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7月の気になる新刊と6月の新刊補遺
発売中 野崎六助『北米探偵小説論21』(インスクリプト 9680円)
7月2日刊 フィリップ・K・ディック『逆まわりの世界 改訳版』(ハヤカワ文庫SF 予価1100円)
7月10日刊 スティーヴン・ミルハウザー『ホーム・ラン』(白水社 予価2640円)
7月13日刊 フレドリック・ブラウン『フレドリック・ブラウンSF短編全集3 最後の火星人』(東京創元社 予価3850円)
7月16日刊 シオドラ・ゴス『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 予価2530円)
7月16日刊 アナリー・ニューイッツ『タイムラインの殺人者』(ハヤカワ文庫SF 予価1100円)
7月16日刊 今井秀和『世にもふしぎな化け猫騒動』(角川ソフィア文庫 予価836円)
7月16日刊 日下三蔵編 山村正夫『断頭台/疫病』(竹書房文庫 予価1320円)
7月16日刊 泡坂妻夫、中井英夫、日影丈吉/長田順行監修『秘文字』(復刊ドットコム 予価18,700円)
7月22日刊 エラリー・クイーン『エラリー・クイーンの新冒険 新訳版』(創元推理文庫 予価1056円
7月22日刊 M・J・アーリッジ『どっちが殺す?』(竹書房文庫 予価1100円)
7月30日刊 アーサー・コナン・ドイル『失われた世界 新訳版』(創元SF文庫 予価968円)
7月30日刊 グザヴィエ・ミュレール『エレクトス 上・下』(仮題)(竹書房文庫 予価各935円)


 野崎六助『北米探偵小説論21』(インスクリプト)はミステリの評論なのですが、ホフマン、アーサー・マッケン、M・P・シール、ブラックウッドなどの怪奇幻想小説にも筆が割かれているそうで、ちょっと気になる本ですね。

 スティーヴン・ミルハウザー『ホーム・ラン』(白水社)は、ミルハウザーの最新邦訳作品集。短篇8篇と短篇小説論を収録とのこと。

 シオドラ・ゴス『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)は発売日がずれたようですね。19世紀ロンドンで展開するSFミステリとのことで、これは面白そうです。

 山村正夫『断頭台/疫病』は、著者の異色短篇を集めた作品集。オリジナルの短篇集『断頭台』にいくつかの短篇を増補しているそうです。著者の怪奇幻想作品は現在手に入れにくくなっているので、これは好企画ですね。

 グザヴィエ・ミュレール『エレクトス』(仮題)(竹書房文庫)は、全ての生物を原始の姿に退行させる退化促進ウィルスを扱った作品だそうで、ちょっと気になりますね。

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6月の気になる新刊と5月の新刊補遺
発売中 クラーク・アシュトン・スミス『黑の書』(念黝之神根院書局 5000円 書肆盛林堂にて取扱)
発売中 しおたにまみこ『やねうらべやのおばけ』(偕成社)
6月4日刊 エルサ・マルポ『念入りに殺された男』(ハヤカワ・ミステリ 予価1870円)
6月8日刊 今野真二『乱歩の日本語』(春陽堂書店 予価2420円)
6月8日刊 花咲一男『雑魚のととまじり』(幻戯書房 予価4400円)
6月9日刊 スティーヴン・キング『呪われた町 上・下』(文春文庫 予価968円)
6月10日刊 M・R・ジェイムズ『消えた心臓/マグヌス伯爵』(光文社古典新訳文庫 予価1012円)
6月10日刊 ゴットフリート・アウグスト・ビュルガー『ほら吹き男爵の冒険』(光文社古典新訳文庫 予価968円)
6月10日刊 新保博久『シンポ教授の生活とミステリー』(光文社文庫)
6月12日刊 フリオ・ホセ・オルドバス『天使のいる廃墟』(東京創元社 予価1760円)
6月12日刊 朝宮運河編『家が呼ぶ 物件ホラー傑作選』(ちくま文庫 予価900円)
6月15日刊 志村有弘『現代語訳 怪談「諸国百物語」』(河出書房新社 予価2420円)
6月17日刊 H・P・ラヴクラフト『宇宙の彼方の色 新訳クトゥルー神話コレクション5』(星海社FICTIONS 予価1650円)
6月18日刊 劉慈欣『三体2 黒暗森林 上・下』(早川書房 予価各1870円)
6月20日刊 フランシス・ハーディング『影を呑んだ少女』(東京創元社 予価3630円)
6月20日刊 野崎六助 『北米探偵小説論21』(インスクリプト 予価9680円)
6月25日刊 中村圭子『奇想の国の麗人たち 絵で見る日本のあやしい話』(河出書房新社 予価2090円)
6月27日刊 立原透耶監修、牧原勝志編『時のきざはし 現代中華SF傑作選』(新紀元社 予価2420円)


 クラーク・アシュトン・スミス『黑の書』は、「ウィアード・テールズ」で活躍したアメリカの怪奇幻想作家スミスの創作ノートを翻訳したもの。同人出版ですが、スミスのファンは必携では。

 今野真二『乱歩の日本語』は、江戸川乱歩のテキストの言語を分析する「乱歩言語論」だそうで、これは興味深いテーマの本ですね。

 M・R・ジェイムズ『消えた心臓/マグヌス伯爵』は、怪奇小説三代巨匠の一人ジェイムズの怪談集の新訳。南條竹則訳です。創元推理文庫の『ジェイムズ怪談全集』が長らく品切れで、ジェイムズ作品を読める本がなくなっていたので、これは慶賀すべき出版ですね。

 フリオ・ホセ・オルドバス『天使のいる廃墟』は幻想的な短篇集のようで気になりますね。「人生を諦めた人にしか用がないと言われる廃墟パライソ・アルト。そこに住む「天使」は不思議な来訪者たちの話に耳を傾け、向こう側への旅立ちを見送る。美しくも奇妙な物語。」

 朝宮運河編『家が呼ぶ 物件ホラー傑作選』』は、ありそうでなかった「家ホラー」アンソロジー。これは面白そうです。収録作品も公開されていたので、転載しておきますね。

 若竹七海「影」
 三津田信三「ルームシェアの怪」
 小池壮彦「住んではいけない!」
 中島らも「はなびえ」
 高橋克彦「幽霊屋敷」
 小松左京「くだんのはは」
 平山夢明「倅解体」
 皆川博子「U Bu Me」
 日影丈吉「ひこばえ」
 小池真理子「夜顔」
 京極夏彦「鬼棲」
 
 フランシス・ハーディング『影を呑んだ少女』は、『嘘の木』が話題を呼んだ作家の最新作。「幽霊を憑依させる体質の少女メイクピースは、亡き父親の一族だという旧家に引き取られるが、そこはとんでもない場所だった。」という内容だそうです。

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5月の気になる新刊と4月の新刊補遺
4月28日刊 北見隆『北見隆 装幀画集 書物の幻影』(アトリエサード 予価3520円)
5月8日刊 土岐恒二『照応と総合 土岐恒二個人著作集+シンポジウム』(小鳥遊書房 予価9680円)
5月8日刊 鹿島茂『職業別 パリ風俗』(白水Uブックス 予価2090円)
5月9日刊 G・K・チェスタトン『知りすぎた男』(創元推理文庫 予価880円)
5月11日刊 東雅夫編『泉鏡花「怪談会」全集』(春陽堂書店 予価4950円)
5月13日刊 テオドール・シュトルム『みずうみ/人形使いのポーレ』(光文社古典新訳文庫)
5月13日刊 小泉喜美子『ミステリー作家は二度死ぬ』(光文社文庫)
5月16日刊 オスカー・ワイルド『童話集 幸福な王子 他八篇』(岩波文庫 924円)
5月20日刊 シャネル・ベンツ『おれの眼を撃った男は死んだ』(東京創元社 予価2420円)
5月21日刊 マイクル・クライトン、ダニエル・H・ウィルソン『アンドロメダ病原体 変異 上・下』早川書房 予価各1980円)
5月21日刊 生島治郎『浪漫疾風録』(中公文庫 予価968円)
5月22日刊 『幻想と怪奇2 人狼伝説 変身と野生のフォークロア』(新紀元社 予価2420円)
5月25日刊 エミール・ガボリオ『バスティーユの悪魔』(論創社 予価2860円)
5月26日刊 シオドラ・ゴス『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 予価2640円)
5月28日刊 ライアン・ギャディス『血まみれ鉄拳ハイスクール』(文藝春秋 予価2200円)
5月28日刊 ジャスパー・フォード『最後の竜殺し』(竹書房文庫 予価1100円)
5月29日刊 ケイト・アトキンソン『ライフ・アフター・ライフ』(東京創元社 予価3960円)

 鹿島茂『職業別 パリ風俗』は、19世紀フランスの職業を通して当時の時代風俗を解説した本の再刊になりますね。面白いのでお薦めです。

 復活した怪奇幻想専門誌『幻想と怪奇』の2号の特集は「人狼」。これは面白そうです。

 『アンドロメダ病原体 変異』は、クライトンの名作『アンドロメダ病原体』の公式続編。前作から数十年後の世界を描いているそうです。

 シオドラ・ゴス『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』は、「両親の死を契機に、父親の謎めいた過去を調べ始めたメアリ・ジキル嬢。父の旧友ハイド氏とは何者なのか? ホームズとワトソンの助けを借りて調査するうち、彼女は科学者が狂気の研究の末に生み出した娘たちと出会い!? 19世紀ロンドンで展開するSFミステリ」という内容だそうで、これは気になりますね。

 ケイト・アトキンソン 『ライフ・アフター・ライフ』の内容は次のようなもの。「生まれては死ぬアーシュラ。臍の緒が巻きつき、スペイン風で溺れ、屋根から落ち、ロンドンの大空襲で……。デジャヴュとは、生き続けられなかった今とは別の人生の名残なのか?」。パラレルワールド的なテーマなのでしょうか、ちょっと気になります。

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4月の気になる新刊と3月の新刊補遺
発売中 一柳廣孝『怪異の表象空間 メディア・オカルト・サブカルチャー』(国書刊行会 3960円)
発売中 寺尾隆吉『100人の作家で知る ラテンアメリカ文学ガイドブック』(勉誠出版 3080円)
3月28日発売 フォルチュネ・デュ・ボアゴベ『乗合馬車の犯罪 別冊Re-ClaM Vol.2』(Re-ClaM 2500円 盛林堂書房にて販売)
4月2日発売 『ナイトランド・クォータリーvol.20 特集バベルの図書館』(アトリエサード 予価1870円)
4月3日刊 日影丈吉編『新装版 フランス怪談集』(河出文庫 予価1210円)
4月10日刊 ジョーン・エイキン『月のケーキ』(東京創元社 予価2200円)
4月13日刊 中西裕編『死の濃霧 延原謙翻訳セレクション』(論創海外ミステリ 予価3520円)
4月14日刊 アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ『すべては消えゆく』(光文社古典新訳文庫 予価1166円)
4月17日刊 濱中利信編『改訂増補新版 エドワード・ゴーリーの世界』(河出書房新社 予価2200円)
4月18日刊 鹿島茂『職業別 パリ風俗』(白水Uブックス 予価2090円)
4月20日刊 アガサ・クリスティ『ハーリー・クィンの事件簿』(創元推理文庫 予価990円)
4月24日刊 ホルヘ・ミゲル・ココム・ペッチ『言葉の守り人』(国書刊行会 予価2640円)
4月24日刊 土岐恒二『照応と総合 土岐恒二個人著作集+シンポジウム』(小鳥遊書房 予価9680円)
4月28日刊 河出書房新社編集部編『月岡芳年 血と怪奇の異才絵師』(河出書房新社 予価2640円)
4月30日刊 ケイト・ウィルヘルム『鳥の歌いまは絶え』(創元SF文庫 予価1276円)


 黒岩涙香翻案の『鉄仮面』の原作者としても知られ、19世紀フランスの大衆作家として非常に人気のあったボアゴベ(1821-1891)の『乗合馬車の犯罪』が初邦訳。商業出版ではありませんが、貴重な翻訳だと思います。書肆盛林堂にて購入できます。
 http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca22/604/p-r-s/

 徐々にシリーズ復刊が進む、河出文庫の<怪談集シリーズ>。今回は『フランス怪談集』が新装復刊になります。文学味豊かなセレクションになっています。参考に収録作品も紹介しておきますね。

「魔法の手」ジェラール・ド・ネルヴァル
「死霊の恋」 テオフィル・ゴーチェ
「イールのヴィーナス」プロスペール・メリメ
「深紅のカーテン」ジュール・バルベー=ドールヴィイ
「木乃伊をつくる女」マルセル・シュオッブ
「水いろの目」 レミ・ド・グールモン
「聖母の保証」アナトール・フランス
「或る精神異常者」モーリス・ルヴェル
「死の鍵」ジュリアン・グリーン
「壁をぬける男」マルセル・エイメ
「死の劇場」ピエール・ド・マンディアルグ
「代書人」ミシェル・ド・ゲルドロード


 中西裕編『死の濃霧 延原謙翻訳セレクション』(論創海外ミステリ)は、名訳者延原謙のミステリ翻訳を集めたアンソロジー。こちらも内容が紹介されていたので転載しておきます。

「死の濃霧」コナン・ドイル
「妙計」E・マックスウェル
「サムの改心」ジョンストン・マッカレー
「ロジェ街の殺人」アルセル・ベルジェ
「めくら蜘蛛」L・J・ビーストン
「深山に咲く花」オーギュスト・フィロン
「グリヨズの少女」F・W・クロフツ
「三つの鍵」ヘンリー・ウェイド
「地蜂が刺す」リチャード・コンネル
「五十六番目の恋物語」スティーヴン・リーコック
「古代金貨」A・K・グリーン
「仮面」A・E・W・メースン
「十一対一」ヴィンセント・スターレット
「シャーロック・ホームズ物語 赤髪組合」コナン・ドイル


 濱中利信編『改訂増補新版 エドワード・ゴーリーの世界』は、品切れになっていたエドワード・ゴーリー作品のガイドブックの増補版。ゴーリー作品の全体像が分かる便利なガイドブックでお薦めです。

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3月の気になる新刊と2月の新刊補遺
2月28日刊 佐野誠子『怪を志す 六朝志怪の誕生と展開』(名古屋大学出版会 予価6930円)
3月5日刊 種村季弘編『ドイツ怪談集』(河出文庫 予価1100円)
3月5日刊 ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』(河出文庫 予価1430円)
3月5日刊 フィリップ・K・ディック『タイタンのゲーム・プレーヤー』(ハヤカワ文庫SF 予価1100円)
3月5日刊 池上俊一『ヨーロッパ中世の想像界』(名古屋大学出版会 予価9900円)
3月10日刊 カルメン・マリア・マチャド『彼女の体とその他の断片』(エトセトラブックス 予価2640円)
3月12日刊 中野嘉一編『稲垣足穂詩文集』(講談社文芸文庫 予価2420円)
3月14日刊 デヴィッド・コープ『深層地下4階』(ハーパーBOOKS 予価1400円)
3月14日刊 J・D・バーカー『嗤う猿』(ハーパーBOOKS 予価1360円)
3月14日刊 ナショナル ジオグラフィック編『オカルト伝説 人を魅了する世界の不思議な話』(日経ナショナルジオグラフィック社 予価1540円)
3月15日刊 ジェラール・ド・ネルヴァル『火の娘たち』(岩波文庫 1386円)
3月18日刊 アリソン・ゲイリン『ヘヴンキルの死』(仮題)(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1100円)
3月18日刊 三田村信行『オオカミの時間: 今そこにある不思議集』(理論社 予価1540円)
3月18日刊 ケン・リュウ編『月の光 現代中国SFアンソロジー』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 予価2200円)
3月19日刊 小森収編『短編ミステリの二百年2』(創元推理文庫 予価1540円)
3月28日刊 西崎憲『未知の鳥類がやってくるまで』(筑摩書房 予価1870円)


 近年続々復活しつつある、河出文庫の<怪談集>、今回は『ドイツ怪談集』が復刊です。ロマン派の古典メルヒェンから現代作家の幻想小説まで、ドイツ怪奇幻想小説を概観できる優れたアンソロジーです。

 『稲垣足穂詩文集』(講談社文芸文庫)は、中野嘉一編ということなので、かって出ていた『稲垣足穂詩集』の文庫化でしょうか。稲垣足穂の「詩」は「一千一秒物語」を思わせるファンタスティックな散文詩が多いので、「一千一秒物語」ファンにはお薦めしておきたいと思います。

 デヴィッド・コープ『深層地下4階』は、バイオホラー的な題材を扱った作品のようですね。「前科持ちのティーケイクは、いつも通り貸倉庫の夜勤シフトに入っていた。ふと気づくと、壁の奥からかすかなブザー音が聞こえる。発信源を突き止めるため、同僚のナオミとともに壁をぶち破ると、そにはブザー音と異常を知らせるランプが点滅する、存在しえない深層地下階の図面パネルがあった。それは40年前、小さな町を全滅させるほどに進化した生体が極秘に封印されている場所だった……。」
 これは気になります。

 J・D・バーカー『嗤う猿』は、非常に面白いサイコ・スリラーだった『悪の猿』の続編。面白いところで終わっていたので、これは楽しみです。

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2月の気になる新刊
2月6日刊 二階堂奥歯『八本脚の蝶』(河出文庫 予価1320円)
2月11日刊 マーガレット・ミラー『鉄の門』(創元推理文庫 予価1144円)
2月18日刊 ギルバート・キース・チェスタトン『チェスタトン ショートセレクション ブラウン神父 呪いの書』(理論社 予価1430円)
2月20日刊 ジーン・ウルフ『書架の探偵』(ハヤカワ文庫SF 予価1100円)
2月20日刊 イーゴル・デ・アミーチス『七つ目の墓』(ハヤカワ文庫NV 予価990円)
2月21日発売 『幻想と怪奇1 ヴィクトリアン・ワンダーランド 英國奇想博覧會』(新紀元社 予価2420円)
2月25日刊 オーブリー・シャーマン『ヴァンパイアの教科書 神話と伝説と物語』(原書房 予価2200円)


 マーガレット・ミラー『鉄の門』は、かって江戸川乱歩も褒めていたサスペンス長篇。邦訳はあったものの長らく品切れで、かなりのプレミアが付いていましたが、ようやく新訳刊行です。

 イーゴル・デ・アミーチス『七つ目の墓』は、「偽の墓に名前を書かれた人々が、その通りに残虐な死を遂げていく」というサスペンス作品だそうで、これはちょっと気になりますね。

 『幻想と怪奇1 ヴィクトリアン・ワンダーランド 英國奇想博覧會』は、昨年アンソロジーも刊行された怪奇幻想専門誌「幻想と怪奇」の復活版です。

 オーブリー・シャーマン『ヴァンパイアの教科書 神話と伝説と物語』は、ヴァンパイアの解説書。現代の文化まで広く網羅した内容のようです。
2020年度新年のご挨拶
 2020年最初の更新になります。今年もよろしくお願いいたします。
 昨年は同人誌やグッズを作成したり、「文学フリマ東京」に出店したり、商業誌に記事を書いたりと、例年になく活動的な年でした。今年もその勢いでいろいろ新しいことができたらいいなと考えています。
 昨年から引き続き作成中の同人誌『海外怪奇幻想小説叢書ガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』に関しても、実際の刊行に向けて進めていきたいと思います。

 年末から読んでいるのは、フィリパ・ピアスの怪談集とイーディス・ネズビットのファンタジー作品。どちらも面白く、追いかけたい作家となりました。
 もともと子供の頃から児童文学系の作品にはあまり触れずに来た関係で、幻想小説系の作品に限っても年少向けの作品はたくさん読み残しがあります。このあたりの作品に関しても、追々読んでいけたらなと思います。

 毎年恒例ですが、年末の文学イベント「読んでいいとも!ガイブンの輪」で公開された各出版社の「来年の隠し球」リストと新年に公開された東京創元社の近刊ラインナップから、気になった新刊について書いておきます。

 一番気になるのが、A・N・L・マンビー『アラバスターの手 マンビー古書怪談集』(羽田詩津子訳 国書刊行会)。M・R・ジェイムズの衣鉢を継ぐとも言われた作家ですが、まさか怪談集が一冊の本として出るとは驚きです。

 あと気になるのは、ベルンハルト・ケラーマン『トンネル』(秦豊吉訳 国書刊行会)、E・T・A・ホフマン『ホフマン作品集成』(石川道雄訳 国書刊行会)、R・L・スティーヴンソン『爆弾魔』(南條竹則訳 国書刊行会)など。『爆弾魔』はおそらく『新アラビア夜話』の続編ですね。訳者も古典新訳文庫で正編を訳した南條竹則さんということで楽しみです。

 <ベル・エポック怪人小説叢書>全3巻(国書刊行会)というのも面白そうです。こちらは、レオン・サジ『ジゴマ』(安川孝訳)、R・スヴェストン&M・アラン『ファントマと囚われの女』(赤塚敬子訳)、ガストン・ルルー『シェリ=ビビとセシリー』(宮川朗子訳)の三巻構成とのこと。

 あとは昨年初頭から予告は出ていた、浅倉久志訳『ユーモア・スケッチ大全』(全五巻)とか、ウッドハウスの新シリーズなども気になります。

 以上は、全部国書刊行会の本です。以下は東京創元社から。

ケイト・マスカレナス『時間旅行者の心理学』(茂木健訳 創元SF文庫)
 1967年のイギリスで、4人の女性科学者がタイムマシンの開発に成功。時間移動を厳格に管理すべく、国家からも独立した〈コンクレーヴ〉と呼ばれる巨大なタイムトラベル運用組織が誕生した。そして2018年、ロンドン郊外において身元不明の射殺体が密室状態で発見される。タイムトラベル絡みの殺人だと判明した事件の真相を突きとめるべく、遺体の第一発見者オデットはタイムトラベラーとしてコンクレーヴに潜入を図る。時間線のもつれを解いた先に現れる真実とは?

ジョーン・エイキン『月のケーキ』(三辺律子訳 四六判上製)
 幼い娘が想像した「バームキン」を宣伝に使ったスーパーマーケットの社長、だが実体のない「バームキン」がひとり歩きしてしまい、世間を大騒ぎさせることに……『バームキンがいちばん』。ヴァイキングの侵略者が攻めてきた。これまでは魔女である祖母が城を守っていたが、祖母亡き今、城の守りは孫のコラムに託された。果たしてコラムはどんな手段を使って城を守るのか?『にぐるま城』など、奇妙な味わいの14編を収めた短編集。

フランシス・ハーディング『幽霊熊憑きの少女』(児玉敦子訳 四六判上製)
 英国、17世紀半ば。幽霊が憑依する体質の少女メイクピースは、暴動で命を落とした母の霊を取り込もうとして、旅の一座に虐待されて死んだクマの霊を取り込んでしまう。クマをもてあましていたメイクピースのもとへ、会ったこともない亡き父親の一族から迎えが来る。父は死者の霊を取り込む能力をもつ旧家の長男だったのだ。屋敷の人々の不気味な雰囲気に嫌気が差したメイクピースは逃げだそうとするが……。ハーディングの最新作。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

2019年を振り返って
 2019年ももうすぐ終わります。毎年恒例ではありますが、今年読んで面白かった作品と個人的なイベントについてまとめておきたいなと思います。

 今年、個人的に最も大きなイベントだったのが、同人誌・グッズを初めて作成したことです。海外の怪奇幻想アンソロジーについてのガイド本『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』、海外怪奇幻想作家のマトリクスをクリアファイルにした『海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル』、物語やメタフィクションを題材にした作品のガイド『物語をめぐる物語ブックガイド』、迷宮や建築テーマ作品のガイド『迷宮と建築幻想ブックガイド』の4点を作成しました。
 特に『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』は非常に好評で、印刷したものがほぼ完売という嬉しい結果になりました。

 同人誌作成に伴い、11月に同人誌即売会「文学フリマ東京」に初出店したのも、自分の中ではかなり大きな出来事でした。本を買ってくれた方はもちろん、ネットでは知っているものの初めて会う人に挨拶できたりなど、コミュニケーション面でも収穫のあるイベントでした。

 次に主宰を務めている読書会「怪奇幻想読書倶楽部」について。今年は8回ほど開催しました。内容は以下の通りです。

1月
第一部:課題図書 ワレリイ・ブリューソフ『南十字星共和国』(草鹿外吉訳 白水Uブックス)
第二部:課題図書 レ・ファニュ『吸血鬼カーミラ』(平井呈一訳 創元推理文庫)

3月
ダンセイニの幻想と奇想
課題図書
ロード・ダンセイニ『ペガーナの神々』(荒俣宏訳 ハヤカワ文庫FT)
ロード・ダンセイニ『二壜の調味料』(小林晋訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)

4月
第一部:課題図書 ジェフリー・フォード『言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選』(谷垣暁美訳 東京創元社)
第二部:私の積読リスト

6月
ブラックウッドと英国怪談の伝統
課題図書
第一部:アルジャーノン・ブラックウッド『いにしえの魔術』(夏来健次訳 アトリエサード)
第二部:由良君美編『イギリス怪談集』(河出文庫)

8月
ホフマンとデュマのコント・ファンタスティック
課題図書
第一部:E・T・A・ホフマン『ホフマン短篇集』(池内紀訳 岩波文庫)
第二部:アレクサンドル・デュマ『千霊一霊物語』
 (前山悠訳 光文社古典新訳文庫)

9月
異色短篇の愉しみ
課題図書
スタンリイ・エリン『特別料理』(田中融二訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)
フレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい』(星新一訳 ハヤカワ文庫SF)

10月
課題図書 『幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成』(創元推理文庫)

12月
第一部:課題図書 荒俣宏編『アメリカ怪談集』(河出文庫)
第二部:本の交換会

 レ・ファニュ、ブラックウッド、ホフマンといった怪奇幻想分野の巨匠の作品、エリンやブラウンといった異色作家、イギリスやアメリカのアンソロジーなど、多様な作品を取り上げられたのではないかなと思います。
 印象に残っているのはは、ダンセイニとジェフリー・フォードを取り上げた回でしょうか。ダンセイニ回では、『ペガーナの神々』『二壜の調味料』という、両極端ともいうべき作品を課題書にした関係もあり、非常に多様な話題の出た回でした。
 フォードは、この読書会としては珍しく健在する現代作家ということで、いつもの「古典」とは違った味わいの回になりました。

 前年10月に始めたtwitter上のファンクラブ「#日本怪奇幻想読者クラブ」に関しては、結成一年を迎えましたが、日常的にタグを使っていただいている方のおかげもあり、このジャンルの認知に少しづつ貢献できているのではないかな、という気もしています。

 さて、ここからは、今年印象に残った本について紹介していきたいと思います。まず、2019年度出版の本を先に取り上げています。

 海外作品では、下記の作品が印象に残っています。

メドゥーサ (ナイトランド叢書3-5) フラックスマン・ロウの心霊探究 (ナイトランド叢書3-6) 死者の饗宴 (ドーキー・アーカイヴ) 千霊一霊物語 (光文社古典新訳文庫) 小鬼の市とその他の詩 クリスティナ・ロセッティ詩集 十二の奇妙な物語 (論創海外ミステリ)
 幻の名作と言われ続けていた、E・H・ヴィシャック『メドゥーサ』(安原和見訳 アトリエサード)の邦訳はある種の事件でした。作品バランスはいびつながら、異様な印象を与える幻想小説です。
 E&H・ヘロン『フラックスマン・ロウの心霊探究』(三浦玲子訳 アトリエサード)は、シャーロック・ホームズと同時期に発表されたオカルト探偵ものの先駆的作品。怪奇現象に対するアプローチが風変わりで面白く読める作品でした。
 ジョン・メトカーフ『死者の饗宴』(横山茂雄、北川依子訳 国書刊行会)は、ジョン・メトカーフ(1891-1965)の怪奇幻想小説を集めた短篇集です。解釈が難しい作品が多いのですが、そのユニークなアイディアと、どこかが狂ったような異様な空気感はこの作家ならではですね。
 アレクサンドル・デュマ『千霊一霊物語』(前山悠訳 光文社古典新訳文庫)は、作者のデュマ自身を語り手に、集まった人々が不思議な話や怪奇譚を語ってゆくという、枠物語形式の怪奇幻想小説です。エピソード間のつなぎが非常に上手く、今読んでも十分に面白い物語集でした。
 クリスティナ・ロセッティ『小鬼の市とその他の詩 クリスティナ・ロセッティ詩集』(滝口智子訳 鳥影社)は、イギリス・ヴィクトリア朝期の詩人クリスティナ・ロセッティ(1830-1894)の第一詩集の全訳。表題作はじめ幻想的で物語性の強い詩作品が多く読める本です。
 イギリスの作家サッパーの短篇集『十二の奇妙な物語』(金井美子訳 論創海外ミステリ)は、恋愛もの、ミステリ、サスペンス、恐怖小説と、様々なジャンルの物語が楽しめる作品集。オーソドックスな話が多く、先が読めてしまうものも多いのですが、面白く読めてしまうのは不思議です。


怪奇骨董翻訳箱 ドイツ・オーストリア幻想短篇集 幽霊島 (平井呈一怪談翻訳集成) (創元推理文庫)
 アンソロジーでは、垂野創一郎編訳『怪奇骨董翻訳箱 ドイツ・オーストリア幻想短篇集』(国書刊行会)と『幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成』(創元推理文庫)のインパクトが強烈でした。
 垂野創一郎編訳『怪奇骨董翻訳箱 ドイツ・オーストリア幻想短篇集』(国書刊行会)は、ドイツ・オーストリアの未訳の怪奇・幻想短篇を集めた重量級のアンソロジーです。 「人形」や「分身」など、テーマ別にいくつかの作品がまとめられています。未訳かつ珍しい作品が集められており、ドイツ方面の作品紹介が少なくなっている昨今、貴重な作品集でした。
 『幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成』(創元推理文庫)は、入手難になっている平井呈一の怪奇小説翻訳とエッセイを集めた本です。どれも滋味のある翻訳文で、怪奇小説ファンにとっては素晴らしい贈り物になりました。


図書館司書と不死の猫 虚ろなる十月の夜に (竹書房文庫) 偶然仕掛け人 方形の円 (偽説・都市生成論) (海外文学セレクション) ボーダー 二つの世界 (ハヤカワ文庫NV) イヴリン嬢は七回殺される ブラック・トムのバラード (はじめて出逢う世界のおはなし―アメリカ編)
 現代作家では、以下の作品が印象に残ります。
 イギリスの作家、リン・トラスの長篇小説『図書館司書と不死の猫』(玉木亨訳 東京創元社)は、ブラック・ユーモアにあふれたミステリアスな怪奇幻想小説です。メタな仕掛けも楽しいです。
 ロジャー・ゼラズニイの長篇小説『虚ろなる十月の夜に』(森瀬繚訳 竹書房文庫)は、クトゥルー神話的な世界観の中で、切り裂きジャック、吸血鬼、人狼などが跳梁するという、楽しいホラー作品です。ゲーム的な世界観も面白いですね。
 イスラエルの作家、ヨアブ・ブルームの長篇小説『偶然仕掛け人』(高里ひろ訳 集英社)は、世の中の出来事を偶然によって動かしているという「偶然仕掛け人」をテーマにした、ファンタスティックな作品。
 ギョルゲ・ササルマン『方形の円 偽説:都市生成論』(住谷春也訳 東京創元社)は、ルーマニアの作家による、36の空想都市をテーマにした幻想小説集です。空想・幻想都市小説(というジャンルがあるかわかりませんが)の決定版ともいうべき作品でした。
 スウェーデンの作家、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短篇集『ボーダー 二つの世界』(山田文ほか訳 ハヤカワ文庫NV)は、映画化された表題作ほか11篇を収録した作品集です。恐ろしくハイレベルなホラー短篇集になっています。特に表題作は名作だと思います。
 スチュアート・タートンの長篇小説『イヴリン嬢は七回殺される』(三角和代訳 文藝春秋)は、館ミステリ+タイムループ+人格転移という、複雑怪奇なSFミステリ作品。多少に読みにくさはあるものの、意欲的なエンタメ作品でした。
 ヴィクター・ラヴァル『ブラック・トムのバラード』(藤井光訳 東宣出版)は、H・P・ラヴクラフトの作品「レッド・フックの恐怖」を黒人青年の視点から語りなおしたというホラー作品。極めて現代的なラヴクラフト解釈ともいうべき作品でした。


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 同人出版ですが、モーリス・ルヴェル『ルヴェル新発見傑作集 遺恨』(中川潤訳 エニグマティカ叢書)は、残酷譚で知られるルヴェルの短篇を11篇収録した作品集。質の高い短篇が揃っており、安心して楽しめる作品集になっています。


祭火小夜の後悔 ひとんち 澤村伊智短編集 そのナイフでは殺せない 白昼夢の森の少女 ホテル・ウィンチェスターと444人の亡霊 (講談社タイガ)
 国内作品では、「ゴーストハンター」的な題材を扱った『祭火小夜の後悔』(秋竹サラダ KADOKAWA)、工夫が凝らされた短篇集『ひとんち 澤村伊智短編集』(澤村伊智 光文社)、そのナイフで殺されると特定の時間に完全な状態で生き返ってしまうナイフをテーマにした突拍子もない設定のホラーサスペンス作品『そのナイフでは殺せない』(森川智喜 光文社)、バラエティに富んだ幻想小説集『白昼夢の森の少女』(恒川光太郎 KADOKAWA)、老舗のホテルを舞台に、霊と話す能力を持つコンシェルジュが様々なトラブルに対応するというホラー・ミステリ作品『ホテル・ウィンチェスターと444人の亡霊』(木犀あこ 講談社タイガ)などを面白く読みました。


有害無罪玩具 (ビームコミックス) ブラック・テラー (バンブーコミックス タタン) マリアの棲む家 (ビームコミックス) おなかがすいたらおともだち (ビッグコミックススペシャル) シャドーハウス 1 (ヤングジャンプコミックス)
 コミック作品では、哲学的でテーマ性の強い短篇マンガ集『有害無罪玩具』(詩野うら ビームコミックス)、かわいらしい絵柄で描かれるブラックな物語集『ブラック・テラー』(三堂マツリ バンブーコミックス タタン)、怪異描写の邪悪さ・異様さが強烈なホラー作品『マリアの棲む家』(ハセガワM ビームコミックス)、虫のような知性体に寄生されたいじめられっ子と優等生の友情を描く奇妙なホラーサスペンス『おなかがすいたらおともだち』(おぐりイコ ビッグコミックススペシャル)、不思議な洋館に住む顔のないシャドー一族と世話係の“生き人形”たちを描くファンタジー作品『シャドーハウス』(ソウマトウ)などが印象に残ります。

 ここからは、旧刊ですが今年読んで印象に残った作品です。

 読書会テーマに取り上げた関係で、邦訳の大部分を読み直した、ロード・ダンセイニとアルジャーノン・ブラックウッドの印象は強いですね。作品の幅広さと闊達さを実感したダンセイニ、その技巧・エンタメ性だけでなく思想的なテーマ性も強いブラックウッド、どちらも魅力的な作家であることを再認識しました。
 ブラックウッドでは、同人誌として翻訳された『万象綺譚集』『深山霊異記』(渦巻栗訳)で、未訳の作品をまとめて読むことができたのも収穫でした。


心地よく秘密めいたところ (創元推理文庫) 完全版 最後のユニコーン ユニコーン・ソナタ
 邦訳をまとめて読んで感銘を受けたのは、アメリカのファンタジー作家、ピーター・S・ビーグルの作品。優しさと癒しに満ちたモダン・ファンタジー『心地よく秘密めいたところ』(山崎淳訳 創元推理文庫)、象徴性の強いモダン・ファンタジー『完全版 最後のユニコーン』(金原瑞人訳 学研)、現代に生きる神々をモチーフにしたファンタジー『風のガリアード』(山田順子訳 ハヤカワ文庫FT)、異世界<シェイラ>と現実世界を往復する少女ジョーイを描いたモダン・ファンタジー作品『ユニコーン・ソナタ』(井辻朱美訳 早川書房)、どれも絶品のファンタジーでした。


恐怖の心理サスペンス―ゾクッ!とする楽しみをあなたに (ワニ文庫)
 アンソロジーでは、無理矢理怪奇実話テイストに改変されてしまったモダン・ホラー・アンソロジー『恐怖の心理サスペンス』(カービー・マッコーリー編 矢野浩三郎訳 ワニ文庫)、B級怪奇小説を集めたアンソロジー『慄然の書 ウィアードテールズ傑作集』(渡部桜訳 荒俣宏解説 継書房)、マニアライクな掘り出し物の多い怪奇アンソロジー『世界怪奇ミステリ傑作選 正・続』(矢野浩三郎編 番町書房イフ・ノベルズ)が、それぞれ楽しい本でした。


世界のかなたの森 (ウィリアム・モリス・コレクション) 死者の誘い (創元推理文庫) 月ノ石 (Modern & Classicシリーズ) 令嬢クリスティナ
 古典では、ゴシック・ロマンスの代名詞ともいうべきアン・ラドクリフの作品『イタリアの惨劇』(アン・ラドクリフ 野畑多恵子訳 国書刊行会)、純度の高いファンタジー小説の元祖『世界のかなたの森』(ウィリアム・モリス 小野二郎訳 晶文社)、シニカルでメタなメルヒェン作品『青い彼方への旅』(ルートヴィヒ・ティーク 垂野創一郎訳 エディション・プヒプヒ)、残酷趣味の強いなフランスの世紀末小説『責苦の庭』(オクターヴ・ミルボー 篠田知和基訳 国書刊行会)、自分の顔が突然知らない男の顔になっていた…という幻想小説『死者の誘い』(ウォルター・デ・ラ・メア 田中西二郎訳 創元推理文庫)、魔女裁判にかけられた少女を描いた救いのない『魔女グレートリ アルプスの悲しい少女』(マリアンヌ・マイドルフ 種村季弘・田部淑子訳 牧神社)、どこか愉悦感の感じられる幻想作品『月ノ石』(トンマーゾ・ランドルフィ 中山エツコ訳 河出書房新社)、先史時代を舞台にした冒険小説『人類創世』(J・H・ロニー兄 長島良三訳 カドカワ・ノベルズ)、怪奇味の濃厚な吸血鬼テーマ作品『令嬢クリスティナ』(ミルチャ・エリアーデ 住谷春也訳 作品社)などの印象が強いです。


紙葉の家 虚ろな穴 (ハヤカワ文庫NV) スカウト52 (ハヤカワ文庫NV) 妖女サイベルの呼び声 (ハヤカワ文庫 FT 1) ミステリー・ウォーク〈上〉 (創元推理文庫) エヴァが目ざめるとき 冷たい肌 ぼくのゾンビ・ライフ ストレンジ・トイズ (ストレンジ・フィクション) ドグラ・マグラ(上) (角川文庫) 砂の女 (新潮文庫) 人魚呪
 現代作品では、次のような作品を面白く読みました。
 ロマンチックなゴシック・サスペンス『砂の館』(シェリィ・ウォルターズ 小泉喜美子訳 角川文庫)、「幽霊屋敷」テーマのメタフィクショナル小説『紙葉の家』(マーク・Z・ダニエレブスキー 嶋田洋一訳 ソニーマガジンズ)、何でも飲み込んでしまう謎の黒い穴をめぐって異様な人間関係が描かれてゆくというホラー小説『虚ろな穴』(キャシー・コージャ 黒田よし江訳 ハヤカワ文庫NV)、少年たちのサバイバルと感染パニックを組み合わせたモダンホラー『スカウト52』(ニック・カッター 澁谷正子訳 ハヤカワ文庫NV)、氷のような心を持った魔女が愛と憎しみを知るようになるという流麗なファンタジー作品『妖女サイベルの呼び声』(パトリシア・A・マキリップ 佐藤高子訳 ハヤカワ文庫FT)、死者の魂を鎮める能力を受け継いだ少年の成長を描くロバート・R・マキャモン『ミステリー・ウォーク』(山田和子訳 創元推理文庫)、チンパンジーの脳に記憶を移植された少女を描く『エヴァが目ざめるとき』(ピーター・ディッキンソン 唐沢則幸訳 徳間書店)肩書きは「文学」ながらその実怪物との死闘を描くホラー作品『冷たい肌』(アルベール・サンチェス・ピニョル 田澤耕訳 中央公論社)、ゾンビになってしまった人々が生きる権利を求めて戦うという異色の社会派ゾンビ小説『ぼくのゾンビ・ライフ』(S・G・ブラウン 小林真里訳 太田出版)、魔術的な雰囲気に満ちた幻想小説『ストレンジ・トイズ』(パトリシア・ギアリー 谷垣暁美役 河出書房新社)など。
 日本作品では、長年の懸案でしたがようやく読破できた夢野久作の長篇『ドグラ・マグラ』(角川文庫)、不条理小説の名作として名高い『砂の女』(安部公房 新潮文庫)、人魚の肉を食い不老不死になった男を描く伝奇小説『人魚呪』(神護かずみ 角川書店)などが印象に残ります。

 2019年度は読書・関連活動ともに、個人的にはなかなか充実した年になったのではないかと思っています。来年も変わらず活動していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
 また、新年度には挨拶をかねて、記事を更新したいと思っています。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』『イーディス・ネズビット・ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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