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9月の気になる新刊と8月の新刊補遺
8月24日刊 シャーリイ・ジャクスン『絞首人』(文遊社 予価1944円)
8月25日刊 『新編・日本幻想文学集成 第2巻』(国書刊行会 6264円)
8月26日発売 《ナイトランド・クォータリーvol.6》 (アトリエサード 1836円)
9月7日刊 アンドレ・ド・ロルド『ロルドの恐怖劇場』(ちくま文庫 予価907円)
9月12日刊 石塚久郎編『病短編小説集』(仮題)(平凡社ライブラリー 予価1512円)
9月26日刊 バリントン・J・ベイリー『時間衝突 新版』(創元SF文庫 予価1123円)
9月27日刊 アンナ・スタロビネツ『むずかしい年頃』(河出書房新社 予価2160円)
9月27日刊 ローダ・レヴァイン/エドワード・ゴーリー『ぼくたちが越してきた日から、そいつはそこにいた』(河出書房新社 予価1404円)
9月27日刊 大森望 『SFマニア超入門』(河出書房新社 予価2052円)
9月30日刊 J・G・バラード『J・G・バラード短編全集1 時の声』(東京創元社 予価3888円)
9月30日刊 エドワード・ケアリー『堆塵館 アイアマンガー三部作1』(東京創元社 予価3240円)

東京創元社復刊フェア(9月下旬)
F・W・クロフツ『二つの密室』
イーデン・フィルポッツ『灰色の部屋』
シオドー・マシスン『名探偵群像』
マーガレット・ミラー『狙った獣』
クレイトン・ロースン『棺のない死体』
ヤン・ヴァイス『迷宮1000』
アイザック・アシモフ『暗黒星雲のかなたに』
マンリー・W・ウェルマン&ウェイド・ウェルマン『シャーロック・ホームズの宇宙戦争』
アーサー・C・クラーク『イルカの島』
アレクサンドル・ベリャーエフ『ドウエル教授の首』


 文遊社から、シャーリイ・ジャクスンの未訳長編『絞首人』が刊行です。東京創元社からも、同一作品の翻訳『処刑人』(仮題)の刊行が秋に予定されており、どちらを購入するか迷いますね。

 《ナイトランド・クォータリーvol.6》 の特集は、〈奇妙な味の物語〉 です。 ケン・リュウ、ニール・ゲイマン、ジョン・コリア、サキ、ロバート・ブロック、チャールズ・ボーモント等の翻訳短篇を掲載。これは楽しみです。

 『ロルドの恐怖劇場』(ちくま文庫)は、残酷劇で有名なグラン=ギニョルの大立者アンドレ・ド・ロルドの作品を集めた作品集。怪奇小説ファンは要チェックです。

 アンナ・スタロビネツ『むずかしい年頃』は、現代ロシアのホラー作品集だとのこと。

 J・G・バラード『J・G・バラード短編全集1 時の声』は、8月刊行予定が変更になったようですね。

 エドワード・ケアリーといえば、『望楼館追想』『アルヴァとイルヴァ』などの邦訳で知られる作家。独特の味を持つファンタジー作家です。『堆塵館』は、《アイアマンガー三部作》と呼ばれる三部作の1作目だそうですが、あらすじを読むだけでも、不思議な魅力が感じられますね。
 「ロンドンにある〈堆塵館〉は、ゴミで材をなしたアイアマンガー一族の広大な屋敷だ。屋敷の裏手には百年以上にわたって集められたロンドンじゅうのゴミが山となって広大な敷地を占領している。屋敷では、一族数百人がひとつ屋根の下で暮らしている。屋敷の地上階に暮らしているアイアマンガーたちは屋敷から出ることをゆるされず、彼らに使える召使いたちもみな一族の遠い縁戚にあたる。アイアマンガー一族は生まれるとすぐに何か品物をひとつ与えられ、生涯持ち続けるのだ。バースオブジェクトという。そんなアイアマンガーのひとり、クロッドには、品物の声が聞こえるという特殊な力があった……。」

 今年度の東京創元社復刊フェアの目玉は、ヤン・ヴァイス『迷宮1000』でしょうか。迷宮をテーマにした幻想小説です。エンタテインメントとして見ると弱いのですが、不思議なイメージにあふれたファンタジーとして、一読の価値はある作品だと思います。

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悪夢と予兆  E・F・ベンスン『塔の中の部屋』
488375233X塔の中の部屋 (ナイトランド叢書)
E・F・ベンスン 中野 善夫
書苑新社 2016-07-25

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 《ナイトランド叢書》2期の第1弾として刊行された、E・F・ベンスン『塔の中の部屋』(中野善夫・圷香織・山田蘭・金子浩訳 アトリエサード)は、英国怪奇小説の正統派ともいうべき味わいの怪談集です。
 エドワード・フレデリック・ベンスン(1867-1940)は、カンタベリー大主教にまでなった父親を持つ名門の生まれ。エドワードを含む兄弟3人が、怪談に手を染めていますが、中でもひときわ評価の高いのがE・F・ベンスンです。イギリス怪奇小説の巨匠であるM・R・ジェイムズとも交友があったとか。
 50篇あまりの怪談を残し、それが4冊の怪談集にまとめられています。『塔の中の部屋』は、第1怪談集の全訳になります。邦訳としては、『ベンスン怪奇小説集』 (八十島薫訳 国書刊行会)がありますが、短篇集単位で訳されるのは今回が初めてになります。

 私見では、怪談の魅力は、幽霊なり怪奇現象そのものよりも、それらが出現に至るまでの過程にあります。出るぞ、出るぞ、とヒヤヒヤしながら読んでいる間が楽しいのです。言うならば「間」とでもいいましょうか。E・F・ベンスンは、その「間」の取り方が絶妙なのです。
 例えば、『塔の中の部屋』では、主人公がたびたび見る悪夢が言及されます。悪夢で見る「塔の中の部屋」を恐れ続けた主人公は、結局は悪夢通りの部屋に入ってしまいます。
 また、『かくて恐怖は歩廊を去りぬ』では、屋敷に代々伝わる双子の幽霊について語られます。その幽霊に出くわした人間は、必ず死んでしまうのです。特定の時間に特定の場所にしか現れないとされているため、一族はそこを避けていますが、主人公はある時ふと寝入ってしまい、その場所に取り残されてしまいます…。
 ベンスンは、幽霊もしくは怪奇現象が起こるクライマックスまでに、徐々に不穏な空気を高めていきます。怪奇現象が起こる前に、たいてい、何らかの「予兆」が描かれます。『塔の中の部屋』でも、『かくて恐怖は歩廊を去りぬ』でも、その「予兆」はあったはずなのに、結局は怪奇現象に襲われてしまう…。その悪夢めいたシチュエーションが、何とも魅力的なのです。

 本書には、17篇の作品が収録されていますが、正統派のゴースト・ストーリーであったり、「奇妙な味」風の作品であったり、ユーモアを感じさせるものだったりと、バラエティに富んでおり、名匠の名に恥じない出来栄えです。
 驕慢な女性に捨てられた画家が、異様な猫と出会うという「奇妙な味」の作品『猫』、病が怪物の姿になって現れるという『芋虫』、死刑囚の幽霊が現れるという直球のゴースト・ストーリー『チャールズ・リンクワースの懺悔』、ベッドに現れる幽霊というオーソドックスなテーマを、正攻法で描く力業の幽霊小説『もう片方のベッド』、人間がノウサギに変身するという言い伝えを信じる村人を描き、ユーモアさえ感じさせる『ノウサギ狩り』など。

 E・F・ベンスンには、まだ未訳の作品も多いので、《ナイトランド叢書》でも続刊を出していただきたいですね。

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怪奇マンガ強化週間
4865370595戦後怪奇マンガ史
米沢 嘉博 赤田 祐一
鉄人社 2016-07-22

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 米沢嘉博『戦後怪奇マンガ史』(鉄人社)を購入し、さっそく一読しました。
 この本は、漫画評論家の米沢嘉博が、戦後の怪奇マンガの歴史を辿った本です。1980年代の中頃から終わり頃までホラー雑誌に連載されていたものなのですが、その当時すでに古典になりつつあった作品を中心に紹介されており、あまり新しい作家は扱われていません。
 貸本時代の作品から始まり、水木しげる、楳図かずお、古賀新一、萩尾望都、山岸凉子、日野日出志、手塚治虫、諸星大二郎、永井豪、つのだじろうなどが取り上げられています。怪奇専門の作家だけでなく、一時的に怪奇ものに手を染めた作家にも触れられています。
 全体に、古典よりの作品に力が入っているのですが、類書が全くないので、資料的にも貴重な本になるのではないでしょうか。

 もともと、怪奇マンガは大好きなジャンルなのですが、この本を読んで、怪奇マンガ熱が高まってしまいました。そんなわけで、最近読んだ中から、新旧合わせて、いくつかの作品を紹介していきたいと思います。



B016XZZPXM人面蝶
池上 遼一
グループ・ゼロ 2015-10-21

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池上遼一『人面蝶』(講談社KCスペシャル)
 劇画の巨匠として知られる作者の、初期に書かれた怪奇もの作品集です。
 表題作の『人面蝶』のインパクトが強烈です。蝶の採集に訪れた青年は、山の中で男が落石に会う場面に遭遇します。岩がそれたにもかかわらず、全身をつぶされて死んでしまうのを見た青年は、蝶に卵を産み付けられた人間は、蝶が死ぬと同時に死んでしまうのではないかと考えますが…。
 他に、狂った鳩が人間を襲う『狂い鳩』、鬼女に惑わされる三人の足軽の運命を描いた『安達ケ原の鬼女』など。

 

4063131084佐伯かよのSFミステリー傑作選 アリスの13時間 (KCデラックス)
佐伯 かよの
講談社 1989-11-13

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佐伯かよの『アリスの13時間』(講談社KCDX)
 表題作『アリスの13時間』は、難破した船の乗客たちが無人島にたどり着くものの、ラジオにより13時間後にその島で核実験が行われることを知り、実験が始まる13時間以内に島を脱出しようとする物語。外的な脅威に加え、仲間内で争いが始まり…というサスペンスたっぷりな話です。
 理由もなく、次々と自殺する人間たちの謎を追う『黄泉からの声』、人の心が読める少年が人々の心の醜さを暴いていくという『ジムニイの箱』、脳が異常発達し、知能が急激に上がった少女を描く『割れたカップ』など、SF味の強いホラーといった感じでしょうか。
 あらゆる現象が願った通りになる少女の登場する『午後5時1分前…!』は、破滅SFもののバリエーション。
 佐伯かよのの初期作品は、アイディアに富んでいて、今でも面白く読めるものが多いです。



4197805330怖すぎる永井豪 (トクマコミックス)
永井 豪
徳間書店 2012-07-03

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永井豪『怖すぎる永井豪』(トクマコミックス)
 収録作品中でいちばん有名なのは、突然大人たちが子供を殺し始める『ススムちゃん大ショック』でしょうか。レ・ファニュの原作を漫画化した『シャルケン画伯』、亡き親友の恋人と結婚した男の体験を描く『遺品』、いじめっ子たちがいじめられた子の怨念に殺される『雪』など。
 少年向けでも、永井豪作品は描写に容赦がないので、迫力がありますね。



4344836340ぐらんば (バーズコミックス)
押切蓮介
幻冬舎 2016-02-24

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押切蓮介『ぐらんば』(バーズコミックス)
 長年虐げられてきた老婆が、突如煉獄から来た巨大な化け物たちに襲われ、一人立ち向かう…というアクションホラーマンガ。ギャグすれすれの設定なのですが、怪物の造形や、その破壊力がすさまじく、まるでアメコミの実写化を観ているような迫力で楽しめます。



4845844273盆の国 (torch comics)
スケラッコ
リイド社 2016-07-11

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スケラッコ『盆の国』(リイド社torch comics)
 ご先祖様の霊を見ることができる少女は、お盆の同じ一日を何度も繰り返していることに気付きます。霊の話を聞くことができる青年と出会った少女は、協力して止まった時間を動き出させようとしますが…。
 青年の正体、少女の能力の由来、家族の過去…。絵柄はシンプルながら、丁寧に作られた作品です。盆が舞台になっているというのもありますが、清涼感のあふれるファンタジーです。



4022131470眠れぬ夜の奇妙な話コミックス りんたとさじ (ソノラマコミックス 眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
オガツ カヅオ
朝日新聞出版 2009-10-07

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オガツカヅオ『りんたとさじ』(眠れぬ夜の奇妙な話コミックス)
 霊能力を持ち、怪奇現象に関わるバイトをしている「りんた」と、その恋人の「さじ」が巻き込まれる事件を描いた連作短篇集です。ユーモアの溢れる日常シーンと怪奇シーンとの落差が絶妙です。日常の風景が突然奇妙な情景に移り変わる瞬間が素晴らしい。
 どのエピソードも読み応えがありますが、新婚の妻の話が、だんだんと不穏な方向に向かう『炬燵の人』、両親を殺した男が時空のひずみに取りこまれる『穴の人』、愛猫の死を悲しむ男が隠していた真実が暴かれる『鳴く人』などが、印象に残ります。
 とくに、人生の真実が二転三転し、それが見事に怪奇現象と直結している『鳴く人』は、傑作だと思います。

テーマ:漫画 - ジャンル:アニメ・コミック

謎だらけの物語、または「真相がわからなくても人は物語を楽しめるのか」
B01CK7EE3Oミステリー・ゾーンDVDコレクション(67) 2016年 3/30 号 [雑誌]
アシェット・コレクションズ・ジャパン 2016-03-16

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 オムニバスドラマシリーズ『新トワイライトゾーン』に、『恐怖のメッセージ』(原作シドニー・シェルダン)というエピソードがあります。こんな話です。
  とある町で広がっているという伝染病について調べるため、派遣された調査員エドワード。あらゆる人間に感染するというその病は、人の正気を失わせるというのです。調査の結果、感染した人間が口にする、あるメッセージを耳にしたとたん、その人間の正気が失われることがわかりますが…。
 人間の正気を失わせる「恐怖のメッセージ」が描かれるのですが、そのメッセージの内容は全く描かれません。表面上、人から人へと、ただ狂気が伝染していくという演出が効果を上げています。

 『恐怖のメッセージ』を観ていて、既視感を覚えました。これと似たような話を、観たり、読んだりしたことがあるような気がする…。



4894565900夜が明けたら (ハルキ文庫)
小松 左京
角川春樹事務所 1999-11

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 まず、思いつくのが、小松左京のショート・ショート『牛の首』『夜が明けたら』ハルキ文庫ほか収録)。
 「牛の首」という、タイトルだけが、世間に流布している怪談がありました。誰もが口をそろえて「あんな恐ろしい話は聞いたことがない」と言うのです。しかし、具体的にどんな話なのか誰に聞いても教えてもらえない…という話。



4480429050謎の物語 (ちくま文庫)
紀田 順一郎
筑摩書房 2012-02

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 または、クリーブランド・モフェットの『謎のカード』(深町眞理子訳 紀田順一郎編『謎の物語』(ちくま文庫収録)。
 アメリカ人の青年が、旅先のパリで、見知らぬ美女から一枚のカードを手渡されます。カードには、フランス語らしい言葉が書かれていましたが、フランス語の読めない彼は、ホテルの支配人にそれを読んでもらいます。
 とたんに顔色を変えた支配人は、青年をホテルから追い出してしまいます。それ以降もカードの文面を見た人々はこぞって理由も話さずに青年を拒否するのですが…。
 


4336034621怪奇小説の世紀 第2巻 がらんどうの男
西崎 憲
国書刊行会 1993-02-25

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 ハリファックス卿『ボルドー行の乗合馬車』(倉阪鬼一郎訳 西崎憲編 『怪奇小説の世紀2』国書刊行会収録)も、似た感じの作品です。
 語り手が歩いていると、複数の男がやってきて、ある頼みごとをします。それは通りの突き当たりに立っている女性に、ボルドー行の乗合馬車は何時に出発するのか尋ねてほしい、とのことでした。女性にその件を尋ねると、語り手はなぜか警察に連行されてしまいます。挙句の果ては、裁判で有罪を宣告され、収監されてしまうのです…。



B000HA4E1E-less[レス] [DVD]
ジャン=バティスト・アンドレア
クロックワークス 2006-10-27

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 映画では、ちょっと方向性が違うのですが、『-less レス』(ジャン=バティスト・アンドレア&ファブリス・カネパ監督)が、似たテイストの作品ですね。
 クリスマス・イブの夜、ある一家が、車で親戚のパーティーに向かいます。近道をしようと人気のない森を抜けていくことになりますが、なぜか、行っても行っても出口が見えてきません。
 突然、道ばたに赤ん坊を抱いた白いドレスの女が現れ、車はあわてて停車します。何を聞いても答えず、しかも怪我をしているらしい女を放っておくこともできず、車に同乗させることになります。携帯電話も通じないため、やがて古びた山小屋を発見した一家は、そこで電話を借りようとしますが、つながりません。
 直後に、娘のボーイフレンドが、謎の黒いクラシックカーで連れ去られてしまいます。やがて道ばたに青年の変わり果てた姿を見つけます。その後も、車を止めるたびに、黒いクラシックカーが現れ、家族が殺されてしまうのです…。


 これらの物語、分類するとすると、謎が謎のままで終わるという「リドルストーリー」と言えます。ただ、上記の物語群は、その「リドルストーリー」の中でも、何か妙な魅力があるのです。
 物語中で、主人公や語り手に対して、何か重要な情報が隠されていることが明示されます。そしてその真相を求めて、主人公は駆け回るのですが、結局真相は明かされない…というのが、上記の物語群の骨格といえましょうか。
 読者や視聴者に対し、重要な情報を隠したまま展開する作品、といえば、いわゆる「サスペンス」作品ということになると思います。ただ、サスペンス作品では、真相や謎は最後には明かされます。それに対して、上記に挙げた物語は、隠された情報が結末になっても明かされません。
 真相が、作中で明確には示されない、という作品もないことはありません。例えば、ジーン・ウルフやクリストファー・プリーストの一部の作品。ただ、作中で明確に真相は明かされないものの、読者の推測で真相が窺えるようにはなっていることが多いです。対して、上記の物語群では、真相を明かす気がさらさらない…といった感じなのです。
 ただ、それでも「面白く」感じるということは、ここら辺に、何か「サスペンス」の原型的な味わいが隠されているような気がするのです。

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8月の気になる新刊と7月の新刊補遺
7月25日刊 E・F・ベンスン『塔の中の部屋』(アトリエサード 予価2592円)
7月25日刊 ロジャー・クラーク『幽霊とは何か 500年の歴史から探るその正体』(国書刊行会 予価3996円)
7月25日発売 《ミステリマガジン9月号 特集=ロアルド・ダール生誕100周年》 (早川書房 1296円)
8月5日発売 《怪奇秘宝 VOL.1》(洋泉社 予価1512円)
8月5日刊 ハーラン・エリスン『死の鳥』(ハヤカワ文庫SF 予価1296円)
8月6日刊 ロアルド・ダール『飛行士たちの話 新訳版』(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価928円)
8月13日刊 稲垣足穂『稲垣足穂 飛行機の黄昏』(平凡社 予価1512円)
8月20日刊 ジェイムズ・F・デイヴィッド『叫びの館 上・下』(創元推理文庫 予価各1188円)
8月20日刊 キジ・ジョンスン『霧に橋を架ける』(創元SF文庫 予価1145円)
8月23日刊 『新編・日本幻想文学集成 第2巻』(国書刊行会 6264円)
8月24日刊 若島正編『ベスト・ストーリーズⅢ』(早川書房 予価3240円)
8月24日刊 フェデリコ・アシャット『ラスト・ウェイ・アウト』(ハヤカワ・ミステリ文庫 予価1404円)
8月27日刊 リング・ラードナー『アリバイ・アイク ラードナー傑作選』 (復刊)(新潮文庫)
8月31日刊 J・G・バラード『J・G・バラード短編全集1 時の声』(東京創元社 予価3888円)
8月31日刊 キャサリン・チャンター『泉』(東京創元社 予価2808円)
8月31日刊 ヘレン・マクロイ『ささやく真実』(仮題)(創元推理文庫 予価1058円)


 《ナイトランド叢書》2期の第1弾は、E・F・ベンスン『塔の中の部屋』。短篇を集めた傑作集になります。イギリスの怪奇小説の正統派であり、その端正な作風には、滋味掬すべき味わいがあります。
 ちなみに、ベンスンの兄弟、A・C・ベンスン、R・H・ベンスンも怪奇小説を書いた作家で、通称ベンスン3兄弟と呼ばれています。いずれ《ナイトランド叢書》で、A・C・ベンスン、R・H・ベンスンの作品集も刊行されることを期待しています。

 かって扶桑社からも刊行予定がありましたが、結局立ち消えになってしまった、ハーラン・エリスンの傑作集がついに登場です。『死の鳥』は、傑作を集めた日本オリジナル編集。エリスンは著作権にうるさいとのことなので、彼の邦訳はこれが最後じゃないでしょうか。

 ロアルド・ダール生誕100周年ということで、『ミステリマガジン』では特集号が、ミステリ文庫からは『飛行士たちの話』の新訳が刊行です。近年『キス・キス』『来訪者』『あなたに似た人』と、新訳版が続けて刊行されてきているところを見ると、今でもダールは現役で人気のある作家といえますね。

 ジェイムズ・F・デイヴィッド『叫びの館』は、あらすじを見る限り、面白そうな作品ですね。「少女の霊が眠る館に集められた「被検体」たち。彼らが備える能力が合成されたとき、恐るべき〈人格のフランケンシュタインの怪物〉が目覚める。新感覚ゴシックホラーの傑作。」

 『アリバイ・アイク ラードナー傑作選』 は、lアメリカン・ユーモアの古典的作家の短篇集。ラードナーは今読んでも面白い作家だと思います。

 ニューウェーヴの代表的作家、J・G・バラードの短篇を集成する『J・G・バラード短編全集1 時の声』が刊行になります。全5巻、97の短編を執筆順に収録する決定版全集です。1巻は、16篇を収録。
 創元SF文庫の短篇集はともかく、『ヴァーミリオン・サンズ』(ハヤカワSF文庫)、『残虐行為展覧会』(工作舎)、『死亡した宇宙飛行士』(NW-SF社)、『ウォー・フィーバー』(福武書店)あたりの作品集は入手難になっていたので、これはうれしい企画です。

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『新トワイライトゾーン』第2シーズン完結
ミステリー・ゾーンDVDコレクション(69) 2016年 4/27 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(70) 2016年 5/11 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(71) 2016年 5/25 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(72) 2016年 6/8 号 [雑誌] ミステリー・ゾーンDVDコレクション(73) 2016年 6/22 号 [雑誌]
 DVDマガジンが刊行中の『ミステリーゾーン』、74巻にて『新トワイライトゾーン』の第2シーズンが完結しました。第1シーズンに関しては、ビデオで視聴していましたが、この第2シーズンからは、初見になります。
 以下、印象に残ったエピソードについて、まとめてみたいと思います。


『永遠の王』
 プレスリーのものまね歌手のゲーリーは、ある日、車の事故を起こしてしまいますが、事故の相手は何とプレスリー本人でした。いつの間にか、デビュー前のプレスリーの生きる時代にタイプスリップしていたのです。自分との接触によって、プレスリーの未来が変わる可能性に思い至ったゲーリーは、彼を説得しようとしますが…。
 脚本は、ジョージ・R・R・マーティン。過去の有名人との接触によって、人生に展望が開ける話…と思いきや、徹底的にダークな展開になるのが面白いですね。

『孤独の受け皿』
 ウェイトレスとして働くマーガレットは、孤独な女性でした。ある日、飛来したUFOとの接触によって、彼女は一躍時の人となりますが、やがてそれが原因でさらに孤独をかこつことになります…。
 原作は、シオドア・スタージョンの名作『孤独の円盤』。原作の味を上手く映像化している、名エピソードだと思います。

『生命の水』
 ニュースキャスターのクリスティは、容姿の衰えを気にしていました。同僚が勧めてきた若返りの水を試したところ、肌が若返ったことに喜びますが、その水には恐ろしい副作用がありました…。
 魔法のアイテムには落とし穴が…というタイプの作品ですが、予想外の結末で、後味はよい作品ですね。

『ストーリーテラー』
 かって僻地の村で教員として働いていたドロシーは、図書館で昔教えた少年マイカの面影を持つ男性を目撃し、そのあとを追うことになります。その少年は、授業中、ずっとノートに物語を書き続けていたのですが、彼にはそうする理由があったのです…。
 年老いた教員が、かっての教え子に出会い、過去を回想するという形式になっていますが、それが長い時間が経ったことを表現しており、物語の内容的にも必然性を伴っているのが上手いです。第2シーズン中の傑作エピソードの一つだと思います。

『世界の隣に』
 役に立たない物ばかりを作っている発明家バーニーは、毎晩別の世界の夢を見ていました。そこでは、彼は偉大な発明家なのです。やがてある日、地下室の扉からその別世界への入り口を発見しますが…。
 自分が重要人物であるという、願望充足的なパラレルワールドが登場するのですが、普通の文明の利器が発明されず、バーニーのへんてこな発明が一世を風靡しているという、奇妙な世界観が魅力的です。

『キャリバンのおもちゃ』
 老夫婦と、知的障害のあるその息子トビー。トビーには、絵で見たものを現実に実体化させるという超能力がありました。彼の能力が世間に迷惑をかけないよう、夫婦は彼を厳重に監視していました…。
 ジョージ・R・R・マーティン脚本。絶大な能力を持ちながらも、それを制御できない息子と、あくまで息子を愛する両親の家族愛を軸に描いた作品です。結末もこうならざるを得ないという意味で、完成された感があります。

『囚人のピアノ』
 無実の罪で刑務所に服役するピアニストのリックは、喧嘩の仲裁をきっかけにエディという老人と友人になります。彼から倉庫にあるピアノを弾いてほしいと頼まれたリックは、さっそくピアノを奏でますが、そのピアノには奏でたメロディーの時代へとタイプスリップする力があったのです…。
 ピアノの能力を利用して脱獄を図るのか、と思いきや、そう単純な話にならないところがミソ。ピアノが刑務所にあった由来や、エディの因縁も解消されたりと、伏線が上手く消化されるところが小気味よい秀作だと思います。

『クレジットカード』
 浪費癖のある主婦リンダは、滞納を続けて、カードを契約できない状態になっていました。ある日、彼女のもとにあるカード会社から勧誘があり、よく考えもせずに契約をしてしまいます。さっそく滞納をするリンダでしたが、それと同時に飼い猫が消えてしまいます…。
 いわゆる「悪魔との契約」テーマを扱っていますが、舞台は現代的。ブラックなストーリーが楽しい一篇です。

『シェルター・スケルター』
 ハリーは、用心深い性格で地下に秘密の核シェルターを作っていました。妻子が義姉の家に出かけた晩、家の近くで核爆発が起こります。たまたま居合わせた友人とともに、シェルターに非難するハリーでしたが、やがてシェルター内で諍いが起き始めます…。
 行動力があるものの、自尊心が高く自分勝手な男の運命とは…。皮肉な結末もなかなか。

『プライベート・チャンネル』
 飛行機の中でも携帯ラジオを離さない少年キース。トイレの洗面台で落としたラジオのイヤフォンをつけたとたん、周りの人間の心の声が聞こえることになります。隣の席の男が飛行機の爆破を考えていることを知ったキースは、彼を説得しようとしますが…。
 主人公であるキースが、前半では頭のからっぽな少年というイメージで描かれますが、後半では他人の心を変えようと奔走する真摯な少年に変わってゆくという、成長物語的な側面が強いエピソードです。

『未来へのレクイエム』
 部屋でピアノを弾く、作曲家のピンキーの前に、悪魔を名乗る男が現れます。彼はピンキーはすでに死んでおり、ピアノの演奏を時々披露してくれる代わりに、ピンキーの願いをかなえようと話しますが…。
 自分の単なる欲望から始まった願いが、やがて他人を救う事へとつながり、そして主人公自身の人生の意味をも変えることになるという、多様な要素がつまった傑作エピソード。第2シーズンでは最高のエピソードではないでしょうか。


 全体的にこの第2シーズン、エピソードごとの出来不出来が激しい気がします。第1シーズンは、もちろんつまらないエピソードもあるのですが、わりあい水準以上の作が多い印象があるのですが、第2シーズンは、傑作もあるかわりに、かなり退屈なエピソードもあるといった感じですね。
 第3シーズンも続けて期待したいと思います。

テーマ:海外ドラマ(欧米) - ジャンル:テレビ・ラジオ

知られざる幻想短篇   西周成編訳『ロシア幻想短編集』
ロシア幻想
 西周成編訳『ロシア幻想短編集』(アルトアーツ)は、ロシアの知られざる幻想小説を集めたアンソロジーです。全7編が収録されています。

ウラジーミル・フョードロヴィチ・オドエフスキー『オルゴールの中の街』
 オルゴールの中の街に入り込んだ少年の冒険を描く童話作品。夢の国だと思っていた少年の考えとは裏腹に、街にも生きるための厳しさがあるという、風刺的な要素の強い作品です。

イワン・ツルゲーネフ『勝ち誇る愛の歌』
 互いに、同じ女性ヴァレリアに思いを寄せる親友同士の青年ファビオとムツィオ。恋に破れたムツィオは、東洋へと旅に出ます。帰ってきたムツィオが奏でる音楽は、その魔術的な効果でヴァレリアを苦しめますが…。
 ロマンチックな作品かと思わせる前半に対し、悪夢めいた状況に陥る後半は、まさに正統派の怪奇小説。力作です。

アントン・チェーホフ『酔っ払いと素面の悪魔との会話』
 悪魔と出会った役人を描く、風刺的なユーモア・スケッチです。

アレクサンドル・イワノヴィチ・クプリーン『夢』
 語り手が見る幻を語った、幻想的な散文詩的作品。

フョードル・クジミチ・ソログープ『獣が即位した国』
 その国では、草むらに置かれた黄金の卵を拾ったものが王になるという決まりでした。通りかかった少年ケニヤは卵を見つけますが、それを欲しがった親友のメテイヤに渡してしまいます。やがて王になったメテイヤは、残忍な行為を繰り返すようになり、やがて友であるケニヤをも疎ましく思うようになります…。
 ファンタスティックな設定の寓話的作品。イメージの喚起力が素晴らしい一篇です。

ニコライ・ステパノヴィチ・グミリョーフ『ストラディヴァリウスのヴァイオリン』
 音楽に打ち込むヴァイオリンの老大家ベリチーニは、自ら所有するストラディヴァリウスのヴァイオリンを愛していました。ある夜、ベリチーニは見知らぬ男が部屋の中にいることに気が付きますが…。
 音楽に取り憑かれた男を描く、音楽幻想小説。

アレクサンドル・グリーン『魔法の不名誉』
 結婚したばかりのポーターは、ある日、美しい娘に、ペットショップから小鳥を買って届けてくれるように頼まれます。何度も店に小鳥を買いに行く用事を頼まれたポーターは不審に思いつつも、娘の魅力に負け、言うなりになってしまいますが…。
 妖しい魅力を持つ美女の正体とは…。短いながらも、非現実的な情景を味あわせてくれる手つきは、まさに「魔法」のよう。グリーンの傑作のひとつだと思います。
 
 編者の西周成さんは、もともと映画畑の方のようですが、自ら立ち上げたレーベルでロシアの小説作品や映画関連書の翻訳書を出されています。
 ロシア関係の中でも、さらに知られざる作品を中心に手がけられているようです。すでに刊行済みのタイトルでは、アレクサンドル・グリーン短編集『灰色の自動車』もオススメです。
 

 アルトアーツの出版物は、以下のストアで購入できます。

 別の生活ストア(Alt-Life Store) http://altarts.cart.fc2.com/

 オンデマンド印刷のようなので、注文から発送まで少し時間がかかるようです。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

7月の気になる新刊
7月2日刊 チャールズ・ウィルフォード『拾った女』(扶桑社文庫 予価1026円)
7月8日刊 スティーヴン・キング『ジョイランド』(文春文庫 予価907円)
7月9日刊 ウィリアム・ゴドウィン『ケイレブ・ウィリアムズ』(白水Uブックス 予価1944円)
7月9日刊 イーヴリン・ウォー『イーヴリン・ウォー傑作短篇集』(白水社 予価2592円)
7月11日刊 東雅夫編『怪談入門 乱歩怪異小品集』(平凡社ライブラリー 予価1728円)
7月11日刊 フェルディナント・フォン・シーラッハ『テロ』(東京創元社 予価1728円)
7月11日刊 J・G・バラード『ハイ・ライズ』(創元SF文庫 予価994円)
7月12日刊 フケー 『水の精(ウンディーネ)』(光文社古典新訳文庫)
7月19日刊 ザーシャ・アランゴ『悪徳小説家』(創元推理文庫 予価1058円)
7月20日刊 ミュリエル・スパーク『あなたの自伝、お書きします』(河出書房新社 予価2376円)
7月21日刊 グレアム・ジョイス『人生の真実』(創元海外SF叢書 予価2700円)
7月22日刊 ディーノ・ブッツァーティ『古森の秘密』(東宣出版 予価2052円)
7月25日発売 『ミステリマガジン9月号 特集=ロアルド・ダール生誕100周年』 (早川書房 1296円)
7月28日刊 パット・マガー『四人の女 新版』(創元推理文庫 予価1080円)


  『イーヴリン・ウォー傑作短篇集』は、初訳5篇を含め、15作品を収録した短篇集。長編の邦訳はけっこうあるものの、短篇集の刊行は初めてじゃないでしょうか。ウォーの短篇はブラック・ユーモアが効いているものが多く、<奇妙な味>の短篇として読めるものも多いので、これは楽しみです。

 東雅夫編『怪談入門 乱歩怪異小品集』は、乱歩の怪奇小説関連の随筆・エッセイをまとめたものに、怪奇系の短篇をいくつか収録したもの。以前、映画とのタイアップ的に刊行された『火星の運河』(角川ホラー文庫)の増補版、といった感じのようですね。

 J・G・バラード『ハイ・ライズ』は、映画公開の恩恵での再刊でしょうか。
 バラードといえば、創元社のメルマガで、バラードの短篇を集成した《J・G・バラード短編全集》全五巻の刊行が予告されていました。
 97の短編を執筆順に収録する決定版全集で、ハードカバーでの刊行になるようです。1巻は8月刊行とのこと。

 ディーノ・ブッツァーティ『古森の秘密』は、岩波少年文庫で刊行されたばかりの 『古森のひみつ』 と同一作品の邦訳のようです。偶然なのかわかりませんが、ファンとしてはせっかくの機会、別の作品の邦訳を出してほしかったな、というのが正直なところですね。

 『四人の女 新版』は、パット・マガーの名作の新版。マガーの作品は、どれも趣向を凝らしているのに加えて、メロドラマ部分が面白いんですよね。マガーは短篇も面白いものが多いので、いつか短篇集もまとめてもらいたいものです。


プロフィール

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
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