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テーマ:その他 - ジャンル:その他

7月の気になる新刊
7月6日刊 イサベル・アジェンデ『精霊たちの家 上下』(河出文庫 予価各1188円)
7月6日刊 澁澤龍彦『極楽鳥とカタツムリ』(河出文庫 予価950円
7月6日刊 アレクサンドラ・オリヴァ『ラスト・ワン』(ハヤカワ文庫NV 予価1253円)
7月11日刊 内田隆三『乱歩と正史 人はなぜ死の夢を見るのか』(講談社選書メチエ 予価1944円)
7月11日刊 ボンテンペッリ『鏡の前のチェス盤』(光文社古典新訳文庫)
7月12日刊 エラリー・クイーン『アメリカ銃の謎 新訳版』(創元推理文庫 予価1080円)
7月12日刊 夢野久作『夢Q夢魔物語 夢野久作怪異小品集』(平凡社ライブラリー 予価1512円)
7月17日刊 リズ・ベリー『月影の迷路』(国書刊行会 予価3024円)
7月20日刊 G・K・チェスタトン『ブラウン神父の秘密 新版』(創元推理文庫 予価799円)
7月28日刊 A・E・ヴァン・ヴォークト『宇宙船ビーグル号の冒険 新版』(創元SF文庫 予価950円)
7月28日刊 キャリー・パテル『墓標都市』(創元SF文庫 予価1447円)


 アジェンデ『精霊たちの家』は、幻想的要素のある大河小説。アジェンデ作品は、ラテンアメリカ小説の中では圧倒的に読みやすいので、オススメです。

 澁澤龍彦『極楽鳥とカタツムリ』は、著者の著作の中から、動物をテーマにした物語を集めたというアンソロジー。これは面白そうですね。

 内田隆三『乱歩と正史 人はなぜ死の夢を見るのか』は、アカデミックな視点の評論だと思いますが、題材が乱歩と正史ということで、気になりますね。

 7月の新刊で一番気になるのがこれ、ボンテンペッリ『鏡の前のチェス盤』です。マッシモ・ボンテンペッリ(1878-1960)は、イタリアの作家。ユーモアとファンタジーにあふれる作品は、今読んでも面白く、戦前の日本でもいくつかの作品が訳されています。
 ちくま文庫から刊行された短篇集『わが夢の女』(岩崎純孝他訳 ちくま文庫)には、いわゆる《奇妙な味》に近い味わいの作品が収められています。
 ずいぶん昔に、このブログでも紹介したことがあります。
 ブルジョワ娘の空の散歩  マッシモ・ボンテンペルリ『わが夢の女』

 今回刊行される『鏡の前のチェス盤』は、長編ファンタジーのようですね。「語り手である「ぼく」が10歳のころ、部屋にあった鏡のなかの世界に入り込んだ体験を回想するファンタジー。チェスの駒が会話し、現実と非現実の境が曖昧な迷宮ワールドを描く、キャロルの〝アリスもの〟を思わせる幻想的色彩の強い物語。」だそうで、これは楽しみ。いずれ短篇集も新訳刊行してほしいところです。

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怪奇幻想読書倶楽部 第6回読書会 開催しました
 6月18日の日曜日、JR巣鴨駅前のカフェにて「怪奇幻想読書倶楽部 第6回読書会」を開催しました。出席者は、主催者を含め9名でした。
 テーマは、第1部「欧米怪奇幻想小説入門(英米編1)」、第2部「ファンタスティック・マガジン」です。参加してくださった方には、お礼を申し上げたいと思います。
 それでは、当日の会の詳細について、ご報告したいと思います。

 今回も、参加者全員のプロフィールをまとめた紹介チラシを作りました。チラシをPDFにしたものを、メールにて事前に配信しています。

 今回第1部のテーマは「欧米怪奇幻想小説入門(英米編1)」ということで、英米の怪奇小説を古典から現代まで、大まかにたどっていこうという試みです。資料として、代表的な英米怪奇小説の作品名と作者名を年表にしたものを作りました。
 合わせて、第1・2回で使用した「怪奇アンソロジーリスト」を増補した資料も用意しました。

 本当は、時代順に見ていこうという心積もりだったのですが、細かく見ていくと時間がかかってしまうのと、あまり馴染みのない時代の作品(特にゴシック・ロマンスなど)もあるため、時代的に行ったり来たりという感じになってしまいました。
 また、英米編とはいいつつ、フランスやドイツ・ロシア作品の話にもなったりと、少しまとまりに欠けた気はしています(話題が広がるという意味では楽しいのですが)。

 第2部は、「ファンタスティック・マガジン」と称して、怪奇・幻想に関わる雑誌についてのトークでした。『ナイトランド』以外は、基本的に、ほぼ昔の雑誌ばかりになってしまいましたが、珍しい雑誌を持ってきてくださった方もありました。ビジュアル的に見て楽しいものが多かったので、こちらはなかなか盛り上がったかと思います。

 それでは、話題になったトピックを順不同で挙げていきます。

第1部
・ゴシック・ロマンスについて。必ずしも超自然現象が発生せず、人間の仕業であることもある。わりとご都合主義。宗教的な描写が多い。
・ホレス・ウォルポール『オトラント城奇譚』について。怪奇幻想小説の嚆矢とされる作品。かなり荒唐無稽な時代劇だが、それが逆に面白い。
・クレアラ・リーヴ『イギリスの老男爵』について。『オトラント城』に直接的な影響を受けている作品。『オトラント城』の超自然要素を不自然だとして、その部分を自然に描いた、というコンセプトの作品だが、今読むとあまり面白くない。ただ、後半の資産相続をめぐる部分が下世話で、そこのところは面白く読める。
・ウィリアム・ベックフォード『ヴァテック』について。邪悪な魔術に入れ込む母子の地獄墜ちの物語。主人公たちが行う所行は残酷そのものだが、描写のデフォルメが強烈であまり陰惨にならないのが面白い。
・ウィリアム・ゴドウィン『ケイレブ・ウィリアムズ』について。メアリ・シェリーの父親にして、無政府主義者のゴドウィンが、自分の思想をエンタテインメントの形で描いた作品。ミステリの元祖ともいえるサスペンス小説。主人公が罪を暴こうとした領主から迫害される作品。その追い詰め具合が強烈だが、主人公の動機が「好奇心」というのが、ちょっと動機としては弱い気がする。白水Uブックス版には、結末が2パターン収録されている。
・マチューリン『放浪者メルモス』について。魂を手に入れようと時空をめぐる怪人の話。宗教談義の部分が長いが、物語そのものは面白い。語りが入れ子状になっていて複雑。国書から出た合本版は、分厚くて読みにくい。
・メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』について。作者が若くして書いた傑作。哲学的なテーマをはらんでいて、学問的な対象になるのも納得。物語は悲劇的なトーンが濃い。
・海外と日本のロボットや機械に対するイメージの違いについて。海外では、『フランケンシュタイン』やチャペック『ロボット』など、ロボットや機械は人間に敵対するものとしてのイメージが強いが、日本ではロボットや機械を「友人」や「仲間」として考える傾向がある。手塚治虫の『鉄腕アトム』の影響もあるのではないか。
・ジェイムズ・ホッグ『悪の誘惑』について。まっすぐに育った兄と狂信的な環境で育てられた弟の物語。物語が手記という形になっており、超自然的な現象が本当なのかどうかが曖昧になる構成。作者自身までが顔を出し、手記の真実性を曖昧にするなど、技法としては、かなり近代的な傑作。今読んでも面白い。
・ディヴィッド・パンター『恐怖の文学』について。恐怖小説についての通史。ゴシック・ロマンスが主体の本。2巻は出ないのだろうか。
・エドガー・アラン・ポーの作品について。ほとんどが短編作品だが、だいたいの作品において無駄が感じられない。ポーの短編作品を映画化した作品を見て、間延びした感じを受けるのは、原作に無駄がない証拠か。
・ブルワー=リットン『幽霊屋敷』について。最も怖い小説と言われることがあるが、今読むとそれほどではない。後半オカルト科学っぽい展開になったりと、意外に近代的な要素がある作品。
・フィッツ=ジェイムズ・オブライエンについて。ポーとビアスの間をつなぐと言われる作家。ホラーというよりファンタジーに近いが、傑作が多い。『あれは何だったか?』は、乱歩の分類することろの「透明怪談」で、ユニークな発想。光文社古典新訳文庫の選集『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』は訳も読みやすい。
・J・S・レ・ファニュについて。基本的に長篇はゴシック・ロマンスに分類される作家。今読むと長篇は退屈なものが多い。短篇は近代的な作品がある。『吸血鬼カーミラ』や『緑茶』は、今読んでも面白い。最近出た傑作集『ドラゴン・ヴォランの部屋』も面白かった。
・ロバート・ルイス・スティーヴンソンの作品について。『ジキル博士とハイド氏』は、二重人格を扱った傑作。短篇でも面白い怪奇作品が多い。
・怪奇小説を精神分析的な視点で読むという批評があるが、不毛な気がする。
・アーサー・マッケンについて。気色の悪い作品が多い。純粋な怪奇小説とはいえない作品も多いが、『夢の丘』は傑作だと思う。『怪奇クラブ』『白魔』など。
・M・R・ジェイムズについて。伝統的なゴースト・ストーリーを一つの様式にまで高めた作家。主人公は学識豊かな古文書学者とか考古学者で、遺跡や古文書の調査の過程で幽霊や妖怪に遭遇する…というパターンが多い。アンソロジーで読むと安定した感じだが、続けて読むと飽きてしまうことも。
・アルジャーノン・ブラックウッドについて。イギリスでは初?の怪奇プロパー作家。オーソドックスな怪奇作品だけでなく、変わった発想のものも多い。『人間和声』『ケンタウロス』など。
・ブラム・ストーカー『吸血鬼ドラキュラ』について。『フランケンシュタイン』などと並び、学問的な対象になることも多いが、そこまで高尚な作品ではないと思う。エンタメとしては非常に優れている作品。
・W・W・ジェイコブズ『猿の手』について。3つの願いをめぐる作品だが、それぞれの願いとその顛末の流れが完璧に近く、大変な傑作だと思う。
・フランシス・バーネット『白い人たち』について。あまり知られていないが、ゴースト・ストーリーの傑作。
・オーガスト・ダーレスの怪奇小説について。少年や子供を題材にしたジェントル・ゴースト・ストーリーに味がある。
・ちくま文庫は、時々怪奇幻想系のいい本が出る。風間賢二編『クリスマス・ファンタジー』『ヴィクトリア朝空想科学小説』は、すごくいいアンソロジー。
・国書刊行会《世界幻想文学大系》には、訳が読みにくいものも結構あった。ペトリュス・ボレル『シャンパヴェール悖徳物語』は、まるでマンガで使うようなルビの使い方がされていて、驚かされた。
・ダイアナ・ウィン・ジョーンズについて。意外にブラックだったり、怖い作品もある。
・アイルランドの怪奇小説について。ケルト文化に通じる作品には、キリスト教圏とは違った味わいがある。
・フィオナ・マクラウドについて。神話的な味わいのある短篇作品を書いた作家。『ケルト民話集』など。
・都筑道夫編『幻想と怪奇』(ハヤカワ・ミステリ)は、日本では先駆的な怪奇アンソロジー。古典的な作品に混じって、スタインベック『蛇』やカポーティ『ミリアム』など、従来は怪奇小説とはされていなかった作品を収録したところが新しい。
・ロバート・ヒチェンズ『魅入られたギルディア教授』について。霊に憑かれる男の物語だが、それが女性らしい霊で肉感的なところが斬新な作品。
・ジョン・ケンドリック・バングズ『ハロウビー館のぬれごと』は、幽霊を凍らせて退治するというユーモア怪談。楽しい作品。
・ダフネ・デュ・モーリア『レベッカ』について。ゴシック的な作品。短篇に比べてロマンティックな要素が濃い。
・アシモフ他編『クリスマス13の戦慄』について。わりと伝統的な怪談の多いアンソロジー。ラムジー・キャンベル『煙突』は、サンタの死をテーマにしたショッキングな作品。
・アンソロジー『バレンタイン14の恐怖』について。ウィリアム・F・ノーランの『ピエロに死を!』がバットマンをモデルにしたユニークな恐怖小説。
・ゾンビもの作品について。ホラー分野では従来マイナーだったゾンビが今や主流派に。日本ではマンガなどにも取り上げられるようになった。
・J・スキップ&C・スペクター編『死霊たちの宴』について。ゾンビをテーマにしたアンソロジー。ブライアン・ホッジ『がっちり食べまショー』は、タイトルからして強烈。後に長篇化するフィリップ・ナットマン『始末屋』は、知性を保ったゾンビを扱った作品。
・《破滅もの》における、イギリス作品とアメリカ作品の違いについて。イギリス作品はリアリズム重視で、暗い世相を描くのに長けているが、アメリカ作品では楽天的で簡単に復興してしまうものなどもある。
・フェリース・ピカーノ『透きとおった部屋』について。1970年代の作品だが、ストーカー的な題材を扱った面白い作品。
・怪奇小説の主流はバッド・エンドにある? アメリカ作品、とくにモダンホラーでは怪物や幽霊は退治されてハッピーエンドになってしまうことが多い。
・スティーヴン・キング『霧』の面白さ。映画化作品はちょっとどうかと思う。
・ジェームズ・ハーバートの『霧』について。霧によって人間が凶暴化する。B級だが面白い。
・怪奇実話について。怪奇小説と怪奇実話のファン層は、意外と重ならない? フィクション好きからすると、怪奇実話はあまり想像力の飛躍が感じられない。
・スティーヴ・ラスニック・テム『深き霧の底より』について。山奥の村を舞台にした静かなホラー。村人たちの間で怪奇現象が頻発する様を細かく描いた作品。雰囲気は素晴らしい。怪奇現象の一環として登場する熊が暴れるのは、ちょっと雰囲気を崩しているような気がする。
・モダンホラー作品とゴシック・ロマンスは意外に共通点があると思う。
・ロバート・コーミア作品について。子供を主人公にしても、かなり心理的にきつい作品を書く作家。『フェイド』は透明になる能力を持った少年を主人公にした超能力悲話的な作品。他に『心やさしく』など。
・サイモン・クラーク『地獄の世紀』について。大人が突如、子供を襲い始めるホラー作品。かなり残酷。後半ちょっと宗教的なトーンになってしまうのが残念。永井豪『ススムちゃん大ショック』にテーマが似ている。
・パトリック・レドモンド『霊応ゲーム』について。怪奇小説的な部分も素晴らしいが、少年小説・青春小説的な部分も素晴らしい。同著者の『復讐の子』も面白い。
・M・R・ケアリー『パンドラの少女』について。ゾンビウィルスが蔓延した世界で、知性を保ったままの少女をめぐるホラー作品。イギリス作品らしいシビアな作品世界が読みどころ。
・東雅夫編のアンソロジー《世界幻想文学大全》は、怪奇幻想のオールタイムベストで、ラインナップ的には初心者にオススメ。ただし、名訳を集めるというコンセプトなので、現代人には多少読みにくいものもあり。
・『怪奇小説傑作集』について。1巻からではなく2巻からの方が読みやすい。4巻フランス編は、怪奇小説というより編者澁澤龍彦の個性が出たアンソロジー。小ロマン派やシュルレアリスム系の作品が面白い。
・シャルル・クロス作品の面白さ。訳されている戯曲もコントのようで面白い。
・グザヴィエ・フォルヌレについて。『草叢のダイヤモンド』が非常に傑作なので、他にも傑作があるのかと思っていたら、近年出た短篇集を読んでがっかりした。一発屋?
・ロシアの怪奇小説について。
・レーミゾフの作品は非常に暗くて陰鬱。『小悪魔』など。
・アレクサンドル・グリーンについて。ロシアには珍しい陽性の作家。アルトアーツから近年刊行された短篇集が面白い。他に『深紅の帆』『黄金の鎖』など。
・仁賀克雄編『幻想と怪奇』について。異色作家系の作品を集めているので、非常にリーダビリティが高く面白い作品が多い。
・E・F・ベンスン作品について。『いも虫』など、一風変わったゴースト・ストーリーが印象的。
・河出文庫から出た《怪談集》シリーズは粒ぞろい。日影丈吉編『フランス怪談集』は、オーソドックスな怪談が多く、『怪奇小説傑作集』の4巻よりも、怪奇味が強い。ただし訳はあまり良くない。
・森英俊・野村宏平編『乱歩の選んだベスト・ホラー』について。『猿の手』の異稿版が収録されており貴重。
・ドイツ・ロマン派のメルヘン作品について。ルートヴィヒ・ティーク『金髪のエックベルト』は強烈な作品。ジョージ・マクドナルドなど、イギリス作品における影響も。
・伝説的な作品『吸血鬼ヴァーニー』はいつか読んでみたい。
・三津田信三『シェルター』について。核シェルターになぜか、マニアックなホラー映画がいっぱいあるという作品。有名無名のホラータイトルが言及されるのが楽しい。
・《異形コレクション》シリーズの『屍者の行進』は傑作揃いのアンソロジーだった。
・ケン・リュウ作品の面白さについて。中国や日本を舞台にした作品もあり、日本人にも馴染みやすい。「奇妙な味」やアイディア・ストーリーもあり、オールドSFファンにも馴染みやすいのではないか。
・中村融編『夜の夢見の川』について。巻頭のクリストファー・ファウラー『麻酔』が強烈なインパクトの怪作。
・ジェフ・ゲルブ編『ショック・ロック』について。収録作のスティーヴン・キング『いかしたバンドのいる街で』が、バカらしいアイディアながら印象が強い。
・岩波少年文庫から出ている3巻本のホラーアンソロジーは粒ぞろい。ただ、リチャード・ミドルトンなどは、子供が読んでも味わいがわかるのだろうかと心配になる。
・キノコをテーマにしたアンソロジー『FUNGI』について。日本の怪奇SF映画『マタンゴ』に影響を受けた作家たちの作品集。メインのトーンはホラーだが、変わった発想の作品も含まれており面白い。続刊は出るのだろうか。

第2部
・雑誌『幻想と怪奇』について。日本における、怪奇幻想系雑誌のさきがけ。創刊からの数号の充実度に比べ、終刊直前の薄さが目立つ。
・雑誌『牧神』について。怪奇幻想系の特集号が多い。執筆陣は非常に充実している。
・『このホラーが怖い!』について。1冊だけ刊行されて終わってしまったムック。ベスト企画の1位がロバート・エイクマン『奥の部屋』なのはビックリ。
・雑誌『奇想天外』1期について。海外作品中心、異色作家中心のラインナップで面白い雑誌だった。付録もついていて楽しい雑誌。
・雑誌『別冊奇想天外』について。主に海外作品とリストなど資料が充実していた雑誌。ファンタジー特集号は、荒俣宏入魂の一冊で、今見ても素晴らしい内容。
・同人誌『NULL』の合本の紹介。
・雑誌『OUT』について。初期はサブカル的な内容だった。
・雑誌『ムー』について。SF特集などもあった。
・雑誌『遊』について。稲垣足穂の追悼特集号のアートディレクションは素晴らしい。ただ内容は難解。
・雑誌『SFマガジン臨時増刊 ホラーマガジン』の紹介。モダンホラーブーム期に一冊だけ出たホラー増刊号。コラムや年表など貴重な企画も。
・雑誌『幻想文学』と『小説幻妖 弐』について。『小説幻妖 弐』の特集は「ベルギー幻想派」、今でも類似企画はほとんどない充実した特集。

二次会
・ブラックウッド『いにしえの魔術』と萩原朔太郎の『猫町』について。
・《世界幻想文学大系》第1期の本は、すき間がきつくて、本が箱から取り出しにくい。
・H・P・ラヴクラフト作品について。創元版全集は、3巻から訳者が変わるが、1~2巻の方が読みやすい。
・ラヴクラフトの最高傑作は?『ピックマンのモデル』『狂気の山脈にて』『宇宙からの色』『時間からの影』など。
・『クトゥルーの呼び声』は結末が印象的で、悪夢のような作品。
・ジョン・フランクリン・バーディン作品について。『悪魔に食われろ青尾蝿』『殺意のシナリオ』『死を呼ぶペルシュロン』の三作は、どれも悪夢のようなサスペンスで、とくに『悪魔に食われろ青尾蝿』はホラーと言ってもいい作品だと思う。
・《小学館ミステリー》では、何がいちばん面白いか。ジョン・フランクリン・バーディン『殺意のシナリオ』、エセル・リナ・ホワイト『バルカン超特急 消えた女』、ジョセフィン・テイ『魔性の馬』など。
・江戸川乱歩作品の面白さ。いちばん傑作だと思う作品は?『孤島の鬼』『陰獣』など。
・乱歩『黄金仮面』について。他人のキャラクターを使ったパスティーシュはなかなか難しい。
・天知茂主演『江戸川乱歩の美女シリーズ』について。突っ込みどころが多いけれど面白い。
・ロバート・ブロック作品の面白さ。『アーカム計画』はクトゥルー系の長編の中では屈指の傑作。
・猟奇事件が起こると、ホラー・バッシングが起こることが多いが、お門違いだと思う。
・国書刊行会《ゴシック叢書》は、厳密にはゴシックではない現代作品が多いのはどうかと思う。
・ジャック・ケルアックについて。『オン・ザ・ロード』『路上』など。
・池澤夏樹の『個人編集 世界文学全集』について。たまにユニークな巻がある。ジーン・リース『サルガッソーの広い海』など。
・国書刊行会の箱入り本は本棚に並んでいると独自の重量感がある。特に『ラヴクラフト全集』の存在感は強烈。
・夢野久作作品の面白さについて。短篇作品も傑作が多い。
・ボルヘス編『バベルの図書館』について。アンソロジー全体の統一感がすごい。

 次回、第7回読書会は、7月末ごろを予定しています。

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奇妙な分身  クリスティーン・キャスリン・ラッシュ、ケヴィン・J・アンダースン『残像を殺せ』
448880117X残像を殺せ (創元ノヴェルス)
クリスティーン・キャスリン ラッシュ ケヴィン・J. アンダースン Kristine Katheryn Rusch
東京創元社 1996-06

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 車の修理の手伝いを求められたところ、突然暴行され、放火されてしまった女性レベッカ。意識を取り戻し、助かったと思いきや、自分の体が男のものになっているのに気がつきます。しかもその姿は、自分が殺されかかった犯人そのものだったのです。
 レベッカを助けたのは、人間によく似た妖精の一族「ダークリング」たちでした。彼らには、体を再生させる能力があるのです。しかし何らかの要因で、再生の際に、体が変貌してしまったというのです。ダークリングが言うには、外見に囚われず、彼女の正体を見破ってくれる人間がいれば、レベッカは元に戻れるはずだと言うのですが…。

 クリスティーン・キャスリン・ラッシュ、ケヴィン・J・アンダースン『残像を殺せ』(藍堂怜訳 創元ノヴェルズ)は、殺された女性が蘇ったものの、犯人の姿形になってしまうという、面白い設定の作品です。呪いを解くために、元の彼女をよく知る人間のもとを訪れるヒロインですが、本人しか知り得ない情報を話したために、逆に怪しまれてしまいます。
 殺害現場を目撃していた少年たちの証言により、レベッカは犯人として追われてしまうことにもなります。唯一の理解者ともいうべき弟に接触しようとするレベッカですが、本物の犯人との遭遇で、それも失敗してしまうことに。

 もともと孤独だった彼女を助けてくれる人間はほとんどおらず、ダークリングたちに援助してもらうことになるのですが、ダークリングたちの中でも、反目や陰謀があり、一筋縄ではいかないのです。
 このダークリングという種族、周囲で人間が死ぬと、その影響で肉体に変貌が及んでしまうという、奇妙な特徴を持っています。例えば、人間に恋をしたダークリングが、肉体が変わってしまったため、本人であると認めてもらえなくなってしまったりします。肉体の変貌だけでなく、それにより魔力を高めることもできるのですが、それを目的に、やがてダークリング内での殺人も発生し、彼らの中でも犯人捜しが始まります。

 元に戻ろうとするヒロインのほか、殺人を続ける犯人、犯人を探す警察、陰謀を進めるダークリング、それを追う別のダークリングなど、視点が次々に入れ替わります。同時進行で複数のパートが進行し、それがサスペンスを高めており、リーダビリティは非常に高いです。

 「ダークリング」という妖精族が登場したり、蘇りの魔法があったりと、題材としてはファンタジーなのですが、精神を病んだ殺人犯や、孤独なヒロインの内面描写など、サイコ・スリラー的な要素も強く、ジャンルが混合したハイブリッド・エンターテインメントになっています。非常に面白い作品です。

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怪奇幻想読書倶楽部 第6回読書会 参加者募集です(再掲)
 延期していました「怪奇幻想読書倶楽部 第6回読書会」ですが、改めて、下記の日程で開催いたします。若干名の参加メンバーを募集しますので、参加したい方がおられたら、連絡をいただきたいと思います。
 連絡いただきましたら、改めて詳細をメールにてお送りいたします。

お問い合わせは、下記アドレスまでお願いいたします。
kimyonasekai@amail.plala.or.jp


開催日:2017年6月18日(日曜日)
開 始:午後13:30
終 了:午後17:30
場 所:JR巣鴨駅周辺のカフェ
参加費:1300円(予定)
テーマ
第1部:欧米怪奇幻想小説入門(英米編1)
第2部:ファンタスティック・マガジン

※「怪奇幻想読書倶楽部」は、怪奇小説、幻想文学およびファンタスティックな作品(主に翻訳もの)についてのフリートークの読書会です。
※個人の発表やプレゼンなどはありません。話したい人が話してもらい、聴きたいだけの人は聴いているだけでも構いません。
※基本的には、オフ会のような雰囲気の会ですので、人見知りの方でも、安心して参加できると思います。

 第1部のテーマは「欧米怪奇幻想小説入門(英米編1)」。
 ゴシック・ロマンス、怪奇スリラー、ゴースト・ストーリー、異色短篇、パルプ小説にモダンホラー。一口に「怪奇幻想小説」と言っても、その種類は様々です。
 欧米の怪奇幻想小説に興味があるけれど、まず何を読んだらいいの? どんな作品があるの? といったところから、お勧めアンソロジーや参考書の紹介まで、欧米の怪奇幻想小説の本場であるイギリス・アメリカ作品を概観していきたいと思います。

 第2部は「ファンタスティック・マガジン」と題して、怪奇幻想や関連領域を扱った雑誌について語りたいと思います。
 古くは『幻想と怪奇』や『牧神』、新しいところでは『ナイトランド』、また『ミステリマガジン』の《幻想と怪奇》特集や『SFマガジン』の幻想小説を扱った特集、『ユリイカ』の作家特集など。
 雑誌そのものでも、雑誌の特定の号や増刊でも構いません。こんな雑誌がこんな特集をやっていた!というものでもOK。「ファンタスティック」な雑誌について話し合いたいと思います。

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癒しと呪い  トマス・M・ディッシュ『M・D』
M・D〈上〉 (文春文庫) M・D〈下〉 (文春文庫)
 信じていたサンタクロースの存在を否定され、ショックを受けていた幼い少年ビリーの前に現れたのは、「マーキュリー」を名乗る神でした。神はビリーに、癒しと呪いの能力を持つ「カデューシアスの杖」を授けます。
 しかし、杖は無条件に願いをかなえるものではなく、代償を伴うものでした。ビリーは、杖を使い、家族の健康や長命を願いますが、願いそのものは叶ったものの、予期せぬ悲劇が続いてしまいます…。

 トマス・M・ディッシュ『M・D』(松本剛史訳 文春文庫)は、人間の健康をつかさどる魔法の杖を手に入れた少年の人生を描いた作品です。この「カデューシアスの杖」、使えば使うほど効果が上がっていき、しかも無制限に使うことができます。しかし他人に健康や癒しを与えれば、その代償として、別の人間に死や病を与えなければならないのです。
 とりあえず、愛する家族に健康を与えたいと、杖の能力を使うビリーでしたが、願いそのものは叶うものの、結局それらが無駄になってしまうような事態が副産物として起こってしまうのです。
 しかも、「マーキュリー」は、叶えられるのは人の健康と病に関する願いだけであって、能力を使われた人間の運命がどうなろうと、感知しないというのです。例えば父親の健康を願った直後に、その当人が事故死してしまいます。「カデューシアスの杖」にコントロールできるのは、体の健康のみであって、事故は力の及ぶところではない…というのです。
 この作品で主人公に能力を与える神「マーキュリー」は、ホラー作品によく登場するような「悪魔的存在」とは異なります。そもそも彼には善も悪もなく、人間を堕落させようとする意図もないのです。ただ結果がどうなるかを面白がっているような、トリックスター的存在として描かれます。

 一方、主人公ビリーも、子供時代から人の死や不幸を何度も目の当たりにしながら、それにほとんど動揺もせず、目的のためには手段を選ばないという、強烈な個性を持つ人間として描かれます。杖による被害も、個人レベルだったものが、やがて世界的な疫病を引き起こすまでになったりと、スケールが広がっていってしまいます。
 やがて医者になった彼は、世界を破滅させるような事態を引き起こすことになるのです。

 主人公を含め、ほぼ全ての人間が死んだり不幸な目に会ってしまうという、徹頭徹尾、暗いホラー作品なのですが、なぜか読後感はそんなに悪くないという、不思議な作品です。登場人物たちの運命に対する皮肉と悪意がところどころに感じられるところは、作者ディッシュの個性というべきでしょうか。モダンホラーの変わり種であり、強烈な個性の感じられる傑作です。

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狭間の世界で  T・M・ライト『マンハッタン・ゴースト・ストーリー』
4087602265マンハッタン・ゴースト・ストーリー (集英社文庫)
T.M. ライト T.M. Wright
集英社 1993-11-01

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 写真の仕事のため、ニューヨークにやってきたカメラマンのアブナー。彼は、旅行中である友人アートのアパートを一時的に借りることになります。訪れたアパートには、アートの恋人だと名乗るフィリスという若い黒人女性がいました。
 アパートに出入りするフィリスと愛し合うようになったアブナーでしたが、アートからの電話に動揺します。なんと、友人はフィリスを殺してしまい、その容疑で逃げているというのです。それではアパートにいる女性は何者なのか? アートは、その女はフィリスではなく、別人に違いないと告げますが…。

 T・M・ライト『マンハッタン・ゴースト・ストーリー』 (矢倉尚子訳 集英社文庫) は、タイトルから想像がつくように、マンハッタンを舞台にしたゴースト・ストーリーです。
 序盤で登場する主人公の恋人が、すでに死んでいるということは、早い段階でわかってしまいます。わかった後も、主人公は、なんとか恋愛を成就させようと、かけずり回るのです
 主人公には、もともと霊能力が備わっており、恋人との出会いを境に、その能力が開花します。その能力とは、死者が見え、彼らと語ることができるというもの。しかし、その能力には欠点もあります。主人公には、逆に生者と死者の区別がつかないのです。生者のつもりで話しかけていても、それが周りの人間には見えていないことから、死者と認識することになったりと、出会った人間が本当に生きているのかがわからなくなっていきます。
 恋人フィリスが姿を現さなくなり、彼女を求めてアブナーはかけずり回ります。やがて、日常生活においても支障をきたしはじめるアブナー。彼女と会うために、死者の世界との接触を図ろうとするアブナーですが、生きたまま、その世界に入り込むことは容易ではないのです。

 幽霊との恋愛を描く「ラブストーリー」と言えるのですが、甘美な雰囲気だけでなく、死者の世界の不気味さも感じられるところが特徴です。
 恋人フィリスのように、生者と全く違いのわからない死者もいれば、同じ場所で同じ言動を繰り返す地縛霊のような死者もいたりと、いろいろなタイプの死者が描かれます。
 死者の世界自体も、生者が簡単に接触できるようなお手軽なものとしては描かれず、その得体の知れなさ、不気味さが描かれており、ホラーとしてもなかなかに魅力的な作品です。

 作者のT・M・ライトは、1970年代から活躍しているアメリカのモダンホラー作家ですが、邦訳されたのは、1984年発表のこの作品だけのようです。本作品を読む限り、ホラー作品としての雰囲気醸成の巧さといい、リーダビリティの高さといい、非常にバランスの取れた作風のようで、もっと他の作品を読んでみたい作家ではありますね。

テーマ:海外小説・翻訳本 - ジャンル:小説・文学

6月の気になる新刊と5月の新刊補遺
5月31日発売 『ナイトランド・クォータリーvol.09 悪夢と幻影』(アトリエサード 1836円)
6月5日刊 山田英春『奇妙で美しい 石の世界』(ちくま新書 予価994円)
6月6日刊 中野美代子『カニバリズム論』(ちくま学芸文庫 予価1296円)
6月6日刊 パトリック・リー『予言ラジオ』(小学館文庫 予価918円)
6月8日刊 ルース・ウェア『暗い暗い森の中で』(ハヤカワ文庫NV 予価1231円)
6月12日刊 ロバート・シルヴァーバーグ『時間線をのぼろう 新訳版』(創元SF文庫 予価1080円)
6月13日刊 サキ『平和の玩具』(白水Uブックス 予価1728円)
6月13日刊 C・S・ルイス『ナルニア国物語4 カスピアン王子』(光文社古典新訳文庫)
6月13日刊 トーマス・ラープ『静寂 ある殺人者の記録』(東京創元社 予価2376円)
6月13日刊 アレクサンドル・ベリャーエフ『永久パン 他一篇』(アルトアーツ 1188円)
6月22日刊 スティーヴン・ミルハウザー『木に登る王 三つの中篇小説(仮題)』(白水社 予価2804円)
6月22日刊 ジーン・ウルフ『書架の探偵』(新ハヤカワSFシリーズ 予価2376円)
6月24日刊 ジャン・ポール ディディエローラン『6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む』(ハーパーコリンズ・ジャパン 予価1512円)


 『ナイトランド・クォータリー』9号の特集は、「悪夢」。エドワード・ルーカス・ホワイト、リサ・タトル、マンリー・ウェイド・ウェルマン、ロバート・エイクマン、M・P・シールなどの作品が掲載だそうです。

 パトリック・リー『予言ラジオ』は、数時間後の未来のラジオが聞ける機械をテーマにしたSFスリラー。これは面白そうですね。

 白水Uブックスのサキシリーズの新刊は『平和の玩具』。エドワード・ゴーリーの挿絵、G・K・チェスタトンの序文を収録。

 トーマス・ラープ『静寂 ある殺人者の記録』の内容は以下のようなもの。
 「蝶の羽ばたきすら聞こえる、鋭敏な聴覚を持つカール。この世界にとってあまりにも異質に生まれついた、純粋で奇妙な殺人者の生涯とは。」ジュースキントの『香水』みたいな話でしょうか。 

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最近読んだ本

4309207243約束
イジー クラトフヴィル Ji〓´i Kratochvil
河出書房新社 2017-01-24

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イジー・クラトフヴィル『約束』(阿部賢一訳 河出書房新社)
 ナチス・ドイツ占領下のチェコの都市ブルノで、妹の命と引き替えに鉤十字型の邸宅を建てた有名建築家。戦後、秘密警察にマークされた建築家は、捕らえられた妹が自殺するに及び、妹を逮捕した警官に復讐を誓いますが…。

 大枠は、妹を死に追いやった男に復讐をする物語、といえるのですが、ストーリーの筋がなかなかまっすぐ進まないのが特徴です。語り手が次々と変わり、それぞれの視点から物語が語られることもあり、物語の本筋がなかなか見えてきません。
 中盤になり、建築家の復讐の手段が明らかになるのですが、そこからが圧巻です。この建築家、倫理的な義務感の強い男で、警官に苦痛を与えたくはないという観点から、持ってまわった手段を取るのですが、それが仇になり、事態がどんどんエスカレートしていきます。そしていつの間にか、目的自体がすり替わっていくことになるのです。
 最初はシリアスで重厚な物語なのかと思いきや、事態がエスカレートしてからの展開が奇想天外で、驚かされます。物語のところどころに省略があるため、どうしてこうなったのか? 結末は結局どうなったのか? といった部分で、かなりもやもやが残るのではありますが、そのあたりを想像力で補完するという意味では、非常に刺激的な作品ではありますね。



4488010679深い穴に落ちてしまった
イバン・レピラ 白川 貴子
東京創元社 2017-01-21

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イバン・レピラ『深い穴に落ちてしまった』(白川貴子訳 東京創元社)
 ある日、森で穴に落ちてしまった兄弟。深い穴からどうしても出られない兄弟は、木の根や虫を食べて生き延びようとしますが…。

 穴に落ちた兄弟の、極限状況を描くサバイバル的作品です。兄弟の名前も、穴に落ちた具体的な状況もわからず、ただ穴の中での暮らしと脱出の試みを描いていきます。「寓話的作品」とはいいつつ、実際の飢餓や病気の描写は詳細で、息苦しさを覚えるほど。
 結末にはある種の感動が得られる、不思議な魅力のある作品です。



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母親を喰った人形 (ハヤカワ文庫 NV―モダンホラー・セレクション (447))
ラムジー・キャンベル 小倉 多加志
早川書房 1987-05

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ラムジー・キャンベル『母親を喰った人形』(小倉多加志訳 ハヤカワ文庫NV)
 兄を乗せて車を運転していたクレアは、突然飛び出してきた男をよけようとして事故を起こしてしまいます。兄はドアに片腕を切断され命を落としますが、事故後、その片腕が見つからないのです。あの飛び出してきた男が片腕を持ち去ったのか?
 やがてクレアに接触してきた犯罪ノンフィクション作家は、飛び出してきた男は、子供の頃から異様な行動を繰り返し、殺人の容疑もある男だと話しますが…。

 切断された片腕が消えるという、インパクトのあるシーンから始まる物語ですが、全体の展開は、至って地味な作品です。
 登場人物たちが皆、感情移入をしにくい造形なのに加えて、行動の動機が理解しにくいので、作品のページ数が短い割には、読んでいてなかなか進まないのが難点です。
 ただ、犯人の生い立ちや、中盤から絡んでくる黒魔術の背景などは、非常に不気味な雰囲気が出ています。特に、タイトルの意味が判明する犯人の生誕シーンなどは、強烈なインパクトがあります。
 全体にバランスが悪いのは否めないのですが、ホラー小説としては魅力的な部分もあり、捨てがたい作品ではあります。



415209639Xわすれて、わすれて
清水 杜氏彦
早川書房 2016-09-21

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清水杜氏彦『わすれて、わすれて』(早川書房)
 拳銃の名人「リリイ・ザ・フラッシャー」ことリリイは、強盗に妹と両親を殺されていました。リリイは、自分と同じく、父親を殺された友人カレンの復讐の旅に同行することになります。
 カレンの父を殺したのは、カレンの叔父とその仲間であり、その目的は、記した事柄を忘れさせることができる本〈ダイアリー〉を奪うことでした。〈ダイアリー〉を奪われずにすんだものの、父親は殺されてしまいます。
 カレンの復讐の計画とは、父親を襲った犯人たちを拷問し、その後に〈ダイアリー〉で記憶を消せば、相手からさらに復讐されることを防げる、というものでした…。

 主人公たちが持つのは、人の記憶を消すことのできる本という、強力なアイテム。しかしその存在を知る者が、自分たちに向かって本を使う可能性もあるのです。二人は用心しながら旅を続けますが、思いもかけない事態が起こります。
 本当ならば、復讐として相手を殺したい。けれど、そうしてしまうと自分も同じ人殺しになってしまう。それならば、肉体的に痛めつけた上で記憶を消してしまえばいい、というのが、カレンの発想です。
 しかし、それで復讐はなされたことになるのか? リリイはカレンの考えに賛同しきれない状態で旅を続け、二人の間では、たびたび意見の相違が起こります。
 憎しみの連鎖を防ぐためにはどうしたらいいのか? 記憶とは人間にとって何なのか? 読みやすい文章とリーダビリティを持ちながら、扱うテーマはなかなか重厚で、非常に読み応えのある作品です。



4895728447ブラック・ドッグ
レーヴィ ピンフォールド Levi Pinfold
光村教育図書 2012-09

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レーヴィ・ピンフォールド『ブラック・ドッグ』(片岡しのぶ訳 光村教育図書)
 ある家族が住む、森の中の一軒家。そこにふらりと現れた黒い犬。その姿は家族が見る度に大きくなっていき、やがて家を隠すほどになりますが…。

 人間の想像力をテーマにした絵本です。大人や年上の兄弟たちが犬を恐れるたびに、犬が巨大化していき、最後は末っ子が活躍して一件落着…という、ストーリー的には単純な話ではあるのですが、コマ割の工夫や、それぞれの絵の描き込みが詳細で、見ていて楽しい作品になっています。
 家族が、犬をみて驚くシーンを連続で描いているのですが、犬と家族を同一画面で描かず、窓から覗いて驚く家族と、大きくなっていく犬、それぞれを別コマで描くことによって、家族が犬を客観的に見れていない(恐怖心を過剰に持ってしまっている)というのを表現しており、非常に技巧的です。
 絵のタッチも魅力的で、デフォルメの利いた絵柄はユーモアにあふれています。
Black-Dog01.jpg Black-Dog02.jpg Black-Dog03.jpg


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プロフィール

kazuou

Author:kazuou
男性。本好き。短編好き。異色作家好き。怪奇小説好き。
怪奇幻想小説の読書会「怪奇幻想読書倶楽部」主催。
主に翻訳小説を紹介していますが、たまに映像作品をとりあげることもあります。
記事の新旧に関わらず、コメント・トラックバックは歓迎しています。



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