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リドル・ストーリーと結末の定まらない物語 その1
 「リドル・ストーリー」とは、物語中に提示された謎に対して、明確な答えが与えられないまま終了するストーリーです。
 結末として登場人物が取るべき選択肢が複数提示されるもの(ストックトン『女か虎か』など)、物語上の謎の真相が隠されたまま終了を迎えるもの(モフェット『謎のカード』など)、作中の事実の解釈が複数存在するもの(芥川龍之介『藪の中』など)、物語そのものの解釈が謎につつまれているもの(デ・ラ・メア『なぞ』など)などがあります。


●二者択一型の作品
 選択肢が2つ提示され、どちらを取るか?というタイプの作品です。『女か虎か』を始め、リドル・ストーリーと言われて、思い浮かべるのはこのタイプの作品ではないでしょうか。


4480429050謎の物語 (ちくま文庫)
紀田 順一郎
筑摩書房 2012-02

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フランク・R・ストックトン『女か虎か』(紀田順一郎訳 紀田順一郎編『謎の物語』ちくま文庫収録)
 その王国では、絶大な権力を持つ王のもと、ある裁きが行われていました。それは闘技場で罪人に二つの扉のうち、どちらかを選ばせるというもの。
 片方には虎がおり、こちらの扉をあければ食い殺される。もう片方には美女がおり、こちらを開ければ、強制的にその娘と結婚させられるのです。
 王女と恋をした罪で罪人となった若者は、裁きにかけられることになりますが、王女はその権力を使用し、二つの扉のうち、どちらに虎がいるかを知ります。王女は若者に合図をしますが、実際に現れたのは女だったのか、虎だったのか?
 リドル・ストーリーの代名詞ともいうべき作品です。明確に2つの選択肢が示され、どちらも同じぐらいあり得る…と思わせる、優れた設定の作品です。
 ジャック・モフィットによる解決篇『女と虎と』(仁賀克雄訳 紀田順一郎編『謎の物語』ちくま文庫収録)などもあります。



フランク・R・ストックトン『三日月刀の督励官』(紀田順一郎訳 紀田順一郎編『謎の物語』ちくま文庫収録)
 若者が裁判にかけられてから1年ほどたって、遠い国から使者がやって来ます。裁判の結末を教えてほしいという使者に対し、役人はもう一つのエピソードを話し出します。
 ある国の王子が、王に対し、宮廷の侍女の誰か一人を花嫁にほしいと申し出ます。王は、王子に目隠しをしたうえで、侍女を進呈し結婚式をあげさせます。その後、花嫁を別の四十人の侍女と一緒にしてから、王子の目隠しを取り、自分の花嫁を連れ出しなさいと命令します。ただし、間違って他の女を連れ出そうとしたら、王子の命はないのです。
 四十人の侍女は同じような衣装をつけており、身動きをしてはいけないと王様に厳命されています。ただ、二人の侍女のみに、表情に変化が現れたのを王子は見て取ります。一人は微笑み、一人は眉を寄せています。王子が選んだのはどちらか? このエピソードの答えを当てられたら『女か虎か』の結末を教えようと言うのですが…?
 作者ストックトン自身による『女か虎か』の続編です。リドル・ストーリーの解答がリドル・ストーリーになっているという、なんとも人を喰った続編です。正編と同じく、女性はこういう場合、どんな反応を示すか? という設問になっており、どちらもあり得る…と考えられるところがにくい作品ですね。



マーク・トウェイン『恐ろしき、悲惨きわまる中世のロマンス』(大久保博訳 紀田順一郎編『謎の物語』ちくま文庫収録)
 大公である伯父の後継者になるために、女でありながら男のふりをさせられていたコンラート。戴冠する前に女であることがわかれば、法により死刑になってしまいます。
 伯父の娘コンスタンスは、ならずものに妊娠させられてしまいますが、国の法では結婚せずに子供を産んだ場合は死刑に処されてしまうのです。死を逃れるためには、子供の父親を身代りにするしかありません。コンスタンスは、父親はコンラートであると虚偽の告発をしますが…。
 告発を事実だと認めれば死刑、しかし疑いを晴らそうとするとこれまた死が待っている…という、究極の選択を描いた作品です。



O・ヘンリー『指貫きゲーム』(紀田順一郎訳 紀田順一郎編『謎の物語』ちくま文庫収録)
 名門の出である青年は、都会で事業に成功します。田舎の召使である老人は、青年に一族に伝わる品を渡そうと上京しますが、部屋に通されると、中にいたのは互いによく似た容貌の二人でした。青年は、共同経営者であり、容貌もよく似た同じ一族のいとこと、いたずらをしかけていたのです…。
 品を渡すべきはどちらの青年なのか? 微笑ましいユーモア小説です。



465220177X百万ポンド紙幣―マーク・トウェイン ショートセレクション (世界ショートセレクション)
マーク トウェイン ヨシタケ シンスケ
理論社 2017-02

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マーク・トウェイン『天国だったか? 地獄だったか?』(堀川志野舞訳『百万ポンド紙幣』理論社収録)
 二人の伯母は、嘘をこの上ない罪だと考える信心深い人間でした。しかし、愛する姪に対して、姪の娘が死んだと伝えられず、生きているかのように装った手紙を書き続けます。やがて姪は息を引き取りますが、直後に天使が現れ、彼女たちへ判決を囁きます…。
 人を助けるためについた嘘は罪なのか? 倫理的なテーマをはらんだリドル・ストーリー。



415071956X特別料理 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スタンリイ エリン Stanley Ellin 田中 融二
早川書房 2015-05-08

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スタンリイ・エリン『決断の時』(田中融二訳『特別料理』ハヤカワ・ミステリ文庫収録)
 好人物ながら自信家の男ヒューは、隣に越してきた元奇術師のレイモンドと、事あるごとに反目します。どんな場所からも脱出できると豪語するレイモンドに対し、屋敷の地下室から1時間以内に脱出できたら自らが出て行こうと、ヒューは賭けを提案します。
 閉じ込められた部屋から、レイモンドの苦しそうな呻き声が聞こえ、周りの人間は、心臓が悪いと言っていたレイモンドの言葉を思い出しますが、ヒューはそれは嘘だと判断し、扉を開けさせまいとしますが…。
 奇術師は本当に病気なのか、それとも芝居なのか? 破滅を賭けた取引で男が取るべき行動は…?
 閉じ込められるのが、心理的なミスディレクションを多用する奇術師、という伏線が効いています。現代リドル・ストーリーの傑作。



448826302Xあなたならどうしますか? (創元推理文庫)
シャーロット アームストロング Charlotte Armstrong
東京創元社 1995-04

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シャーロット・アームストロング『あなたならどうしますか?』(白石朗訳『あなたならどうしますか?』創元推理文庫収録)
 憧れの男性が従姉と結婚することに、苦々しい思いを抱いていたヒロインは、街中で、ある男性を見かけ驚きます。その男性は、事故で死んだはずの従姉の夫だったのです。ヒロインはその事実を従姉に伝えますが、彼女は結婚を壊すための嘘だと、とりあってくれません…。
 憧れ、嫉妬、愛情…。主人公の女性の心の動きを丁寧に描写したうえで、結末を読者に選ばせるというサスペンス・ストーリー。読んだ後、語り合いたくなる作品ですね。



B00NSE0J3Iマイ国家(新潮文庫)
星 新一
新潮社 1976-06-01

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星新一『友情の杯』『マイ国家』新潮文庫収録)
 資産家である老人は、死期が近づいていましたが、最後の願いとして、若いころ友人からもらった酒が飲みたいと話します。
 遠い昔にもらった酒を今まで飲まなかった理由を聞かれ、彼は答えます。ライバルでもあった友人は、酒に毒を入れた可能性がある。それを確かめてしまったら、毒が入っているにせよ入っていないにせよ、友人との関係が壊れてしまう。それが怖くて確かめられなかったのだと…。
 友人は敵だったのか、それとも親友だったのか? 解釈は読者に委ねられています。



4151824014二壜の調味料 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ロード ダンセイニ 小林 晋
早川書房 2016-11-22

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ロード・ダンセイニ『ネザビー・ガーテンズの殺人』(小林晋訳『二壜の調味料』ハヤカワ・ミステリ文庫収録)
 友人のインカー氏の家を訪れた「私」は、たまたま彼の殺人現場を目撃してしまいます。口封じのために殺されると考えた「私」は、とっさに逃げ出しますが、インカーは後を追ってきます。薄暗い場所に隠れてほっとしたのもつかの間、インカーは警察を呼び、「私」に殺人の汚名を着せます…。
 手記の形で書かれた殺人事件の真相、しかしその真偽は定かではありません。いったいどちらが嘘をついているのか…? その判断は読者にまかされているのです。



4794927428誰でもない男の裁判 (晶文社ミステリ)
A・H・Z・カー 田中 融二
晶文社 2004-06-17

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A・H・Z・カー『ティモシー・マークルの選択』(田中融二訳『誰でもない男の裁判』晶文社収録)
 学内で新聞の編集長をしているティモシー・マークルは、新聞編集のスタッフとして、デニーを招きいれます。彼は、ティモシーの父親が勤務する会社の社長の息子でした。
 ある日、ティモシーは、親から近所に住む老人が車に轢かれて死んだという話を聞きます。ふとしたきっかけから、その事故はデニーがおこしたものではないかと思い当たったティモシーは、思い悩みます。彼が突き付けられた選択とは…?
 倫理的な判断を迫られる青年の悩みを描いた作品。自分の人生を左右する問題に対して、彼が取った決断とは…? 結末を読者にゆだねる、リドル・ストーリーの佳作です。



4043455038山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー (角川文庫)
山口 雅也
角川書店 2007-12

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ハル・エルスン『最後の答』(田中小実昌訳 山口雅也編『山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー』角川文庫収録)
 夜勤の男は、ビルに見慣れぬエレベーター係がいるのに気が付きますが、エレベーター係りは唐突に二択の質問をしてきます。冗談だと思い答えるものの、しつこく質問を続けるエレベーター係に対し、男は恐怖を抱きます…。
 質問に間違えると殺される、というサイコ・スリラー作品。相手が狂人だけに、二択のうち、どちらが正解なのかがわからないというのが読みどころです。



B00C2R9W44二十一の短篇 新訳版
グレアム グリーン 高橋 和久
早川書房 2013-03-29

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グレアム・グリーン『弁護側の言い分』(高橋和久訳『二十一の短篇』ハヤカワ文庫epi収録)
 殺人容疑で起訴された男は、ほぼ有罪が決定しているかに思われていました。殺人直後に被告を目撃した証人が何人もいたのです。しかし弁護側は、被告の双子の兄を呼び出し、目撃したのは被告なのか、それとも被告の兄なのか、確信が持てるのかと問いかけます…。
 明らかな殺人であるにもかかわらず、罪を逃れようとする弁護側の策略の結果は…? 皮肉な結末が待つリドル・ストーリー。



4882930846F氏の時計 (ふしぎ文学館)
佐野 洋
出版芸術社 1994-07

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佐野洋『金属音病事件』『F氏の時計』出版芸術社収録)
 知人が交通事故に遭ったという知らせを受けた「私」は、見舞いに病院を訪れますが、患者は頭の中で金属のような音がすると話します。それと同時に、見たものを瞬間的に覚えてしまうほどの驚異的な記憶力が身についていたのです。同じような「金属音病」患者が他にもいることを聞いた「私」は、同僚とともに、この症状について調べ始めますが…。
 SF的な素材を扱ったミステリ作品です。結末において、殺人犯と目される人物に対して放たれる仕掛けがユニーク。容疑者が本当に犯人なのか否かは、明確に示されません。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

4月の気になる新刊と3月の新刊補遺
3月25日刊 マネル・ロウレイロ『最後の乗客』(マグノリアブックス 予価957円)
3月28日刊 マリオ・レブレーロ『場所』(水声社 予価2376円)
4月4日刊 稲垣足穂『天体嗜好症 一千一秒物語』(河出文庫 予価1296円)
4月6日刊 山本弘著、尾之上浩司監修『世にも不思議な怪奇ドラマの世界「ミステリー・ゾーン」「世にも不思議な物語」研究読本』(洋泉社 予価1944円)
4月6日刊 ケン・リュウ『紙の動物園 ケン・リュウ短篇傑作集1』(ハヤカワ文庫SF 予価756円)
4月7日刊 マイケル・イネス『ソニア・ウェイワードの帰還』(論創社 予価2376円)
4月11日刊 江戸川乱歩『乱歩の変身 江戸川乱歩セレクション』(光文社文庫)
4月14日刊 いわむらかずお『うそみーるめがね』(復刊ドットコム 予価1998円)
4月18日刊 岡本健『ゾンビ学』(人文書院 予価3024円)
4月19日刊 皆川博子『辺境図書館』(講談社 予価1728円)
4月20日刊 図書の家編『少女マンガの宇宙 SF&ファンタジー1970-80年代』(立東舎 予価1944円)
4月20日刊 ウィリアム・ゴールディング『蠅の王 新訳版』(ハヤカワepi文庫 予価1188円)
4月20日刊 ハーラン・エリスン『ヒトラーの描いた薔薇』(ハヤカワ文庫SF 予価1080円)
4月20日刊 ケン・リュウ『母の記憶に』(新ハヤカワSFシリーズ 予価2376円)
4月20日刊 『SFの書き方「ゲンロン 大森望 SF創作講座2016-2017」全講義録』(早川書房 予価1728円)
4月27日刊 カート・ヴォネガット『人みな眠りて』(河出書房新社 予価2160円)
4月28日刊 中村融編『夜の夢見の川 12の奇妙な物語』(創元SF文庫 予価1058円)
4月28日刊 ロバート・シルヴァーバーグ『時間線をのぼろう 新訳版』(創元SF文庫 予価1080円)


 山本弘著、尾之上浩司監修『世にも不思議な怪奇ドラマの世界「ミステリー・ゾーン」「世にも不思議な物語」研究読本』は、タイトル通り《ミステリー・ゾーン》と《世にも不思議な物語》のガイドブック。
 DVDマガジンの『ミステリーゾーン』も完結し、研究書なりムックなりが欲しいなと思っていたところなので、ファンには嬉しい企画ですね。

 いろいろ話題になった、ケン・リュウの第一短篇集『紙の動物園』が分冊文庫化。第二短篇集の邦訳『母の記憶に』も出るようです。

 この間出た短篇傑作選が好評だった影響でしょうか、再度ハーラン・エリスンの短篇集『ヒトラーの描いた薔薇』が登場です。これは楽しみ。

 4月の新刊でいちばん気になるのはこれ、中村融編『夜の夢見の川 12の奇妙な物語』です。2015年に出た『街角の書店』の続編的アンソロジーのようです。ケイト・ウィルヘルム、ロバート・エイクマン、キット・リードの作品など、〈奇妙な味〉の12篇を収録。

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怪奇幻想読書倶楽部 第5回読書会 開催しました
 3月19日の日曜日、JR巣鴨駅前のカフェにて「怪奇幻想読書倶楽部 第5回読書会」を開催しました。出席者は、主催者を含め9名でした。
 テーマは、第1部「リドル・ストーリーと結末の定まらない物語」、第2部「ブックガイドの誘惑」です。参加してくださった方には、お礼を申し上げたいと思います。
 それでは、当日の会の詳細について、ご報告したいと思います。

 今回も、参加者全員のプロフィールをまとめた紹介チラシを作りました。チラシをPDFにしたものを、メールにて事前に配信しています。
 第1部、第2部ともに、オススメ作品などがあれば、タイトルを挙げてくださいとお願いしていました。それらの文章をまとめたものと、主催者が独自にまとめたリドル・ストーリー作品ガイドを資料として配布しました。

 プラスチック製ネームプレートを、参加者それぞれの前に立てたうえで、参加者を紹介しておきます。新規の方のみ主催者から紹介し、2回目以降の参加者には、軽く自己紹介をしてもらいました。

 リドル・ストーリーというテーマはちょっと難しいかなと思っていたのですが、意外に意見が出たのはよかったです。脱線話を含みつつ、全体的にはまとまりのある話になったのかなという気はしています。
 ブックガイドに関しては、やはりお好きな方が多く、お気に入りの本をいろいろ紹介してもらいました。個人的にも気になるブックガイドがあったので、探してみたいと思います。

 以下、順不同で話題になったトピックの一部を並べてみます。例によって、記憶に残っているものだけですが。

第1部
・リドル・ストーリーの定義について。
・フランク・R・ストックトン『女か虎か』について。非常によくできた作品だが、結末がわかってしまうと、凡庸な話になってしまうのではないか。結末を削ったからこその作品。
・『女か虎か』の続編について。 ジャック・モフィット『女も虎も』など。やはり解決編になってしまうと、魅力が薄れる。ストックトン自身による続編『三日月刀の督励官』は、謎をさらに謎かけで煙に巻くという作品だが、結末を書かないという点では、上手くできている。
・フェルディナント・フォン・シーラッハ『テロ』について。ハイジャックされた旅客機がスタジアムに突っ込む前に撃墜するという事件の物語。多人数を救うために少人数の犠牲は許されるのか?というテーマ。有罪と無罪の正反対の結末が並置されている。作者が弁護士であることも関係? 作品として作者の主張は出すべきとの意見もあり。ただ、シーラッハの短篇では、結末を明確にしない作品も多い。
・オムニバスドラマシリーズ『if もしも』と、そのノベライズ作品について。毎回、ドラマの途中で分岐点が発生し、2通りの選択肢を選んだ場合を交互に描くという作品。1990年代前半に放映されたシリーズで、趣向は面白いが、ドラマ自体は凡庸なものが多い。
・アーロン・フリッシュ作、ロベルト・インノチェンティ絵『ガール・イン・レッド』について。赤ずきんを現代を舞台に置き換えた絵本。ハッピーエンドとバッドエンドが並置される構成。バッドエンドの方は子供向けとは思えない残酷な結末になっている。
・マーク・トウェイン『恐ろしき、悲惨きわまる中世のロマンス』について。『女か虎か』同様の、二者択一型リドル・ストーリー。『女か虎か』では片方の選択肢は命が助かるが、トウェイン作品では、どちらを選んでも死が待っているという構成。『女か虎か』よりも強烈な作品だと思う。
・ある事情のために主人公が動けなくなる…というモチーフでは、ノエル・カレフ『死刑台のエレベーター』も似たテーマの作品だった。
・トウェインでは、『天国だったか? 地獄だったか?』という短篇もリドル・ストーリー形式の作品だった。死にゆく姪に対して善意の嘘をつき続けた伯母たちに罪はあるのか?という倫理的テーマの作品。この作品が収録された傑作集『百万ポンド紙幣』(理論社)も非常にいい作品集だった。
・クリーヴランド・モフェット『謎のカード』について。〈三大リドル・ストーリー〉のうち、これだけ毛色が違う。この作品をはじめて読んだときの印象は怪奇小説に近い。実際、作者自身による解決編では、オカルト要素の強い怪奇小説になっている。ただ、やはり解決編を読むと、拍子抜けしてしまうのも事実。
・ディーノ・ブッツァーティ『なにかが起こった』は、イメージ喚起力が強く秀逸な作品だと思う。紀田順一郎編『謎の物語』には、この作品がリドル・ストーリーとして入っているが、そうするとブッツァーティの多くの作品がリドル・ストーリーになってしまう?
・ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の映画『CUBE』も、謎が多くてリドル・ストーリーっぽい。続編ではいろいろ後付の種明かしがされてしまうのは残念。
・ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の短篇映画『エレヴェイテッド』は、怪物の姿を見せず、それを見た人々の反応だけで構成された異色の作品。何やらブッツァーティの作品を思わせる。
・ジャン= バティスト・アンドレア&ファブリス・カネパ監督の映画『-less レス』について。全編暗闇でスプラッターシーンもないが、終始サスペンスの途切れない面白い映画作品。謎を残したまま進む展開はリドル・ストーリー的。
・最近出た『別冊映画秘宝 謎の映画』の紹介。リドル・ストーリー的な作品の紹介かと思ったら、忘れられた作家や作品についての紹介記事が主だった。『サスペリア』の謎とか、夢オチ映画についてのエッセイは面白かった。
・ダリオ・アルジェントの映画作品について。ストーリーが破綻していてもやはり好きな人は好き。『インフェルノ』などは破綻しきっている話だが、面白い映画だと思う。
・アルジェント監督『サスペリアPART2』はミステリファンから非常に評価が高い。有名なトリックがあるが、本格ミステリ的な意図があったかは微妙。殺しの趣向なども、けれんに満ちているが、そこが面白い。人形はトラウマになりそう。
・ゾンビについて。ホラーの怪物の中でもマイナーなジャンルだったのに、ここ20年ぐらいで一気にメジャーになった感がある。ホラーアイコン化? オールドホラーファンとしては、走るゾンビは好きではない。最近のゾンビはウィルス感染型が主流? ゾンビのキャラクターを利用したコメディなどもあり。
・バリイ・ペロウン『穴のあいた記憶』について。すごい密室トリックを考え付いた作家がその記憶を失ってしまい、アイディアを話したはずの男を探す話。トリックそのものは示されないという、『謎のカード』型の作品。
・ペロウン作品に似ているのが、ロード・ダンセイニ『書かれざるスリラー』。こちらでも画期的な殺人方法を思いついた男が、それを使って殺人を行う。
・服部まゆみ『この闇と光』について。お伽話的な舞台がひっくり返る物語。チャールズ・ボーモントの『ロバータ』に似た印象。
・多重解決ミステリについて。アントニイ・バークリー『毒入りチョコレート事件』、コリン・デクスター、芦辺拓『異次元の館の殺人』など。推理が次々とひっくり返されるという構成の作品があるが、最終的な推理が魅力的かというとそうでもないことが多い。
・エリック・ブレス/J・マッキー・グラバー監督『バタフライ・エフェクト』について。ループもの作品だが、試行錯誤して事態を改善しても、別の面で事態が悪化していまうという作品。行き詰まり感がすごい。
・日本のミステリは叙述トリックがやたらと多い。日本独自の現象?
・リドル・ストーリーは長編では難しいと思うが、それに近いのが、クレイ・レイノルズ『消えた娘』。娘が行方不明になり数十年間も待ち続ける母親の物語。
・ウイリアム・アイリッシュ『死者との結婚』について。アイリッシュ(ウールリッチ)作品の中ではそんなに有名ではないが、非常にいい作品。
・ウイリアム・アイリッシュ『誰かが電話をかけている』について。事件が解決したと思ったら、結局解決していなかったというバッドエンド。サスペンスホラー映画『暗闇にベルが鳴る』も似たテーマの作品。
・スティーヴン・バーの短篇『目撃』について。
・ジョン・クラッセンの絵本『どこいったん』について。ひねりも効いていて面白い作品。
・アイリッシュ(ウールリッチ)作品の魅力について。サスペンスの原型的な作品を多く書いている。『裏窓』など。映画化作品やその影響下にある作品は多く、知らずに触れている人も多いのではないか。白亜書房から出た『コーネル・ウールリッチ傑作短篇集』(門野集編)は、いい企画だった。
・創元推理文庫の『アイリッシュ短編集』も、品切れの巻があるので、ぜひ復刊してほしい。
・紀田順一郎編『謎の物語』に入っている、ウォルター・デ・ラ・メアの『なぞ』は、魅力的な作品。ただ、この作品をリドル・ストーリーとしていることによって、リドル・ストーリーの適用作品が一気に広がっている感じがある。
・城昌幸『古い長持』は、長持に入った妻が消えてしまうという話だが、デ・ラ・メアの『なぞ』とそっくりな作品。影響関係があるのだろうか?
・ハーヴィー・ジェイコブズ『おもちゃ』は非常にいい作品。
・ホーソーン『牧師の黒のベール』について。黒いベールをかけつづけた牧師の話。宗教的な解釈ができるのだろうが、不気味さは比類がない。
・ホーソーン『ウェイクフィールド』について。妻のそばで隠れ住みつづける男の奇妙な物語。解釈が示されないので、いっそう不気味さが増す。
・スティーヴン・ミルハウザー『夜の姉妹団』について。秘密結社について、いろいろと情報が積み重ねられていくが、それゆえにますますわからなくなるという作品。同じ作品集に収録された『私たちの町の地下室の下』でも、謎めいた雰囲気が強い。
・ジャック・ケッチャム作品について。『隣の家の少女』『オフシーズン』など。精神的に「嫌な」物語。
・アルフレッド・ノイズ『深夜特急』について。子供の頃読むとトラウマになりそうな作品。
・子供のころから気になっているがタイトルが思い出せない作品について。周囲の人間が止まっていて、全く動かない…と思っていたら毎日少しずつ動いているのに気づく…という話は、広瀬正の『化石の街』? 別世界につながる扉の出てくる話は、マレイ・ラインスター作品っぽい。
・石川達三『神坂四郎の犯罪』について。真相は藪の中に終わるという作品。
・有吉佐和子『悪女について』について。主人公の人物像について、いろいろな人間からの印象が描かれるという作品。アンドリュウ・ガーヴ『ヒルダよ眠れ』に近い印象?
・パット・マガー『被害者を探せ』について。被害者を探すという趣向の作品。マガー作品は、どれも趣向が楽しい。
・赤瀬川原平の写真集『正体不明』について。撮った写真の中で、正確に分類できず「あいまいなもの」というグレーゾーン的な観点から集めた作品集。
・高木こずえの写真集『MID』について。作者によると、MIDとは生と死の中間とのこと。
・スワニスワフ・レム『捜査』について。ミステリの分野でも取り上げられる作品。不条理性が強い。
・アゴタ・クリストフ『悪童日記』三部作について。
・ポール・オースター『シティ・オブ・グラス』について。
・ジェイムズ・ホッグ『悪の誘惑』。信頼できない語り手の早い時代の実例。真相がぼやかされる。
・筒井康隆作品『熊ノ木本線』『三丁目が戦争です』などについて。
・『うる星やつら』、映画版『ビューティフル・ドリーマー』と、その原型的作品、テレビシリーズのエピソード『みじめ!愛とさすらいの母』について。テレビエピソードの方は、よく放映できたと思えるほど不条理性の強い作風だった。

第2部
・風間賢二『ホラー小説大全』と尾之上浩司編『ホラー・ガイドブック』は、この分野の定番的ブックガイド。
・荒俣宏『世界幻想作家事典』について。書誌的には足りないところが多いが、著者の評価の入った文章は読んでいて面白い。
・荒俣宏『空想文学千一夜』について。怪奇幻想系の評論を集めた本。この分野の道標的な本。
・ジャック・サリヴァン編『幻想文学大事典』について。狭い意味での怪奇小説だけに絞っている代わり、この分野の情報量はすごい。未訳の作品についての情報も多し。
・「幻想文学」編集部編『幻想文学1500 ブックガイド』について。国別・テーマ別にあらすじが載っていて、自分の興味のあるものを探せる。利便性の高いブックガイド。
・山本弘『トンデモ本? 違う、SF だ!』と、その続編『トンデモ本? 違う、SF だ!RETURNS』について。〈パラノイアSF〉など、ぶっとんだアイディアのSF作品についてまとめた面白い本。
・小鷹信光『〈新パパイラスの舟〉と21 の短篇』について。テーマ別に仮想のアンソロジーを作るという体裁で作られたブックガイド。ミステリのテーマだけでなく、SFやファンタジー的なテーマもあるのが楽しい。
・松村喜雄『怪盗対名探偵』について。フランスミステリのガイドブックだが、マルセル・シュオッブ、モーリル・ルヴェル、カミなど、異色の作家にも筆が割かれていて、面白い本。
・角川文庫のカルチャー探偵団の『○○の快楽シリーズ』について。何十冊も出たが、どれもそれぞれ面白かった。未訳の作品についてもガンガン取り上げる著者もあって意欲的だった。
・佐藤圭『100冊の徹夜本』について。定番作品でないものも含めて紹介してくれているのが貴重。アーヴィング・ウォーレス作品についてなど。
・文藝春秋編『東西ミステリーベスト100』について。オールタイムのミステリが取り上げられており、オーソドックスだがいいガイド。
・『別冊宝島63 ミステリーの友』について。いろいろな著者がエッセイの形で書いた文章を集めたもの。網羅的なものではないが、拾い読みするのが楽しい。
・霜井蒼『アガサ・クリスティー完全攻略』について。個人の作品でこれだけ網羅しているのはすごい。
・ジョン・ラフリー『別名S・S・ヴァン・ダイン ファイロ・ヴァンスを創造した男』について。ヴァン・ダインの伝記作品。
・フランシス・M・ネヴィンズJr.『コーネル・ウールリッチの生涯(上・下)』と『エラリー・クイーン 推理の芸術』について。伝記部分だけでなく、作品論も丁寧にされている労作。
・『映画秘宝EX 最強ミステリ映画決定戦』。選ばれている作品が偏っていたりするが、面白いガイド。
・『戦慄のホラー読本』について。モダンホラー系作品が多く取り上げられている。
・ジョン・カッツェンバック『旅行者』について。女子学生に記録係をさせる殺人鬼の話。
・都築響一『誰も買わない本は、誰かが買わなきゃならないんだ』について。あまり取り上げられない本ばかり取り上げた異色のガイドブック。
・『J'sミステリーズ King and Queen 海外作家編』について。ライターによって出来不出来があるのと、基本的な書誌データの間違いも見受けられるが、全体的に有用なガイドブック。折原一による偏愛作品リストは愉しい。
・吉野朔美の書評エッセイと映画評エッセイについて。必ずしも、取り上げている作品についての情報がはっきり書かれているわけではないが、エッセイとしては魅力的。
・阿刀田高『恐怖コレクション』について。恐怖の原風景に関するエッセイ集。異色作家作品も多く取り上げられており面白い。
・豊崎由美/岡野宏文『百年の誤読 海外文学編』について。10年毎に10冊の、時代を代表する名著について、思うままに語った本。読み逃していた「名作」に手を伸ばすきっかけになりそうな本。
・伊藤典夫編『SFベスト201』について。SFをかなり広義に解釈していて、ホラーやファンタジー方面も取り上げられている。歴史的な意義より、読んで面白い本中心に選ばれている感じがある。
・新しい世代の書評家というのは育っているのか? ホラー分野ではあまり思い当たらない。
・先鋭的な作風の作家も、ベストセラー作家になると、皆作風が変わってしまう。なぜか皆、最終的に時代小説に行ってしまう印象がある。
・クトゥルー神話の大衆化について。コミックやライトノベルには拡散している印象があるが、原典のラヴクラフトは読んでいる人が少ないのではないか。

二次会
・ジョン・ディクスン・カー『火刑法廷』について。カーの怪奇趣味は他作品にも見られるが、これに限ってはミステリ・怪奇小説どちらとも解釈できるようになっている。怪奇小説としても秀作。
・写真集について。森山大道、中平卓馬『決闘写真論』『なぜ、植物図鑑か』、サラ・ムーン、梅佳代など。
・村上春樹の最高傑作は『ノルウェイの森』?
・レイ・ブラッドベリ『すばらしき白服』について。SFではないが味のある作品だと思う。
・レイ・ブラッドベリ『火星年代記』について。年代記風につながれた連作短篇集。滅びゆく美しさがある。結末の情景も感動的。
・ブラッドベリのオススメは? 『火星年代記』『10月はたそがれの国』など。
・SF作品は名作とされていても、古びてしまって、現代ではつまらなくなっているものもある。ハインライン作品はその手の作品が多いように思える。
・SFの古典はアンソロジーなどで、名作短篇を一通り読むほうが良い。河出文庫の『20世紀SF』はその点オススメのアンソロジー。
・SFはサイバーパンクの登場あたりから一気にとっつきにくくなった感がある。1980年代はSF不毛の時代ではないか。
・SFベストに毎回、ハインライン『夏への扉』が出てくるのはどうかと思う。
・W・H・ホジスンは、主だった作品がほぼ訳出されてしまった。
・『怪奇小説傑作集』のうち、フランス編は読みにくい。これに限らず、フランス文学は他の国に比べて、とっつきにくいのは事実。肌に合うか合わないかだと思う。
・マルキ・ド・サド作品はわかりにくい。
・泡坂妻夫『しあわせの書』について。トリックと仕掛けはものすごい。労力はすごいと思うが、物語自体はそんなに面白くないのでは。
・江戸川乱歩作品では何が面白いか? 初期短篇、『陰獣』『孤島の鬼』『猟奇の果』など。
・稲垣足穂作品について。『弥勒』『ヰタマキニカリス』『一千一秒物語』など。ヴァリアントが多いのは、金銭的な目的?
・電子書籍で本を読むことについて。旅行先へ持っていくなどの利便性はともかく、本としての「味わい」が薄い。
・本の物理的側面について。本を読むとき、物理的な手触りや版面の印象も含めて記憶に残る。そうした記憶のインデックス的な側面が電子書籍にはないのではないか。
・本は背表紙が見える形で本棚に置くべき。
・本の「自炊」について。是か非か? 100円均一のベストセラーはともかく、マイナーなジャンルの本を壊すのは気分的に無理。


第6回読書会は、4月下旬に予定しています。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

幽霊の掟  岩城裕明『煉獄ふたり』
4062195445煉獄ふたり 優しい幽霊はコンビニにいる (講談社BOX)
岩城 裕明 スオウ
講談社 2015-05-13

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 幽霊を主人公にしたファンタジーはままありますが、この作品ほど、物理世界に囚われた幽霊も少ないのではないでしょうか。岩城裕明『煉獄ふたり 優しい幽霊はコンビニにいる』 (講談社BOX)は、幽霊の探偵コンビの活躍を描く連作短篇集ですが、幽霊や、彼らが属する世界が細かく設定されており、その設定が物語の重要な伏線にもなっているという、丁寧な作りの作品です。

 この世に未練を抱いて死んだ人間は、煉獄に幽霊となって残ります。幽霊たちは、それぞれ死ぬ直前に肉体から持ち込んだ「現世の欠片」と呼ばれる品物を持っています。それは指であったり、目玉であったりといろいろ。それらを使うことによって、一時的に現実世界に干渉できるのです。また「欠片」を集めれば幽霊は生き返ることができるという噂もありました。
 噂を信じる幽霊キリンは、コンビニに探偵事務所を開きます。霊を見ることのできる生者の友人イツキの協力も得ながら、連れの少年アオバを生き返らせるため、幽霊たちの問題を解決し、その代わりに「欠片」を集めようとするのですが…。

 各話の最初に、客観的な視点からの霊的事件が描写され、本篇ではそれが幽霊たちのどんな行動によるものかが解き明かされる…という体裁になっています。
 幽霊たちの人間くさい側面が描写される、ユーモアファンタジー的な味わいが強いのですが、煉獄や幽霊のルールが細かく設定されており、それが上手くストーリーを盛り上げていくのが面白いところ。
 例えば、煉獄は、幽霊にとっての世界であり、見た目は現実世界と変わりません。幽霊たちは、物理的なものを動かすことはできず、物質をすり抜けることもできません。部屋に閉じ込められれば、誰かが開けてくれるのを待っているしかないのです。
 現実世界に干渉できず、普通の人間には見えない幽霊たちが唯一、現実に影響を与えられるのは「欠片」と呼ばれるアイテム。それは幽霊たちによって様々なのですが、指であれば、それを使い人に触れることができ、目玉であれば、それを生きた人間にはめこむことにより、幽霊たちの姿を見せることができるのです。
 恨みを残して死んだ女の霊を演じる幽霊の劇団の話、いじめられている少女の「守護霊」になり、少女を助けようとする男の物語、トンネルと一体化し、他の霊を取り込む女の霊の話など、ひねったストーリーが多く楽しめます。
 話が進むにつれ、探偵キリンがなぜアオバを生き返らせようとするのか、霊を見ることのできるキリンの友人イツキが、なぜアオバだけ見ることができないのか、などの疑問も解消されていきます。伏線が綺麗に回収されていくので、読んでいて爽快感がありますね。
 どこかとぼけた味わいの中に、ハートウォーミングな展開もありと、読後感も非常によい作品です。

 同じ作者の『牛家』(角川ホラー文庫)や 『三丁目の地獄工場』(角川ホラー文庫)が非常に面白かったので、この作品にも手を出してみたのですが、期待にたがわぬ面白さで、ちょっと追いかけてみたい作家の一人になりました。
怪奇幻想読書倶楽部 第5回読書会 参加者募集です
 「怪奇幻想読書倶楽部 第5回読書会」を、下記の日程で開催します。若干名の参加メンバーを募集しますので、参加したい方がおられたら、連絡をいただきたいと思います。 連絡いただきましたら、改めて詳細をメールにてお送りいたします。

お問い合わせは、下記アドレスまでお願いいたします。
kimyonasekai@amail.plala.or.jp


開催日:2017年3月19日(日曜日)
開 始:午後13:30
終 了:午後17:30
場 所:JR巣鴨駅周辺のカフェ
参加費:1200円(予定)
テーマ
第1部:リドル・ストーリーと結末の定まらない物語
第2部:ブックガイドの誘惑

※「怪奇幻想読書倶楽部」は、怪奇小説、幻想文学およびファンタスティックな作品(主に翻訳もの)についてのフリートークの読書会です。
※個人の発表やプレゼンなどはありません。話したい人が話してもらい、聴きたいだけの人は聴いているだけでも構いません。
※基本的には、オフ会のような雰囲気の会ですので、人見知りの方でも、安心して参加できると思います。

 第1部のテーマは「リドル・ストーリーと結末の定まらない物語」。リドル・ストーリーとは、作品中の謎が解かれないままに終わってしまう物語のこと。代表例としては、フランク・R・ストックトン『女か虎か』、クリーブランド・モフェット『謎のカード』、スタンリイ・エリン『決断の時』、芥川龍之介『藪の中』などがあげられます。
 今回は、狭義の「リドル・ストーリー」だけでなく、「結末の定まらない物語」として、結末が複数あったり、解釈が複数可能な物語についても、語り合いたいと思います。
 例えば、ミステリとも幻想小説とも解釈できる、ジョン・ディクスン・カー『火刑法廷』、あらかじめ2つの結末が用意された、フェルディナント・フォン・シーラッハ『テロ』、3通りの結末が選べるという、ジャンニ・ロダーリ『羊飼いの指輪 ファンタジーの練習帳』など。
 そもそも物語には一つだけの結末が必要なのか? そのあたりも含めて話し合えたらなと思います。

 第2部は「ブックガイドの誘惑」として、本好きなら必ずお世話になる、ブックガイドやリファレンスブックについて話したいと思います。ミステリなら、瀬戸川猛資『夜明けの睡魔』や小鷹信光『パパイラスの舟』、SFなら福島正美『SF入門』や石川喬司『SFの時代』、ホラーなら、風間賢二『ホラー小説大全』や尾之上浩二編『ホラー・ガイドブック』など。
 初心者の手引きとして、または玄人を唸らせるセレクションで、誰にでもお気に入りのブックガイドがあるはず。ミステリ、SF、ホラー、ジャンルは問いませんので、自分の愛読書になっているガイドを紹介してください。

※3月17日追記
第5回読書会の参加は締め切りとさせていただきたいと思います。

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夢と眠りの物語 その3
●人生は夢
 夢が現実になる。または現実が夢になる。夢は、現実は同じぐらいの重みと意味を持っています。


400327251X人の世は夢/サラメアの村長 (岩波文庫 赤 725-1)
カルデロン 高橋 正武
岩波書店 1978-11-16

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ペドロ・カルデロン・デ・ラ・バルカ『人の世は夢』(高橋正武訳『人の世は夢・サラメアの村長』岩波文庫)
 占いで暴君になるとされた王子は、父王の命令で、生まれながらに幽閉されて育ちます。王は薬で王子を眠らせ、玉座に連れてこさせます。目を覚ました王子は自分がいつの間にか王になっていることを知り驚きますが…。
 自分の境遇が魔法のように切り替わるのを体験した王子が、人生が夢なのか現実なのかわからなくなるという、夢幻的な劇作品。



4488070752ハザール事典 男性版 (夢の狩人たちの物語) (創元ライブラリ)
ミロラド・パヴィチ 工藤 幸雄
東京創元社 2015-11-28

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ミロラド・パヴィチ『ハザール事典 夢の狩人たちの物語』(工藤幸雄訳 創元ライブラリ)
 歴史上から姿を消した謎の民族ハザール。彼らに関する事典の形をとった小説です。「夢の狩人」など、夢がところどころでテーマとなっています。



4003230434ホーソーン短篇小説集 (岩波文庫)
ホーソーン 坂下 昇
岩波書店 1993-07-16

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ナサニエル・ホーソーン『デーヴィッド・スワン あるファンタジー』(坂下昇訳『ホーソーン短篇小説集』岩波文庫収録)
 朗らかな青年デーヴィッド・スワンは、旅の途中に木陰で寝こんでしまいます。そこを通りかかった資産家夫妻は、青年の寝顔に惹かれ、財産をこの青年に引き継がせようと考えますが、青年が起きてこないため去っていってしまいます…。
 眠っている青年のそばを、様々な「夢」が通り過ぎていくという寓話。いろいろな運命の形を夢の中の話ではなく、現実の人々の形で描くという、独創的な発想の物語です。


エルクマン=シャトリアン『壜詰めの村長』(小林晋訳『怪奇幻想短編集』ROM叢書)
 ぱっとしない宿で口にしたワインに感銘を受けたヒッペルは、悪夢にうなされて目を覚まします。彼は夢の中で、とある村の村長だったというのです。強欲な村長が死ぬまでを体験したというヒッペルでしたが…
 夢の中で他人の人生を生きるという物語。村長の人物描写がリアルで読みごたえがあります。



B00IICOGPM能登怪異譚 (集英社文庫)
半村良
集英社 1993-07-25

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半村良『夢たまご』『能登怪異譚』集英社文庫収録)
 子供の頃、食べれば夢を見られるという「夢たまご」を食べた男は、大人になり再び「夢たまご」を見かけることになりますが…。
 人生のどこからどこまで夢なのか、わからなくなるというファンタスティックな掌編。


●死出の旅としての夢
 死の直前に見る夢から覚めることはできるのか? 目覚めなければそのまま死んでしまう。まさに眠り=死なのです。


430946405Xたんぽぽ娘 (河出文庫)
ロバート・F・ヤング 伊藤典夫
河出書房新社 2015-01-07

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ロバート・F・ヤング『河を下る旅』(伊藤典夫訳 伊藤典夫編『たんぽぽ娘』河出文庫収録)
 男は筏で河を下っているところに、女と出会い、彼女も一緒に河を下っていくことになります。旅の途中、彼らはここが現実の世界ではないことに気付きます。現実世界では、彼らは死へと近づきつつあったのです…。
 男女は、死の寸前で生きる希望を取り戻します。死の間際に見ている夢の中で展開されるラブストーリーです。



B00CXADV8Sスモーク [DVD]
ライアン・スミス
アルバトロス 2013-08-02

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ライアン・スミス監督『スモーク』(映画)
 看護師の女性は、バスの中で若い男性と意気投合しますが、直後に衝撃が襲い、意識を失います。目を覚ますと自宅のベッドに寝ていた女性は、出勤先の病院に向かいますが、なぜか病院内にも街の外にも、誰も人が見当たりません。街中で唯一出会えたのは、バスで知り合いになった男性でした。
 二人は、車で街の外に向かいますが、そこには黒い霧の壁があり、全く進めないのです。しかも霧は街を追い詰めるように少しづつ迫ってきており、完全に街を覆うまで、3日ほどしかないようなのです…。
 黒い霧がだんだんと迫る中、無人の街で、助けを探す男女二人。魅力的なシチュエーションの作品です。この世界が夢(精神世界?)であることは早々にわかってしまうのですが、それがわかってからも十分面白く観られます。過去の記憶やトラウマが、世界脱出のカギになったりと、丁寧に作られています。


●悪夢を見る人々
 現実の苦難に劣らぬ悪夢の数々が描かれます。


4150118051アジャストメント―ディック短篇傑作選 (ハヤカワ文庫 SF テ 1-20)
フィリップ・K・ディック 大森望
早川書房 2011-04-30

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フィリップ・K・ディック『凍った旅』(浅倉久志訳 大森望編『アジャストメント』ハヤカワ文庫SF収録)
 移民のため、恒星間宇宙船内で冷凍睡眠に入っていた男は、機械のトラブルにより目覚めてしまいます。目的地への到着まで、何年もの間、一人では正気を保つことができないと判断したコンピュータは、強制的に男に夢を見させようとしますが…。
 どんな夢も、最初は楽しいのですが、なぜかいつの間にか悪夢になってしまうという作品です。



B000J94V3Eこちらへいらっしゃい (1973年) (世界の短篇)
シャーリイ・ジャクスン 深町 真理子
早川書房 1973

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シャーリイ・ジャクスン『夜のバス』(深町眞理子訳『こちらへいらっしゃい』早川書房収録)
 家に帰るために、夜のバスに乗車した老婦人は眠り込んでしまいます。運転手に起こされ、あわてて下車した老婦人は、そこが自分の帰る町でないことに気付きますが…。
 見知らぬ町の見知らぬ人々、不条理な出来事が続く悪夢のような短篇作品です。



4828832319イギリス怪奇傑作集 (福武文庫)
ウィリアム・ワイマーク ジェイコブズ 橋本 槙矩
福武書店 1991-12

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W・W・ジェイコブズ『人殺し』(宮尾洋史訳 橋本槇矩編『イギリス怪奇傑作集』福武文庫収録)
 諍いから、訪ねてきた友人を殺してしまった男は、自宅の庭に死体を埋めます。その直後から悪夢が始まりますが…。
 夢は自分の良心が見させているのか? 一見、超自然的な現象は起こらないのですが、味わいのある作品。



4488501087怪奇小説傑作集 3 【新版】 (創元推理文庫)
ラヴクラフト 橋本 福夫
東京創元社 2006-04-28

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ウィルキー・コリンズ『夢のなかの女』(平井呈一訳『怪奇小説傑作集3』創元推理文庫収録)
 ある宿で、夜中にナイフを持った女に襲われた男は狂乱状態になりますが、それは夢だったことがわかります。やがて男は、落ちぶれた女を見初めて妻に迎えますが、妻が夢の中の女とそっくりなことに気付きます…。
 夢の中で襲ってくる女、という恐怖度の高い短篇。第三者からの伝聞回想という構成もあり、女が超自然的な存在なのか、男の妄想なのか、どちらとも取れるような作りになっています。



4167309386ブルー・ワールド (文春文庫)
ロバート・R. マキャモン Robert R. McCammon
文藝春秋 1994-09

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ロバート・R・マキャモン『夜襲部隊』(小尾芙佐訳『ブルー・ワールド』文春文庫収録)
 ベトナム戦争の後遺症により、悪夢が現実化する力を持ってしまった男。意識を失った彼のまわりで、夜襲部隊が近づいてきますが…。
 一人の悪夢が周りの者を巻き込むという作品。『新トワイライトゾーン』で映像化もされています。



415041081X幻想と怪奇 おれの夢の女 (ハヤカワ文庫NV)
仁賀 克雄
早川書房 2005-04-21

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シーリア・フレムリン『特殊才能』(秋津知子訳 仁賀克雄編『幻想と怪奇 おれの夢の女』ハヤカワ文庫NV収録)
 小説サークルに初めて現れた陰気な小男は、自分で書いたという自伝作品を読み始めます。作品自体は退屈だったものの、中に挟み込まれた悪夢の描写には異様な迫力がありました。
 その夢では、自分がだんだんと廊下の端にある揺りかごに近づいていくというのです。その揺りかごに入ってしまうと、何かの「顔」が見えてしまうと…。
 悪夢それ自体の迫力もさることながら、その悪夢が現実へと浸食していく様子が不気味です。夢を扱った怪奇小説としては、一、二を争う怖さを持った作品。



4309462634最後の夢の物語 (河出文庫)
ロード・ダンセイニ 中野 善夫
河出書房新社 2006-03-04

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ロード・ダンセイニ『悪夢』 (吉村満美子訳『最後の夢の物語』河出文庫収録)
 やり手の弁護士で知られる男は、ある夢を見たために寝込んでしまいます。その夢では、犯罪がこの先5年間全く起こらないことが予言されたというのですが…。
 夢のせいで仕事にあぶれてしまうと思い込み、絶望する男。ユーモアと皮肉にあふれた物語です。



4257620137魔の配剤―イギリス恐怖小説傑作選 (ソノラマ文庫―海外シリーズ)
オスカー・クック 熱田 遼子
朝日ソノラマ 1985-03

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アラン・ワイクス『悪夢』(熱田遼子訳 ハーバート・ヴァン・サール編『魔の配剤』ソノラマ文庫海外シリーズ収録)
 狂気に囚われた男が、悪夢の中で見る謎の男。信頼できる精神科医のもとで回復したかに見えますが、再び悪夢が始まり…。
 精神を病んだ男が主人公で、前編悪夢のような作品です。



4488523056ラヴクラフト全集〈5〉 (創元推理文庫)
H.P. ラヴクラフト 大滝 啓裕
東京創元社 1987-07-10

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H・P・ラヴクラフト『魔女の家の夢』(大瀧啓裕訳『ラヴクラフト全集5』創元推理文庫)
 かって魔術が行われていたと言われる家に下宿することになった男は、悪夢を見るようになります。夢には、老婆とそれに付き従う謎の生き物が現れますが…。
 ラヴクラフト作品の中では戦慄度の高い作品です。



488375233X塔の中の部屋 (ナイトランド叢書)
E・F・ベンスン 中野 善夫
書苑新社 2016-07-25

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E・F・ベンスン『塔の中の部屋』(中野善夫、圷香織、山田蘭、金子浩訳『塔の中の部屋』アトリエサード収録)
 主人公は、たびたび悪夢に悩まされていました。悪夢で見る「塔の中の部屋」を恐れ続けた主人公は、現実に悪夢通りの部屋に入ってしまうことになりますが…。
 悪夢が現実になるという、禍々しい雰囲気に満ちた怪奇小説。



4488547109黒いカクテル (創元推理文庫)
ジョナサン・キャロル 浅羽 莢子
東京創元社 2006-07-11

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ジョナサン・キャロル『卒業生』(浅羽莢子訳『黒いカクテル』創元推理文庫収録)
 愛する妻子を持ち、順風満帆な32歳のルイスは、今でも時折、みじめだった高校時代の夢を見ます。ただ、すぐに目が覚めることがわかっているので、安心感がありました。しかし、今回の夢は違います。いくら経っても目が覚めないのです。鏡に映った顔は、現在の32歳のルイスの顔。しかも周りの同級生たちは、それにも全く頓着しないのです…。
 大人になっても見る、子供時代の悪夢。誰でも覚えがあるような感覚をうまく小説化した作品。夢の中の世界が、現実とつながっているという暗示で終わる結末は効果的です。



4882930552赤い酒場 (ふしぎ文学館)
半村 良
出版芸術社 1993-05

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半村良『夢の底から来た男』『赤い酒場』出版芸術社収録)
 平凡なサラリーマンである加藤一郎は、妻子とともに幸福な生活を送っていましたが、ある時を境に、悪夢を見るようになります。それは両手を血まみれにした男がおぼろげにあらわれるというものでした…。
 次々と起こる不条理な出来事の原因は一体何なのか? 夢が重要な役目を果たすサイコ・スリラーです。



B009KZ5QYG目撃者は月 (光文社文庫)
都筑 道夫
光文社 2005-10-27

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都筑道夫『夢買い』『目撃者は月』光文社文庫収録)
 悪夢を見続けていた男は、友人である老人にその夢を売らないかともちかけられ、夢を売ることにします。翌日に老人は殺され、男は殺人の容疑者になってしまいますが…。
 ジョン・コリア『夢判断』をはじめ、夢に関する物語が多く言及されるなど、全編これ夢のオンパレードといった趣の幻想小説です。



4091921817神の左手悪魔の右手 (1) (小学館文庫)
楳図 かずお
小学館 1997-01

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楳図かずお『錆びたハサミ』『神の左手悪魔の右手』小学館文庫収録)
 主人公である少年想の姉が、錆びたハサミを拾ったことから、数十年前に起きた殺人鬼の悪夢に苦しめられます。姉の学校の新任教師が、その殺人鬼なのではないかと考える想でしたが…。
 夢の中で超常能力を発揮する少年想が活躍するシリーズの第一エピソード。予知夢など、どのエピソードでも夢が重要な役目を果たすのですが、とくに『錆びたハサミ』では、全編、夢が重要なテーマになっています。
 主人公が見ている悪夢の世界と、昏睡状態になった姉の体内とがつながるなど、作者の圧倒的な想像力が発揮されています。



B006QJSW4K夢の中の恐怖 [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル 2012-05-09

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チャールズ・クライトンほか監督『夢の中の恐怖』(映画)
 家の修理を依頼された建築家クレイグは、ある屋敷に赴きます。中に案内されたクレイグは、数人の男女が居間に集まっているのを見て、呆然とします。なぜなら、彼らの顔は主を含め、クレイグが何度も見る悪夢に登場していた人物と同じだったからです。そのことを口にすると、皆は、おのおの体験したという、不思議な話を始めますが…。
 怪奇話を集めたホラーオムニバス映画。古いモノクロ映画ですが、今観てもなかなか面白い作品です。H・G・ウェルズとE・F・ベンスン原作作品のエピソードが含まれます。


●未来の夢
 はるか未来の社会を夢に見てみると…。あまり良い世界はないようです。



B007TAKL8K世界最終戦争の夢 ウェルズSF傑作集
H・G ウェルズ 阿部 知二
東京創元社 1970-12-18

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H・Gウェルズ『世界最終戦争の夢』(阿部知二訳『世界最終戦争の夢 ウェルズSF傑作集』創元SF文庫収録) ある男が、毎夜見るという近未来社会の夢。その世界で指導者的立場にあった彼は、恋人のために仕事を捨て逃亡します。その間に、祖国では戦争の危険が迫っていましたが…。
 夢の中で、一生を過ごしたという男の物語。戦争の描写がリアルです。



4022141239伊藤潤二傑作集9: 墓標の町 (朝日コミックス)
伊藤潤二
朝日新聞出版 2013-06-20

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伊藤潤二『長い夢』(朝日ソノラマほか)
 眠るたびに、徐々に夢が長くなっていく男性。やがて眠っている男性の体も夢の長さに応じて変化していきますが…。
 「長い夢」を見続ける男を描いた物語。夢の中身自体は直接描写しないところが技巧的。



4198601275ゆめのおはなし (BOOKS FOR CHILDREN)
クリス・ヴァン オールズバーグ Chris Van Allsburg
徳間書店 1994-06

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クリス・ヴァン・オールズバーグ『ゆめのおはなし』(さいごうようこ訳 徳間書店)
 ウォルターは、夢の中で未来に行きますが、そこは考えていた未来とは全く違う世界でした。理想社会どころか、荒涼とした世界だったのです…。
 ちょっとエコを考えさせるテーマの絵本です。


4309262317まさ夢いちじく (The Best 村上春樹の翻訳絵本集)
クリス・ヴァン・オールズバーグ Chris Van Allsburg
河出書房新社 1994-09-22

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クリス・ヴァン・オールズバーグ『まさ夢いちじく』(村上春樹訳 河出書房新社)
 冷血漢の歯科医が手に入れた「いちじく」は、現実が見た夢の通りになるという不思議な力を持つものでした。金持ちになる夢を見ようと考える男でしたが…。
 夢が正夢になるという魔法のいちじくをめぐる、ブラックな絵本。


●予知夢について
 将来の出来事を知らせる夢。しかし、それがわかっても予知夢の通りになってしまうことが多いようです。


415041081X幻想と怪奇 おれの夢の女 (ハヤカワ文庫NV)
仁賀 克雄
早川書房 2005-04-21

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リチャード・マシスン『おれの夢の女』(秋津知子訳 仁賀克雄編『幻想と怪奇 おれの夢の女』ハヤカワ文庫NV収録)
 その女には予知夢を見る能力がありました。それに目を付けた男は、子供が危険な目に合うのを防ぐ代わりにと、母親に金銭を要求することを考えますが…。
 善人である能力者の女は、能力を悪用しようとする男をいさめようとしますが…。
 ユニークな「夢」の使い方をした作品です。


ステファニー・ケイ・ベンデル『死ぬ夢』(青海恵子訳『ミステリマガジン1986年10月号』早川書房収録)
 私立探偵のもとに現れた中年女性は、夫が自分を殺そうとしていると告白します。その理由は夢。過去の事例から、自分の予知夢が必ず当たることを確信する女性は、しかし夫も自分も心から愛し合っており、殺人を犯す理由が思い当たらないというのです…。
 動けば動くほど予知通りになってしまうという、異色のラブ・ストーリーです。



4152087099炎のなかの絵 (異色作家短篇集)
ジョン コリア John Collier
早川書房 2006-03

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ジョン・コリア『夢判断』(村上啓夫訳『炎のなかの絵』早川書房収録)
 精神科医に相談に訪れた男は、自らの見る悪夢について話します。毎日1階ずつ高層ビルの上から落下していくというその夢は、落ちている間、それぞれの階の様子まで見えるというのです。そして昨夜は、今二人がいる精神科医の部屋の様子も見えたというのですが…。
 毎日少しづつ落下していくという、ユニークなシチュエーションの悪夢を扱っています。夢が現実になるという作品なのですが、結末で別の視点からの夢も登場するという複雑な構成の作品。



4336025398世界幻想文学大系〈33〉十九世紀フランス幻想短篇集
J・ロラン 川口 顕弘
国書刊行会 1983-12

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アベル・ユゴー『死の刻限』(川口顕弘訳『19世紀フランス幻想短篇集』国書刊行会収録)
 青年士官がやってきた修道院の廃墟では、司祭がミサを執り行っていました。青年が一緒に祈りを捧げると、司祭は自分が煉獄に囚われていた魂であり、青年のおかげで解放されたことを話します。ついては一つだけ願いを叶えたいという司祭に対し、青年は自らの命がいつまであるかを教えてほしいと頼みます…。
 次々と訪れる幸福にもかかわらず、自らの命が短いことを知った青年は人生を楽しめない…という話。ちなみに作者は、ヴィクトル・ユゴーの兄にあたる人。



B00UBPIN76夕暮れをすぎて (文春文庫)
スティーヴン・キング 白石 朗・他
文藝春秋 2009-09-10

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スティーヴン・キング『ハーヴィの夢』(深町眞理子訳『夕暮れをすぎて』文春文庫収録)
 初老の男ハーヴィは、三人の娘もすでに成人し、妻と二人で暮らしていました。ある朝、ハーヴィは見たばかりだという夢の話を妻に始めます。その夢では、末娘から突然電話があり、交通事故があったというのですが、事故にあったのが誰なのかは、はっきりしないというのです…。
 男が見た夢は正夢なのか? 夢の内容とその暗示だけで構成される短篇ですが、終始、緊張感のある作品です。



4334761097頭痛と悪夢―英米短編ミステリー名人選集〈4〉 (光文社文庫)
ローレンス ブロック Lawrence Block
光文社 1999-05

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ローレンス・ブロック『頭痛と悪夢』(宮脇孝雄訳『頭痛と悪夢』光文社文庫収録)
 恋人の死をきっかけに予知能力に目覚めた女性は、占いで生計を立てていました。ある時、強烈な頭痛と悪夢に襲われた女性は、夢をヒントに、誘拐された子供の事件を解決します。有名になった女性のもとには仕事の依頼が舞い込みますが、再び、頭痛と悪夢が襲ってきます…。
 予知夢を見る女性の物語。道具立ては幻想小説風なのですが、ミステリとして展開するところがユニークな作品です。


●不思議な眠り
 眠りから解放された人々。目覚めない人々。不思議な「眠り」を描いた作品を集めてみました。


4488629059時の声 (創元SF文庫)
J・G・バラード 吉田 誠一
東京創元社 1969-05-02

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J・G・バラード『マンホール69』(創元SF文庫『時の声』収録)
 実験的に『睡眠』を奪い、一日中意識を保てるようになった男たちを描く作品です。覚醒し続ける男たちの意識の変容を描いているのですが、この展開が異様で、まるでホラー作品。



4594068057予期せぬ結末1 ミッドナイトブルー (扶桑社ミステリー)
ジョン・コリア 井上 雅彦
扶桑社 2013-04-30

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ジョン・コリア『眠れる美女』(山本光伸訳 井上雅彦編『予期せぬ結末1 ミッドナイトブルー』扶桑社ミステリー収録)
 慎ましやかに暮らす事を最上とする男は、見世物として公開されていた「眠れる美女」に心を奪われてしまいます。多大な金を払い、彼女を引き取った男は、美女の目を覚まさせることに成功しますが…。
 理想の美女の、実際の性格に幻滅する男を描いています。夢と現実の落差を描いた作品です。



4336043469独逸怪奇小説集成
竹内 節
国書刊行会 2001-09

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ヘルムート・M・バックハウス『眠れる美女』(前川道介訳『独逸怪奇小説集成』国書刊行会収録)
 夫婦がふと立ち寄ることになった旅館は、もてなしも上々の宿でしたが、やたらと床が冷えるのが気になっていました。宿の主人は地下に氷室があると案内をしてくれますが、氷室には、氷漬けになった人間が何人も立っていたのです…。
 宿の主人は狂気に囚われているのか? どこかとぼけた味のある幻想短篇。



4309801099ポドロ島 (KAWADE MYSTERY)
レズリー・ポールズ ハートリー L.P. Hartley
河出書房新社 2008-06

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L・P・ハートリー『合図』(今本渉訳『ポドロ島』河出書房新社収録)
 殺されそうになる夢を見たら、壁を叩くからこっちに来てね。幼い妹にそう頼まれた「僕」は、ある夜、壁を叩く音を耳にします。ためらいつつも、妹自身のためにならないと、「僕」は音を無視します。やがて音は小さくなっていきますが…。
 隣の部屋で寝ている妹が壁を叩く音を無視する兄、という、ただそれだけの話ではあるのですが、何やら想像力を喚起する掌編です。



4150117047ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)
ナンシー クレス Nancy Kress
早川書房 2009-03-31

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ナンシー・クレス『ベガーズ・イン・スペイン』『眠る犬』(山岸真訳『ベガーズ・イン・スペイン』ハヤカワ文庫SF収録)
 遺伝子改変により、睡眠を必要としない子供たちが生まれます。高い知性と美しい容姿など、優れた能力を持つ無眠人は、やがて一般人から迫害を受けますが…。
 高い能力を持つ新人類が迫害される…というミュータントテーマを現代風に描いた作品。



4894191954奇想遍歴
マルセル ベアリュ Marcel B´ealu
パロル舎 1998-07

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マルセル・ベアリュ『諸世紀の伝説』(高野優訳『奇想遍歴』パロル舎収録)
 かって、人間は夢の中でしか死なない時代がありました。ある日、男が眠りから起きず動かくなったのに気付き、人々は困惑します。人々は男の身体を地面に植えてみますが…。
 「死」はどのように生まれたのか?を描く寓話作品。死体を植えてみたりと、展開が妙にシュールな作品です。


レオ・ペルッツ『アンチクリストの誕生』(垂野創一郎訳 ビブリオテカ・プヒプヒ)
 生まれたばかりの赤ん坊がアンチクリストだという夢を信じ込んだ男は、赤ん坊を殺そうとします。自らの手では無理だと悟った男は、知り合いの窃盗団に殺害を依頼します。それを知った母親は殺害を防ごうとします。互いに後ろ暗い過去をもちながらも愛し合っていた夫婦の愛憎の行方は…?
 18世紀のドメスティック・サスペンス。舞台となった土地や時代の描写も生き生きとしており、ペルッツの達者な筆が味わえる中篇小説です。



4902075164ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語 (Zoran Zivkovic's Impossible Stories)
ゾラン・ジフコヴィッチ 巽 孝之
Kurodahan Press 2010-10-15

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ゾラン・ジフコヴィッチ『火事』(山田順子訳『ゾラン・ジフコヴィッチの不思議な物語』黒田藩プレス収録)
 司書の女性は、夢の中で、古代の図書館らしい建物が火事に見舞われるという情景を目撃します。翌朝、勤務先の図書館でコンピュータのスクリーンに現れたのは、夢と同じ図書館の景色。その内部には、失われたはずの古代の大作家の原稿がいくつも並べられていました…
 結末を予期させつつも、神話的な風格の漂う作品です。



4420137509夢みる機械 (ジャンプスーパーコミックス)
諸星 大二郎
集英社クリエイティブ 1993-08

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諸星大二郎『夢みる機械』『夢みる機械』ジャンプスーパーコミックスほか収録)
 少年は、いつの間にか周囲の人々に異変が起きているのに気付きます。両親も教師もどこかがおかしいのです。ある日、階段から落ちた母親がばらばらになり、それが本人そっくりのロボットだったことに気付きます。他の大人もまた大部分が人間そっくりの機械に入れ替わっていたのです…。
 本物の人間たちはどこに行ったのか? フィリップ・K・ディック的なテーマのSFマンガ作品。


●夢に潜り込む
 本来中身を知ることのできない他人の夢。そこに潜り込むことにより、人の秘密を知ることができるのです…。


世界ユーモアSF傑作選 1 (講談社文庫)
世界ユーモアSF傑作選 1 (講談社文庫)浅倉 久志

講談社 1980-03
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ピーター・フィリップス『夢は神聖』(浅倉久志訳『世界ユーモアSF傑作選1』講談社文庫収録)
 想像力を使いすぎて妄想の世界に入ってしまった作家を救うため、記者は機械を使い、作家の心の世界に侵入しますが…。
 現実的なガジェットや人物で、妄想の世界を壊そうとする記者と、それらを自分の世界の「魔法」として解釈し、自らの世界に取り込んでしまう作家とのやりとりが、ユーモラスに描かれます。



4101171408パプリカ (新潮文庫)
筒井 康隆
新潮社 2002-10-30

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筒井康隆『パプリカ』(新潮文庫)
 精神医学研究所に勤める千葉敦子は、研究者兼サイコセラピスト。彼女にはもうひとつの秘密の顔がありました。その正体は、他人の夢の中に侵入する夢探偵「パプリカ」。しかし、装置の開発者である時田と敦子は、夢を共有できる装置「DCミニ」を奪われてしまいます…。
 人の夢の中に入り込むという「サイコダイブ」ものの代表的作品。アニメ映画版もあり。



B003EVW55Aマトリックス 特別版 [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ 2010-04-21

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ウォシャウスキー監督『マトリックス』シリーズ(映画)
 トーマス・アンダーソンは、大手ソフトウェア会社に勤めるプログラマーでしたが、彼には、天才ハッカー「ネオ」という、もう1つの顔がありました。
 トリニティと名乗る謎の女性と出会ったトーマスは、彼女の仲間のモーフィアスを紹介され、この世界はコンピュータによって作られた仮想現実だということを告げられます…。
 仮想現実世界に囚われた人類を救うために戦う…というシリーズ作品。仮想現実だけに、現実ではありえない動きやアクションが可能というところが見所。



B00005LJWFザ・セル デラックス版〈特別プレミアム版〉 [DVD]
パイオニアLDC 2001-07-25

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ターセム・シン監督『ザ・セル』(映画)
 人間の内面の世界に入り込むことができる機械が開発された世界。小児精神科医キャサリンは、昏睡状態に陥った連続殺人犯の内面に侵入する必要に迫られます。彼に誘拐された女性がタイマー仕掛けで溺死させられる危険があるため、女性が閉じ込められている場所を犯人から聞き出そうというのですが…。
 殺人犯の内面世界の描写が話題になった作品。子供のような部分と、狂気に彩られた部分とが同居する世界観が魅力です。



B016PLAFCKインセプション(初回限定生産) [DVD]
クリストファー・ノーラン
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント 2015-12-16

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クリストファー・ノーラン監督『インセプション』(映画)
 コブは、標的の夢に進入し、そこから情報を引き出す産業スパイ。実業家サイトウの依頼により、ライバル企業の経営者の息子ロバートの夢に潜り込み、父親の会社を解散させるための考えを無意識に埋め込もうと計画します。
 コブは、仲間とともにロバートの夢の中に入り込みますが、ふとした手違いから、夢のさらに深層へと潜り込んでいくことになります…。
 夢の中の世界を描いた映像作品としては、空前絶後の作品。入れ子の形になった夢の階層構造が、複雑かつ魅力的に描かれます。ボルヘスからの影響もあるとか。


●異世界の夢
夢で見る世界は、現実とは異なる、もう一つの別世界なのです。


B000J94AWG世界SF全集〈第32巻〉世界のSF(短篇集) (1969年)
早川書房 1969

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アラン・E・ナース『悪夢の兄弟』(南山宏訳 福島正実編『世界SF全集32 世界のSF現代編』収録)
 男が気がつくと、そこはトンネルの中でした。自分が何者か、なぜこの場所にいるのか記憶が全くないのです。突如現れた列車に追い立てられた男は、何とか危機を避けますが、気がつくと、そこは砂漠に変わっていました…。
 自分は何者なのか? なぜこんなところにいるのか? 記憶喪失の男が次々と不条理な出来事に出会うサスペンスSF。



4091913377バルバラ異界 1 (小学館文庫 はA 41)
萩尾 望都
小学館 2011-12-15

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萩尾望都『バルバラ異界』(小学館文庫)
 プロの夢先案内人である渡会時夫は、7年間眠り続ける少女、青羽の夢の探索を依頼されます。少女の夢の中には、人が空を飛べ不老不死であるユートピアのような世界「バルバラ」が存在していました。少女の夢の世界のはずの「バルバラ」が、自分が創った空想の島だと、渡会の息子キリヤは言い出しますが…。
 夢の世界を扱った本格的なファンタジー作品。魅力的ではあるものの、現実とは全く別の世界のはずの「バルバラ」と、現実とがリンクしていく後半の展開は圧巻です。



4840102732ダークグリーン (1) (MF文庫)
佐々木 淳子
メディアファクトリー 2001-04

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佐々木淳子『ダークグリーン』(MF文庫)
 世界中で「R-ドリーム」と呼ばれる夢の世界が現れ始めます。その夢の中で、人々は「ゼル」と呼ばれる謎の侵略者たちと戦っていたのです。「R-ドリーム」内で死ねば、現実でも死んでしまうのです。
 浪人生である西荻北斗は、「R-ドリーム」で戦士ホクトとなり、「R-ドリーム」最強と言われる少年リュオン、金色の肌の少女ミュロウらと共にゼルと戦うことになりますが…。
 夢の世界を舞台にしたファンタジー作品です。現実世界と夢世界で、性別や年齢までも違う人間がいたりするのが面白いところ。夢の世界の秘密が環境問題に絡めて語られるなど、意欲的な作品です。



B000J6JRT0Who!―超幻想SF傑作集 (1983年) (シティコミックス)
佐々木 淳子
東京三世社 1983-09

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佐々木淳子『赤い壁』『Whoフー 超幻想SF傑作集』東京三世社マイ・コミックス)
 夢の世界に迷い込み、もとに戻れなくなった少女。彼女は、謎の少年の力を借り、夢の世界から逃げ出そうとしますが…。
 少女は、いつの間にか他人の夢の中へと紛れ込んでしまいます。恋する青年、病気の幼児、ひとびとの夢の中はすべてつながっているのです…。
 のちの代表作『ダークグリーン』につながるようなテーマを内包した作品です。


●夢さまざま
 その他、夢に関するいろいろな作品を集めてみました。



4309462545時と神々の物語 (河出文庫)
ロード・ダンセイニ 中野 善夫
河出書房新社 2005-09-03

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ロード・ダンセイニ『予言者の夢』(中野善夫訳『時と神々の物語』河出文庫収録)
 神を呪っている男は夢を見ますが、そこでは神々の巨大な骨が散らばっていました…。
 「神は死んだ」ということを、神の巨大な骨というイメージで表したユニークな作品。皮肉な結末も気が利いています。



4003101197夢十夜 他二篇 (岩波文庫)
夏目 漱石
岩波書店 1986-03-17

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夏目漱石『夢十夜』『夢十夜 他二篇』 岩波文庫ほか収録)
 作者の夢を小説化したという作品。恐怖度では一番の第三夜、ブラックユーモアあふれる第十夜が印象に残ります。



4309405347ねむり姫―澁澤龍彦コレクション 河出文庫
澁澤 龍彦
河出書房新社 1998-04

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澁澤龍彦『夢ちがえ』『ねむり姫』河出文庫収録)
 生まれつき耳と口が不自由な姫が、田楽の一行の男に恋をします。姫は男を夢見続け、その結果、男の夢の中には姫が現れるのです。男の恋人である女は、相談した比丘尼の言われるまま、夢の内容を再現することによって、夢を取り上げてしまおうと考えますが…。
 人の夢を横取りしてしまおうという「夢取り」を扱っています。しかし手順を間違えたことから、悲劇が起こってしまうという作品。



4336035865アラビアン・ナイトメア (文学の冒険シリーズ)
ロバート・アーウィン 若島 正
国書刊行会 1999-09

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ロバート・アーウィン『アラビアン・ナイトメア』(若島正訳 国書刊行会)
 15世紀エジプト、スパイとしてカイロに潜り込んだ男バリアンは、いつの間にか眠って悪夢を見るという謎の病にかかってしまいます。眠りの教父〈猫の父〉、語り部ヨル、娼婦ズレイカなど、不可思議な人物との交流のなか、どこからどこまでが現実で夢なのか、バリアンはわからなくなっていきます…。
 序盤から、主人公が夢の中にいるような状態のため、物語全体が曖昧模糊としていて、物語の本筋が全くつかめません。物語の萌芽が現れても、それらあまり展開しないのですが、後半、猿と魔法を中心としたエピソードが登場してからが圧巻。登場人物の話の中の登場人物の話の中の…と入れ子状に話が展開していく部分は目眩がするようです。



4488070701夢宮殿 (創元ライブラリ)
イスマイル・カダレ 村上 光彦
東京創元社 2012-02-28

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イスマイル・カダレ『夢宮殿』(村上光彦訳 創元ライブラリ)
 帝国の「夢宮殿」では、動乱を未然に防ぐため、国民の見る夢を収集、管理していました。名門出の主人公、マルク=アレムは、親戚の斡旋で「夢宮殿」に就職することになります。その仕事内容は、夢の内容を「選別」し、その夢にどんな意味があるのか解釈するというものでした。マルク=アレムは当人の能力とは無関係に、次々と出世してゆきますが…。



4582287360夢みごこち
フジモト マサル
平凡社 2011-01-30

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フジモトマサル『夢みごこち』(平凡社)
 1篇1篇が終わるごとに、それが夢だった…という展開の連作短篇マンガ。いわゆる『夢オチ』作品といえるのですが、それが毎回繰り返されることによって、物語の舞台が現実なのか夢なのか判然としなくなってきます。
 登場人物たちは、著者独特のかわいいタッチで描かれる動物で表現されているのですが、夢がなかなか終わらない…という、ある種悪夢のような展開とのミスマッチが、何ともいえない雰囲気を生み出しています。
 それぞれの短編も、世界すべてが自分の夢だと思っている男が、夢警察に囚われる話だとか、空を飛ぶ夢を見ている女がラジオ番組に電話をかけてくる話、人格改造システムの実験によって、記憶を奪われてしまう話など、《異色作家短篇集》を読んでいるような味わいが楽しめます。



4575714127夢を見た (双葉文庫)
岸 浩史
双葉社 2014-04-10

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岸浩史『夢を見た』(双葉文庫)
 一編がそれぞれ2ページ程度で描かれるファンタジーマンガ作品。明確なストーリーがあるわけではなく、夢で見るような、ある種不条理なイメージを視覚化したものが描かれます。ただ、イメージ的にもそれを見て楽しめるエンターテインメントに昇華しているのが素晴らしいですね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

夢と眠りの物語 その2
●夢見られる世界
 一つの島、一つの都市、果ては、世界そのものもまた、夢見られる対象であるのです。


4488637043眠れる人の島 (創元SF文庫)
エドモンド・ハミルトン 中村 融
東京創元社 2005-12-17

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エドモンド・ハミルトン『眠れる人の島』(中村融訳『眠れる人の島』創元SF文庫収録) 
 船が遭難し、ひとりだけ生き残ったギャリソンは、漂流の後、奇妙な島にたどりつきます。ギャリソンはそこで美しい娘マーと出会いますが、彼女の話では、この島にあるすべてのものは〈眠れる人〉の見ている夢であり、彼が目覚めるとすべては消えてしまうというのです…。
 奇想天外かつ美しいファンタジー。哀愁に満ちた結末も印象的です。



415020005Xペガーナの神々 (ハヤカワ文庫FT)
ロード ダンセイニ S. H. Sime
早川書房 1979-03-13

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ロード・ダンセイニ『ぺガーナの神々』(荒俣宏訳 ハヤカワ文庫FT)
 すべての神々の生みの親であるマアナ・ユウド・スウシャイは深い眠りについており、鼓手スカアルの叩く太鼓の音がしている限り目覚めないといいます。スカアルの太鼓が鳴り止むと、マアナは目を覚まし、すべてのものが消えてしまうと…。
 ダンセイニの創作神話「ぺガーナ」の設定はなんとも魅力的です。ペガーナのすべては、大神マアナの見ている夢であり、マアナが目覚めるとすべては消えてしまうのです。



4309462545時と神々の物語 (河出文庫)
ロード・ダンセイニ 中野 善夫
河出書房新社 2005-09-03

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ロード・ダンセイニ『ブウォナ・クブラの最後の夢』 (吉村満美子訳『時と神々の物語』河出文庫収録
 アフリカにやってきて、その地で死んだ男。その精神力から、原住民からブウォナ・クブラと呼ばれた男は、死後も恐れられていました。彼が残した「最後の夢」は、いまだに力を保ち続け、幻の街を生み出すというのですが…。
 街を夢見る男の物語。死後もその幻は続く、というファンタジーです。



4594069223予期せぬ結末2 トロイメライ (扶桑社ミステリー)
チャールズ・ボーモント 井上 雅彦
扶桑社 2013-09-25

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チャールズ・ボーモント『トロイメライ』(村上博基訳 井上雅彦編『予期せぬ結末2 トロイメライ』扶桑社ミステリー収録)
 弁護士は、死刑囚の言葉に驚きます。この世界は自分が見ている夢に過ぎず、自分が死んだら世界は消滅する…と。処刑が迫る中、弁護士と友人は死刑囚の言葉について考えますが。
 世界は一人の人間の見ている夢に過ぎない…という話。



4334753108薔薇とハナムグリ シュルレアリスム・風刺短篇集 (光文社古典新訳文庫)
モラヴィア 関口 英子
光文社 2015-05-12

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アルベルト・モラヴィア『夢に生きる島』(関口英子訳『薔薇とハナムグリ シュルレアリスム・風刺短篇集』光文社古典新訳文庫収録)
 その島は、王女とモグラの間に生まれたという怪物によって支配されていました。生まれてから一度も目覚めたことのない怪物には、ある能力がありました。それは彼の見る夢の通りに、島の住民は操られてしまうというものでした。ある人間が死ぬ夢を見れば、確実にその人間は死んでしまうのです。住人たちは戦々恐々と暮らしていましたが…。
 まさに、何が起こるか分からない恐るべき社会なのですが、王である怪物が見る夢には法則性などなく「いい夢」も「悪い夢」もあるのです。
 独創的なブラック・ユーモア作品です。


ダニエル・F・ガロイ『今宵、空は落ち…』(山田忠訳『SFマガジン1985年4月号』収録)
 若き実業家ブレントは、数年前まで無一文だった自分の人生がうまく行き過ぎることに疑念を抱いていました。しかも、彼が危機に陥ると、何者かが現れて手助けをしてくれるのです。何らかの組織に自分は見張られているのではないかと考えるブレントでしたが…。
 この世界の「秘密」とは? 唖然とするような結末が待っています。



4488655025ドリーム・マシン (創元SF文庫)
クリストファー・プリースト 中村 保男
東京創元社 1979-07

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クリストファー・プリースト『ドリーム・マシン』(中村保男訳 創元SF文庫)
 未来予測のために、ある実験が開始されます。それは、数十人の男女の無意識を神経催眠装置を通して投射することによって、150年先の未来社会を創造するというものでした。いずれ帰還するはずのその世界に留まろうとする男が現れたことから、事態は急変しますが…。
 仮想社会ものに分類される作品。未来社会の描写は今となっては古いかも。



4150307369目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)
小林 泰三
早川書房 2003-09

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小林泰三『目を擦る女』『目を擦る女』ハヤカワ文庫JA収録)
 引っ越しの挨拶に訪れた女性は、隣人の女がやたらと目を擦っているのに気がつきます。女は、自分は別世界で夢を見ており、今、自分たちがいる世界は全て自分の夢なのだと話しますが…。
 世界は自分が見ている夢、なのですが、それがずっと見ているものではなく、偶然夢見た世界に過ぎないという話。自分の知り合いが、現実世界とは別の役割で夢に登場しているという設定もユニークです。



B00006C1W0うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー [DVD]
高橋留美子
東宝 2002-09-21

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押井守監督『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(映画)
 学園祭前日、友引高校では生徒たちが準備で泊り込むほどの忙しさでした。そんななか、教師の「温泉マーク」は、違和感を感じ、同じ1日が何度も繰り返されているのではないかという疑いを抱きます。「温泉マーク」によって無理やり帰宅させられた生徒たちは、バスや電車で帰ろうとするものの、町から出られなくなっていることに気づきます。
 一同は、クラスメイトの面堂所有のハリアーで空から町を脱出しようと考えますが…。
 『うる星やつら』のキャラクターたちが、閉鎖された町に閉じ込められますが、一部の人間を除き、その世界を楽しみ始めてしまう…という物語です。
 閉鎖された世界にも関わらず、衣食住には困らないという夢のような世界が、文字通り「夢」であることがわかる展開は、じつにスリリングです。



4835400909天のろくろ
アーシュラ・K・ル=グウィン 脇 明子
復刊ドットコム 2006-04-28

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アーシュラ・K・ル・グィン『天のろくろ』(脇明子訳 復刊ドットコム)
 精神科医ヘイバー博士は、奇妙な患者の訪問をうけます。ジョージ・オアと名乗る青年の症状とは、自分が見た夢が現実になるという妄想でした。
 目覚めると、夢に見たとおりに現実が改変されており、周りの人々の記憶もつじつまの合うように変わっているというのです。しかも、夢はオア自身、コントロールできず、無意識が世界を変えていることに恐怖を抱いていました。
 実験の結果、オアの能力が本物だと確信したヘイバー博士は、オアの力を使い、世界を改変しようと目論みますが…。
 主人公の能力のスケールがとんでもない作品です。正夢になるとかいうレベルではなく、世界そのものが作り替えられてしまいます。ただ、能力そのものが主眼になるというよりは、世界改変の是非についての、ヘイバーとオアの対立と葛藤が中心になっています。



B000KLNS3ALathe of Heaven -天のろくろ- [DVD]
アーシュラ・K.ル=グウィン
トランスフォーマー 2007-02-02

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フィリップ・ハース監督『レイス・オブ・ヘブン 天のろくろ』(映画)
 ジョージ・オア青年は、精神科医の治療を受けることになります。担当医となったヘイバー博士は、ジョージから驚くべきことを聞き出します。ジョージは、見た夢によって現実を改変することができるというのです。ただし夢の内容は自分で決めることはできません。夢を見るたびに、思いもかけぬ方向に、現実が少しづつ変わっているのだと。
 博士は、夢の内容を操作する「増幅機」を使って、ジョージを治療しようと考えますが、治療を続けるうちに、ジョージの能力に気付きはじめます。ジョージの能力を利用して、自らの富と権力を増大させようと計る博士の意図に気付いたジョージは、弁護士ヘザーの力を借り、ヘイバーから逃げ出そうとします…。
 ストーリーや登場人物などを始め、ル・グィンの原作をかなり忠実に映像化しています。現実世界の改変がテーマですが、改変そのものに特殊効果はほとんど使われず、その代わりに、ジョージが目覚めるたびに、ヘイバー博士や秘書の服装、性格までもが一変していく、という趣向がうまく使われています。見た目のスペクタクルは皆無に等しいのですが、その静謐な雰囲気は、原作をうまく映像化しており、味のある秀作といえます。


●夢の中の家
 夢の中で見た夢は実在するのか? 現実とリンクする夢の魅力を描いた作品を集めてみました。


4061372122世界ショートショート傑作選 1 (講談社文庫)
各務 三郎
講談社 1978-11

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アンドレ・モーロワ『夢の家』(矢野浩三郎訳 各務三郎編『世界ショートショート傑作選1』講談社文庫収録)
 何度も夢に現れる美しい家。女性は現実にその家が存在すると信じ、いろいろな場所に出かけるたびに、その家を探し続けます。とうとう同じ家を現実に見つけ、ドアをたたきますが、その家の住人は「幽霊」が出るために引っ越してしまったというのです…。
 夢と現実がリンクする、そのつながりが見事な掌編です。



4003227913イギリス民話集 (岩波文庫)
河野 一郎
岩波書店 1991-10-16

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『夢の家』(河野一郎編訳『イギリス民話集』岩波文庫収録)
 女性がたびたび夢に見る家は美しく、何度も家の中を探索したため、まるで自分の家のように感じていました。たまたま、安く売りに出ているという家を見に行ったところ、それは夢に見る家そのものでした。こんなにいい家がなぜ安く売られているのか聞いた女性が聞いた理由とは…。
 ディテールは異なっているものの、モーロワ『夢の家』とほぼ同じストーリーラインの民話。



4087821021星の時計のLiddell (1)
内田 善美
集英社 1985-09

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内田善美『星の時計のLiddell』(全3巻 集英社)
 青年ヒューは、長い間、同じ夢を見ていました。そこはいつも必ず同じ場所、ヴィクトリアン・ハウスの屋根裏部屋なのです。そしてその家で、彼は美しい少女と出会います。少女の名は「リデル」。彼女は、彼のことをなぜか「幽霊さん」と呼びます。
 行ったことのないはずの家を、なぜこうも繰り返し夢に見るのだろうか? 裕福な友人ウラジーミルの助けを借り、二人は夢の中の家を探すために、旅に出ますが…。
 あまり展開に動きはなく、全体の3分の2ぐらいが「夢」に対する、哲学的な解釈や人々の考えを描写するのに費やされています。ただイメージの美しさ、文学的な余韻は素晴らしい作品です。上記モーロワ作品、民話の『美しい家』と設定が似ています。



4001140950マリアンヌの夢 (岩波少年文庫)
キャサリン ストー マージョリ=アン・ウォッツ
岩波書店 2001-11-16

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キャサリン・ストー『マリアンヌの夢』(猪熊葉子訳 岩波少年文庫)
 10歳の少女マリアンヌは、長引く病気で臥せっていました。古い裁縫箱の中から見つけた鉛筆で画帳に絵を描くと、それが実際に夢の中に現れることを知り、いろいろなものを描き込みます。家庭教師から、自分と同じような境遇の少年マークの事を聞き、興味を抱いたマリアンヌは、マークのことを絵に描き込もうと考えますが…。
 マリアンヌの力は何でもありに見えますが、描き込んだ内容が夢のなかに登場するだけで、夢の中で自分自身は特に何もできません。怒って描き込んだ「あるもの」に襲われる後半は非常に怖いです。


B00GCVWX74ペーパーハウス/霊少女 [DVD]
IVC,Ltd.(VC)(D) 2014-01-24

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バーナード・ローズ監督『ペーパーハウス/霊少女』(映画)
 キャサリン・ストー『マリアンヌの夢』の映画化作品です。絵に描き込んだものが夢の中に現れる、という設定は同じですが、完全にホラーとして作り直されています。夢の世界の不気味さが半端ないですが、結末はハッピーエンド。


●どちらが夢なのか?
 何度も見る夢、続きを見る夢。どちらが夢なのかがわからなくなってくるという作品。


4488545017生のさなかにも (創元推理文庫)
アンブローズ・ビアス Ambrose Bierce
東京創元社 1987-12

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アンブローズ・ビアス『アウル・クリーク橋の一事件』(中村能三訳『生のさなかにも』創元推理文庫ほか収録)
 絞首刑になる直前に、幸運にも縄が切れ脱出に成功した男の人生の真実とは?
 一つのジャンルの元を作ったというべき古典的名作です。


ロバート・シェクリイ『夢の世界』(井上一夫訳『人類の罠』ハヤカワSFシリーズ収録)
 男は、このところ夢に悩まされていました。だんだんと夢と現実の区別がつかなくなり、精神科医にかかることになります。精神科医は、男に対し、この現実が唯一無二のものだということを証明しようとしますが…。
 冒頭からの日常の描写が、読者に少しずつ違和感を抱かせます。男のいる現実世界が、すでに別世界であることを暗示させるという技巧的な作品。



4150410771幻想と怪奇―ポオ蒐集家 (ハヤカワ文庫NV)
仁賀 克雄
早川書房 2005-02

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ロバート・シェクリイ『夢売ります』(仁賀克雄訳『幻想と怪奇 ポオ蒐集家』ハヤカワ文庫NV収録)
 その店では、ある装置により別の世界の「夢」を見させるという商売をしていました「夢」の世界では、全てはその人の思い通りになり、人殺しさえ可能だというのです。しかし「夢」の代償は、高い料金と10年分の寿命だと言われ、男は悩みます…。
 高い代償を払って「夢」を見る価値はあるのか悩む男の物語…と思いきや、いつの間にか物語は「夢」の中に入っているという、鮮やかな構成の作品です。


ヘンリー・カットナー『大ちがい』(小笠原豊樹訳『ボロゴーヴはミムジィ』ハヤカワSFシリーズ収録)
 精神科医にかかっている男は、自分の今の状態は夢を見ており、本当の自分は別の世界にいると話します。一方、別の世界で、異様な姿をした生物が精神科医に、自分は夢を見ているのだと話していました。二つの世界の精神科医は、患者の妄想を正すために、それぞれ強硬な治療を始めますが…。
 別世界にいる同一人物が、互いの世界の夢を見ており「行ったり来たり」するという、奇妙な味のファンタジーです。



4150111650つぎの岩につづく (ハヤカワ文庫SF)
R.A. ラファティ R.A. Lafferty
早川書房 1996-10

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R・A・ラファティ『夢』(伊藤典夫訳『つぎの岩につづく』ハヤカワSF文庫収録)
 男は、食堂で隣り合わせた女性の話を聞いて驚きます。彼女が話していた夢に覚えがあったのです。それは自分が別の世界に生きている夢でした。その世界では、腹の中に食物を消化してもらうためのネズミを飼っており、外には緑色の雨が降っているというのです。
 やがて、同じ世界の夢を見る人間が爆発的に増え、夢の世界で生きている時間と現実の時間は半々ぐらいになっていきます。このままでは、現実世界の方が夢になってしまうと恐れる人々も現れますが…。
 長期にわたってずっと続く夢は、すでに現実である…。ブラック・ユーモアあふれるファンタジー作品。



4883094014シミュレーションズ―ヴァーチャル・リアリティ海外SF短篇集
ケアリー ジェイコブソン
ジャストシステム 1995-08

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ジェラルド・ペイジ『幸福な男』(冬川亘訳 ケアリー・ジェイコブソン編『シミュレーションズ ヴァーチャル・リアリティ海外SF短篇集』ジャストシステム収録)
 その世界では、監視役の人間を除き、大部分の人間は眠ったまま、機械により自らの望みの夢を見ながら生きていました。現実を生きることを主張する〈覚醒者〉たちは、社会をひっくり返そうと活動を続けていましたが…。
 人類全体が幻想に浸っている世界で、孤独に活動を続ける男を描く物語。本当に夢を見ているのはいったい誰なのか? 後半のひっくり返しが鮮やかな作品です。



4152087420夜の旅その他の旅 (異色作家短篇集)
チャールズ ボーモント Charles Beaumont
早川書房 2006-07

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チャールズ・ボーモント『夢と偶然と』(小笠原豊樹訳『夜の旅、その他の旅』早川書房収録)
 男は、心臓が弱く、主治医から今度大きなショックを受けたら命はないと言われていました。精神科医を訪れた男は、このごろ見る夢に、同じ女性が繰り返し登場し、自分を突き落とそうとするのだと話しますが…。
 主人公が現実世界にいるのかと思っていると、いつの間にか夢の中の世界に入っています。結末は鮮やか。



4560072051南十字星共和国 (白水Uブックス)
ワレリイ・ブリューソフ 草鹿 外吉
白水社 2016-03-26

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ワレリイ・ブリューソフ『いま、わたしが目ざめたとき…』(草鹿外吉訳『南十字星共和国』白水Uブックス収録)
 夢の中で残酷な行為に耽っていた男は、美しい妻をもらい、現実的な幸福を得ます。しかし時を置かずして、再び夢の中での悦楽を求めるようになりますが…。
 犯罪的な行為を夢の中で実現していた男の狂気とは…? 夢と現実が混交してしまった男のサイコ・スリラーです。



4003279026遊戯の終わり (岩波文庫)
コルタサル 木村 榮一
岩波書店 2012-06-16

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フリオ・コルタサル『夜、あおむけにされて』(木村榮一訳『遊戯の終り』岩波文庫収録)
 事故で入院している男性はベッドの上で夢を見ます。それはアステカ族の人狩りから逃げ回るというものでした。夢が覚めても、眠るとまた同じ夢の続きが始まるのです…。
 一貫性のある夢は、現実とほとんど変わらない…。完成度の高い作品です。



4882932830黒の血統 (三橋一夫ふしぎ小説集成)
三橋 一夫
出版芸術社 2005-12

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三橋一夫『夢』『黒の血統』出版芸術社収録)
 妻子とともに幸せに暮らしていた男は、召集令状を受けて戦地に旅立ちます。はっと目が覚めると、妻が自分を呼ぶ声が聞こえます。あれは夢だったのか…。
 戦争に行った夢を見たと思いきや、家族と暮らしていた方が夢だった…という話なのですが、家族自体も実在しているかどうかわからないようにも読めます。



4022671505楳図かずおこわい本 呪縛 (楳図かずお恐怖文庫 14)
楳図 かずお
朝日新聞出版 2007-12

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楳図かずお『楳図かずおの呪い 幽霊屋敷』『楳図かずお こわい本 呪縛』朝日ソノラマ収録)
 塾帰りに、遊び半分で幽霊屋敷を探検に訪れた少女たちは、屋敷内で女の幽霊を目撃し、あわてて逃げ帰ります。翌日気が付くと、それぞれ体の一部に傷があるのです。昨夜のことは夢ではないかと考えた少女たちは、もう一度幽霊屋敷を訪れますが…。
 物理的に攻撃してくる幽霊の迫力が強烈な一篇。結末に、某有名短篇と同じパターンを使用しています。



B00005FXISジェイコブス・ラダー [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル 1999-12-10

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エイドリアン・ライン監督『ジェイコブズ・ラダー』(映画)
 ベトナム戦争中、ジェイコブ・シンガーと仲間の兵士たちは突如敵襲を受けます。仲間は次々と死に、ジェイコブも腹部を刺されますが、次の瞬間、ジェイコブはニューヨークを走る地下鉄の車内で目を覚まします。
 恋人とともに普通の生活を送るジェイコブは、自分の周囲に奇妙な出来事が頻発し、それと同時に夜は悪夢にうなされるようになりますが…。
 戦争のトラウマに悩まされる男を描いた、反戦的な作品と思いきや、結末でそれらが全てひっくり返されるという衝撃的な作品。主人公の見る幻覚が、悪夢のような情景ばかりで印象的です。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

夢と眠りの物語 その1
 古代から神秘的なものとされてきた「夢」と「眠り」。科学が発達した現代でも、その全容は解明されていません。いろいろな形で扱われてきた「夢」と「眠り」の物語について、ご紹介していきたいと思います。

●中国の夢物語の古典から
 近代以前の「夢」に対するとらえ方は、基本的に「人間の外から来るもの」です。その元が別の人間であれ、神であれ、外から人間の中に入り込む…と考えられていました。
 そのため、近代以前の「夢」を扱った物語は、神託やお告げなどを扱ったものが多いのですが、そうした時代にあって、中国で生まれた「夢」物語には、独特の面白さがあります。自在に時間や空間を行き来するという、SFやファンタジーの萌芽的な作品が多く見られるのです。


4582312241中国古典文学大系 (24)
前野 直彬
平凡社 1968-07

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沈既済(しんきせい 750~800年頃)『枕の中の世界の話』(前野直彬編訳『六朝・唐・宋小説選 中国古典文学大系24』平凡社収録)
 青年盧生は、邯鄲(かんたん)の宿で道士の呂翁に会い、栄耀栄華が尽くせるという枕を借りて寝たところ、素晴らしい一生を送った夢を見ます。しかし目を覚ますと、宿の主人の炊く黄粱(こうりょう)もまだ炊き上っていなかったのです…。
 「邯鄲の夢枕」「盧生の夢」「黄粱一炊の夢」などの由来となった物語。人の一生も夢の中ではわずかな時間に過ぎないという、はかなさをテーマにした作品です。

李公佐(りこうさ 8世紀後半から9世紀初頭)『南柯郡太守の物語』(前野直彬編訳『六朝・唐・宋小説選 中国古典文学大系24』平凡社収録)
 豪放磊落で知られる男が、酔って古い木の下で眠っていると、大槐安国の使いが現れ、そこで王から南柯郡主に任ぜられます。数十年の間、栄華をきわめますが、夢から覚めてみれば一瞬の出来事であり、大槐安国も蟻の王国に過ぎなかった…という話。
 故事「南柯の夢」のもとになった物語。

白行簡(はくこうかん 776~ 826年)『三つの夢の話』(前野直彬編訳『六朝・唐・宋小説選 中国古典文学大系24』平凡社収録)
 相手の夢が現実に現れた話、自分の夢を相手に見られた話、同時に同じ夢を見た話、3つの夢のパターンを並べるという構成の物語です。
 妻の見た夢の内容が、夫の目の前に現れるという1話目のインパクトが強いですね。



4582766803中国怪異譚 聊斎志異〈1〉 (平凡社ライブラリー)
蒲 松齢 増田 渉
平凡社 2009-09

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蒲松齢(ほしょうれい 1640~1715年)『宰相の夢のあと』(増田渉、松枝茂夫、常石茂訳『聊斎志異』平凡社収録)
 占いで宰相になると言われた男は、突然宰相に抜擢され、栄華の限りを尽くしますが、汚職を繰り返したあげく、没落して死んでしまいます。死後、地獄で責め苦を味わった後、貧しい娘に生まれ変わり、ここでもまた不幸な目に遭い続けますが…
 原題は『続黄梁』、上記『枕の中の世界の話』を元にした作品です。死んでからの地獄の責め苦、生まれ変わってからの不幸と、主人公を苛む苦難の連続がすさまじいのですが、それさえも夢のうち、という強烈な作品。



4582766412中国怪異譚 閲微草堂筆記〈上〉 (平凡社ライブラリー)
紀 〓 前野 直彬
平凡社 2008-05

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紀昀(きいん 1724~1805年)『農婦の夢』(前野直彬訳『中国怪異譚 閲微草堂筆記』平凡社ライブラリー収録)
 道に迷っている農婦を見かけた語り手が、声をかけると農婦は消えてしまいます。実際の農婦は道に迷っている夢を見ていて、語り手に会ったというのですが…。
 夢を見ている間、分身(魂)が現実世界に現れる…という話です。


●同じ夢を見る
 二人以上の人間が同じ夢を見る、というのは「夢」物語の定番ですね。


4003725026モーム短篇選〈上〉 (岩波文庫)
モーム 行方 昭夫
岩波書店 2008-09-17

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W・サマセット・モーム『マウントドレイゴ卿』(行方昭夫編『モーム短篇選』岩波文庫ほか収録)
 傲慢ながら才能豊かな政治家マウントドレイゴ卿は、精神科医を訪れ、奇妙な夢の話を始めます。平民出身の代議士グリフィスが、夢の中で毎回マウントドレイゴ卿を嘲弄するというのです。グリフィスは自分と同じ夢を見ているに違いないと断言するマウントドレイゴ卿は、自分が死ぬかグリフィスが死ぬか二つに一つだと言いますが…。
 マウントドレイゴ卿だけでなく、脇役に過ぎない精神科医までが精細に描写され、異様な雰囲気を高めます。鬼気迫る一編。



B009KZ5QYG目撃者は月 (光文社文庫)
都筑 道夫
光文社 2005-10-27

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都筑道夫『殺し殺され』『目撃者は月』光文社文庫収録)
 「私」は、何度も、同じ男を殺害するという夢を見ていました。ある日町中で出会った男は、夢でいつも殺している男でした。男から話を聞くと、逆に男は夢で何度も「私」に殺されているというのですが…。
 加害者と被害者が同時に同じ夢を見ている…という話。幻想小説が途中から合理的なミステリになり、また幻想小説風になるという技巧的な作品。



4846007782“新パパイラスの舟”と21の短篇
小鷹 信光
論創社 2008-11

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ヘンリイ・スレッサー『夢を見る町』(小鷹信光訳『新パパイラスの舟』論創社収録)
 車を盗まれた男は、立ち寄った村で一夜の宿を求めます。その村では、毎夜、全ての住人が同じ夢を見るというのです。夢の中では、皆が宮廷の役職を務めているというのですが…。
 村中の人間が同じ夢を見ているという、ユニークな物語です。



yumeawase.jpg
夢あわせ
半村 良
文藝春秋 1989-01

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半村良『夢あわせ』『夢あわせ』文春文庫収録)
 性格も趣味もぴったりの理想の夫婦は、やがて夢さえも同じものを見ようと考えます。だんだんと二人の夢の内容は近づいていきますが…。
 夢を合わせようとする夫婦の物語。夢が合わさったときに、何が起こるのか? 面白い発想の作品です。


●夢見る人と夢見られる人
 夢見られたことにより、存在をはじめる人間の物語を集めてみました。中には、入れ子になった夢も。


4003279212伝奇集 (岩波文庫)
J.L. ボルヘス 鼓 直
岩波書店 1993-11-16

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ホルヘ・ルイヘ・ボルヘス『円環の廃墟』(鼓直訳『伝奇集』岩波文庫収録)
 男は夢の中で、ある青年を夢見ます。身体の各部から始め、完全な一人の人間を夢の中で作り上げたのです。作り上げた「息子」は、やがて旅立っていきます。ふとしたことから、自らもまた、夢見られた存在であることに気付きますが…。
 ボルヘスの代表作にして、「夢見るもの」と「夢見られるもの」について書かれた最良の作品の一つです。



4336030502逃げてゆく鏡 (バベルの図書館 30)
ジョヴァンニ パピーニ ホルヘ・ルイス・ボルヘス
国書刊行会 1992-12

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ジョヴァンニ・パピーニ『<病める紳士>の最後の訪問』(河島英昭訳『逃げてゆく鏡』国書刊行会収録)
 その男は、自分は普通に生まれた人間ではなく、何者かによって「夢見られた人間」に過ぎないと言い張ります。ただ、創造主は自分の存在には気がついていない。自分の存在を消すために、いろいろな悪行をしてみても、自分を夢見る創造主は、自分に気がついてくれないと嘆きます…。
 自分を夢見るものは、自分に全く関心がない…というネガティブな物語。



433604841Xパウリーナの思い出に (短篇小説の快楽)
アドルフォ・ビオイ=カサーレス 野村竜仁
国書刊行会 2013-05-30

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アドルフォ・ビオイ=カサーレス『パウリーナの思い出に』(野村竜仁、高岡麻衣訳『パウリーナの思い出に』国書刊行会)
 幼い頃から自他ともに認める恋人として過ごしてきた女性が、結婚を目前にして、別の男のもとに走っていってしまいます。傷心の主人公は海外に旅立ちます。
 帰国した主人公のもとに、その女性パウリーナが現れ、かっての愛を取り戻したかに見えますが、やがてパウリーナは、恋敵の男の手で数年前に殺されていたことを知ります。あのパウリーナは亡霊なのか…?
 愛、幻影、分身…。長編『モレルの発明』の変奏曲ともいうべきテーマを持つ傑作小説です。



4882930889虹の裏側 (ふしぎ文学館)
眉村卓
出版芸術社 1994-10-20

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眉村卓『仕事ください』『虹の裏側』出版芸術社収録)
 酔っ払ったサラリーマンの「私」は、本気で念じれば人間は何だって出来ると思い込み、念じ続けます。その直後、不気味な風貌の男が現れます。自分はあなたの念が生み出した奴隷であり、何か仕事をくれと言い出しますが…。
 ひたすら「仕事ください」と言い続ける男の不気味さは強烈です。ぶっとんだ結末にも驚き。

眉村卓『ピーや』『虹の裏側』出版芸術社収録)
 人付き合いのあまりない男は、ピーという猫を飼っていました。男は猫のためだけに生きているような状態でしたが、ある日交通事故で男は死んでしまいます。猫は、ひたすら男のことを考えますが、その時現れたものは…。
 味わい深い掌編です。



4270003286終わりの街の終わり
ケヴィン ブロックマイヤー 金子 ゆき子
武田ランダムハウスジャパン 2008-04-24

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ケヴィン・ブロックマイヤー『終わりの街の終わり』(金子ゆき子訳 武田ランダムハウスジャパン)
 ある場所に存在する街。そこは死んだはずの人間が、生きている人間が記憶している間だけ滞在していられるという場所でした。しかし、その街が急激に縮み始めます。現実世界で、新型ウイルスが流行し、人類が絶滅状態になってしまったのです…。
 消滅寸前の死者の街と、人類最後の生き残りである女性とが、交互に描かれる長篇作品。人間一人分だけの記憶の街という、何とも魅力的な設定です。



4652005148おとうさんがいっぱい (新・名作の愛蔵版)
三田村 信行 佐々木 マキ
理論社 2003-02

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三田村信行『ゆめであいましょう』『おとうさんがいっぱい』フォア文庫収録)
 ミキオは、夢の中で、赤ん坊を見ます。翌日の夢では、5歳ぐらいの少年を見ます。どうやら、少年は昨夜の赤ん坊が成長した姿のようなのです。やがて成長した少年の顔が、自分そっくりであることに気付き、驚くミキオでしたが…。
 夢を見ているのはどちらで、夢を見られているのはどちらなのか? アイデンティティーの不安をえぐる、児童文学ながら恐怖度の高い作品です。



488570412XWho!超幻想SF傑作集 (マイ コミックス)
佐々木淳子
東京三世社 1981

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佐々木淳子『ミューンのいる部屋』『Whoフー 超幻想SF傑作集』東京三世社マイ・コミックス)
 空想上の友達と遊ぶことを覚えた少年フィル。彼の作った女の子ミューンは、日に日に存在感を増していきます。
 母親の実家に預けられることになったフィルは、伯母のアナイジーとの生活の中で、充実感を得るようになり、それに伴いミューンは姿を消します。しかしアナイジーとボーイフレンドとの関係に嫉妬したフィルは、再び内にこもるようになり、彼の幻を作る能力は暴走しはじめますが…。
 いったんは幸せを得たかに思えた少年が裏切られたとき、空想は彼の手を離れていきます。空想が現実化するというファンタジーですが、後半の展開は、非常にブラック。最後の一ページの衝撃度は、半端ではありません。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学



プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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