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4月の気になる新刊と3月の新刊補遺
発売中 一柳廣孝『怪異の表象空間 メディア・オカルト・サブカルチャー』(国書刊行会 3960円)
発売中 寺尾隆吉『100人の作家で知る ラテンアメリカ文学ガイドブック』(勉誠出版 3080円)
3月28日発売 フォルチュネ・デュ・ボアゴベ『乗合馬車の犯罪 別冊Re-ClaM Vol.2』(Re-ClaM 2500円 盛林堂書房にて販売)
4月2日発売 『ナイトランド・クォータリーvol.20 特集バベルの図書館』(アトリエサード 予価1870円)
4月3日刊 日影丈吉編『新装版 フランス怪談集』(河出文庫 予価1210円)
4月10日刊 ジョーン・エイキン『月のケーキ』(東京創元社 予価2200円)
4月13日刊 中西裕編『死の濃霧 延原謙翻訳セレクション』(論創海外ミステリ 予価3520円)
4月14日刊 アンドレ・ピエール・ド・マンディアルグ『すべては消えゆく』(光文社古典新訳文庫 予価1166円)
4月17日刊 濱中利信編『改訂増補新版 エドワード・ゴーリーの世界』(河出書房新社 予価2200円)
4月18日刊 鹿島茂『職業別 パリ風俗』(白水Uブックス 予価2090円)
4月20日刊 アガサ・クリスティ『ハーリー・クィンの事件簿』(創元推理文庫 予価990円)
4月24日刊 ホルヘ・ミゲル・ココム・ペッチ『言葉の守り人』(国書刊行会 予価2640円)
4月24日刊 土岐恒二『照応と総合 土岐恒二個人著作集+シンポジウム』(小鳥遊書房 予価9680円)
4月28日刊 河出書房新社編集部編『月岡芳年 血と怪奇の異才絵師』(河出書房新社 予価2640円)
4月30日刊 ケイト・ウィルヘルム『鳥の歌いまは絶え』(創元SF文庫 予価1276円)


 黒岩涙香翻案の『鉄仮面』の原作者としても知られ、19世紀フランスの大衆作家として非常に人気のあったボアゴベ(1821-1891)の『乗合馬車の犯罪』が初邦訳。商業出版ではありませんが、貴重な翻訳だと思います。書肆盛林堂にて購入できます。
 http://seirindousyobou.cart.fc2.com/ca22/604/p-r-s/

 徐々にシリーズ復刊が進む、河出文庫の<怪談集シリーズ>。今回は『フランス怪談集』が新装復刊になります。文学味豊かなセレクションになっています。参考に収録作品も紹介しておきますね。

「魔法の手」ジェラール・ド・ネルヴァル
「死霊の恋」 テオフィル・ゴーチェ
「イールのヴィーナス」プロスペール・メリメ
「深紅のカーテン」ジュール・バルベー=ドールヴィイ
「木乃伊をつくる女」マルセル・シュオッブ
「水いろの目」 レミ・ド・グールモン
「聖母の保証」アナトール・フランス
「或る精神異常者」モーリス・ルヴェル
「死の鍵」ジュリアン・グリーン
「壁をぬける男」マルセル・エイメ
「死の劇場」ピエール・ド・マンディアルグ
「代書人」ミシェル・ド・ゲルドロード


 中西裕編『死の濃霧 延原謙翻訳セレクション』(論創海外ミステリ)は、名訳者延原謙のミステリ翻訳を集めたアンソロジー。こちらも内容が紹介されていたので転載しておきます。

「死の濃霧」コナン・ドイル
「妙計」E・マックスウェル
「サムの改心」ジョンストン・マッカレー
「ロジェ街の殺人」アルセル・ベルジェ
「めくら蜘蛛」L・J・ビーストン
「深山に咲く花」オーギュスト・フィロン
「グリヨズの少女」F・W・クロフツ
「三つの鍵」ヘンリー・ウェイド
「地蜂が刺す」リチャード・コンネル
「五十六番目の恋物語」スティーヴン・リーコック
「古代金貨」A・K・グリーン
「仮面」A・E・W・メースン
「十一対一」ヴィンセント・スターレット
「シャーロック・ホームズ物語 赤髪組合」コナン・ドイル


 濱中利信編『改訂増補新版 エドワード・ゴーリーの世界』は、品切れになっていたエドワード・ゴーリー作品のガイドブックの増補版。ゴーリー作品の全体像が分かる便利なガイドブックでお薦めです。

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3月の気になる新刊と2月の新刊補遺
2月28日刊 佐野誠子『怪を志す 六朝志怪の誕生と展開』(名古屋大学出版会 予価6930円)
3月5日刊 種村季弘編『ドイツ怪談集』(河出文庫 予価1100円)
3月5日刊 ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』(河出文庫 予価1430円)
3月5日刊 フィリップ・K・ディック『タイタンのゲーム・プレーヤー』(ハヤカワ文庫SF 予価1100円)
3月5日刊 池上俊一『ヨーロッパ中世の想像界』(名古屋大学出版会 予価9900円)
3月10日刊 カルメン・マリア・マチャド『彼女の体とその他の断片』(エトセトラブックス 予価2640円)
3月12日刊 中野嘉一編『稲垣足穂詩文集』(講談社文芸文庫 予価2420円)
3月14日刊 デヴィッド・コープ『深層地下4階』(ハーパーBOOKS 予価1400円)
3月14日刊 J・D・バーカー『嗤う猿』(ハーパーBOOKS 予価1360円)
3月14日刊 ナショナル ジオグラフィック編『オカルト伝説 人を魅了する世界の不思議な話』(日経ナショナルジオグラフィック社 予価1540円)
3月15日刊 ジェラール・ド・ネルヴァル『火の娘たち』(岩波文庫 1386円)
3月18日刊 アリソン・ゲイリン『ヘヴンキルの死』(仮題)(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1100円)
3月18日刊 三田村信行『オオカミの時間: 今そこにある不思議集』(理論社 予価1540円)
3月18日刊 ケン・リュウ編『月の光 現代中国SFアンソロジー』(新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 予価2200円)
3月19日刊 小森収編『短編ミステリの二百年2』(創元推理文庫 予価1540円)
3月28日刊 西崎憲『未知の鳥類がやってくるまで』(筑摩書房 予価1870円)


 近年続々復活しつつある、河出文庫の<怪談集>、今回は『ドイツ怪談集』が復刊です。ロマン派の古典メルヒェンから現代作家の幻想小説まで、ドイツ怪奇幻想小説を概観できる優れたアンソロジーです。

 『稲垣足穂詩文集』(講談社文芸文庫)は、中野嘉一編ということなので、かって出ていた『稲垣足穂詩集』の文庫化でしょうか。稲垣足穂の「詩」は「一千一秒物語」を思わせるファンタスティックな散文詩が多いので、「一千一秒物語」ファンにはお薦めしておきたいと思います。

 デヴィッド・コープ『深層地下4階』は、バイオホラー的な題材を扱った作品のようですね。「前科持ちのティーケイクは、いつも通り貸倉庫の夜勤シフトに入っていた。ふと気づくと、壁の奥からかすかなブザー音が聞こえる。発信源を突き止めるため、同僚のナオミとともに壁をぶち破ると、そにはブザー音と異常を知らせるランプが点滅する、存在しえない深層地下階の図面パネルがあった。それは40年前、小さな町を全滅させるほどに進化した生体が極秘に封印されている場所だった……。」
 これは気になります。

 J・D・バーカー『嗤う猿』は、非常に面白いサイコ・スリラーだった『悪の猿』の続編。面白いところで終わっていたので、これは楽しみです。

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2月の気になる新刊
2月6日刊 二階堂奥歯『八本脚の蝶』(河出文庫 予価1320円)
2月11日刊 マーガレット・ミラー『鉄の門』(創元推理文庫 予価1144円)
2月18日刊 ギルバート・キース・チェスタトン『チェスタトン ショートセレクション ブラウン神父 呪いの書』(理論社 予価1430円)
2月20日刊 ジーン・ウルフ『書架の探偵』(ハヤカワ文庫SF 予価1100円)
2月20日刊 イーゴル・デ・アミーチス『七つ目の墓』(ハヤカワ文庫NV 予価990円)
2月21日発売 『幻想と怪奇1 ヴィクトリアン・ワンダーランド 英國奇想博覧會』(新紀元社 予価2420円)
2月25日刊 オーブリー・シャーマン『ヴァンパイアの教科書 神話と伝説と物語』(原書房 予価2200円)


 マーガレット・ミラー『鉄の門』は、かって江戸川乱歩も褒めていたサスペンス長篇。邦訳はあったものの長らく品切れで、かなりのプレミアが付いていましたが、ようやく新訳刊行です。

 イーゴル・デ・アミーチス『七つ目の墓』は、「偽の墓に名前を書かれた人々が、その通りに残虐な死を遂げていく」というサスペンス作品だそうで、これはちょっと気になりますね。

 『幻想と怪奇1 ヴィクトリアン・ワンダーランド 英國奇想博覧會』は、昨年アンソロジーも刊行された怪奇幻想専門誌「幻想と怪奇」の復活版です。

 オーブリー・シャーマン『ヴァンパイアの教科書 神話と伝説と物語』は、ヴァンパイアの解説書。現代の文化まで広く網羅した内容のようです。
2020年度新年のご挨拶
 2020年最初の更新になります。今年もよろしくお願いいたします。
 昨年は同人誌やグッズを作成したり、「文学フリマ東京」に出店したり、商業誌に記事を書いたりと、例年になく活動的な年でした。今年もその勢いでいろいろ新しいことができたらいいなと考えています。
 昨年から引き続き作成中の同人誌『海外怪奇幻想小説叢書ガイド』『夢と眠りの物語ブックガイド』に関しても、実際の刊行に向けて進めていきたいと思います。

 年末から読んでいるのは、フィリパ・ピアスの怪談集とイーディス・ネズビットのファンタジー作品。どちらも面白く、追いかけたい作家となりました。
 もともと子供の頃から児童文学系の作品にはあまり触れずに来た関係で、幻想小説系の作品に限っても年少向けの作品はたくさん読み残しがあります。このあたりの作品に関しても、追々読んでいけたらなと思います。

 毎年恒例ですが、年末の文学イベント「読んでいいとも!ガイブンの輪」で公開された各出版社の「来年の隠し球」リストと新年に公開された東京創元社の近刊ラインナップから、気になった新刊について書いておきます。

 一番気になるのが、A・N・L・マンビー『アラバスターの手 マンビー古書怪談集』(羽田詩津子訳 国書刊行会)。M・R・ジェイムズの衣鉢を継ぐとも言われた作家ですが、まさか怪談集が一冊の本として出るとは驚きです。

 あと気になるのは、ベルンハルト・ケラーマン『トンネル』(秦豊吉訳 国書刊行会)、E・T・A・ホフマン『ホフマン作品集成』(石川道雄訳 国書刊行会)、R・L・スティーヴンソン『爆弾魔』(南條竹則訳 国書刊行会)など。『爆弾魔』はおそらく『新アラビア夜話』の続編ですね。訳者も古典新訳文庫で正編を訳した南條竹則さんということで楽しみです。

 <ベル・エポック怪人小説叢書>全3巻(国書刊行会)というのも面白そうです。こちらは、レオン・サジ『ジゴマ』(安川孝訳)、R・スヴェストン&M・アラン『ファントマと囚われの女』(赤塚敬子訳)、ガストン・ルルー『シェリ=ビビとセシリー』(宮川朗子訳)の三巻構成とのこと。

 あとは昨年初頭から予告は出ていた、浅倉久志訳『ユーモア・スケッチ大全』(全五巻)とか、ウッドハウスの新シリーズなども気になります。

 以上は、全部国書刊行会の本です。以下は東京創元社から。

ケイト・マスカレナス『時間旅行者の心理学』(茂木健訳 創元SF文庫)
 1967年のイギリスで、4人の女性科学者がタイムマシンの開発に成功。時間移動を厳格に管理すべく、国家からも独立した〈コンクレーヴ〉と呼ばれる巨大なタイムトラベル運用組織が誕生した。そして2018年、ロンドン郊外において身元不明の射殺体が密室状態で発見される。タイムトラベル絡みの殺人だと判明した事件の真相を突きとめるべく、遺体の第一発見者オデットはタイムトラベラーとしてコンクレーヴに潜入を図る。時間線のもつれを解いた先に現れる真実とは?

ジョーン・エイキン『月のケーキ』(三辺律子訳 四六判上製)
 幼い娘が想像した「バームキン」を宣伝に使ったスーパーマーケットの社長、だが実体のない「バームキン」がひとり歩きしてしまい、世間を大騒ぎさせることに……『バームキンがいちばん』。ヴァイキングの侵略者が攻めてきた。これまでは魔女である祖母が城を守っていたが、祖母亡き今、城の守りは孫のコラムに託された。果たしてコラムはどんな手段を使って城を守るのか?『にぐるま城』など、奇妙な味わいの14編を収めた短編集。

フランシス・ハーディング『幽霊熊憑きの少女』(児玉敦子訳 四六判上製)
 英国、17世紀半ば。幽霊が憑依する体質の少女メイクピースは、暴動で命を落とした母の霊を取り込もうとして、旅の一座に虐待されて死んだクマの霊を取り込んでしまう。クマをもてあましていたメイクピースのもとへ、会ったこともない亡き父親の一族から迎えが来る。父は死者の霊を取り込む能力をもつ旧家の長男だったのだ。屋敷の人々の不気味な雰囲気に嫌気が差したメイクピースは逃げだそうとするが……。ハーディングの最新作。

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2019年を振り返って
 2019年ももうすぐ終わります。毎年恒例ではありますが、今年読んで面白かった作品と個人的なイベントについてまとめておきたいなと思います。

 今年、個人的に最も大きなイベントだったのが、同人誌・グッズを初めて作成したことです。海外の怪奇幻想アンソロジーについてのガイド本『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』、海外怪奇幻想作家のマトリクスをクリアファイルにした『海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル』、物語やメタフィクションを題材にした作品のガイド『物語をめぐる物語ブックガイド』、迷宮や建築テーマ作品のガイド『迷宮と建築幻想ブックガイド』の4点を作成しました。
 特に『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』は非常に好評で、印刷したものがほぼ完売という嬉しい結果になりました。

 同人誌作成に伴い、11月に同人誌即売会「文学フリマ東京」に初出店したのも、自分の中ではかなり大きな出来事でした。本を買ってくれた方はもちろん、ネットでは知っているものの初めて会う人に挨拶できたりなど、コミュニケーション面でも収穫のあるイベントでした。

 次に主宰を務めている読書会「怪奇幻想読書倶楽部」について。今年は8回ほど開催しました。内容は以下の通りです。

1月
第一部:課題図書 ワレリイ・ブリューソフ『南十字星共和国』(草鹿外吉訳 白水Uブックス)
第二部:課題図書 レ・ファニュ『吸血鬼カーミラ』(平井呈一訳 創元推理文庫)

3月
ダンセイニの幻想と奇想
課題図書
ロード・ダンセイニ『ペガーナの神々』(荒俣宏訳 ハヤカワ文庫FT)
ロード・ダンセイニ『二壜の調味料』(小林晋訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)

4月
第一部:課題図書 ジェフリー・フォード『言葉人形 ジェフリー・フォード短篇傑作選』(谷垣暁美訳 東京創元社)
第二部:私の積読リスト

6月
ブラックウッドと英国怪談の伝統
課題図書
第一部:アルジャーノン・ブラックウッド『いにしえの魔術』(夏来健次訳 アトリエサード)
第二部:由良君美編『イギリス怪談集』(河出文庫)

8月
ホフマンとデュマのコント・ファンタスティック
課題図書
第一部:E・T・A・ホフマン『ホフマン短篇集』(池内紀訳 岩波文庫)
第二部:アレクサンドル・デュマ『千霊一霊物語』
 (前山悠訳 光文社古典新訳文庫)

9月
異色短篇の愉しみ
課題図書
スタンリイ・エリン『特別料理』(田中融二訳 ハヤカワ・ミステリ文庫)
フレドリック・ブラウン『さあ、気ちがいになりなさい』(星新一訳 ハヤカワ文庫SF)

10月
課題図書 『幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成』(創元推理文庫)

12月
第一部:課題図書 荒俣宏編『アメリカ怪談集』(河出文庫)
第二部:本の交換会

 レ・ファニュ、ブラックウッド、ホフマンといった怪奇幻想分野の巨匠の作品、エリンやブラウンといった異色作家、イギリスやアメリカのアンソロジーなど、多様な作品を取り上げられたのではないかなと思います。
 印象に残っているのはは、ダンセイニとジェフリー・フォードを取り上げた回でしょうか。ダンセイニ回では、『ペガーナの神々』『二壜の調味料』という、両極端ともいうべき作品を課題書にした関係もあり、非常に多様な話題の出た回でした。
 フォードは、この読書会としては珍しく健在する現代作家ということで、いつもの「古典」とは違った味わいの回になりました。

 前年10月に始めたtwitter上のファンクラブ「#日本怪奇幻想読者クラブ」に関しては、結成一年を迎えましたが、日常的にタグを使っていただいている方のおかげもあり、このジャンルの認知に少しづつ貢献できているのではないかな、という気もしています。

 さて、ここからは、今年印象に残った本について紹介していきたいと思います。まず、2019年度出版の本を先に取り上げています。

 海外作品では、下記の作品が印象に残っています。

メドゥーサ (ナイトランド叢書3-5) フラックスマン・ロウの心霊探究 (ナイトランド叢書3-6) 死者の饗宴 (ドーキー・アーカイヴ) 千霊一霊物語 (光文社古典新訳文庫) 小鬼の市とその他の詩 クリスティナ・ロセッティ詩集 十二の奇妙な物語 (論創海外ミステリ)
 幻の名作と言われ続けていた、E・H・ヴィシャック『メドゥーサ』(安原和見訳 アトリエサード)の邦訳はある種の事件でした。作品バランスはいびつながら、異様な印象を与える幻想小説です。
 E&H・ヘロン『フラックスマン・ロウの心霊探究』(三浦玲子訳 アトリエサード)は、シャーロック・ホームズと同時期に発表されたオカルト探偵ものの先駆的作品。怪奇現象に対するアプローチが風変わりで面白く読める作品でした。
 ジョン・メトカーフ『死者の饗宴』(横山茂雄、北川依子訳 国書刊行会)は、ジョン・メトカーフ(1891-1965)の怪奇幻想小説を集めた短篇集です。解釈が難しい作品が多いのですが、そのユニークなアイディアと、どこかが狂ったような異様な空気感はこの作家ならではですね。
 アレクサンドル・デュマ『千霊一霊物語』(前山悠訳 光文社古典新訳文庫)は、作者のデュマ自身を語り手に、集まった人々が不思議な話や怪奇譚を語ってゆくという、枠物語形式の怪奇幻想小説です。エピソード間のつなぎが非常に上手く、今読んでも十分に面白い物語集でした。
 クリスティナ・ロセッティ『小鬼の市とその他の詩 クリスティナ・ロセッティ詩集』(滝口智子訳 鳥影社)は、イギリス・ヴィクトリア朝期の詩人クリスティナ・ロセッティ(1830-1894)の第一詩集の全訳。表題作はじめ幻想的で物語性の強い詩作品が多く読める本です。
 イギリスの作家サッパーの短篇集『十二の奇妙な物語』(金井美子訳 論創海外ミステリ)は、恋愛もの、ミステリ、サスペンス、恐怖小説と、様々なジャンルの物語が楽しめる作品集。オーソドックスな話が多く、先が読めてしまうものも多いのですが、面白く読めてしまうのは不思議です。


怪奇骨董翻訳箱 ドイツ・オーストリア幻想短篇集 幽霊島 (平井呈一怪談翻訳集成) (創元推理文庫)
 アンソロジーでは、垂野創一郎編訳『怪奇骨董翻訳箱 ドイツ・オーストリア幻想短篇集』(国書刊行会)と『幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成』(創元推理文庫)のインパクトが強烈でした。
 垂野創一郎編訳『怪奇骨董翻訳箱 ドイツ・オーストリア幻想短篇集』(国書刊行会)は、ドイツ・オーストリアの未訳の怪奇・幻想短篇を集めた重量級のアンソロジーです。 「人形」や「分身」など、テーマ別にいくつかの作品がまとめられています。未訳かつ珍しい作品が集められており、ドイツ方面の作品紹介が少なくなっている昨今、貴重な作品集でした。
 『幽霊島 平井呈一怪談翻訳集成』(創元推理文庫)は、入手難になっている平井呈一の怪奇小説翻訳とエッセイを集めた本です。どれも滋味のある翻訳文で、怪奇小説ファンにとっては素晴らしい贈り物になりました。


図書館司書と不死の猫 虚ろなる十月の夜に (竹書房文庫) 偶然仕掛け人 方形の円 (偽説・都市生成論) (海外文学セレクション) ボーダー 二つの世界 (ハヤカワ文庫NV) イヴリン嬢は七回殺される ブラック・トムのバラード (はじめて出逢う世界のおはなし―アメリカ編)
 現代作家では、以下の作品が印象に残ります。
 イギリスの作家、リン・トラスの長篇小説『図書館司書と不死の猫』(玉木亨訳 東京創元社)は、ブラック・ユーモアにあふれたミステリアスな怪奇幻想小説です。メタな仕掛けも楽しいです。
 ロジャー・ゼラズニイの長篇小説『虚ろなる十月の夜に』(森瀬繚訳 竹書房文庫)は、クトゥルー神話的な世界観の中で、切り裂きジャック、吸血鬼、人狼などが跳梁するという、楽しいホラー作品です。ゲーム的な世界観も面白いですね。
 イスラエルの作家、ヨアブ・ブルームの長篇小説『偶然仕掛け人』(高里ひろ訳 集英社)は、世の中の出来事を偶然によって動かしているという「偶然仕掛け人」をテーマにした、ファンタスティックな作品。
 ギョルゲ・ササルマン『方形の円 偽説:都市生成論』(住谷春也訳 東京創元社)は、ルーマニアの作家による、36の空想都市をテーマにした幻想小説集です。空想・幻想都市小説(というジャンルがあるかわかりませんが)の決定版ともいうべき作品でした。
 スウェーデンの作家、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短篇集『ボーダー 二つの世界』(山田文ほか訳 ハヤカワ文庫NV)は、映画化された表題作ほか11篇を収録した作品集です。恐ろしくハイレベルなホラー短篇集になっています。特に表題作は名作だと思います。
 スチュアート・タートンの長篇小説『イヴリン嬢は七回殺される』(三角和代訳 文藝春秋)は、館ミステリ+タイムループ+人格転移という、複雑怪奇なSFミステリ作品。多少に読みにくさはあるものの、意欲的なエンタメ作品でした。
 ヴィクター・ラヴァル『ブラック・トムのバラード』(藤井光訳 東宣出版)は、H・P・ラヴクラフトの作品「レッド・フックの恐怖」を黒人青年の視点から語りなおしたというホラー作品。極めて現代的なラヴクラフト解釈ともいうべき作品でした。


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 同人出版ですが、モーリス・ルヴェル『ルヴェル新発見傑作集 遺恨』(中川潤訳 エニグマティカ叢書)は、残酷譚で知られるルヴェルの短篇を11篇収録した作品集。質の高い短篇が揃っており、安心して楽しめる作品集になっています。


祭火小夜の後悔 ひとんち 澤村伊智短編集 そのナイフでは殺せない 白昼夢の森の少女 ホテル・ウィンチェスターと444人の亡霊 (講談社タイガ)
 国内作品では、「ゴーストハンター」的な題材を扱った『祭火小夜の後悔』(秋竹サラダ KADOKAWA)、工夫が凝らされた短篇集『ひとんち 澤村伊智短編集』(澤村伊智 光文社)、そのナイフで殺されると特定の時間に完全な状態で生き返ってしまうナイフをテーマにした突拍子もない設定のホラーサスペンス作品『そのナイフでは殺せない』(森川智喜 光文社)、バラエティに富んだ幻想小説集『白昼夢の森の少女』(恒川光太郎 KADOKAWA)、老舗のホテルを舞台に、霊と話す能力を持つコンシェルジュが様々なトラブルに対応するというホラー・ミステリ作品『ホテル・ウィンチェスターと444人の亡霊』(木犀あこ 講談社タイガ)などを面白く読みました。


有害無罪玩具 (ビームコミックス) ブラック・テラー (バンブーコミックス タタン) マリアの棲む家 (ビームコミックス) おなかがすいたらおともだち (ビッグコミックススペシャル) シャドーハウス 1 (ヤングジャンプコミックス)
 コミック作品では、哲学的でテーマ性の強い短篇マンガ集『有害無罪玩具』(詩野うら ビームコミックス)、かわいらしい絵柄で描かれるブラックな物語集『ブラック・テラー』(三堂マツリ バンブーコミックス タタン)、怪異描写の邪悪さ・異様さが強烈なホラー作品『マリアの棲む家』(ハセガワM ビームコミックス)、虫のような知性体に寄生されたいじめられっ子と優等生の友情を描く奇妙なホラーサスペンス『おなかがすいたらおともだち』(おぐりイコ ビッグコミックススペシャル)、不思議な洋館に住む顔のないシャドー一族と世話係の“生き人形”たちを描くファンタジー作品『シャドーハウス』(ソウマトウ)などが印象に残ります。

 ここからは、旧刊ですが今年読んで印象に残った作品です。

 読書会テーマに取り上げた関係で、邦訳の大部分を読み直した、ロード・ダンセイニとアルジャーノン・ブラックウッドの印象は強いですね。作品の幅広さと闊達さを実感したダンセイニ、その技巧・エンタメ性だけでなく思想的なテーマ性も強いブラックウッド、どちらも魅力的な作家であることを再認識しました。
 ブラックウッドでは、同人誌として翻訳された『万象綺譚集』『深山霊異記』(渦巻栗訳)で、未訳の作品をまとめて読むことができたのも収穫でした。


心地よく秘密めいたところ (創元推理文庫) 完全版 最後のユニコーン ユニコーン・ソナタ
 邦訳をまとめて読んで感銘を受けたのは、アメリカのファンタジー作家、ピーター・S・ビーグルの作品。優しさと癒しに満ちたモダン・ファンタジー『心地よく秘密めいたところ』(山崎淳訳 創元推理文庫)、象徴性の強いモダン・ファンタジー『完全版 最後のユニコーン』(金原瑞人訳 学研)、現代に生きる神々をモチーフにしたファンタジー『風のガリアード』(山田順子訳 ハヤカワ文庫FT)、異世界<シェイラ>と現実世界を往復する少女ジョーイを描いたモダン・ファンタジー作品『ユニコーン・ソナタ』(井辻朱美訳 早川書房)、どれも絶品のファンタジーでした。


恐怖の心理サスペンス―ゾクッ!とする楽しみをあなたに (ワニ文庫)
 アンソロジーでは、無理矢理怪奇実話テイストに改変されてしまったモダン・ホラー・アンソロジー『恐怖の心理サスペンス』(カービー・マッコーリー編 矢野浩三郎訳 ワニ文庫)、B級怪奇小説を集めたアンソロジー『慄然の書 ウィアードテールズ傑作集』(渡部桜訳 荒俣宏解説 継書房)、マニアライクな掘り出し物の多い怪奇アンソロジー『世界怪奇ミステリ傑作選 正・続』(矢野浩三郎編 番町書房イフ・ノベルズ)が、それぞれ楽しい本でした。


世界のかなたの森 (ウィリアム・モリス・コレクション) 死者の誘い (創元推理文庫) 月ノ石 (Modern & Classicシリーズ) 令嬢クリスティナ
 古典では、ゴシック・ロマンスの代名詞ともいうべきアン・ラドクリフの作品『イタリアの惨劇』(アン・ラドクリフ 野畑多恵子訳 国書刊行会)、純度の高いファンタジー小説の元祖『世界のかなたの森』(ウィリアム・モリス 小野二郎訳 晶文社)、シニカルでメタなメルヒェン作品『青い彼方への旅』(ルートヴィヒ・ティーク 垂野創一郎訳 エディション・プヒプヒ)、残酷趣味の強いなフランスの世紀末小説『責苦の庭』(オクターヴ・ミルボー 篠田知和基訳 国書刊行会)、自分の顔が突然知らない男の顔になっていた…という幻想小説『死者の誘い』(ウォルター・デ・ラ・メア 田中西二郎訳 創元推理文庫)、魔女裁判にかけられた少女を描いた救いのない『魔女グレートリ アルプスの悲しい少女』(マリアンヌ・マイドルフ 種村季弘・田部淑子訳 牧神社)、どこか愉悦感の感じられる幻想作品『月ノ石』(トンマーゾ・ランドルフィ 中山エツコ訳 河出書房新社)、先史時代を舞台にした冒険小説『人類創世』(J・H・ロニー兄 長島良三訳 カドカワ・ノベルズ)、怪奇味の濃厚な吸血鬼テーマ作品『令嬢クリスティナ』(ミルチャ・エリアーデ 住谷春也訳 作品社)などの印象が強いです。


紙葉の家 虚ろな穴 (ハヤカワ文庫NV) スカウト52 (ハヤカワ文庫NV) 妖女サイベルの呼び声 (ハヤカワ文庫 FT 1) ミステリー・ウォーク〈上〉 (創元推理文庫) エヴァが目ざめるとき 冷たい肌 ぼくのゾンビ・ライフ ストレンジ・トイズ (ストレンジ・フィクション) ドグラ・マグラ(上) (角川文庫) 砂の女 (新潮文庫) 人魚呪
 現代作品では、次のような作品を面白く読みました。
 ロマンチックなゴシック・サスペンス『砂の館』(シェリィ・ウォルターズ 小泉喜美子訳 角川文庫)、「幽霊屋敷」テーマのメタフィクショナル小説『紙葉の家』(マーク・Z・ダニエレブスキー 嶋田洋一訳 ソニーマガジンズ)、何でも飲み込んでしまう謎の黒い穴をめぐって異様な人間関係が描かれてゆくというホラー小説『虚ろな穴』(キャシー・コージャ 黒田よし江訳 ハヤカワ文庫NV)、少年たちのサバイバルと感染パニックを組み合わせたモダンホラー『スカウト52』(ニック・カッター 澁谷正子訳 ハヤカワ文庫NV)、氷のような心を持った魔女が愛と憎しみを知るようになるという流麗なファンタジー作品『妖女サイベルの呼び声』(パトリシア・A・マキリップ 佐藤高子訳 ハヤカワ文庫FT)、死者の魂を鎮める能力を受け継いだ少年の成長を描くロバート・R・マキャモン『ミステリー・ウォーク』(山田和子訳 創元推理文庫)、チンパンジーの脳に記憶を移植された少女を描く『エヴァが目ざめるとき』(ピーター・ディッキンソン 唐沢則幸訳 徳間書店)肩書きは「文学」ながらその実怪物との死闘を描くホラー作品『冷たい肌』(アルベール・サンチェス・ピニョル 田澤耕訳 中央公論社)、ゾンビになってしまった人々が生きる権利を求めて戦うという異色の社会派ゾンビ小説『ぼくのゾンビ・ライフ』(S・G・ブラウン 小林真里訳 太田出版)、魔術的な雰囲気に満ちた幻想小説『ストレンジ・トイズ』(パトリシア・ギアリー 谷垣暁美役 河出書房新社)など。
 日本作品では、長年の懸案でしたがようやく読破できた夢野久作の長篇『ドグラ・マグラ』(角川文庫)、不条理小説の名作として名高い『砂の女』(安部公房 新潮文庫)、人魚の肉を食い不老不死になった男を描く伝奇小説『人魚呪』(神護かずみ 角川書店)などが印象に残ります。

 2019年度は読書・関連活動ともに、個人的にはなかなか充実した年になったのではないかと思っています。来年も変わらず活動していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
 また、新年度には挨拶をかねて、記事を更新したいと思っています。

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1月の気になる新刊と12月の新刊補遺
発売中 ニコライ・レスコフ『魅せられた旅人』(河出書房新社 3190円)
発売中 田辺剛『クトゥルフの呼び声 ラヴクラフト傑作集』(KADOKAWA 913円)
発売中 マルセル・エーメ『壁抜け男 エーメ ショートセレクション(世界ショートセレクション)』(理論社 1430円)
1月6日刊 ジェイムズ・ヒルトン『失われた地平線 新装版』(河出文庫 予価935円)
1月7日刊 マーク・トウェイン『アダムとイヴの日記』(河出文庫 予価836円)
1月7日刊 スタニスワフ・レム『完全な真空』(河出文庫 予価1375円)
1月7日刊 南條竹則『ゴーストリイ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚』(KADOKAWA 予価3080円)
1月9日刊 レオポルド・ルゴーネス『アラバスターの壺/女王の瞳 ルゴーネス幻想短編集』(光文社古典新訳文庫)
1月10日刊 ディーノ・ブッツァーティ『怪物』(東宣出版 予価2420円)
1月10日刊 フレドリック・ブラウン『フレドリック・ブラウンSF短編全集2 すべての善きベムが』(東京創元社 予価3850円)
1月22日刊 ナターリヤ・ソコローワ『旅に出る時ほほえみを』(白水Uブックス 予価1980円)


 レスコフ『魅せられた旅人』は岩波文庫でも出ていた作品の新訳。饒舌な語りのピカレスク小説です。ほら話的な性格の強い面白い作品なのでお薦めです。

 マルセル・エーメ『壁抜け男 エーメ ショートセレクション(世界ショートセレクション)』は、エーメの短篇傑作選。本邦初訳作品も入っているようです。エーメの作品が訳されるのは久しぶりなので、嬉しい企画です。

 河出文庫からは海外の復刊・文庫化ものがまとめて出るようです。ジェイムズ・ヒルトン『失われた地平線』はロマンティックな秘境もの作品。マーク・トウェイン『アダムとイヴの日記』は、アダムとイヴがそれぞれ日記を書いていたら…という発想の面白い作品です。スタニスワフ・レム『完全な真空』は、実在しない書籍に対する架空の書評集というメタな発想の作品です。

 南條竹則『ゴーストリイ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚』は、英国の怪異談に関する随筆集、とのこと。これは面白そうです。

 レオポルド・ルゴーネス『アラバスターの壺/女王の瞳 ルゴーネス幻想短編集』は、日本でも短篇「火の雨」や、ボルヘス選〈バベルの図書館〉の一巻『塩の像』で知られるアルゼンチンの作家ルゴーネスの幻想的な作品集。これは好企画ですね。

 ディーノ・ブッツァーティ『怪物』は、全18篇を収録。著者の未邦訳短篇を集めた短篇集シリーズの第三弾です。


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「第二十九回文学フリマ東京」出店レポートと同人誌作成の話
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 2019年11月24日(日曜日)、東京流通センター第一展示場で開催された「第二十九回文学フリマ東京」にサークル「奇妙な世界」として参加してきました。
 客として参加の経験はありますが、出店側として参加するのは初めてです。というよりも、公のイベントに出店すること自体が初めてでした。生来の引っ込み思案な性格もあり、なかなか思い切った行動に出れなかったのですが、知り合いの方が何人か出店されているということ、友人が何人か手伝ってくれるということにも勇気をもらい、思い切って参加してみようという気になりました。
 ちょっと長くなりますが、同人誌作成の話も含めて書いてみました。文学フリマ参加を考えている方の参考にもなるかと思い、アドバイス的な話題も入れています。


■参加のきっかけ

 ここ数年、文学フリマ東京(年に二回ほど開催)には一般参加客として毎回訪れていました。友人からの勧めもあり、一度、出店側として参加してみたいものだとは考えていました。
 何を作ろうかと考えたところ、自分の一番好きな海外の怪奇幻想アンソロジーについての評論本がいいだろうなということで、データを作り始めました。その同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を文学フリマで初売りするつもりで申込みをしていました。
 『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』は関西の印刷会社でオフセット印刷にて作成したものです。製版データが早く完成したため、印刷物も8月末ぐらいに完成しました。文学フリマ用として100部ぐらいを考えていたのですが、先に通販をした結果、予想以上の売れ行きで、作ったものの大部分が売れてしまいました。残った分が20数部。これだけで出店するのもどうかなということで、改めて作ったのが『海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル』です。
 こちらは静岡のクリアファイル作成会社に頼んだものです。部数にもよりますが、大体二週間程度で出来るということで、こちらも10月末には完成しました。


■申込み

 文学フリマの申込みは、公式ホームページから出店の申込みをします。
 文学フリマ 公式サイト
 基本的に1ブースか2ブースで申込みますが、オプションをつけない場合は1ブースで椅子1脚です。椅子は1ブースにつき1脚まで追加可能です。とりあえず、1ブースで椅子1脚追加(合計椅子2脚。ちなみに、自前の椅子を持ち込むのは禁止)で申し込みました。あと申込みの際、自分のジャンルを登録するのですが、ジャンルは「評論|ファンタジー・幻想文学・怪奇文学」にしました。
 今回は申込み件数が多かったため、抽選になるかも…ということだったのですが、スペースを詰めて配置することで、全サークル参加可能ということになりました。
 毎回参加サークル数が増えており、今後は抽選になる事態も出てくるかもしれないということなので、参加を考えている人は早めに申し込んでおいた方がいいかもしれません。キャンセルはいつでも可能なようです(参加費を払い込み済みの場合は、お金は帰ってこないようですが)。


■自家製本の失敗

 最初は『アンソロジーガイド』と『クリアファイル』、この二点でイベントに臨むつもりだったのですが、やはりイベントに出るなら「新刊」を出した方がいいかなと考えて、作り始めたのが『海外怪奇幻想小説叢書ガイド』。
 小冊子で少部数のつもりだったので、通販で紙屋から紙を購入し、自分で中綴じで製本しようと考えました。自家製本のために、表紙用紙、本文用紙、中綴じ用のステープラーも購入しました。
 ある程度内容が出来た段階で、製本しようとしたところ、問題が発生しました。ページ数が50ページを超えていたのですが、ステープラーの針が通らない! 本文用紙だけなら行けそうなのですが、表紙用紙が相当厚い紙を使っていたために、表紙を含めると針が通らないのです。また、中綴じしたときに、厚みのある紙(本文用紙も厚めでした)であるために、小口がやたらと出っ張ってしまいます。
 中綴じで作成するにはちょっと無理があるということで、『海外怪奇幻想小説叢書ガイド』を自家製本で作るのはあきらめ、とりあえず保留。後日オフセット印刷として印刷会社に依頼することにしました。
 ちなみに、購入したステープラーは以下のものです。




■改めて同人誌作成

 ページ数が少な目で、表紙も厚紙ではなく本文用紙を使えば中綴じステープラーでも出来そうなことを確認したので、代わりに作成したのが『物語をめぐる物語ブックガイド』です。A4サイズ表裏にそれぞれA5サイズの内容を2ページずつ割り付けるという体裁で、枚数としてはA4が9枚ほどでしょうか。このぐらいであれば小口の出っ張りもあまり気にならなくなります。
 ある程度の部数が出来た段階で、購入した用紙がまだちょっと余っていたので、もう一種類ぐらい作れるかなということで、新たに作り始めたのが『迷宮と建築幻想ブックガイド』。こちらは紙の残り枚数からして、作れるのが10部ぐらいだったのですが、ネットでの反応を見ると欲しい人が多そうなので、用紙を再注文し増刷しました。


■準備したもの

 イベント当日に持っていったのは、以下のようなものです。

販売品
・『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』
・『海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル』
・『物語をめぐる物語ブックガイド』
・『迷宮と建築幻想ブックガイド』

備品
・チラシ3枚(1枚はポールに吊り下げ、他の2枚はテーブルの前面に貼る用)
・チラシを立てるポール
・テーブルクロス
・ブックスタンド2つ
・代金を入れる箱(お菓子を入れていたアルミの箱を流用しました)
・おつり(500円玉×100枚、100円玉×200枚、1000円札×30枚)
・コインボックス(おつりを入れています)
・ボールペン
・ハサミ
・カッター
・セロテープ
・ガムテープ
・値札立て(プラスチック製)
・値札(値段を記したものと、完売したときに使う「完売しました」の札)
・チェックリスト(売れた数を記録するもの)


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 おつりはどのぐらい必要かわからなかったので、一ヶ月ぐらい前から小銭を貯めていました。基本、イベントで売るものに関しては、価格は切りのいい数字にした方がいいようです(500円、1000円など)。どちらにしても、おつりとして100円玉と500円玉は多めに必要になることが多いかと思います。ジュースの自販機で1000円札を使っていれば、お釣りはすぐ貯まります。
 会場で一万円札を出してくる人はそうそういないと思っていたのですが、案に相違して結構いたので、お札もある程度用意しておいて正解でした。
 たぶん上記のおつりの数は相当多めだと思うので、出品数が少な目の方はそこまで用意する必要はないかと思います(僕は心配性なので用意しましたが)。
 代金とおつりは混ぜない方がいいと思ったので、おつりを入れたコインボックスとは別に、代金を入れる用のアルミ箱を持っていきました。最初はちゃんと分けていたのですが、おつりのお札が足りなくなった関係で、途中からは代金箱の方からもおつりを出す形になり、結局混ざってしまいました。


■開催日前日

 前日から強い雨が降っており、翌日(開催日)の朝もほぼ雨だろうとのことで、本が濡れないように処理しました。20冊単位を厚紙2枚で挟み(本がよれないようにです)、それをビニール袋に入れた後、さらに紙封筒に入れ、口をガムテープでしばりました。
 本及び備品を入れる入れ物はリュックの他、キャスター付きバッグ、手持ちのバッグと、三つになりました。


■開催日当日朝

 予想通り雨で、荷物が相当重いため、駅まで人力で運んでいくのはあきらめます(最寄り駅まで徒歩20分ぐらいです)。タクシーで駅まで運んでもらいました。最寄り駅まで来てもらった友人(S・Tさん)に、荷物持ちを手伝ってもらい、浜松町駅に向かいます。
 浜松町駅でモノレールに乗り換えますが、ここでまた別の友人(Sさん)と合流。モノレールに乗り、流通センター駅に到着です。
 受付開始時間より30分ぐらい前に到着しましたが、参加者受付にはすでに数百人は並んでいる状態でした。受付開始から10分ぐらいで会場に入場できました。


■ブース設営

 自分のブースはわりと分かりやすい位置にあったので、すぐに到着しました。入場で並んでいる間に、自ブースがどのあたりか検討をつけておくとよいかと思います。
 1ブースが長机の半分なので、かなり狭いです(1メートルもないです)。具体的には、1ブースのサイズは、長机の半分=幅90cm×奥行45cm×高さ70cmです。椅子は一脚追加して二脚あったのですが、二人座るとあまり動く余地もないです。 三人で入場したので(入場票は1ブース三人分もらえます)、二人座って、一人はブースの前で案内するといった感じになりますね。

 テーブルにテーブルクロスを引き、机の前面にチラシ(A3ノビサイズ)を二つ吊り下げます。ポールを立て、こちらにもチラシを吊します。ブックスタンドは机の最背面に2つ置き、それぞれ見本用の本を立てました。スタンドの前にそれぞれ本を二種類、その横に本を一種類、さらにクリアファイルを置きます。それぞれの品物の前に、値札を入れた値札立てを置いて、準備完了です。
 ブースに付いてから準備ができるまでに15分~20分ぐらいでしょうか。ディスプレイに凝る場合は多少時間がかかるでしょうが、入場が遅れても30分ぐらいあれば、なんとかなるなという感じでした。


■見本誌提出

 文学フリマでは、見本誌をまとめて見れるコーナーがあります。区分けされた机(配置されたブースごとに机が区分けされています)の上に、見本誌を置いておきます。見本誌は、予め公式ホームページからダウンロードできる見本誌ラベルに、サークル名、タイトル名、内容などを書き込んで、本に貼り付けておきます。
 見本誌を出すかどうかは任意ですが、大勢の人の目に触れるという点では宣伝にはなるので、余裕があれば出しておいた方がいいのではないでしょうか。ただ、イベント終了後は日本大学藝術学部文芸学科に収蔵されるということで返却してもらえないので、部数が少な目の場合は出さなくてもいいかもしれません。あと、本以外のグッズは収蔵できないとのことで、後で自分で見本誌が置いてある部屋から回収する必要があります。
 自分の本に関しては、『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』は部数が少ないので見本誌は作らず、『海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル』もグッズということで出していません。『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』に関しては、見本誌を提出しました。
 見本誌ラベルをどう本につけるかは考えどころなのですが、僕は本の上部にホッチキスで止めました。のりやテープで貼ってもいいとは思いますが、直接貼るのが躊躇われる場合は、ビニールカバーを付けたうえでその上に貼ってもいいんじゃないでしょうか。


■一般客入場

 午前11:00になり、一般客が入場の時間になりました。見たところ、真っ先に入ってきたお客さんは、特定のブース目的で来ている方が多いようでした。幸い自分のブースにも来てくれる方が多くいてくれて、短時間ですが、ちょっとした列になりました。
 三人いたので、一人がブースの外で列整理と案内、ブース内の一人(自分です)が選んでくれた本の値段確認と受渡し、もう一人がチェックリストのチェックとおつりの受渡しといった割当になっていました。短い時間ではありましたが、三人いた状態でも忙しかったです。

 ちなみに、チェックリストは自分でオリジナルなものを作りました。B4サイズを左右に分け、左に「売れたものチェックリスト」、右に「取り置きチェックリスト」を付けたものです。
 「売れたものチェックリスト」は販売品ごとに「正」の文字を並べたもので、一つ売れるごとに線を引いていくというもの。「取り置きチェックリスト」はあらかじめ取り置きの依頼のあった品物を希望者ごとに印をつけておき、取りに来た人の分は「受取済」の欄にチェックをするというものでした。
 後半での漏れはなかったと思うのですが、序盤に列が出来た状態のときは、かなり忙しく、チェック漏れがあった可能性もありますね。
売れたもの・取り置きチェックリスト

 開場しばらくしてから、友人(Rさん)が合流。売り子を交代してもらい、他の二人が食事に行ったり、戻ってきてからは、こちらが会場内を見たりすることもできました。


■売れたもの

 おそらく開場から30分ぐらいで『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』は全部売れてしまったと思います。持ち込んだ冊数は25冊ぐらいですが、これで印刷した『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』は完全になくなりました。
 『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』は、こちらも二時間ぐらいで完売しました。
 本が売り切れた段階で、値札立てに入っていた値札を出し、代わりに「~完売しました」の札を代わりに入れて、立てておきます。値札はこんな感じのものです。
カード立名前印字文フリ用 カード立名前印字文フリ用2
 『海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル』も健闘しましたが、持ち込んだ量が多いこともあり、こちらはかなり残りました。
 『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』はセットで購入いただいた方が多いのですが、どちらかと言うと『迷宮と建築幻想ブックガイド』の方が人気があった感じでしたね。

 メインの本が二時間でなくなってしまい、夕方までクリアファイルのみとなってしまいました。売り切れてしまった本の問い合わせを受けることも多く、作る冊数の目算を間違えてしまったかな…という思いもありますね。
 夕方近くになると、ほとんど動きがなくなってしまいました。最終的には16:30ぐらいからブースを片付け始めて撤収という形になりました。

 最後に、居酒屋で打ち上げを行いました。手伝ってくれた友人たちには感謝です。


■反省点・考えたことなど

 初めての出店にしては上々だったとは思うのですが、やはり反省点などもありました。

・ブースについて
 要員が三人(途中から四人)で一ブースはかなり狭いです。もともと荷物も多いのですが、荷物を置くスペースもあまりないです。後ろは背中合わせに別のブースになっており、その間にはあまり荷物を置けません。机の下と椅子の下に置かざるを得ないのですが、予備の本を取り出す際などにも、かなり取り出しにくいです。
 あとテーブルクロスがないと机の下の荷物が見えてしまうので、テーブルクロスはあった方がいいなと思いました(長めのものの方がいいようですね)。
 ブース代が5000円以上と高めなので難しいとは思いますが、売り子が3~4人いる場合や、荷物が大量にある場合は、2ブースは確保した方が余裕を持って座れると思います。

・荷物の送付について
 あらかじめ荷物を会場に送っておくことが可能なのですが、冊数がある場合、これはやっておいた方がいいかもしれないです。100冊単位の本がある場合は、当日雨だったりした場合、持ってくるのがかなり大変です(実際、大変でした)。もちろん、持ち帰る際のことも考えなければいけないですが…。
 あと、おつりを大量に持ってくる場合、これが意外と重いので、そのあたりも考えに入れておいた方がいいかもしれません。

・グッズについて
 これは僕のところだけかもしれないですが、本以外のグッズ(僕の場合クリアファイル)は本に比べて売れ行きが良くないです。本がある間は、一緒にファイルを買ってくれる方もいるのですが、本がなくなってファイルのみになってしまった段階では、ガクンと売れ行きが落ちました。他のイベントはともかく、グッズだけの販売というのは、文学フリマでは厳しいかもしれないですね。

・自分自身の買い物について
 自分で出店している場合、買い物のために別のブースを回るのは難しいです。売り子が他にいる場合は抜け出ることも可能ですが、開場から数時間はブース主は自ブースにいた方が良いです(ネットで知り合った人が会いに来てくれることなどもあります)。
 欲しい本がある場合は、あらかじめ取り置きの依頼をしておくか、自ブースの他の売り子の人に買い物を頼むなどした方がいいかと思います。

・取り置きに関して
 事前に本の取り置きをするかどうかに関しては、サークル主の判断すべき事項だと思いますが、少部数の本の場合、あまり取り置き分が多くなってしまうと、会場で見て買ってくれる人が少なくなってしまうというのはあるかと思います。

・前宣伝について
 イベント前にある程度、ツィッターやSNS、ブログで自著の宣伝をするのは効果的だと思います。文学フリマの公式ページにも、出品する本の内容や画像を載せることができるページもあるので、そちらにも前情報は載せておいた方がいいです。
 ネット上の情報が全くない状態で、会場での初見で本を売るのはなかなか難しいのではないかと思います(特に創作系の本)。

・チラシについて
 チラシは大きめの紙にプリントしたものを作っておく方がいいかと思います。あと、ブース番号とサークル名はかなり大きな字で入れておいた方が分かりやすいです(カタログで見てブースを探しに来る人もいるため)。
 僕が作ったのはこんな感じのチラシです。

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・事前参加について
 文学フリマに参加しようと思っている方は、一度、一般参加客として会場を訪れてみることをお勧めします。特に自分が作ろうと思っているジャンルに近いサークルのブースやディスプレイなどは参考になるかと思います。


 いろいろ問題点もありましたが、自分で作った本を対面で売るという行為には、やはりある種の感動があります。次回も参加するかは未定ですが、また出店してみたいと思わせる魅力がありました。

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「第二十九回文学フリマ東京」出店のお知らせ
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 もうギリギリの告知になってしまいましたが、11月24日(日曜日)に開催される、同人誌即売会イベント『第二十九回文学フリマ東京』に出店します。
 既に刊行した同人誌に加え、今回新たに作成した同人誌も販売します。
 頒布するタイトルは以下の通りです。

 『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』
 『海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル』
 『物語をめぐる物語ブックガイド』
 『迷宮と建築幻想ブックガイド』

 今回新たに二種類ほど同人誌を作成しました。
 『物語をめぐる物語ブックガイド』は、物語や本をテーマにした小説作品のガイド、『迷宮と建築幻想ブックガイド』 は、迷宮や建築をテーマにした小説作品のガイドです。

 ご興味のある方はご来場いただけると嬉しいです。よろしくお願いします。

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プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き、短篇好き、異色作家好き、怪奇小説好き。
ブログでは主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。twitterアカウントは@kimyonasekaiです。
怪奇幻想小説専門の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主宰。twitter上の怪奇幻想ジャンルのファンクラブ「 #日本怪奇幻想読者クラブ 」主宰。
『ミステリーズ!vol.96』(東京創元社)に怪奇小説の翻訳概況を書きました。
同人誌『海外怪奇幻想小説アンソロジーガイド』を2019年8月に刊行しました(完売しました)。
「海外怪奇幻想作家マトリクス・クリアファイル」、同人誌『物語をめぐる物語ブックガイド』『迷宮と建築幻想ブックガイド』を盛林堂書房さんで通信販売中です。



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