家』(小学館集英社プロダクション 予価3024円)
1月10日刊 メアリー・シェリー『マチルダ』(彩流社 予価2052円)
1月10日刊 朝里樹『日本現代怪異事典』(笠間書院 予価2376円)
1月12日刊 リリー・ブルックス=ダルトン『世界の終わりの天文台』(東京創元社 予価2376円)
1月12日刊 ジェームズ・ロバートソン『ギデオン・マック牧師の数奇な生涯』(東京創元社 予価3456円)
1月20日刊 イタロ・カルヴィーノ『木のぼり男爵』(白水Uブックス 予価1944円)
1月24日刊 アリ・ランド『善いミリー、悪いアニー』(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1080円)
1月27日刊 『ユリイカ2月号 特集クトゥルー神話』(青土社 1512円)[
1月29日刊 沖田瑞穂『怖い女 怪談、ホラー、都市伝説の女の神話学』(原書房 予価2484円)
1月31日刊 柳下毅一郎監修『J・G・バラード短編全集5』(東京創元社 予価3888円)
1月31日刊 C・デイリー・キング『タラント氏の事件簿 完全版』(創元推理文庫 予価1296円


 『中国飛翔文学誌 空を飛びたかった綺態な人たちにまつわる十五の夜噺』は、中国の飛行にかかわる伝承や逸話を古典の時代から現代まで扱ったという本。武田雅哉さんの著作は、毎回非常に面白いテーマを扱っていますが、これまた面白そうですね。値段がちょっとネックではありますが。

 トーマス・カリナン『ビガイルド 欲望のめざめ』は、ドン・シーゲル監督の映画『白い肌の異常な夜』の原作小説。リメイク映画版に合わせた翻訳出版のようです。映画はサスペンス映画として有名なものなので、原作も気になりますね。

 『家』は、スペインの漫画家パコ・ロカによるコミック作品。前作『皺』は「老い」や「認知症」をテーマに象徴的な表現を使った意欲的な作品だったので、こちらの作品も楽しみです。

 朝里樹『日本現代怪異事典』は、現代日本の怪異や都市伝説などを紹介する事典です。以前に同人誌版が出ていたのですが、予約が殺到していて全然買えませんでした。これは期待大です。

 創元社の新刊からは、二作品が気になる作品です。
 リリー・ブルックス=ダルトン『世界の終わりの天文台』は、人類滅亡のときを迎え、老学者が幼い少女と同居生活を始める…という物語。
 ジェームズ・ロバートソン『ギデオン・マック牧師の数奇な生涯』は「突然、悪魔に命を助けられたなど冒涜的な告白をし、失踪してしまった牧師。彼の手記に書かれた波瀾に満ちた生涯とは。スコットランド随一の作家によるブッカー賞候補作!」という内容です。

 アリ・ランド『善いミリー、悪いアニー』は、殺人鬼の母親を告発した娘が、母親の法廷に証人として立つ…という話らしいです。「異色のサイコ×法廷×学園ミステリ」ということで、気になる作品です。

 『ユリイカ2月号』の特集は「クトゥルー神話」。ラヴクラフトでなく「クトゥルー」というところがミソでしょうか。公開されている目次を転載しておきます。

目次予定*【対談】黒史郎×森瀬繚/稲生平太郎×高橋洋【創作】酉島伝法/高山羽根子/赤野工作/藤田祥平【論考/エッセイ】伊藤博明/大野英士/小森健太朗/田中千惠子/立原透耶/寺田幸弘/廣田龍平/大久保ゆう/西貝怜/逆卷しとね…

 『J・G・バラード短編全集5』は、シリーズ最終巻。これはいいシリーズでした。他のSF作家の短篇集も出してくれると嬉しいですね。例えばシオドア・スタージョンとか。

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12月の気になる新刊
12月4日刊 マーゴット・ベネット『過去からの声』(論創社 予価3240円)
12月4日刊 ダグラス・アダムス『ダーク・ジェントリー 全体論的探偵事務所』(河出文庫 予価994円)
12月6日刊 トマス・ピアース『小型哺乳類館』(早川書房 予価2160円)
12月6日刊 コルソン・ホワイトヘッド『地下鉄道』(早川書房 予価2484円)
12月7日刊 C・S・ルイス『ナルニア国物語6 銀の椅子』(光文社古典新訳文庫)
12月11日刊 フェルディナント・フォン・シーラッハ『コリーニ事件』(創元推理文庫 予価778円)
12月13日刊 ディーノ・ブッツァーティ『魔法にかかった男』(東宣出版 予価2376円)
12月19日刊 サキ『四角い卵』(白水Uブックス 予価1620円)
12月20日刊 エドワード・ケアリー『肺都 アイアマンガー三部作3』(東京創元社 予価4104円)
12月20日刊 ドット・ハチソン『蝶のいた庭』(創元推理文庫 予価1296円)
12月25日刊 森瀬繚『クはクトゥルーのク CTHULHU CHRONICLES』(三才ブックス 予価2480円)
12月26日刊 『怪人 江戸川乱歩のコレクション』(新潮社 予価1728円)
12月27日刊 諸星大二郎『諸星大二郎劇場 第1集 雨の日はお化けがいるから』(ビッグコミックススペシャル 予価1550円)


 『ダーク・ジェントリー 全体論的探偵事務所』は、『銀河ヒッチハイク・ガイド』 で知られるダグラス・アダムスの傑作作品だそうです。気になりますね。

 トマス・ピアース『小型哺乳類館』は、アメリカの新鋭作家による短篇集。「息子が連れ帰ったクローン再生マンモスを裏庭で飼うことになった母親、夢の中にだけ存在する夫への愛を語る妻と動揺する現実の夫……突飛かつ壮大なスケールの想像力を通して、家族の拠り所を見つめ直す、新鋭のアメリカ人作家による笑えて泣ける十二の短篇。」とのことで、ちょっと奇想の入った作品集のようです。

 12月でイチオシはこれでしょうか。ディーノ・ブッツァーティ『魔法にかかった男』。紹介文を引用しておきます。「現代イタリア文学の奇才ブッツァーティ待望の未邦訳短篇集――初期から中期にかけて書かれた20作品を収録。1篇をのぞく19篇が初訳! 誰からも顧みられることのない孤独な人生を送った男が亡くなったとき、町は突如として夢幻的な祝祭の場に変貌し、彼は一転して世界の主役になる「勝利」、一匹の奇妙な動物が引き起こす破滅的な事態(カタストロフィ)「あるペットの恐るべき復讐」、謎めいた男に一生を通じて追いかけられる「個人的な付き添い」、美味しそうな不思議な匂いを放つリンゴに翻弄される画家の姿を描く「屋根裏部屋」……。現実と幻想が奇妙に入り混じった物語から、寓話風の物語、あるいはアイロニーやユーモアに味付けられたお話まで、バラエティに富んだ20篇。」
 東宣出版は、近年ブッツァーティの邦訳本を続けて出してくれていますね。ファンとしては感謝したいところです。

 サキの新訳シリーズももう第四弾です。『四角い卵』には、初期短篇集『ロシアのレジナルド』と没後編集の『四角い卵』を収録。他に、短篇・スケッチを追加収録。付録はサキの生涯と作品を概観したJ・W・ランバート「サキ選集序文」。挿絵はエドワード・ゴーリーです。

 話題を呼んだ、エドワード・ケアリーの《アイアマンガー三部作》の完結篇『肺都』が登場です。波乱万丈の物語の結末がどうなるのか気になります。

 森瀬繚『クはクトゥルーのク CTHULHU CHRONICLES』は、日本国内で発売された古今のクトゥルー神話作品1000作以上を解説したガイドブックとのこと。コミック・映画・ゲームなどもカバーしているとのことで、この分野のガイドブックの決定版になりそうな予感です。

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最近読んだ本

君と時計と嘘の塔 第一幕 (講談社タイガ) 君と時計と塔の雨 第二幕 (講談社タイガ) 君と時計と雨の雛 第三幕 (講談社タイガ) 君と時計と雛の嘘 第四幕 (講談社タイガ)
綾崎隼『君と時計と嘘の塔』(講談社タイガ)
 高校生の少年、綜士は、思いを寄せていた幼馴染の芹愛が死ぬという悪夢を見た直後に、あることに気がつきます。親友がいなくなっていたのです。しかも親友の存在を、自分以外の誰も覚えていないのです。
 『時計部』という部活で独自の研究を続ける先輩の千歳と、同級生雛美の助けを借り、綜士は、事態を打開しようと調査を開始しますが…。

 何度も同じ時間を繰り返すという、タイムリープを扱った作品です。このタイムリープの特徴は強制的であるところ。条件をクリアできないと、何度も過去に戻されてしまうのです。問題はタイムループを繰り返す度に、主人公の大切な人間が一人ずつ消えていくということ。初めは親友、そして次々に周りの人間が消えていってしまうのです。
 タイムリープというと、気軽に何度でも試行錯誤ができる…というイメージを抱きがちなのですが、この作品の場合、誰か大切な人が消えてしまうという点で、毎回、失敗はできないという深刻さをはらんでいます。
 物語の要請上、主人公は失敗を繰り返していくわけですが、事態がどんどんと悪化していく絶望感がすごいです。探偵役である千歳の活躍で、少しづつループの原因や対策が判明していくものの、何かが改善されても、別の何かが悪化してしまうので、なかなか前に進むことができません。
 4部作になっていますが、それぞれの巻末の引きが強烈で、特に3巻の巻末では最大級の困難が発生します。結末が多少あっさりしている感はあるのですが、それまではハラハラドキドキの連続で、非常に面白い作品だと言えます。



4336025827狼男(ウルフ)卿の秘密 (ドラキュラ叢書)
E・フィルポッツ 桂千穂
国書刊行会 1976-11

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イーデン・フィルポッツ『狼男卿の秘密』(桂千穂訳 国書刊行会)
 芸術家気質の青年ウィリアムは、父親の死により、ウルフ卿として爵位を継ぐことになります。管理人として呼び寄せた親友、同じ気質を持つ従兄弟、忠実な従僕、相思相愛の婚約者に囲まれ、幸せな生活を送っているかに見えたウィリアムでしたが、ある屋敷の中で見つけた古文書を見たことから、その生活に影が差すことになります。
 古文書に書かれた詩によれば、ウルフ家の末裔には、人狼の血が流れており、破滅が予言されているというのです。予言を信じるウィリアムは、徐々に内向的になっていきます。時を同じくして、ウィリアムの周りで、狼の仕業としか思えない事件が頻発するようになりますが…。

 前半は、自然に囲まれた屋敷を舞台に、主人公とその友人たちとの交流が丁寧に描かれていきます。神秘主義的な傾向を持つ主人公ウィリアムが、自分が人狼になるのではないかという恐れに取りつかれ、それと同時に、周りで不可解な事件が起き始めます。
 だんだんと怪奇ムードが高まっていき、とうとう人狼の出現か! というところで、読者はびっくりするのではないでしょうか。というのも、この作品、怪奇小説かと思っていると、最後に合理的に謎が解き明かされてしまうのです。ジャンルで言うとミステリなのですね。
 怪奇小説の古典を集めた《ドラキュラ叢書》に収められた作品だけに、純粋な怪奇ものとして読んでいく読者も多いと思うのですが、それがために、後半の謎解きが始まると、逆にびっくりしてしまうと思います。
 最後まで怪奇小説で行ってほしかったという感じはしますが、作品全体の雰囲気は上質で、味わいのある作品です。



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シャドウアイズ (創元ノヴェルズ)
キャスリン プタセク 中原 尚哉
東京創元社 1989-10

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キャスリン・プタセク『シャドウアイズ』(中原尚哉訳 創元ノヴェルズ)
 ニューメキシコの山の中で、複数の人間が無残に殺されます。たびたび起こる殺人事件は、その規模と惨状から考えても人間の仕業ではありませんでした。
 インディアンの末裔であり、シャーマンの能力を持つ青年チャトは、犯人はインディアンに伝わる怪物だと確信し、それを止めるために調査を開始しますが…。

 インディアンに伝わる怪物という、ユニークなテーマのホラー作品です。この怪物の攻撃能力がすさまじく、複数の人間をあっという間にバラバラにしてしまうのです。
 最初はこの怪物を利用しようとする勢力が現れるのですが、やがて彼らの手には負えなくなり、ついに主人公が登場するという形になります。
 主人公は、子供の頃から部族のシャーマンとしてその能力を発揮していたものの、部落を離れ、大学教授になったものの、職を辞して放浪している、というプロフィールの人物。
 先住民のシャーマンの能力と西洋的な思想を同時に持つ人物という、なかなか興味深い設定なのですが、特別それが活かされたりしないところは、もったいないですね。
 主人公の恋人役として、インテリの記者の女性が登場するのですが、後半になってから突然このヒロインが退場して、別のヒロインが登場するのには驚きました。
 怪物ホラーとしては、エキゾチックな題材を使っており、なかなかユニークではあるのですが、お話自体の作りがかなり大雑把なのが気になります。ただ怪物の造形とその描写には生彩があります。作品の読みやすさを含め、B級の水準作という感じでしょうか。



4800312213世にも不思議な怪奇ドラマの世界
山本 弘 尾之上 浩司
洋泉社 2017-04-05

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山本弘著、尾之上浩司監修『世にも不思議な怪奇ドラマの世界』(洋泉社)
 アメリカのオムニバスドラマシリーズ『ミステリー・ゾーン』と『世にも不思議な物語』を解説したガイドブックです。
 『世にも不思議な物語』の方に関しては、あまり観ていないので何ともいえませんが、『ミステリー・ゾーン』に関しては、ファンとしてこれを待っていた!という感じの本です。
 それぞれのエピソードを詳しく解説し、エピソードによっては、内容に関する考察や関わった関係者の情報が載っていたりと、いたせりつくせりのガイドブックです。これからは『ミステリー・ゾーン』に関しては、この本が基本図書になるのではないでしょうか。 『新トワイライトゾーン』の方も、こんな感じのガイドブックがあるといいのですが。

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11月の気になる新刊
11月7日刊 ウィリアム・ゴールディング『後継者たち』(ハヤカワepi文庫 予価994円)
11月7日刊 エイミー・ジェントリー『消えたはずの、』(ハヤカワ文庫NV 予価1058円)
11月7日刊 ケイティ・カーン『君の彼方、見えない星』(ハヤカワ文庫SF 予価994円)
11月7日刊 香山滋『海鰻荘奇談』(河出文庫 予価950円)
11月11日刊 東雅夫編『山怪実話大全 岳人奇談傑作選』(山と渓谷社 予価1296円)
11月15日刊 H・P・ラヴクラフト『クトゥルーの呼び声』(星海社 予価1512円)
11月21日刊 フィリップ・K・ディック『シミュラクラ 新訳版』(ハヤカワ文庫SF 予価1058円)
11月22日刊 A・E・W・メースン『矢の家 新版』(創元推理文庫 予価1080円)
11月22日刊 マイクル・ビショップ『誰がスティーヴィ・クライを造ったのか?』(国書刊行会 予価2808円)
11月24日刊 ミシェル・ウエルベック『H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って』(国書刊行会 予価2052円)
11月24日刊 ジョージ・A・ロメロ他『NIGHTS OF THE LIVING DEAD ナイツ・オブ・ザ・リビングデッド 死者の章』(竹書房文庫 予価810円)
11月24日刊 ジョージ・A・ロメロ他『NIGHTS OF THE LIVING DEAD ナイツ・オブ・ザ・リビングデッド 生者の章』(竹書房文庫 予価810円)
11月24日 エセル・M・マンロー/サキ『サキの思い出 付 サキ短篇選』(彩流社 予価2160円)
11月29日刊 星新一『進化した猿たち The Best』(新潮文庫)
11月30日刊 ソフィア・サマター『図書館島』(東京創元社 予価3132円)
11月30日刊 アルフレッド・ベスター『イヴのいないアダム ベスター傑作選』(創元SF文庫 予価1188円)[amazon]


H・P・ラヴクラフト『クトゥルーの呼び声』は、ラヴクラフト作品の新訳になる短篇集。収録作品は以下の通り。
「ダゴン」
「神殿」
「マーティンズ・ビーチの恐怖」
「クトゥルーの呼び声」
「墳丘」
「インスマスを覆う影」
「永劫より出でて」
「挫傷」(H・S・ホワイトヘッド作)
ラヴクラフト作品の新訳は、ずいぶん久しぶりではないでしょうか。これは楽しみですね。

ミシェル・ウエルベック『H・P・ラヴクラフト 世界と人生に抗って』は、作家として知られる著者のデビュー作だそうですが、なんとラヴクラフトの伝記というか評論みたいな本のようです。これは気になりますね。

《ドーキー・アーカイヴ》の続刊は一年ぶりぐらいでしょうか。マイクル・ビショップ『誰がスティーヴィ・クライを造ったのか?』は、メタホラーの傑作として日本でも名前が知られていた作品です。これは楽しみ。

ジョージ・A・ロメロ他『NIGHTS OF THE LIVING DEAD ナイツ・オブ・ザ・リビングデッド』は、ロメロ監督『ナイツ・オブ・ザ・リビングデッド』に触発された作品を集めたテーマ・アンソロジーのようです。収録作品が公開されていました。

『死者の章』
序説:ナイト・オブ・ザ・リビングデッド/ジョージ・A・ロメロ
まえがき 〜朽ちかけた映画館での奇妙な少年の回想〜/ジョナサン・メイベリー
デッドマンズ・カーブ/ジョー・R・ランズデール
スーという名のデッドガール/クレイグ・E・イングラー
ファスト・エントリー/ジェイ・ボナンジンガ
この静かなる大地の下に/マイク・ケアリー
ジミー・ジェイ・バクスターの最後で最高の日/ジョン・スキップ
身元不明遺体/ジョージ・A・ロメロ
安楽死/ライアン・ブラウン
軌道消滅/デヴィッド・ウェリントン
乱杭歯/マックス・ブラリア
灼熱の日々/キャリー・ライアン

『生者の章』
その翌日/ジョン・A・ルッソ
卓上の少女/アイザック・マリオン
ウィリアムソンの愚行/デイヴィッド・J・スカウ
動物園の一日/ミラ・グラント
発見されたノート/ブライアン・キーン
全力疾走/チャック・ウェンディグ
孤高のガンマン/ジョナサン・メイベリー
現場からの中継/キース・R・A・ディカンディード
死線を越えて/ニール&ブレンダン・シャスターマン
ジョージ・A・ロメロへの追悼文

 星新一『進化した猿たち The Best』は、かって新潮文庫から出ていた同名書籍のベスト版のようですね。外国の一コマ漫画について語ったエッセイ集で、読んでいていろんなアイディアの浮かんでくるような面白さにあふれています。

 アルフレッド・ベスター『イヴのいないアダム ベスター傑作選』は、以前に河出書房から出た『願い星、叶い星』の増補新版。新訳2編を増補しているとのことです。

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10月の気になる新刊
10月5日刊 レオ・ペルッツ『アンチクリストの誕生』(ちくま文庫 予価972円)
10月5日刊 J・P・ディレイニー『冷たい家』(ハヤカワ・ミステリ 予価1944円)
10月5日刊 W・ブルース・キャメロン『真夜中の閃光』(ハヤカワ文庫NV 予価1188円)
10月5日刊 ブレイク・クラウチ『ダーク・マター』(ハヤカワ文庫NV 予価1188円)
10月5日刊 鹿島茂『フランス絵本の世界』(青幻舎 予価3456円)
10月12日刊 エドワード・ゴーリー『思い出した訪問』(河出書房新社 予価1296円)
10月14日刊 C・S・ルイス『新訳 ナルニア国物語1 ライオンと魔女と洋服だんす』(角川つばさ文庫 予価713円)
10月16日刊 グスタフ・マイリンク『ワルプルギスの夜 マイリンク幻想小説集』(国書刊行会 予価4968円)
10月18日刊 J・L・ボルヘス『語るボルヘス 書物・不死性・時間ほか』(岩波文庫 予価626円)
10月18日刊 近藤ようこ(坂口安吾原作) 『桜の森の満開の下』(岩波現代文庫 864円)
10月18日刊 近藤ようこ(坂口安吾原作) 『夜長姫と耳男』(岩波現代文庫 1058円)
10月19日刊 クリストファー・プリースト『隣接界』(新ハヤカワSFシリーズ 予価2700円)
10月19日刊 フィリップ・K・ディック『銀河の壺直し 新訳版』(ハヤカワ文庫SF 予価886円)
10月19日刊 A・G・リドル『タイタン・プロジェクト』(ハヤカワ文庫SF 予価1123円)
10月21日刊 フランシス・ハーディング『嘘の木』(東京創元社 予価3240円)
10月25日刊 ジン・フィリップス『夜の動物園』(角川文庫 予価1166円)
10月25日刊 エセル・M・マンロー/サキ『サキの思い出 付サキ短篇選』(彩流社 予価2160円)
10月27日刊 山口雅也編『奇想天外 復刻版 アンソロジー』(南雲堂 予価1944円)
10月27日刊 山口雅也編『奇想天外 21世紀版 アンソロジー』(南雲堂 予価2160円)
10月27日刊 田中貢太郎『日本怪談実話(全)』(河出書房新社 予価1944円)
10月27日刊 『ユリイカ 11月号 特集スティーヴン・キング』(青土社 予価1512円)
10月29日刊 G・K・チェスタトン『ポンド氏の逆説 新訳版』(創元推理文庫 予価886円)


 10月の目玉はやはり、レオ・ペルッツ『アンチクリストの誕生』(ちくま文庫)と、グスタフ・マイリンク『ワルプルギスの夜 マイリンク幻想小説集』(国書刊行会)でしょうか。

 レオ・ペルッツ『アンチクリストの誕生』は、幻想的な歴史小説で知られる著者の初の邦訳短篇集。8編を収録とのこと。訳者の垂野創一郎さんが出していた私家版の短篇もいくつか収録されているようです。表題作『アンチクリストの誕生』は、サスペンス味たっぷりの歴史ロマン。以前に書いたレビューを載せておきます。
http://kimyo.blog50.fc2.com/blog-entry-564.html

 グスタフ・マイリンク『ワルプルギスの夜 マイリンク幻想小説集』は、ドイツ幻想小説の大家マイリンクの幻想小説集です。収録作は全て本邦初訳。『白いドミニコ僧』『ワルプルギスの夜』の2長篇小説のほか、短篇8編とエッセイ5編を収録だとのことです。

 『サキの思い出』は、サキの姉によるサキの評伝。こんなものまで訳されるとはびっくりです。短篇もいくつか収録されるようですね。

 南雲堂から刊行予定の『奇想天外 復刻版 アンソロジー』『奇想天外 21世紀版 アンソロジー』は、かって刊行されていたSF雑誌「奇想天外」のアンソロジー。実際に刊行されたバックナンバーからのアンソロジーと、現代でこの雑誌が刊行されたなら…というコンセプトで編まれた21世紀版アンソロジーの2冊となっています。
 収録内容が既に公開されていますが、それぞれ、小説、翻訳、評論、コラムとバラエティに富んだ内容ですね。翻訳ものだけでいえば、『復刻版』では、H・F・エリス、ロッド・サーリング、エヴァン・ハンター、ヘンリー・カットナー、オーガスト・ダーレス&マック・レナルズ、フィリップ・ホセ・ファーマー、『21世紀版』では、アーサー・モリソン、ウィリアム・トレヴァー、アントニイ・バークリー、カミ、ボブ・ショウなどの名前が挙がっています。これは面白そう。

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プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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